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放射線治療部

放射線治療部紹介

 愛知がんセンター中央病院の6代目の放射線治療部長を担当いたします古平 毅です。
 当院は昭和39年開院以来放射線科として診断業務と治療部門を独立して業務を行ってまいりました。高橋信次先生が開発された当時としては画期的な「高精度放射線治療」である原体照射法を当初より臨床に応用し以来頭頸部がん、婦人科がん、前立腺がん、肺がん、食道がんなどに優れた治療効果と安全性を報告してまいりました。
 最近では治療技術や計画コンピュータの革新的な進歩により三次元放射線治療や定位放射線治療、強度変調放射線治療などの高精度放射線治療は臨床に浸透していますがこれらの最先端の放射線治療の基礎は当院で長い実績をもつ原体照射法に端を発しているといっても過言ではありません。
 当院は5名のスタッフ(放射線治療専門医4名)とレジデント2名が放射線治療専任で診療を行っており外部照射(リニアック 2台、トモセラピー 1台)、小線源治療(RALS マイクロセレクトロン1台 )、密封小線源治療 (イリジウム、ゴールドグレーン、ヨード)を主たる治療装置として年間900名程度の新規患者治療を行っております。頭頸部がん、子宮がんの患者は主に当科入院にて化学療法を含む包括的ながんの治癒をめざした放射線治療を目的とした診療を行っています。これは本邦では数少ない診療形態ですが放射線治療を主体として質の高い診療を行うには欠かせない条件であると考えておりこの診療スタイルを固持しています。
 この紹介ページでは当院の特徴であるユニークな治療を中心に紹介させていただきより「質の高い治療」を希望されている患者さんやご家族の参考になりましたら大変うれしく思います。

スタッフ紹介

古平 毅
古平 毅
(こだいら たけし)
部長

患者さんへのことば

 がんはいまや日本人の二人に一人がかかる病気です。一昔前のような特別な病気では無くなってきています。また医療の進歩により手術以外の治療法で切らないでがんをなおすことができる治療方法も増えています。放射線治療はメスを使わないでがんをなおす治療法として近年注目されている治療法です。病状によっては放射線をふくむいくつかの治療法が選択できる病状の患者さんも増えてきていますが、まだまだ放射線治療が有効であることを知られていない場合もあると感じています。患者さんの病状にあわせて治療方法を十分に考えて判りやすく説明し、納得して治療を受けていただけるように心がけて日々の診療にあたっています。

資格

放射線治療専門医、日本医学放射線学会・同代議員、日本放射線腫瘍学会・同理事、日本癌治療学会・同代議員、日本頭頸部癌学会・同理事、日本食道学会・同評議員、日本がん治療認定医機構暫定教育医
【専門領域】
頭頸部がん 子宮がん 食道がん 強度変調放射線治療 高精度放射線治療

立花 弘之
立花 弘之
(たちばな ひろゆき)
医長

患者さんへのことば

 当院はがん治療専門病院であり、一般の施設では不可能な高度で専門的な治療を提供する責務があると考えています。また、最善の治療をどこの病院でも受けられるようにするために臨床試験にも力を入れています。治療法が進歩して強力なものになると、それに伴う有害事象もかつてより重度化する傾向にあります。近年放射線治療は体にやさしい治療として脚光を浴びてきていますが、実際には副作用で苦しむ患者さんも少なくありません。少しでも治せる可能性を高める努力を続けることと共に、できるだけ安全で苦痛の少ない治療を受けてもらうための研究にも力を入れています。当科の特徴として多くの種類のがんに対して、根治を目指す治療から症状を緩和するための治療まで幅広い対象疾患を扱っていることが挙げられます。そのためには幅広い知識を必要としますので、日夜研鑚に励んでおります。

資格

放射線治療専門医
【専門領域】
放射線治療全般、頭頸部癌

富田 夏夫
富田 夏夫
(とみた なつお)
医長

患者さんへのことば

 がん患者さんといっても原発部位や進行度、年齢、合併症などをとっても様々な方がおみえになり、放射線治療の目的も個々の患者さんの状態に応じて異なってきます。各科の主治医と連携をとりながら、常に最適な放射線治療の方針を患者さんの状態に応じて判断し、患者さんに安心して放射線治療をうけて頂けるように日々心掛けています。

資格

放射線治療専門医
【専門領域】
放射線治療全般、定位放射線治療

小出 雄太郎
小出 雄太郎
(こいで ゆうたろう)
専門員

患者さんへのことば

 放射線治療は様々ながんに対して行われています。それぞれの患者さんに適した放射線治療ができるように心がけて参ります。

田中 寛
田中 寛
(たなか ひろし)
医長

患者さんへのことば

 癌を治すための治療から辛い症状を和らげるための治療まで多岐にわたった目的で放射線治療を行います。機器の発達により以前は実現不可能であったような新しい治療技術も次々と開発されております。そういった新しい治療を正しい医学知識に基づき安全にかつ効果的に実施できるよう日々研鑽しております。

資格

放射線治療専門医
【専門領域】
頭頸部癌、疼痛緩和放射線治療、定位放射線治療

 

加藤 大貴
加藤 大貴
(かとう だいき)
レジデント

患者さんへのことば

 患者さんひとりひとりに合った放射線治療を提供できるよう努力いたします。

 

足達 崇
足達 崇
(あだち そう)
レジデント

患者さんへのことば

 放射線治療は癌治療における重要な柱の一つですが、欧米と比較すると本邦では患者さんが放射線治療を選択する割合はまだまだ低い現状があります。患者さんの、放射線治療に対する漠然とした不安もその一因かもしれません。患者さんが安心できる治療の提供が出来たら良いと思います。納得・安心の放射線治療医になれるよう頑張ります。

 

【技師スタッフ】

治療専属診療放射線技師 11名
医学物理士 3名
放射線治療品質管理士 4名
日本放射線治療専門放射線技師 4名
第1種放射線取扱主任者 5名

看護師3名
がん放射線療法看護認定看護師1名

集合写真

診療内容

1.強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy 以下IMRT)

 当院では原体照射法という方法でがんの部分にあわせて放射線をあてる治療方法を採用して優れた治療成績を以前より報告してまいりました。昨今では治療装置の進歩や計画用コンピュータの革新的な進歩によりIMRTと呼ばれる治療技術が治療に用いられるようになっています。IMRTは「究極の放射線治療」と呼ばれ複雑な形状の病変にたいしてより正確な放射線投与が可能になると同時に周辺の正常組織の放射線をきわめて少なくすることが可能になります。

【(下図)リニアックによる前立腺がんのIMRTのプラン。
5方向から濃淡をつけたビームの組み合わせで高精度な治療を行う。】

強度変調放射線治療

 当院にはトモセラピー(2006年6月より稼働)とシナジー(2012年6月より稼働)の2台の治療機をつかってIMRTを行っています。2017年度からトゥルービームでも同様の治療を開始しました。いずれも回転式IMRTで照射時間が早いのが特徴です。トゥルービームでは線量率が高いので治療時間がさらに短縮できます。またImage guided radiotherapyと呼ばれる治療機で撮影されるCT画像を利用した高精度の照合システムを持っており高い治療精度を実現しています。当院では計画のCT検査撮影後の1-2週程度で治療を開始しています。IMRTの対象疾患は頭頸部がん、前立腺がん、骨盤部のがん(肛門管がん、婦人科がん)、肉腫などです。治療が可能であるかは担当医の診察によりご確認下さい。

トモセラピー

 トモセラピーはIMRTの専用機で2017/4現在本邦に49台設置されていますが当院では日本で4番目、都道府県がん診療連携拠点病院で初めて導入しました。この装置の特徴としてリニアックでIMRTを行う場合に比較して治療計画、計画の検証、位置確認の精度、治療手順などが大幅に省力化されるため年間150人程度のIMRTを行っています。当院では頭頸部がんや骨盤へのIMRTを中心に治療を行っています。

トモセラピー

 トモセラピーはCT撮影装置を想起させるユニークな外観ですが、実際治療用の超高圧X線によるCT画像の撮影も行い正確な位置確認を行います。小型のX線発生装置が円周上を回転して一次コリメーターでスライス状に調整したビームを基準にして、マルチリーフコリメーターというピアノの鍵盤を思わせる金属ブロックの複雑な動きにより強度変調された緻密な放射線治療ビームを51方向から投射して複雑な高精度治療を行っていきます。また頭蓋内や頭頸部領域の転移に対して定位放射線治療(ピンポイント照射)も行います。

高精度治療可能な外部照射装置

外部照射装置シナジー

 2012/12に高精度放射線治療を行える外部照射装置シナジーを導入しました。「トモセラピー」同様、回転式IMRTで短時間での治療を可能とします。強度変調放射線治療は年間40名程度行っています。画像誘導装置で治療直前にCT画像取得し、1mm以内の精度で位置補正し治療します。この装置のCT撮影では腫瘍の呼吸移動をモニターできる4DCTモードの位置合わせ機能があり、肺への定位照射でより精度の高い治療が可能です。




トゥルービーム

 2017年には最新式治療機「トゥルービーム」(右図)を導入し、さらに多くの患者さんに高精度治療を提供できる体制となりました。この治療装置の特徴のひとつは、従来の装置にくらべ高速にX線ビーム出力を行うため高精度治療にかかる時間を短縮し、患者さんの負担を減らし効率的に治療を行える点です。定位放射線治療の需要の増加にあわせ定位照射をより短時間に行える利点があります。需要が増加している頭頸部がんなどへのIMRTも対応する予定です。


強度変調放射線治療の対象疾患
A 頭頸部がん

 上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん、頸部食道がん、鼻腔・副鼻腔がんを主な対象としています。これらの疾患は通常の放射線治療では視神経・視交叉、脳幹、脊髄、唾液腺(耳下腺)、下顎骨といった正常組織の放射線量の制限により治療が病変に十分に当てられない(治療効果が劣る)あるいは重度のダメージが残る(副作用が強い)という限界がありました。強度変調放射線治療を用いることで正確に十分量の放射線投与ができると同時に、正常組織の放射線を低く抑え安全な治療が可能になります。特に治療後の唾液分泌機能のダメージを大幅に減少させることは強度変調放射線治療の最大の利点です。これまでがんが治癒した後に患者さんを苦悩させていた重度の口の渇きを大幅に改善させることが可能になりました。
 頭頸部がんの強度変調放射線治療は治療計画が複雑であるため全てのがん専門病院でも十分に実施できていません。当院では2006/6より治療を開始し2016年末まで826例の治療を行っています。全治療機で強度変調放射線治療を行う体制になりより多くの患者さんへ良質な治療を提供できる様になりました。
 当院の経過観察中の患者さんでは唾液腺への放射線を減少させたことにより半年から1年経過した時点で唾液腺機能が明らかに改善されていることが確認されています。

【図:上咽頭がんの治療例】
脊髄神経を取り巻くようにがんが拡がっていましたが(下左図 赤矢印)病気の形に合わせた正確な放射線治療を行いました。赤い部分ががんをなおすための放射線が十分当たる部分で青い部分は放射線が30%程度あたる部分(上図)。脊髄(白矢印)、耳下腺(ピンク矢印)は青い表示より更に少ない放射線量に抑えられ、放射線のダメージが回避できています。治療後MRIでがんの部分は完全に消失しました(下右図 黄矢印)。

上咽頭がんの治療例

B 前立腺がん

 高齢化やPSA検診の浸透により前立腺がんの罹患率が上昇しており放射線治療を受ける患者さんが急増しています。強度変調放射線治療は前立腺の周囲の膀胱や直腸のダメージを最小化するため副作用を増やすことなく十分な放射線を前立腺がんの病変に投与することが可能になります。当院では限局型の前立腺がんのstage Cの患者さん、Gleason scoreの高値のstage Bの患者さんを主に対象としています。泌尿器科との共同診療で治療前にホルモン療法でPSAの数値をコントロールしてからIMRTを行っており行っています。なお手術後のPSA再発の放射線治療にもほぼ全例でIMRTを行っています。
 2016年末まで661名の患者さんへのIMRT治療を行いました。膀胱や直腸の形状により前立腺は体内で移動しますので同じ患者さんでも日々その位置が変わります。強度変調放射線治療は緻密な放射線の分布を作成して投与するため緻密な位置照合を行って初めて「正しく治療が行えた」といえます。

前立腺がん

左図 直腸内のガス(矢印)により放射線をあてる標的の位置(青点線)がずれてしまっているため、処置をおこないガスを排出後に適切な位置関係を確認して治療を行った(右図)】

 IMRT治療前に必ずCT画像を撮影し前立腺の位置だけでなく、膀胱・直腸との位置関係を毎回確認し高いレベルでの「正確な位置合わせ」を行っています。

C 転移性脳腫瘍に対する定位照射

 定位照射とは一回に多くの放射線を集中してかける方法です。短期間で治療が終わり病気の部分に放射線が集中するためより有効で副作用の少ない治療が可能になります。当院ではトモセラピーやリニアックを用い転移性脳腫瘍の定位照射を行っています。当院で行う脳の定位照射はガンマナイフで必要な局所麻酔薬を使った頭蓋骨のピン固定が不要で、痛みのないマスク固定です。治療毎に撮影する内蔵CTで1mm以下の誤差で正確な位置合わせ後に治療します。当院では3-5回に分割した方法で治療しますのでガンマナイフの対象を外れたサイズの大きな腫瘍や、病変位置で危険性が高いためガンマナイフが行えない患者さんも治療可能です。治療効果はガンマナイフによる治療と同等リニアックで保険負担の治療が可能です。

転移性脳腫瘍に対する定位照射

【true beamによる脳転移の定位照射の治療計画。
病巣にピンポイントに放射線を収集させることができます。】

D 肺腫瘍に対する定位照射

エレクタ社シナジーによる早期肺がんの定位照射

 定位照射とは、精度を高めて治療することで、一回に多くの放射線を病巣に集中してかける方法です。短期間で治療が終わり、病巣に放射線が集中するためより有効で副作用の少ない治療が可能になります。特に早期肺がんでは、手術に近い成績が報告されるようになっています。当院では、早期肺がんと転移性肺腫瘍を対象に定位照射を行っています。肺の定位照射の際は、患者さんの輪郭にあったクッションで固定し、治療毎に撮影する装置に内蔵されている確認CTでmm単位の精度で位置を合わせて治療を行います。毎回40-60分程度の治療時間になり、合計4回の治療を行います。治療中はほとんど副作用がでることはありません。早期肺がんと転移性肺腫瘍に対する定位照射はいずれも保険負担での治療が可能です。

右図 シナジーによる早期肺がんの定位照射。
病巣にピンポイントに放射線を収集させる。】


E 転移性脊椎腫瘍

 がんの進行にともない全身の骨の転移が患者さんの治療の大きな問題になってきます。がんの骨転移は強い痛みを伴うのみではなく、時に骨折による変形や腫瘍による圧迫から機能障害を起こすことがあります。骨の転移に対しては放射線治療が有効で60-70%には痛みを緩和する効果が期待でき、機能障害を予防し治療することも可能です。近年の抗癌剤治療の開発により骨の転移が生じてからも患者さんが長期生存することが多くなってきたため、骨転移に対して放射線治療を行っても再度症状や神経障害が再発するような場合が増えつつ有ります。
 CT画像による正確な位置合わせと、放射線の集中度を腫瘍に対してより高めることが新しい技術を使用することで可能になってきました。結果、従来では不可能であった以前にも放射線治療を行った部位への再治療がおこなえるようになりつつあります。

転移性脊椎腫瘍

【実際の線量分布図。は横断像、は矢状断像(縦わり)。元々白く映る骨が灰色に変化しているがんの部分を強い放射線が照射される範囲で(赤い部分)きれいに包み込んでいる。脊椎中央にある神経(脊髄)への照射線量が十分に低減されている。】

 このような技術を用いる事で安全な再治療が施行可能であると期待されています。


2.治療各論

 当院では多くの疾患にたいしての放射線治療を行っていますが当院で行われているユニークな治療を中心にいくつかを紹介します。

A 頭頸部がん

 頭頸部がんとはのど(咽頭・喉頭)、舌、口腔、鼻腔、副鼻腔などにできるがんの総称です。このうち放射線治療の対象になるのは扁平上皮がんというタイプの組織の病気が中心になります。頭頸部がんは病気のできる部位が発声、嚥下(水や食べ物を飲み込むこと)、呼吸機能などの重要な機能を担当する臓器であることに加え、顔やその近くにできる病気ですので病気や治療により美容的な問題が生じます。放射線治療は臓器機能を温存し、形態を維持して治療ができますので患者さんへの肉体的・精神的な負担が少ない治療を行うことができるという大きな特徴があります。
 病気のできる部位により放射線の効き目に違いがあることや、進行したがんで見つかることも多く化学療法を加えた治療で有効性を高くしたり、手術との併用療法でより確実性をましたりすることも時に必要です。当院では頭頸部外科との緊密な連携を行い病気の状態に合わせて適切な治療を行うようにチーム医療を積極的に行っています。
 当院では頭頸部がんに関して高精度な治療法の選択が可能であり、頭頸部がんの治療に関しては本邦でもトップレベルにあると自負しています。

B 子宮頸がん

 子宮がんには大きく分けて子宮頸がんと子宮体がんがあります。子宮頚がんの多くは扁平上皮がんというタイプのがん細胞からなるものが大半で、これは放射線治療に良く反応するので放射線治療のよい対象となります。子宮頚がん(扁平上皮癌)は外部照射と腔内照射(子宮内部から小線源という放射性物質を用い放射線をあてる治療法)の組み合わせから治療され放射線で病気を治すことが得意な病気の代表的なものです。
 早期がんでは手術と治療成績に差が無いと考えられています。一方手術では治すことの困難な進行がんでも他に転移がなければおよそ半数程度は放射線で治癒することができると考えられていますが、最近では化学療法の併用により予後不良の進行がんの治療成績もかなり改善してきています。
 当院では進行がんに対し当科入院で化学放射線療法を行い優れた治療効果を経験し、国内外での報告を数多く行っています。最近の当科の化学放射線療法による治療成績ではIII期中心の進行がん中心に5年生存率約8割程度の治療成績を報告しています。
 このように当院ではいろいろな治療の選択肢が可能なので患者さんの体力、年齢、希望や病気の状況を総合的に判断して放射線治療医、婦人科医と話し合った上で治療方針を決定するようにしています。

腔内照射の模式図

【腔内照射の模式図。子宮の中まで線源挿入用のごく細い筒(アプリケータ)を挿入し、その中に小線源を挿入し、がんの内部から集中的に病気を狙って放射線をかけることができる。】


画像誘導小線源治療

 以前は腫瘍や周囲の正常組織への放射線量はおおまかな評価しか出来ませんでしたが、2015年5月から導入した新規装置で画像誘導小線源治療(image-guided brachytherapy;IGRT)が可能になりました。投与される放射線量がCT画像上に立体的で正確に表示され、必要に応じて細かく調整することも可能になり、より正確で安全性の高い治療が可能になりました。

実際の子宮がん患者さんのMRIの画像

【実際の子宮がん患者さんのMRIの画像。左図が治療前、赤丸内の灰色の部位ががんであるが、治療後である右図では消失していることがわかります。】

子宮がん術後照射へのIMRTの適応

子宮がん術後照射へのIMRTの適応

 手術結果で再発リスクが高い場合術後には骨盤照射を追加します。一方で併用すると放射線治療の晩期毒性による腸閉塞、下腿浮腫、膀胱炎が増加する欠点が生じます。IMRTを用いることで余剰の放射線治療を減少でき、より安全な術後照射が可能になります。上図では赤く囲われたリンパ節領域に必要な量が集中して照射されている事が判ります。

C 前立腺がん

 近年前立腺がんと診断される方が増えています。採血でPSA(前立腺特異性抗原)を測定することにより発見率が上がったこと大きく影響していると考えられています。
 前立腺がんは放射線感受性が低いので多くの放射線をあてないとがんを抑えることが困難ですが膀胱、直腸には安全に放射線をかけられる限度があるため従来の方法では必要量の放射線を十分に投与することは困難でした。放射線治療装置の進歩や治療技術の向上により、放射線治療は近年有用な治療法として脚光を浴びています。
 放射線治療にも色々な種類があり、一般的には手術も適用可能な比較的早期の病変に対しては小線源治療が、比較的進行している場合は体外から放射線を病巣めがけて照射する外部照射が適用されます。
 小線源治療には低線量率と高線量率の二種類がありますが、当院では2006年8月から低線量率組織内照射装置を導入し治療を行っています。低線量率組織内照射法は、I-125(放射性ヨウ素)を密封した太さ約1mm、長さ約5mmほどの小線源を数十本前立腺内に針を使用して埋め込み、前立腺の内部から放射線を照射する治療法です。当院では、まず一泊入院で前立腺の大きさや形態などを検査し、必要な線源の量や適切な線源配置を割り出します。この結果に従って線源を用意し、実際の治療の時は3泊4日の入院で線源留置を行います。線源留置後は1年間はある程度の制約がありますが、ほとんど普通の生活が可能です。この方法は治療期間が短く、他の治療法に比べて副作用が少ないという利点があります。副作用としては排尿困難や残尿感、頻尿などがあります。
 外部照射は多くはもう少し進んだがんが対象になります。前述のIMRTの該当部分を参照ください。前立腺がんには手術や内分泌療法を含め多くの治療法がありますが、病気の状況や体の状態により最適な治療法は異なります。当院では前立腺がんの患者さんはまず泌尿器科を受診して頂き、必要な検査を行った上で最適な治療法を検討するシステムを取っています。

低線量率組織内照射の実例

【低線量率組織内照射の実例。前立腺の辺縁部に小線源を留置して内部から照射します。画像中央付近の白く写っているたくさんの粒状のものが小線源です。】

D その他

 食道がん、肺がん、乳がん、悪性リンパ腫の多数の症例で放射線治療を行っており、これらの治療件数も全国有数の実績を示しています。各科とのカンファレンスで治療方針を決定していきながら「標準的ながん治療」の理念の上に質の高い臨床を患者さんに提供することを常に心がけております。
 また集学的治療において放射線治療は非常に重要な役割を担っているのでJCOG,WJOG,JGOG,JROSGなどの臨床試験グループをはじめ厚生労働省、文部科学省の班研究などによる臨床研究にも積極的に参加協力しており、本邦でのエビデンス創出に可能な限り貢献しています。

外来診療

診療実績

原発部位別 新患照射実績(人数)
原発部位 2007
年度
2008
年度
2009
年度
2010
年度
2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
頭頸部 197 182 162 155 134 145 149 141 178
2 1 1 1 4 0 0 0 0
149 134 169 163 170 126 136 141 169
乳腺 181 173 168 160 172 186 190 186 199
食道 103 111 115 91 89 100 87 86 80
24 22 19 21 16 17 14 23 21
49 43 44 26 28 33 29 28 27
肝臓・膵臓・胆道 27 17 32 33 25 28 38 31 18
女性性器 53 63 56 72 41 42 46 53 53
泌尿器・男性性器 102 86 82 84 76 90 116 75 92
骨軟部 18 33 19 19 13 14 12 12 15
皮膚 1 2 3 1 0 0 0 0 0
小児腫瘍 0 0 0 0 0 0 0 0 0
血液 28 30 31 17 8 5 27 19 24
その他 10 11 16 16 24 27 23 24 24
計画数 1,372 1,415 1,379 1,349 1,402 1,240 1,416 1,338 1,546
新患者数 944 908 917 859 800 813 867 819 904
特殊治療(患者数)
  2007
年度
2008
年度
2009
年度
2010
年度
2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
術中照射 0 0 1 1 13 16 19 17 11
全身照射 4 9 5 5 4 1 0 2 0
定位放射線照射 40 22 22 19 22 17 21 26 27
強度変調放射線治療 79 127 126 121 157 146 192 186 188
小線源治療 37 25 23 19 26 20 12 13 10
腔内照射 19 23 27 28 18 14 14 14 17
IMRT件数
  2007
年度
2008
年度
2009
年度
2010
年度
2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
頭頚部 1686 1644 1708 1529 1944 2219 2891 3238 3360
前立腺 2165 2471 2527 2625 2485 2517 3155 2082 2455
その他 45 19 26 57 35 91 257 177 161
全件数 3896 4134 4261 4211 4464 4827 6303 5497 5976

件数

研究・学会活動

最近5年間の業績

2010年度 学会発表 54件 論文(英文10編、和文7編)
2011年度 学会発表 50件 論文(英文16編、和文6編)
2012年度 学会発表 38件 論文(英文9編 和文5編)
2013年度 学会発表 37件 論文(英文9編 和文2編)
2014年度 学会発表 37件 論文(英文6編 和文2編)
2015年度 論文(英文 8編 和文 2編)

基礎研究

厚生労働省がん研究助成金

12-13 放射線治療における臨床試験の体系化に関する研究
14-15 頭頸部がんに対する放射線化学療法の適応と有効性の評価に関する研究
16-12 放射線治療における臨床試験の体系化に関する研究班:安全管理と質の管理を含む
17-10 小線源放射線治療の評価と品質管理に関する研究
17-18 放射線治療期間の短縮に関する多施設共同臨床試験の確立に関する研究
20指-5 放射線治療を含む標準治療確立のための多施設共同研究
21分指-9-B「がん治療による口腔内合併症の予防法及び治療法の確立に関する研究

厚生労働科学研究費補助金

がん臨床研究事業 がん臨床-一般-018
放射線治療期間の短縮による治療法の有効性と安全性に関する研究
第三次対がん総合戦略研究事業 H19-3次がん-一般-038
がんの診療科データベースとJapanese National Cancer Database (JNCDB) の構築と運用

厚生労働科学研究委託費(革新的がん医療実用化研究事業)

H26-革新的がん-一般-052進行頭頚部がんに対する術後補助療法の標準治療確立のための多施設共同研究
H26-革新的がん-一般-090「頭頸部腫瘍に対する強度変調放射線治療の確立と標準化のための臨床研究」班

がん対策推進総合 研究事業(がん政策研究事業)

がん診療科データベースとJapanese National Cancer Database (JNCDB)の運用と他がん登録との連携H26-がん政策-一般-014

治験・臨床試験

T1-2N0M0 声門癌に対する放射線治療の加速照射法と標準分割照射 法のランダム化比較試験 JCOG0701
声門癌放射線治療後の急性粘膜炎および音声機能の変化に関与する遺伝子多型の解析研究JCOG0701-A1
臨床病期II/III 肛門管扁平上皮癌に対するS-1+MMC を同時併用する根治的化学放射線療法の臨床第I/U相試験 JCOG 0903
乳房温存療法の術後照射における短期全乳房照射法の安全性に関する多施設共同試験 JCOG0906
臨床病期II/III(T4 を除く)食道癌に対する根治的化学放射線療法 +/- 救済治療の第II 相試験 JCOG0909
上咽頭癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)の多施設共同第 II 相臨床試験JCOG1015
局所進行非小細胞肺がんに対する胸部放射線+TS-1+Cisplatin同時併用療法と胸部放射線+Vinorelbine+Cisplatin同時併用療法の無作為化第二相試験WJOG-5008L
前立腺癌に対するIMRT/IGRT併用寡分割照射法の第II相臨床試験
頸部食道癌に対する強度変調放射線治療( IMRT: Intensity Modulated Radiation Therapy)を用いた化学放射線療法の多施設共同第II相臨床試験JROSG12-1
日本人の頭頸部癌患者におけるCetuximabを含む治療の観察研究JROSG12-2
T1-2N0-1M0中咽頭癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)の多施設共同非ランダム化検証的試験JCOG1208

平成29年10月改訂

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