トップページ診療内容 > 診療部門紹介 > 遺伝子病理診断部

遺伝子病理診断部

診断業務の紹介(一般の方へ)

遺伝子病理診断部では三つの診断業務(病理組織診断細胞診断分子診断・腫瘍遺伝子診断)を行っています。それぞれの項目についてご紹介します。

病理組織診断

病理組織診断には以下の3つがあります。

1. 生検による組織診断

内視鏡でとった小さな組織について診断します。この診断内容が今後の治療法(手術するか?化学療法を選ぶか?経過観察でも大丈夫か?など)を決めるうえで参考となります。ただし、小さな組織のため診断がつかないこともあり、その場合には再度生検が行われます。

2. 手術での組織診断 

手術で切除された組織について診断します。具体的には、腫瘍の悪性度、腫瘍がどれくらい進行しているか(病期)、腫瘍がちゃんと取りきれているか、などについて評価します。この診断内容によって、さらに化学療法などの追加治療を行うかなどの治療方針が決められます。

3. 術中迅速診断

 手術中に採取された組織の一部について手術中の30分ほどの短時間で診断を行います。手術方針に関わることが術中迅速診断の対象となります。たとえば、腫瘍に最も近い部位のリンパ節を術中迅速診断で評価し、そこに腫瘍の転移があれば他のリンパ節も切除する、転移がなければそれ以上のリンパ節の切除は行わない、といった決定がなされます。
 組織診断ではまず組織を薄く切り、スライドグラスの上で細胞を色素で染め(染めないと細胞はほぼ透明です)、その後顕微鏡で細胞を観察します。正常組織ではそれぞれの役割をもった細胞が規則的に並んでいます。それに対して、がん組織の中ではいびつな形をしたがん細胞がまわりの正常組織を壊しながら勢いよく増殖します。胃がんの例を写真で示します。

目的のタンパク質だけを染める、免疫抗体法

免疫抗体法という、細胞内の特定のタンパク質だけを染める特殊な手法があります。例えばインスリンという、膵臓のランゲルハンス島にあり血糖値を下げるホルモンだけを染めることができます。細胞が持つたんぱく質の種類を調べることで、細胞の機能や性質、働きを推定することができます。この特殊な染色技術は今日がんの病理診断を行う上でなくてはならない技術となっています。本院では、本方法の開発当初から積極的に導入し、高度の技術と豊富な経験を有しています。現在も新たな展開、開発に力を入れています。


【腫瘍における筋肉分子の発現(筋肉を構成するタンパク質を茶色に染めています)】

細胞診断

痰や尿の中に剥がれ落ちてくる細胞や、婦人科などで組織表面をこすって採取した細胞、甲状腺や乳房のしこりを細い針で刺してとられた細胞を用いて、悪性かどうかの診断を行います。採取した細胞をスライドガラスに塗りつけ、色素で染色したのち顕微鏡で観察し、細胞の形や性状の違いからがん細胞かどうか判断します。


【子宮頸がん細胞】


【肺の小細胞がん細胞】


【悪性リンパ腫細胞】

迅速オンサイト細胞診(ROSE: rapid onsite evaluation)

 細胞診検査士や病理医が採取された細胞をただちに染色して、目的の細胞が適切な量取れているかどうかを判断し、主治医に助言しています。

 何が良いのでしょう? 穿刺し、病気の部分に穿刺針が到達しているようにみえても、病気の組織から目的の細胞が十分量吸引されないことがしばしばあります。細胞がとれているかいないかは、一週間後の結果が出るまでわかりません。もし取れていない場合、もう一度細胞をとることになります(そして再トライしても、とれるかどうかはわかりません)。穿刺したその場で、細胞がとれているかどうかを病理医が助言できれば、再検査の可能性を少なくすることができます。それがROSE(ローズ)のサービスです。これにより再検査の可能性を下げることができます。
 当院では、主治医が細胞検査室に組織を搬送し、細胞検査士あるいは病理医が迅速染色法で細胞を染めて判断しています。

分子診断・腫瘍遺伝子診断

 近年、がん研究は著しい進歩を遂げ、ある種類の分子異常をもつと特定の治療薬に対して非常に良く効く腫瘍があることが明らかとなりました。また軟部肉腫や白血病など、腫瘍のタイプに対応した特有の分子異常があることもわかってきました。この異常を調べることで腫瘍の分子診断に応用できます。
 当科では治療薬の効きに関連する分子異常や、診断に役立つタンパク発現異常、遺伝子異常を数多く検査しています。特に病理診断部門の機能を生かし、偽陰性(本当はあるはずの異常を陰性と報告する)を極力減らすことができるのが特徴です。また治療薬の選択に関わる検査を院内で検査することで、患者さんの臨床治験への速やかな登録を可能にしています。
 下は当院で解析可能な、代表的な検査項目です。

がんの種類と検査項目 検査の目的
肺がんのEGFR遺伝子変異 治療薬の選択
肺がんのALK融合遺伝子 治療薬の選択
肺がんのKRAS遺伝子変異 治療薬の選択
肺がんのROS1融合遺伝子 治療薬の選択
肺がんのMET遺伝子変異 治療薬の選択
肺がんのBRAF遺伝子変異 治療薬の選択
肺がんのPD-L1発現 治療薬の選択
大腸がんのKRAS遺伝子変異 治療薬の選択
大腸がんのNRAS遺伝子変異 治療薬の選択
大腸がんのBRAF遺伝子変異 予後因子、リンチ症候群のスクリーニング
胃がんのHER2遺伝子増幅 治療薬の選択
膵がんのKRAS遺伝子変異 膵がんの診断
乳がんのホルモン受容体(ER, PgR)発現 治療薬の選択
乳がんのHER2遺伝子増幅 治療薬の選択
乳がんのPD-L1発現 治療薬の選択
がん種横断的MSI検査、MMR検査(大腸がん、子宮がん、胃がん、小腸がん、尿路系がん、膵がんなど) 治療薬の選択、リンチ症候群のスクリーニング
軟部肉腫の融合遺伝子(EWS、SYT、CHOP等) 軟部肉腫の診断
軟部肉腫のMDM2遺伝子増幅 軟部肉腫の診断
悪性リンパ腫の融合遺伝子 悪性リンパ腫の診断
白血病の融合遺伝子 白血病の診断
NCCオンコパネルシステム※# 治療薬の選択
FoundationOne CDxがんゲノムプロファイリング※# 治療薬の選択

外注検査、# 詳細はがんゲノム外来


蛍光を使って遺伝子の数の異常を調べる方法(FISH法)。これは乳がん細胞で、青い部分が細胞の核、赤い点がHER2遺伝子を示します。正常細胞では小さな赤い点が2個みられるのみですが、この乳がん細胞は赤い点の塊り(多数の点の集まり)がみられ、HER2遺伝子が「増幅」しているのがわかります。

遺伝子の塩基配列を解読する検査(サンガー法)。一つ一つの波はDNAの塩基(A,T,G,C)を表します。

令和元年11月改訂

このページのトップへ