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骨転移診療チームのご紹介

骨転移診療チームメンバーよりごあいさつ

整形外科部 医長 M田 俊介

M田 俊介
整形外科部
 医長
M田 俊介
(はまだ しゅんすけ)

 近年のがん治療における薬物療法の進歩は目覚ましく、たとえ進行したがんであっても長い生命予後が期待できるようになりました。一方で癌の進行とともに脊椎や上下肢の骨に転移をきたし、骨転移による痛み・病的骨折・脊髄麻痺などのため運動機能が著しく損なわれることがあります。このような運動器の障害は患者さんのQOL(生活の質)を損なうだけでなく、ADL(日常生活動作)を著しく低下させるために通院ができなくなるなど薬物療法の適応自体にも影響を与えます。そのため骨転移に対して多くの診療科が関わり集学的治療を行うことで運動機能の維持をケアすることが求められています。
 整形外科部は開設以降これらの骨転移に対して積極的治療介入を行っています。2017年7月より脊椎外科医が常勤となり脊椎転移手術が可能となり、放射線治療部による脊椎定位照射や追加照射も選択的に実施可能となっています。そこでこれらの多岐にわたる骨転移の治療戦略の情報共有を目的として2019年5月より骨転移診療チームを立ち上げました。整形外科・脊椎外科・放射線科・リハビリテーション科・緩和ケア科などのチーム内で情報共有を行い、運動器障害に対して最適な治療選択を行うことで多くのがん診療の運動器ケアを行っていきます。 


脳神経外科 医長 灰本 章一

灰本 章一
脳神経外科
医長
灰本 章一
(はいもと しょういち)

 がんが脊椎に転移しますと、脊椎が脆弱化して骨折を起こし、また、脊椎の中を通る神経(脊髄)が圧迫されます。これにより、強い痛みや神経麻痺を生じ、患者さんの運動機能が著しく損なわれるだけでなく、がんの薬物療法を受けれなくなってしまいます。脊椎転移の患者さんの運動機能を維持するために重要なことは、早期に診断して治療を開始することと、手術と放射線治療を適切に組み合わせて治療することです。各診療科の専門医が迅速な連携をとることで、早期診断・治療を実現できるように努めています。 脊椎転移の手術を受けられる患者さんは、手術から回復された後すぐに放射線治療やがんの薬物療法を受けていただくことになります。このため、患者さんの身体への負担が少ない手術を行うことが大変重要と考えています。当院では、最新の脊椎手術機器(手術用顕微鏡、手術用ナビゲーションシステム、神経モニタリング)を駆使し、また、メディカルスタッフ(手術室看護師、臨床工学技士)と専門チームを構築して、安全で侵襲の少ない手術を行っています。


放射線治療部 医長 田中 寛

田中 寛
放射線治療部
医長
田中 寛
(たなか ひろし)

 骨転移の治療の目的は痛みのコントロール、運動機能の保護、骨折の予防など多岐に渡ります。そのため内科医、緩和ケア医、画像診断医、そして放射線治療医と多くの専門家を必要とし、専門家同士がお互いの治療の内容を理解し総合的に最良の治療内容を判断していきます。患者さんの生活を維持し、納得して最良の治療法を選んでいただけるように他部門との連携を大切にして診療を行なっております。同時に最先端の治療機器と技術を用いて新しい治療(定位放射線治療-いわゆるピンポイント照射)も安全に受けていただけるよう日々努力しております。


緩和ケア部 部長 下山 理史

下山理史
緩和ケア部
部長
下山 理史
(しもやま さとふみ)

 骨転移に伴う様々な苦痛を和らげ、軽くするお手伝いをすることで、みなさんが自分らしい生活を送ることができるように支援させていただきます。もちろん、痛くて治療が受けられない場合などには治療を受けやすくするために痛みを楽にする工夫等を一緒に考えます。


リハビリテーション部 部長 吉田 雅博

吉田 雅博
リハビリテーション部
部長
吉田 雅博
(よしだ まさひろ)

 運動器の障害によって介護・介助が必要な状態、またそうなるリスクが高くなっている状態のことをロコモティブシンドロームと言います。がん自体あるいはがんの治療によって運動器の障害が起き、移動機能が低下した状態を「がんロコモ」と言います。「がんロコモ」により移動機能が低下すると、日常生活動作に支障をきたし社会参加が制限されます。通院が困難となり、治療の継続ができなくなり、また介護が必要となるリスクが高くなります。 そこで、当院では入院してリハビリを開始する場合、ロコモチェックを行って運動能力を測定し、個人の能力に合わせたリハビリメニューを作成して実施しています。例えば骨転移に関しては、脊椎転移や大腿骨転移で手術を受ける患者さん、骨折予防のために放射線治療を受ける患者さん、骨転移による痛みを伴い思うように動けない緩和的治療の患者さんにもリハビリを行っています。また自宅で出来るロコモ体操を退院後も継続してリハビリ行うよう指導しています。


放射線診断部 医長 女屋 博昭

吉田 雅博
放射線診断部
医長
女屋 博昭
(おなや ひろあき)

 X線撮影、CTやMRIなどの画像診断の検査を適切に用い、正確な診断に努めています。直接患者さんとお会いする機会は少ないですが、治療に直結する正確で客観的な画像診断情報を、チームで共有できるよう黒子的な役割を担っていきます。


診療内容の詳細について

脊椎転移に対する定位照射

癌治療が発展した結果骨転移などの遠隔転移が生じてからの患者さんの予後が長くなってきました。骨転移の痛みを和らげるため、または脊椎の骨転移が増悪した結果生じる脊髄圧迫症の治療を行うために放射線治療を行います。多くの患者さんは一度の放射線治療で良くなりますが、治療が十分に効かない場合や再初する場合があります。従来一度放射線治療を行った場所には再度の治療が不可能と言われておりましたが、定位放射線治療(図1)の技術を用いることで再度の治療が可能になりました。当院では既に放射線治療が行われた後の病変でも、症状の再初や増悪が認められた場合手術も組み合わせながら積極的に定位放射線治療にて再治療を行なっております。定位放射線治療で治療された骨転移は80-90%の確率で制御されます。

図1 胸椎転移に対する定位照射
図1 胸椎転移に対する定位照射


脊椎転移に対する除圧固定術

最もがんが骨転移しやすい場所は脊椎です。当院では、後頭骨から頚椎、胸椎、腰椎、仙椎まで、全ての脊椎に対する手術に対応しています。脊椎転移の患者さんの運動機能を維持するために最も重要なことは、手術を行うタイミングを逸しないことです。なぜなら、一度麻痺してしまった神経は手術を行っても回復が良くないからです。当院では、脊髄が圧迫されて神経が麻痺しそうな場合(切迫麻痺)に迅速に手術を行うようにしており、良好な治療成績を得ています。
以下の場合に、手術の適応になります。
@ 骨折によって脊椎が不安定になっている
A 放射線治療が効きにくいがん種であり、脊髄が圧迫されている
B 既に放射線治療を行っているが、がんが再発して脊髄が圧迫されている

脊髄の圧迫を取り除き、脊椎をボルトで固定する除圧固定術(図2)が最も多く行われる手術 です。当院では脊椎転移に対する手術を年間約40-50件行っており、全国的にみて症例が多い施設です。 具体的には、手術用顕微鏡を用いてがんを脊髄から丁寧に剥がして摘出し、手術用ナビゲーションシステム(画像誘導技術)を用いて正確に脊椎にボルトを打ち込み固定します。患者さんの身体への侵襲を最小限にしてこのような手術を行うことが可能であり、手術の翌日からリハビリが開始でき、手術後1-2週間で放射線治療やがんの薬物療法を行うことができます。また、手術時の出血が多くなることが予想される場合は、手術の前日にカテーテル治療の専門医が腫瘍血管塞栓術(血管内カテーテルを用いて腫瘍を栄養する血管を止める治療法)を行います。全国の限られた施設でしか行っていない治療法ですが、当院では積極的に塞栓術を行っており、手術時に輸血が必要になることはほとんどありません。

図2:胸椎転移に対する除圧固定術
図2:胸椎転移に対する除圧固定術


がんロコモティブシンドローム(がんロコモ)

運動器の障害によって介護・介助が必要な状態、またそうなるリスクが高くなっている状態のことをロコモティブシンドロームと言います。がん自体あるいはがんの治療によって運動器の障害が起き、移動機能が低下した状態を「がんロコモ」と言います。
がん自体あるいはがんの治療によって、がん患者の運動器に下記の問題が生じます。
(1) がんによる運動器の問題
骨転移(痛み・骨折・麻痺を生じる)、骨や筋肉などに発生するがんなど
(2) がん治療による運動器の問題
骨・関節障害、筋力低下や骨粗鬆症、神経障害など
(3) がんと併存する運動器疾患の進行
骨粗鬆症、変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症など

「がんロコモ」により移動機能が低下すると、日常生活動作に支障をきたし社会参加が制限されます。通院が困難となり、治療の継続ができなくなります。また介護が必要となるリスクが高くなります。
そこで、当院では入院してリハビリを開始する場合、ロコモチェックを行って運動能力を測定します。判定結果によって、個人の能力に合わせたリハビリメニューを作成して実施します。また自宅で出来るロコモ体操も行いますので、入院中だけではなく、退院後も継続してリハビリ行うよう指導しています。

がんでも歩こう! キャンサージャーニーを豊かにする運動のすすめ

発行元 日経メディカル開発
編著 大島和也、岩瀬哲
監修 ロコモチャレンジ!推進協議会がんロコモワーキンググループ

がんでも歩こう!
キャンサージャーニーを豊かにする運動のすすめ がんに罹患したり、がんの根治が困難となった時、多くの方が体を動かしたりリハビリするという意識や意欲からどうしても遠ざかってしまいます。しかし近年がんの医療が進歩するとともに、がんと共存することが求められています。そのような時こそ運動機能のリハビリを行い、ADL(日常生活動作)を維持もしくは改善し、貴重なこの毎日をいきいきと楽しく過ごすことに意識を向けて欲しいと思っています。そこで「がんロコモ」に関連する一冊の本を紹介します。ロコモチャレンジ!推進協議会がんロコモワーキンググループ監修の「がんでも歩こう!」です。がん患者さんがより快適に幸せに過ごすための運動機能を維持する対策が多く紹介されています。リハビリや運動と言うと大変なことで危ないのではと思いがちですが、このような機能維持訓練は外来での待ち時間や自宅でテレビをみている間にも可能で、小さな努力の積み重ねが身体の健康やがんの治療管理を改善させると期待されています。  


大腿近位部骨転移に対する腫瘍用人工骨頭置換術

大腿骨近位部(頸部〜転子部)は癌が骨転移しやすい場所です。歩行の時に体重を支える重要な場所であるため、骨転移を行うことで骨の強度が弱くなると荷重時痛(体重をかけると痛い)や下肢の運動痛(動かすと痛い)が出現します。進行するとしばしば病的骨折(弱くて折れしまう)を生じ、歩行ができなくなる方もいます。転移を生じた部位の積極的な手術治療はその方の生命予後には大きく関わらないことが多いと言われています。その一方で歩行できるかどうか、痛みがあるかないかは、患者さんの生活の質(QOL)を大きく左右するものです。これらが大きく損なわれた場合はその後の癌治療に影響を与えることもあります。そのため大腿骨近位部の骨転移で痛みを伴い折れそうな場合(切迫骨折)や、折れてしまった場合(病的骨折)には、当科では積極的に腫瘍を切除して金属で補填する手術(腫瘍用人工骨頭置換術)を行います。1-2週間で歩行練習が可能で、1-2か月で杖歩行が可能となります。多くのがん診療拠点病院では行うことができない困難な手術のため、連携をとって当院で手術を行っています。

図3:大腿骨近位骨転移に対する腫瘍用人工骨頭置換術
図3:大腿骨近位骨転移に対する腫瘍用人工骨頭置換術


初診時原発不明がん骨転移に対するCTガイド下針生検

40歳以上の方の骨に不明瞭な溶骨性変化(骨が溶けている状態)がみられた場合、どこかにがんがあって骨に転移した状態である可能性があります。このような患者さんが多く当科を受診されます。骨に転移しやすいがんとして@肺癌A乳癌B前立腺癌があります。しかし骨転移を初発症状として整形外科等を受診する場合には、@肺癌A前立腺癌や腎癌の泌尿器科癌B悪性リンパ腫や多発性骨髄腫の血液疾患を念頭において精査を進める必要があります。原発巣(最初にがんが発生したところ)がどこかが確定しないと主科(治療を中心になって行う診療科)が決まらないため、多くの施設や診療科を受診され不安を抱えたまま受診される患者さんをしばしば経験します。原発がん検索で最も有用な精密検査は全身のCT検査と血液検査(腫瘍マーカーなど)です。しかしその精査で原発を疑わせる所見がない場合には、当科では早い段階で積極的に骨転移の組織採取(多くの場合はCTガイド下針生検)を行っています(図4)。その理由には@原発巣が微小なため画像で同定できないことがあるA生検が必須であるがんが存在する(悪性リンパ腫や原発性悪性骨腫瘍など)B詳細な病理診断(免疫組織染色や遺伝子診断)を行うことで原発部位の推測ができることが挙げられます。また最終的に原発巣が決まらない場合あっても、その病理診断によっては治療が有効な場合があります。

図4:CTガイド下針生検(Tsukushi S Arch Orthop Trauma Surg. 2010 より引用)
図4:CTガイド下針生検(Tsukushi S Arch Orthop Trauma Surg. 2010 より引用)


令和2年8月改訂

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