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第3回「夏休み読書感想文コンクール」結果発表

愛知県がんセンター緩和ケアセンター主催 第3回「夏休み読書感想文コンクール」の結果が出ました。

がん教育の一環として、令和元年度から始めた読書感想文コンクールには、本年、学生部門、一般部門合わせて9名の応募がありました。昨年に引き続き新型コロナ禍で「かのこ文庫」が休業状態のため、本院図書館から一般の方への貸し出し協力を得ました。緩和ケアチーム七名のうちアシスタントとして応募者の実名把握をしている小森以外の6名と図書館司書1名による厳正な審査が行われました。

講評

 どの応募作品も、『母のがん』で親密な読書を経験されたことが伝わる素晴らしいものでした。親密な読書とは、この本は自分のために書かれたと思わせてくれるような、この本は自分のことを書いたのだと思わせるような、あるいはこの本は自分が書いた(ないし書くべきであった)と思わせてくれるような書物との出会いです。それは人生の意味とも言えるでしょう。名作が必ずしも親密な読書を提供しないのは、読者の人生と本との間に共鳴が起こらないからです。

 今回、一般部門で金賞を受賞された、あがさんの作品は審査員から圧倒的評価を受けました。それはおそらく、誰もが「チーム医療」の内実がここにありありと記されていると感じたからです。「チーム医療」は時代の要請であり、患者さんがその中心にいることは自明です。しかし、その患者さんが自分のパートの役割は何かと自問しているところを想像することは少ないのではないでしょうか。「研究者」という言葉も印象的です。「医療者」ではない。
 これを読んで私がすぐに連想したのは、ある病院の事務局長さんの話です。そこは「ホスピスのこころを大切にする病院」という理念を抱えています。「ホスピスのこころとは弱さに仕えるこころである」。「日ごろ”表舞台”に立つことが少ないとかく卑屈になりがち」と思われる事務職がそこでは少しもそのようなことはない。なぜなら「自らの仕事の先に笑顔を浮かべる患者さんの姿や生き生きと働く臨床現場のスタッフの姿を見て」いるから、「それにつながる自らの仕事に誇りを持って」いるからだそうです。
 「そう思えるのは『ホスピスのこころ』があるからだと思っています。『ホスピスのこころ』は、時に割り符のようです。専門職も事務職もここに集うスタッフのみんなが、心の中に『ホスピスのこころ』という割り符を持っています。そしてそれを合わせると大きな一つの『ホスピスのこころ』になります。どれ一つ欠けてもいけません。私たち一人一人に課題を示して働く意味を与えてくれます。そして不思議なことにその割り符は、持つ者が増えることを拒みません。どんどん大きくなります」(前野宏『ホスピスのこころを大切にする病院』p.210-212)
 パズルと割り符。本院の患者さんたちは、パズルにどんなタイトルをつけているのだろう。
 最終段落、ロビーで人々を眺めるあがさん、まるで映画の一場面のようです。彼女の感想文を読んだ、誰かの言葉。「これは生きたエピソードですね」。私もまさにその通りだと思います。手前味噌ですが、それは『母のがん』が生きたテキストだからでしょう。これは、トップダウンの「教え育てる」がん教育ではありません。当事者、学ぶことを想定されている側の人たちから、それを提供する人たちが「教え育てられる」がん教育です。これとて、言うだけなら簡単なことです。今回の受賞作品を読んで、私たちはどのように変わることができるのか。

(小森 康永 2021.9.13 )

2021 学生部門 金賞

 僕が『母のがん』を読んで一番印象に残ったページは、72ページ、母が自分の意思で増やした抗がん剤の副作用で苦しんでいるシーンです。今まででさえ辛かったのに、がんを治したい一心で、さらに抗がん剤を増やすとは、強い人なんだなと印象に残りました。
 そのシーンで作者は、母が辛いとわかっていても決めたことなので、その意見を尊重し変えることはできず、「強くなるしかなった」と決意しているが、母のあまりの苦しさに途中で諦めた方が良いのではないかと、母への本当の救いはどちらであるかという苦悩の選択を考えていたと思いました。
 僕は母が辛い抗がん剤の副作用に打ち勝つための精神の保ち方に興味を持ちました。僕はこの作品を読むまで、病気に打ち勝とうとしている人はとにかく生きたいという精神の保ち方だと思っていましたが、「あとがき」に書いてあるように、母は喫煙し続けたことを後悔し、「タバコに打ち勝ってやる」つまり、過去の自分の過ちに打ち勝つという一途な決意をしており、極限の状態に達しながらも、このような精神の保ち方もあるということを知ることができました。
 僕はこのシーンから、病気と戦うとなった時に精神面で負けないために精神の軸となるものを見つけることが大切だということを発見しました。母が低い生存確率から助かったのも、過去の自分の過ちに打ち勝つといった精神の軸があったから辛い時に頑張る気力をくれたり、治すための行動力になったのだと思います。
 僕はこのことから、自分が病気などの辛い状況になった時に、自分で精神の軸となるものを見つけることはもちろん、知人がそのような状況になってしまったら、その人に寄り添い、一緒に見つけていこうと思いました。
(高一、山本武蔵)

第3回「夏休み読書感想文コンクール」結果発表
(p72)

2021 一般部門 金賞

 私は「パズル」(p.66-67)の話が印象深く、好きだ。作者は、待合室のジグソー「パズル」を介して、こう伝えているように思う。「身近な人も、見知らぬ誰かも、自分のパートで役割を担い、あなたの闘病に関わっている。一緒に、手持ちのピースを一つずつ積み上げて目標に向かって進んでいる」
 私はがん患者だ。家族は愛情のピースで私を支え、研究者は、知恵のピースで治療法を確立し、それぞれのパートを担っている。では、私のパートはどんな役割を担ってる?私の持っているピースは何だろう?
 治療を続けていると、幾度も、心身ともにぼろ雑巾になったような、嫌で嫌で堪らない毎日に沈み込んでしまうことがある。でも、記憶の中から、自分を力づける出来事を探し、迷い、一喜一憂しながら、少しずつ、なんとか、自分を立て直してきた。まるでパズルを組み立てるように。きっと私のパートの役割は、自分に上を向かせ、自身を次の一歩に進ませることなのだ。私に詰まっている出来事や派生する思いは、そのための大切なピース。嫌な記憶も、大切な一片なんだと思う。
 検査結果に落ち込むと、私は、ロビーの椅子でぼんやり行き交う人々を眺める。ここにいる人のほとんどが、がん患者か家族で、不安に囚われている人も多いはず。普通に振る舞う彼らを見てると、一人一人に、大丈夫!この先も、いいことがあるはずだよ、と無言の声を掛けている。そして私も、何とかなるさ、とばかりに立ち上がれる。「パズル」を読んだ今は、見知らぬ彼らが、一緒に進む仲間に見える。この出来事は、かけがえのないピースの一つだと、実感できる。毎日には、仲間と出来事が詰まっている。そんな日々を慈しみながら、身近な人と、見知らぬ誰かと「一緒に。小さな1ピースずつ」私は目標に向かって進んでいきたい。
(あが)

第3回「夏休み読書感想文コンクール」結果発表
(p66)

2021 一般部門 銀賞

 洋の東西を問わず重篤な病を抱え混乱する患者とその家族の姿は同じなのだと実感。物語の前半は現実を受け入れようと努力する子供達の様子、母、バーバラさんの苦悩。その後、治療が始まると患者本人の肉体的な辛さや精神力の崩壊。それは家族を巻き込み、どんどん悲惨な状況になっていきました。
 私自身が現在治療中のがん患者のため、患者本人の気持ちは過去の自分を振り返り、容易に想像することができました。そして肉体的苦痛の時に精神の安定を維持することは至難のことでした。辛い治療のあと、幸いなことにバーバラさんはがんを克服することができました、ご本人の強固な精神力とご家族の深い愛情に支えられて。その後住み慣れた場所を離れ、新天地での新しい生活もスタートさせました、素晴らしい展開と思います。
 私はこの本の中で一番印象深いページとして104ページを選びました。その理由は、何の変哲も無い家族四人のごくごく普通のポートレイトのような絵だから。皆、穏やかな笑顔で苦しい闘病の日々があったことを忘れさせてくれます。そこには、死について語る物語が希望を語るものになり、と記されています。作者本人でさえ驚いていると。多分やるべきことをやったという思いが心を満たしているのでしょう。
 私は、少ない可能性であったとしても病と正面から向き合い取り組んだ結果として、治療後にこのような平穏な家族の姿になっていると思います。積極的な治療が常に正当で、治療拒否が間違いということではなく、本人が望んだ結論が治療であったなら、それを実行できたことが幸せだったと思います。
 人生は平凡な日々の積み重ね、コロナ禍の今日、一層このことを痛感致します。たとえ病を得たとしても毎日のささやかな幸せに感謝をし、笑顔で過ごせたならば、これ以上の喜びはないのかもしれません。
 私は最後に一つ願います。全てのがんという病気が治療可能なものになって欲しい。
(加藤美穂)

第3回「夏休み読書感想文コンクール」結果発表
(p104)

2021 一般部門 銅賞

 母さんをピエロに仕立て、深刻にならないよう一目で読み取れるよう書かれていて、目を見張りました。
 副作用で苦しんでいる不安な気持ちや恐ろしさを一本の綱を渡ることで表現しています。
 同じ副作用にくじけて疲れ、考えるのも疲れ果ててしまう現状です。
 可能性を信じて治療している今、「母さん」は私そのものです。
 受け入れることで生きていくしかないのです。
 深刻な病に患者や家族の生活が一変し、再発、転移、腫瘍マーカーの上昇で不安な毎日が多くなる中、主治医の先生、看護師、薬剤師さん、そして家族に支えて頂き、不安な時は『母のがん』をバイブルに乗り越えていきたいと思っています。
(永田幸子)

第3回「夏休み読書感想文コンクール」結果発表
(p60)

緩和ケアセンター主催第3回夏休み読書感想文コンクールの詳細

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