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がん情報・対策研究分野

研究テーマ紹介(一般の方向け)

研究活動の概要

  今や日本人の2人に1人が生涯のうちにがんに罹るようになりました。私たち、がん情報・対策研究分野では、国内でがんと診断されたすべての患者さんの情報を集める「全国がん登録」のデータを元に、どこで、どんな人が、どんながんに罹ったかを分析、記録する「記述疫学※研究」を行っています。がんに罹る状況をモニターし、重点を置くべき検診は何か、予防法は適切かなど、がん対策の問題点を見つけると同時に、がん発生のメカニズムを研究する分野への課題の設定も行っています。
※疫学とは 個人ではなく、集団を対象に病気の発生原因や頻度、予防法などを研究すること

「がん登録」について

 私たちががんの発生状況を分析するにあたって重要な役割を果たすのが「がん登録」です。 2016年1月から、がんと診断された人のデータは、全国どこの医療機関で診断を受けても、「全国がん登録データベース」で管理されています。愛知県では全国に先駆け、1962年から県内すべてのがん患者さんについて、がんが見つかった経緯や、治療法、その後の経過に関する情報を収集しています。がんが見つかった経緯を分析することは検診の普及率とその重要性を明らかにすることにつながり、患者さんの地理的な分布からは、その地域の生活習慣に加え、都市部と郡部の違いや経済的格差など様々な要因によるがんへの影響を見ることができます。また新たな予防策による患者数の増減や、治療法の改善による生存率の変化を長期的に見ることは、予防や治療の効果の検証につながっています。
 なお、愛知県のがん患者さんの情報は、報告書「愛知県のがん登録」として毎年まとめられています。
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kenkotaisaku/0000002532.html

研究テーマ

 がん情報・対策研究分野での研究のテーマについて、伊藤秀美分野長に聞きました。

Q)がん患者さんの情報を分析することで具体的にどんなことがわかるのでしょうか。

A)私たちの研究では、がん登録の情報に社会状況の変化などを加えて、発生するがんの種類や患者数の変化を長期的にモニターし、分析しています。例えば肺がんのリスク要因であるタバコは、1960年代からフィルター付きのものが普及しました。これにより気管支に近いところにできる扁平上皮がんは減りましたが、肺のもっと深いところで起きる肺腺がんに罹る率は逆に高くなっていることが2000年代に入ってわかってきました(図1)。長くがんの発生状況のデータを蓄積し、分析してきた結果、肺がんの予防法を見直す必要性を感じると同時に、今後も肺がん予防をモニターしていく重要性を感じました。

研究テーマ紹介(一般の方向け)

【図1】

Q)ここでの研究成果はどのように自治体のがん対策に役立っていくのでしょうか?

A)愛知県が、自治体として取り組むべき課題は、施設の整備に加え、検診の充実、がん予防についての教育など様々ありますが、限りある予算でどんながん対策をすれば、がんにかかる人やがんで亡くなる人を効果的に減らせるのか、力を入れて取り組むべき課題は何であるかを示したいと考えています。2006年から2008年に初期の前立腺がんと診断された高齢の患者さんを分析したところ、手術やホルモン治療をした患者さんと、経過観察のみで治療をしなかった患者さんとの間で、5年生存率に差がないという研究結果が得られています(図2)

研究テーマ紹介(一般の方向け)

【図2】

 こうした結果は、患者さんの無用な負担を減らすとともに、検診のあり方を見直し、医療費を削減することにもつながります。治療のあり方はもちろん、行政のがん対策を見直すきっかけになると考えています。
 私たちの研究分野では、がんに罹る人を減らすために、病院で治療を始める前にできることに重点を置き、愛知県とも協力して地域のがん対策を発展させることを目標としています。

目指すもの

 私たちは、愛知県がん登録でのより精度の高い情報収集に向けた支援をしながら、愛知県の実情にあったがんの予防、検診、治療の実現に貢献したいと考えています。
 愛知県や国内外のがん登録に加え、診療の詳しい情報、人口動態調査や国勢調査などの公的データを広く集めたビッグデータを解析し、愛知県のがん発生の特徴をより明らかにすることで、県独自のがん対策の構築に寄与することを目指しています。

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