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がん情報・対策研究分野

研究テーマ紹介(専門家向け)

我々は、世界、日本の地域がん登録データを用いた記述疫学研究に取り組んでいます。ここにご紹介するテーマはほんの一部です。それぞれ研究者が興味を持ったトピックについて、適切な統計手法を用いて地域がん登録データを解析しています。

前立腺がん治療に過剰治療は存在するか?

 超高齢化時代を迎え、高齢者のがん患者数は増加しています。その中で、前立腺がんは75歳以上の高齢者の男性がかかる第3位のがんです。低リスクの前立腺がん患者に対し治療しない経過観察という選択は、医療費の削減や治療による副作用を考慮すると妥当ですが、日本においては十分に検討されていません。今回ご紹介する研究では、地域がん登録データを活用し、高齢者の前立腺がんの過剰治療の可能性について評価しました。
 研究の対象者は、MCIJにおいて生存率を推計するのに利用された都道府県がん登録に登録されている、2006-2008年診断の前立腺患者48,782人で、日本人口の33%をカバーするデータです。進行度、分化度、治療における欠損値は、多重代入法で補完しました。5年相対生存率(Edere II法)で算出し、5年相対生存率が100%以上であった場合、前立腺がんに関連する過剰死亡がないと定義しました。
 診断時年齢を3つのグループ(余命10年以上の75歳未満、余命5年以上10年未満の75歳以上80歳未満、余命5年未満の80歳以上)に分けて、それぞれ進行度別限局、領域、遠隔転移)に5年相対生存率を示しました。領域、遠隔転移の前立腺がん患者の生存率はどの年代も100%を下回っているのに対し、限局ではどの年代でも100%を超えていました(下図)。

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 そこで、限局前立腺がんに対象をしぼって、年齢グループ毎に、積極的治療をしたグループ(治癒的切除とホルモン療法)と経過観察のみで治療をしていないグループに分けて、5年相対生存率を算出しました。どの年齢グループにおいても、限局前立腺がんでは、治療をしてもしなくても、5年相対生存率は100%を上回っていました。また、経過観察のみの80歳以上の限局前立腺がん患者では、分化度によらず、5年相対生存率は100%を上回っていました(下図)。

研究テーマ紹介(専門家向け)

 80歳未満の前立腺がん患者については、余命を考えると、5年以上の観察期間が必要ですので、進行度が限局であっても、過剰死亡がないと結論づけられませんが、本研究の結果から、80歳以上の限局前立腺がん患者では治療しなくても過剰死亡がないことが分かりました。本研究の対象者で80歳以上の限局前立腺がん患者は2963名で、そのうち、252名(8.5%)が治癒的切除を、1478名(49.8%)がホルモン療法を受けていたことを考えると、少なくとも、80歳以上の限局前立腺がん患者58.3%は過剰治療を受けていた可能性が示唆されました。

【出典】
Masaoka H, Ito H, Yokomizo A, Eto M, Matsuo K. Potential overtreatment among men aged 80 years and older with localized prostate cancer in Japan. Cancer Sci. 2017; 108(8): 1673-80.

たばこ消費量と肺がん発生との関係

 図1は、全国9府県の地域がん登録のデータを元に、男性の肺がん罹患率(発生率)のトレンドを分析したものです。扁平上皮がんにかかる患者が減少し、腺がんにかかる患者さんが増加しているのが分かります。

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 さらに詳しく見ていくと、肺がん罹患率は人口の高齢化の影響を除くと、92年をピークに減少していたことが明らかになりました(図2)。

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 これは、フィルターのないたばこの使用が1960年代にフィルター付きたばこに置き換わったことにより、扁平上皮がんが1990年代初めに大きく減少に転じたことによります(図3)。

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 一方、フィルター付きたばこは1960年代から急激に市場に出回り普及しましたが、1970年代半ばからたばこ消費量全体の減少によりその消費量が減少しました。このため、フィルター付きたばこが原因で起きる肺腺がんの罹患率は1998年まで増加していたトレンドから、横ばいに転じました(図4)。

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 このように地域がん登録データは、がんの発生の特徴を分析し、モニタリングする手段として、大変重要です。

【出典】
Ito H, et al. Nonfilter and filter cigarette consumption and the incidence of lung cancer by histological type in Japan and the United States: analysis of 30-year data from population-based cancer registries. Int J Cancer. 2011;128(8):1918-28.

愛知県がん登録情報の活用

 我々は、精度向上のため愛知県がん登録を支援し、またその情報を活用しています。愛知県のがんの把握のみならず、下記のとおり、様々な共同研究にも積極的に参加しています。

  • 全国のがん患者数を推計するため、厚生労働科学研究費に基づく研究活動の一環として情報を提供し、2015年診断のがん罹患モニタリング推計に利用されています(全国がん罹患モニタリング集計:国立がん研究センターより公表)。
  • さらに、国際がん研究機関(IARC, リヨン)が世界で精度の高い地域がん登録のデータを集めて刊行する「5大陸のがん(第10巻、英語、2014年)」にも愛知県がん登録データが掲載され、国際的ながんの生存率の共同研究(CONCORD研究)にも協力しています。

研究テーマ紹介(専門家向け)
【5大陸のがん】

研究テーマ紹介(専門家向け)
【CONCORD研究】

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