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がん標的治療トランスレーショナルリサーチ分野

研究テーマ紹介(一般の方向け)

研究活動の概要

 がんの薬物療法は、患者さんのがん細胞のゲノム(遺伝子)を調べ、がん細胞が増殖する原因を個別に特定し、それぞれに対応した薬剤を投与する「個別化医療」が行われるようになり、この20年ほどの間に大きく変化しました。がん細胞にとってアキレス腱となる場所を攻撃する薬剤は、がんが増殖する原因分子を標的することから分子標的治療と呼ばれています。最近では、人の免疫ががん細胞に対し正常に働くように促す免疫チェックポイント阻害薬のような分子標的薬も登場しています。しかし、これらの治療薬は細胞やマウスで効果が認められても、ヒトの臨床試験では思うような効果が得られず患者さんに薬を届けられないケースや、標的薬が効かなくなり(耐性になり)その後の治療がうまくいかないケースも多く見受けられます。当研究室では、がん細胞×モデル動物×患者検体を三位一体となって解析することで、新たな治療の標的の発見や、現在ある治療をより効果的にする方法の開発を行っています。

研究テーマ紹介

 がんは、健康な人の細胞の中にある遺伝子の情報に異常が起きることで発生します。従ってがん細胞は、もともと正常だった我々の細胞が変化して発生したものです。感染症は異物(菌やウイルス)によって起きるため、ヒトが持たないタンパク質や機能などをターゲットとして治療することができますが、がんの場合、正常細胞にはなくがん細胞だけが持っている異常を見つけ治療薬を開発しなければならず、容易ではありません。
 そのような中でも、近年、がん細胞の生存と増殖に関わる異常をターゲットとして治療を行う分子標的治療薬が開発されるようになりました。

研究テーマ紹介(一般の方向け)

 我々の研究室でもそのようながんに特徴的な異常を見つけることが目的の一つです。比較的実験がしやすい細胞株を用いた実験から異常を発見し、動物モデルで検証し、最終的にはがん患者さんで臨床効果を検証することになります。一方で、人間の体は複雑なため、細胞やモデル動物で効果があっても、人の臨床試験では効果を認めないことも多くあります。「効く人」と「効かない人」がいて「なぜ効かないのか」「どうやったら効くようになるのか」を解明するのが本研究室のもう一つの目的です。このため、病院の各部署と協力して、患者さんのがん組織を解析し、患者さんの治療経過と照らし合わせたりしています。このような検討を行うには、患者さんのがん組織そのものを使用する必要が出てきます。協力に同意いただけた患者さんのがん組織から細胞を取り出したり、モデル動物に移植したりすることで、治療効果を再現する試みも行っています。

研究テーマ紹介(一般の方向け)

 分子標的治療薬は、がん細胞が増えていくのに重要な場所をブロックし細胞を死滅させる治療です。しかし、がん細胞は様々な方法を使ってそこから逃れようとします。これには、@がん細胞が持つ別の機能を使って増殖を続け薬が効かなくなる、Aがん細胞に新たな異常が発生し薬が効かなくなる、の2つの可能性が存在します。我々は、これまでにがんにおけるこれらの仕組みを解析することで治療効果が改善できることを示してきました。

研究成果

 細胞の増殖を促す指令を伝えるBRAFという遺伝子に異常が起きると、がんが発生し、がん細胞が増殖することが知られています。しかしながら、BRAFの働きを抑え、がん細胞の増殖にストップをかけるBRAF阻害薬は、皮膚がんの一種であるメラノーマには有効でしたが、大腸がんに対しては無効でした。我々は、大腸がんではBRAFに加えてEGFRというタンパクが細胞の増殖に関わっており、両者を抑えることでBRAF遺伝子異常による大腸がんを治療できることを示しました。EGFR阻害薬とBRAF阻害薬は臨床試験でも有効性が示され、2020年に保険治療となっています。

研究テーマ紹介(一般の方向け)

目指すもの

 患者さん個々人のがんに合わせた分子標的薬の開発が進む中で、当分野では治療薬が「効く人」と「効かない人」を見分け、効かない人に対し、新たな治療法を見つけ、より治療成果を上げていくことを目指しています。

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