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がん標的治療トランスレーショナルリサーチ分野

研究テーマ紹介(専門家向け)

当研究室で対象としているのは、固形腫瘍、特に肺がん・消化器がんである。臨床上問題となっている事柄を対象とするため、必ずしも一つの分子の異常にこだわることなく、広く研究を行っている。以下にKRAS変異腫瘍に対する新規治療開発を当研究室のトランスレーショナルリサーチの例として紹介する。

MAPKシグナル変異腫瘍に対する新規治療開発

研究テーマ紹介(専門家向け)

 MAPKシグナルは、細胞外の様々な刺激を核内へと伝える主要なシグナル伝達系の一つである。MAPKシグナルの活性は様々なフィードバック機構により一定に調節されている一方で、遺伝子異常により活性が亢進すると正常細胞の形質転換(がん化)をもたらす。

 我々の研究グループではMAPKシグナルのフィードバック機構に着目しMAPKシグナル変異腫瘍(KRAS変異がん、BRAF変異がん)に対する新規治療を提唱してきた。


BRAF変異大腸がんに対するEGFR阻害薬+MEK阻害薬併用療法

 BRAF阻害薬はBRAF変異メラノーマに対し有効であるが、BRAF変異大腸がんには無効である。我々はBRAF変異大腸がんにおいて、BRAF阻害によるMAPKシグナルの抑制がフィードバック機構を誘導することによりEGFRを活性化し、その結果MAPKシグナルを再活性化することを示した。BRAF阻害薬とEGFR阻害薬の併用は、MAPKシグナルを完全に遮断し、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導し、マウス腫瘍を縮小する。本併用療法は現在第三相試験が進行中である。
(Corcoran RB*, Ebi H, et al. Cancer Discovery 2012. *Co-first author)

研究テーマ紹介(専門家向け)

KRAS変異肺がんに対する新規治療開発

 KRAS変異は肺がん・膵がん・大腸がんなどの難治がんで高頻度に認める変異であるが、直接阻害薬の開発が難しく有効な治療法に乏しい。また、変異KRASの下流に存在するMEKの阻害薬は単剤では十分な効果を示さないことが知られている。我々はKRAS変異肺がんが、上皮間葉移行により2つのサブタイプに分類されることを示した。またMEK阻害薬はフィードバック機構により受容体を活性化するが、活性化される受容体は上皮間葉移行状態に依存しており、上皮系腫瘍ではERBB3、間葉系腫瘍ではFGFR1が活性化していた。それぞれの阻害薬とMEK阻害薬の併用療法は患者由来ゼノグラフトモデル(PDX)で効果を示し、上皮間葉移行状態を指標としたKRAS変異肺がんの個別化医療が考えられた。
(Kitai H et al. Cancer Discovery 2016)

研究テーマ紹介(専門家向け)

BRAF non-V600E腫瘍に対する新規治療開発

 BRAF変異にはホットスポット変異であるV600Eと、V600周囲の活性化ループ(A-loop)近辺、もしくは464-469番目のアミノ酸が構成するphosphate-binding loop (P-loop)に生じるnon-V600E変異が存在する。BRAF non-V600変異には部位によりBRAFキナーゼ活性が数倍〜50倍程度上昇するもの(intermediate型)と、活性がむしろ低下するもの(impaired型)が存在する。BRAF阻害薬はV600変異に対する特異的阻害薬のため、BRAF non-V600変異腫瘍には無効であり、BRAF non-V600E変異腫瘍に対しては下流シグナルであるMEKの阻害薬が検討されている。我々は肺がん、大腸がんにおいて、MEK阻害がフィードバック機構を誘導し受容体キナーゼ(主にEGFR)の活性化をきたすことを示した。これらの知見をもとにBRAF non-V600E変異大腸がんに対し、EGFR阻害薬・BRAF阻害薬・MEK阻害薬の三剤併用療法の医師主導治験が開始予定である。
(Kotani H et al. Oncogene 2018)

研究テーマ紹介(専門家向け)

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