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分子腫瘍学分野

研究テーマ紹介(一般の方向け)

1)悪性中皮腫の原因遺伝子と特性の解明

 悪性中皮腫はアスベスト曝露後、約30年の潜伏期を経て発症する極めて予後不良の悪性腫瘍です。現在、日本では約1200人の新規の患者さんが報告され、今後も増加することが予測されています。悪性中皮腫は診断確定時には進行していることが多く、根治的な外科手術が適応となる患者さんは極めて限られています。抗がん剤や放射線治療法に対して抵抗性を示し、現在、他の腫瘍で著効を示す分子標的薬も有効な効果を示しません。
 私たちは、悪性中皮腫の新たな診断法、分子標的治療法を開発するためには悪性中皮腫の病態の本質を解明することが最も重要であると考えています。そのために、私たちは患者さんから提供された試料をもとに悪性中皮腫細胞株を樹立し、その特性についての検討を行っています。さらに、網羅的なゲノム解析、遺伝子異常解析をもとに新たながん関連遺伝子の同定を目指しています。最近、アレイCGH法と呼ばれる網羅的なゲノム解析を行った結果、染色体13番に存在するLATS2遺伝子が新たながん抑制遺伝子であることを発見しました。悪性中皮腫はNF2遺伝子も約40-50%に変異していますが、NF2-LATS2はお互いに関係してHippo (ヒッポ) 伝達系と呼ばれる細胞内の腫瘍抑制シグナル伝達系を形作っています。このNF2-Hippoシグナル伝達系は悪性中皮腫の70−80%で不活性化していることが明らかになり、中皮腫の発症・進展の大きな役割を担っていることが明らかになりました。今後も、悪性中皮腫の原因遺伝子の研究を進め、新たな診断法・治療法に応用したいと考えています。

2)がん遺伝子/がん抑制遺伝子と合成致死表現型を示す遺伝子の探索及び機能解析

 従来の化学療法薬は細胞周期に働きかけるものが多いのですが、増殖の速い正常細胞にも影響するため、副作用が生じます。しかし、「合成致死」という戦略を用いることで、正常細胞にはほとんど影響を与えず、がん細胞にだけ効く薬をつくることが出来る可能性があります。遺伝性乳がんの治療薬から発見されたメカニズムですが、そのような組み合わせを他のがんでも発見し、また、基礎生物学的にも新しい知見が得られるように研究を重ねています。

研究テーマ紹介(一般の方向け)

【合成致死表現型を抗がん剤の開発に応用する】

図の解説:がんで変異がみられる遺伝子(A)と合成致死表現型を示す遺伝子(B)があったとき、遺伝子Bをノックダウン、あるいは遺伝子Bの阻害剤を投与したときにがん細胞特異的に細胞を死滅させる事ができる

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