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がん病態生理学分野

研究テーマ紹介(一般の方向け)

1)がん微小環境の研究

 がん細胞は、悪賢くて臨機応変です。周囲からの刺激に変幻自在に対応しながら、さらには周囲の正常な細胞を利用して居心地の良い環境 (がん微小環境)を作り出してしまいます。がん細胞は、この微小環境を上手に利用して、腫瘍の成長や浸潤・転移などを上手く手助けさせていることが分かってきています。
 一方、近年のがん分子標的治療薬の開発にともない、白血病など血液のがんでは症状が消えて腫瘍細胞が検出できないくらい減少すること(寛解といいます)も夢ではなくなっていますが、大腸がんや肺がんをはじめとする固形がんでは、治療の初期には効果が認められても、いずれその薬に対する抵抗性を獲得して効かなくなることが知られています。
 がん細胞が体の中でこの薬剤抵抗性を獲得するメカニズムについてはよく分かっていませんでした。私たちは最近、大腸がんを自然発症する遺伝子改変マウスを用いて、大腸がんが分子標的治療薬に対して治療抵抗性を獲得する際に、がん微小環境中の正常な間質細胞を利用していることを発見しました(下図)。
 このように当分野では、がん細胞だけでなくがん微小環境の様々な役割を生体レベルで明らかにし、その成果を新たな治療方法の開発につなげるべく研究しています。

研究テーマ紹介(一般の方向け)

2)転移の研究

 がんの治療を難しくする原因はいろいろ挙げられますが、転移はその代表的なものといえます。転移とは、がん細胞がもとの発生した臓器から他の臓器に移動してそこで増殖することです。大腸がんの場合も他臓器への転移を伴っていると治療は難しくなりますが、残念ながら大腸がん細胞が転移するメカニズムは十分に解明されておらず、転移を制御することは極めて困難な状況です。
 私たちはこの問題に最新の遺伝学的手法と実験動物(マウス)を使って取り組んでいます。最近、がん細胞を悪性化させる要因として知られている上皮間葉転換という現象によって、大腸がん細胞のブレーキ役であるHNRNPLLというタンパクが減ってしまい、大腸がん細胞が周囲の組織に侵入、さらには肺に転移しやすくなることを発見しました(下図この研究成果は、平成29年4月12日発行の中日新聞および読売新聞の朝刊にも取り上げられました)。
 私たちは、このような転移を制御するタンパクについて解析し、転移の新しい予防・治療法の開発につなげたいと考えています。

研究テーマ紹介(一般の方向け)

3)がん悪液質の研究

 悪液質は、栄養不足という原因以上に体が痩せすぎたり、筋肉や脂肪が衰えていく状態のことを指します。悪液質は、がんだけでなく、心臓や呼吸器の慢性疾患などでも起こりますが、がんを原因とする悪液質を特に「がん悪液質」といいます。
 体の代謝のバランスは多くの臓器間の連携により保たれています。がんが進行するとその連携が乱れて代謝のバランスが崩れ、「がん悪液質」になります。この原因の一つとして知られているのが炎症性サイトカインと呼ばれる物質の過剰産生です。腫瘍組織から作り出された炎症性サイトカインは、慢性的な炎症を起こし、多くの臓器で異常を引き起こすと考えられています。しかしながらただ炎症を抑えただけでは「がん悪液質」は治らないため、「がん悪液質」の原因は他にもあると考えられています。私たちは、「がん悪液質」を、がんが原因となって肝臓・筋肉・脂肪組織などを含む多臓器間の連環が撹乱されて種々の代謝異常をきたした病態であるととらえています(下図)。がん悪液質の病態を発症する「がん悪液質モデルマウス」を使って「がん悪液質」の仕組みを明らかにすることにより、その予防法・治療法の確立、および早期診断法の開発を目指しています。
 「がん悪液質」の予防や治療ができれば、患者さんの生活の質が改善されるだけでなく、抗がん治療の選択肢が広がる可能性が期待できます。

研究テーマ紹介(一般の方向け)

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