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がん病態生理学分野

研究テーマ紹介(専門家向け)

 がん病態生理学分野では、固形がん(主に大腸がんと肺がん)のマウスモデルを用いて、がんの発症・悪性化における微小環境の役割、転移の分子メカニズム、がん悪液質の病態生理の3つを生体レベルで解明し、愛知県がんセンター中央病院との連携により新たな治療法の確立につなげることを目指しています。以下のような研究が進行中です。

1)がん微小環境の役割の解明

研究テーマ紹介

 がん細胞の周辺には、線維芽細胞、マクロファージ・リンパ球などの免疫細胞、血管細胞など様々な細胞が存在し、がんが育つための土壌「がん微小環境」を形成しています。がん細胞は、この微小環境を上手に利用して、腫瘍の成長や浸潤・転移の手助けをさせます。
 私たちは、腸管に良性のポリープを発症するマウスや悪性の大腸がんを発症するマウスモデル、肺がんのマウスモデルなどを用いて、がん微小環境の多彩な細 胞やそれらに関連するシグナル伝達経路が、がんの悪性化に果たす役割について詳細に研究しています。大腸がんについては、JNK/mTORC1経路(原著論文Fujishita 2011、総説・著書Fujishita 2009、Aoki 2017)・MEK/ERK経路(原著論文Fujishita 2015)・EGFR経路(原著論文Sakuma 2012)・Wnt経路・Hedgehog経路の役割(原著論文 Arimura 2009、総説・著書 Aoki 2011)、自然免疫系・腸内細菌・低酸素環境の役割、内分泌・代謝調節(原著論文Kojima 2019、活動内容トピック1参照)の役割を解明することを目指して研究を展開しています。さらに、大腸がんの薬剤抵抗性獲得における微小環境の役割の解明(原著論文 Fujishita 2017、活動内容トピック2参照)、デスモイド腫瘍マウスモデルの作出にも取り組んでいます。

2)転移の分子メカニズムの解明

 大腸がんによる死因の約9割が転移によるものであるとされます。しかしながら、転移の分子メカニズムは十分に解明されておらず、治療標的となる分子の同定も遅れています。浸潤・転移は、生体内で(1)局所浸潤、(2)脈管侵入、(3)脈管内輸送、(4)管外遊出、(5)微小転移巣形成、(6)転移増殖の6つの連続した生物学的プロセスを経ますが、この浸潤・転移プロセスの進行は、転移促進因子と転移抑制因子が複雑に相互作用することにより制御されると考えられています。
 私たちは、レンチウイルスshRNAライブラリーを用いたスクリーニング法(A)と、トランスポゾンを用いたスクリーニング法(B)を用いて、大腸がんの転移を制御する因子を、生体での機能に基づいて同定し、それらの治療標的としての妥当性を検証する研究を行っています。shRNAライブラリーを用いた手法では、HNRNPLLという新規大腸がん転移抑制因子を同定し、大腸がん細胞の上皮間葉転換の際にHNRNPLLの発現が低下することでCD44の選択的スプライシングに変化が生じ、CD44v6というバリアントが産生されて浸潤能が亢進することを見出しました(原著論文Sakuma 2018、活動内容トピック3参照)。

研究テーマ紹介

研究テーマ紹介

3)がん悪液質の病態生理の解明

 悪液質は、骨格筋や脂肪組織の萎縮による進行性の体重減少を主徴とする症候群で、進行がん患者の約80%に発症し、がん患者の約20%の直接死因と推定されています。しかしながら、悪液質の病態生理は未だに不明であり、有効な早期診断法や治療法も存在しません。私たちは、がん悪液質を、がんが原因となって肝臓・筋肉・脂肪組織などを含む多臓器間の連環が撹乱されて種々の代謝異常をきたした病態であるととらえ、ヒトの悪液質に非常によく似た病態を示す大腸がんマウスモデルを用いた解析により悪液質発症の原因をつきとめ、治療標的となる分子を同定する研究に取り組んでいます。 

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