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分子診断トランスレーショナルリサーチ分野

研究テーマ紹介(一般の方向け)

がんによる死亡者数は年々上昇しており、1981年より日本人の死因のトップ(約30%)となっています。我々はどのようにがんと闘い、克服していけばよいのでしょうか。

1)早期診断・個別化医療を目指した血液診断テストの開発

 癌になるリスクの高い病変や、手術で取りきることができる早期のがんを見つけて治療をする、「早期診断・早期治療」は有望な手段です。様々ながんの中でも、胃、大腸、肺、乳、子宮頸がんは検診の有効性が示されているがんです。ただし、検診にも問題点があります。例えば、がんが見つけにくい場所にあったり、わかりにくい形をしていたりする場合に見逃してしまうこと(偽陰性)、検診でがんの疑いと判定されて精密検査を行っても、ほとんどの場合はがんではないこと(偽陽性)、さらに、がんの中には進行がんにならずに消えてしまうものもありますが、そのようながんの持つ特徴はわかっていないため、通常のがんと同じように検査や治療が行われること(過剰診断)などです。
 私たちは、このような検診の問題点を解決し、検診の精度を高めるために、従来の検診では見逃されていたがんを発見したり、がんではない人を正しく判定したりできる血液診断テストの開発に取り組んでいます(図1)。さらに、膵がんなどの現在有効な検診が存在しないがんについても、早期診断に役立つ血液テストの研究に取り組んでいます。

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【図1:血液診断テストによるがんの早期診断】

 また、がん患者さん一人一人に合わせて最適な治療を行う、「個別化医療」も、がんと闘う有望な手段です。これまでの医療は、現在受けられる最も効果的な治療法を「標準医療」として、診断された病気が同じであれば、同じ治療を提供することで、医療の質のばらつきをなくすことを目指してきました。しかし、実際に標準医療を行ってみると、一部の患者さんには効果があっても、別の患者さんにはあまり効果がなかったり、副作用が強く出たりすることがあり、必ずしもすべての患者さんが同じ経過をたどるわけではないことがわかってきました。そこで、がんの原因や病態を分子レベルで解明し、遺伝子情報を含めた一人一人の患者さんの状態に合わせて最適な治療法を選択する、個別化医療が注目されています。個別化医療によって、副作用をできるだけ抑えて、かつ高い治療効果が得られることが期待されます。
 私たちは、個別化医療の実現を目指して、治療薬の効果を予測したり、がんが再発する可能性が高く追加の治療が必要となる人を見つけたりすることができる血液診断テストについても、いろいろながんで研究を進めています(図2)。

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【図2:血液診断テストによる個別化医療の実現】

2)統合的な分子解析による新しい治療法の開発

 私たちは、がんの診断だけでなく、新しい治療法の開発にも積極的に取り組んでいます。個別化医療においては、患者さんの遺伝子情報を中心とした分子レベルの解析から、もっとも高い効果が期待できる治療薬(分子標的治療薬)を用います。肺腺がんを例にとってみると、EGFR、ALK、MET、HER2、BRAFなどの遺伝子異常によりがんが引き起こされている、約60%の患者さんには、それぞれの遺伝子異常をターゲットとする分子標的治療が行われます。約15%の患者さんに存在するKRAS遺伝子の異常を直接ターゲットにするような分子標的治療薬は、残念ながらまだ実用化されていません。肺腺がんは、もっとも個別化医療が実践されているがんのひとつですが、現在の遺伝子情報を中心とした解析では、分子標的治療の対象になるような遺伝子異常が見つからない患者さんも約20%います。このような患者さんでは、いくつか異なった遺伝子異常が組み合わさることで、がん化につながっていると考えられています。また、遺伝子情報がメッセンジャーRNA (mRNA)に転写され、タンパクに翻訳される過程では、様々な修飾を受けて、最終産物であるタンパクは多様な機能を持つことが知られており、このような遺伝子情報だけではわからない変化も、がん化に大きく関連していると考えられています(図3)。
 私たちは、がん組織やがん細胞株から得られるDNA、mRNA、タンパクまで統合的に解析することで、遺伝子異常だけではなく、がんに起こっている様々なタンパクの異常を見つけ出して、がんの本態を解明し、新しい治療法の開発につなげていきたいと考えています。このプロジェクトでは、特に膵がんや肺がんなど、予後の悪い難治がんを中心に取り組んでいます。

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【図3:統合的分子解析による新規治療ターゲットの探索】

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