委員会情報
委員会審査状況
建設委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年10月4日(金) 午後1時~
会 場 第4委員会室
出 席 者
山田たかお、中村貴文 正副委員長
島倉 誠、山下智也、藤原ひろき、神戸健太郎、伊藤貴治、高橋正子、
朝倉浩一、細井真司、古林千恵、筒井タカヤ、神谷まさひろ 各委員
建設局長、建設局技監(2名)、土木部長、治水防災対策監、
豊川水系対策本部副本部長、豊川水系対策本部事務局長、水資源監、
都市・交通局長、同技監、都市基盤部長、リニア・交通対策監、
港湾空港推進監、空港長、
建築局長、同技監、公共建築部長、建築指導監、
収用委員会事務局長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第128号 令和6年度愛知県一般会計補正予算(第3号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第7款 建設費
第2条(繰越明許費の補正)の内
第7款 建設費
第129号 令和6年度愛知県港湾整備事業特別会計補正予算(第1号)
第134号 愛知県手数料条例の一部改正について
第139号 工事請負契約の締結について(道路改良事業一般国道247号青海インターチェンジ(仮称)上部工事(その1))
第140号 工事請負契約の締結について(木曽三川下流域Ⅱゼロメートル地帯広域防災活動拠点防災倉庫建設工事)
第141号 工事請負契約の締結について(小牧特別支援学校校舎建築工事)
第146号 特定事業契約の変更について
第148号 県の行う土木事業に対する市町村の負担金の変更について
専決第22号 控訴の提起について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第128号、第129号、第134号、第139号から第141号まで、第146号及び第148号
全員一致をもって原案を承認すべきものと決した議案
専決第22号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 道路の整備等について
2 水資源対策並びに河川、砂防、水道及び下水道の整備等について
3 土地対策、都市計画並びに公園及び市街地の整備等について
4 総合交通体系及び港湾の整備等並びに航空対策について
5 宅地建物取引及び建築・宅地造成等の規制について
6 公営住宅等の建設及び管理並びに県有施設の営繕工事について
7 建設局、都市・交通局、建築局及び収用委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(9件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 休 憩(午後3時2分)
6 再 開(午後3時15分)
7 閉会中継続調査申出案件の決定
8 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
予算に関する説明書の21ページ、歳出第7款第5項第2目土地区画整理費について、1億7,614万8,000円という補正予算がついている。7地区が対象で道路事業に充てるとのことであるが、もう少し詳しく伺う。
【理事者】
本事業は、国の補助制度を活用し、都市計画道路等の用地費、工事費の全ての費用を国から2分の1の補助金をもらいながら県が一括して土地区画整理組合に補助する事業である。
今回、国からの増額内示に伴い予算を補正し、事業の進捗を図るものである。
【委員】
土地区画整理事業は、良好な市街地の形成と生活環境の改善に大きく貢献するもので、円滑な推進と運営の安定化を図ることが必要だと考える。近年の労務単価の上昇や材料費等の高騰など、社会情勢の変化によって組合施行の土地区画整理事業を取り巻く環境は極めて厳しい状況にある。減歩や清算金などを自らの財産を担保に事業を行う地元の土地区画整理組合から、事業の進捗に対してこの物価上昇等の影響が生じるのではないかとの不安の声が上がっている。
そこで、県としては、今後どのように組合施行の区画整理事業に取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
物価高騰による事業進捗への影響については、県としても認識している。このことについては、まず組合資金の多くを占める補助金について、物価高騰等に対応した必要額の確保が肝要と考えている。
本県としては、しっかりとこの補助金が確保できるよう、要望会等様々な機会を捉えて、国に対し働きかけていくとともに、補助金に対する県予算もしっかりと確保していく。
【委員】
予算に関する説明書21ページの、中部国際空港の活性化に向けた取組推進について、まずは、施策の背景について伺う。
【理事者】
代替滑走路の整備により、2027年度をめどに完全24時間運用と、約1.2倍の処理容量が実現する見込みとなった。中部国際空港の国内線の航空需要はコロナ禍前の水準まで戻った一方、国際線は約6割程度の緩やかな回復となっている。将来の受入れ能力拡大を見据えたさらなる利用促進策を進めていく必要があることから、国の調査事業を活用した新たな取組を補正予算により、速やかに実施することとした。
【委員】
具体的な取組である訪日外国人向けツアーやイベントは、観光コンベンション局の施策のような印象を受ける。そこで、二点質問する。
一点目、都市・交通局が推進する理由について伺う。
二点目、愛知の発酵食文化の魅力を国内外へ発信することなど、同じく外国人誘致を進めている観光コンベンション局との連携について伺う。
【理事者】
まず、都市・交通局が推進する理由についてである。愛知県の観光振興事業は、観光コンベンション局を中心に、県内の地域資源の観光コンテンツ化、本県への誘客につながる効果的なプロモーション、受入れ環境の整備などの取組を進めている。
空港を所管する都市・交通局は、中部国際空港のさらなる発展を図っていくことが必要である。今回、旺盛な訪日客をターゲットに空港の利用を促すため、イベントの開催やツアーの造成を行うこととした。イベントは空港内で実施し、また、ツアーの造成に当たっては、空港を起点とし、愛知県を中心にしつつ、広域の周遊を促していく予定である。
次に、本事業については、関係部局としっかり連携して進めていく。例えば、本県の魅力的な観光コンテンツを生かしたツアー造成や、愛知発酵食文化振興協議会構成員への協力の呼びかけ、協議会特設ウェブサイトによる情報発信などを観光コンベンション局と協力して進めていく。
今後も都市・交通局としては、中部国際空港に多くの人を呼び込み、世界から選ばれる空港となるよう、しっかりと取り組んでいく。
【委員】
最後に要望する。
私は、2022年3月まで5年余り台湾で駐在していた。そして、たくさんの台湾人から、観光で中部国際空港を利用した場合に、目的地は岐阜県の飛騨高山や白川郷、下呂温泉、そして三重県の伊勢志摩や長島温泉などに向かうと聞き、愛知県での滞在が比較的少ないことを残念に感じてきた。関係部局との連携を強化して、中部国際空港を含めた愛知県全体の活性化を図り、訪日客を呼び込むことを要望する。
【委員】
工事請負契約の締結のうち、木曽三川下流域Ⅱゼロメートル地帯広域防災活動拠点の防災倉庫について伺う。
図面を見ると、1階部分と2階部分との間に随分空間があるが、これはどれぐらいの高さを取っているのか。また、この趣旨を伺う。
また、周辺には平面の駐車場があるが、もし防災で水害を考えているのならば、駐車場も2階建てにすることが基本ではないかと思うが、考え方を伺う。
さらに、防災拠点だけに一式工事となっているが、電気等の処置も含まれているのか伺う。
【理事者】
高さの考え方であるが、1階部分をピロティーにして2階を倉庫にしている。これはなぜかというと、津波の基準高さというものがあり、それが2メートルである。また、避難活動する際にボートを活用するので、その余裕の高さを2メートル、さらに1メートルの高さの余裕を考慮し、1階のピロティーの高さを定めている。
続いて、駐車場については、防災倉庫のための駐車場ではない。これは、隣接している海南こどもの国の第2駐車場であり、通常はそこで使われている。実際この防災倉庫を利用する際は浸水している前提であり、車は使わない想定で計画している。したがって、駐車場については平面のままである。
続いて、電気についてであるが、今回提案している工事は建築工事であり、電気工事は別途発注準備を進めている。自家発電については、防災安全局からは実際に防災活動を行う際にはポータブルの発電機を使って活動すると聞いており、この建物自体に自家発電設備を設ける予定はない。
【委員】
この防災倉庫と海南こどもの国の関連性は分かった。防災倉庫は、倉庫だけの用途なのか、住民が避難する場合の避難場所としても利用可能であるのか。
【理事者】
防災安全局から聞いている話であるが、浸水した際に地域の住民が避難する際にはボートに乗ってこの防災倉庫に横づけして、そこで緊急的な避難を行う。そして、屋上にあるヘリポートにて救助活動を行うことを計画している。
【委員】
次に、予算に関する説明書の21ページ、公園緑地整備交付金事業費の(ア)に、牧野ケ池緑地整備事業費1億3,200万円となっているが、この内容を伺う。
【理事者】
現在、牧野ケ池緑地の東のぼうけん広場の老朽化により、その更新の整備を進めている。その中に園路等があり、その園路の整備でも、長期間遊具の利用が制限される。その園路の整備と遊具の更新を同時に行うために、園路の整備を補正で追加するものである。
《一般質問》
【委員】
行政手続のオンライン化について伺う。
人口減少や、大都市圏への人口集中などにより労働力が不足し、公共サービスを維持できなくなると懸念されている。そのような中、行政手続等に残っている無駄や不便を解消するため、デジタル技術を適用したさらなる最適化・効率化が求められている。産業競争力の強化と労働生産性の上昇を実現していくためには、デジタル化という効率化によるコスト削減、既存事業の付加価値向上及び新規ビジネス創出を図ることによって持続的な成長につなげることが重要である。データ連携の推進や信頼性を確保しつつデータを共有できる標準化された仕組みの構築など、国際的な視点も持ち、官民で協調して取組を強化していく必要がある。
また、人口減少社会において公共サービスをデジタルの力で維持・強化していくためには、約1,800の自治体が個々にシステムを開発・所有するのではなく、国と地方が協力して共通システムを開発し、それを幅広い自治体が利用する仕組みを広げていくことが重要であり、システム標準化と効率的な運用が必要である。
先般の本会議において自由民主党愛知県議員団の平松利英議員が行った質問への答弁をもう少し深掘りする。答弁によれば、建設部門が所管する行政手続のうち、年間処理件数が1,000件以上と多いものは57手続あり、そのうちオンラインによる申請などが可能なものは30パーセントに当たる17手続あるとのことであった。
そこで、現在オンラインによる申請などが可能な手続は具体的にどのようなものがあるか伺う。
【理事者】
オンラインによる手続が可能なものとしては、都市公園の運動施設等の利用申請や、港湾への入出港届、宅地建物取引士資格試験の申込、それから建設工事の入札参加資格審査申請といった手続がある。
【委員】
では、反対にオンライン申請が可能でないとされている、残り70パーセントに当たる40手続は、なぜオンライン申請が可能ではないか伺う。
【理事者】
理由については、手続によって様々であるが、代表的なものとしては、図面などの添付書類のデータ容量が大き過ぎる、申請者にデジタルに不慣れな人が多くオンライン化が困難である、といった理由がある。
【委員】
申請者が不慣れというのは、なかなか進むスピードが上げられない要因になっていると思う。
同じく答弁の中で、オンライン化をさらに推進するために部門内にプロジェクトチームを設置するとあった。こちらはどのようなメンバーが対象で、どのようなことをしているのか。
【理事者】
プロジェクトチームは、名称を建設部門DX推進プロジェクトチームとして、建設企画課及び建設総務課が事務局を務め、建設局、都市・交通局、建築局の全ての本庁各課、そして建設事務所及び港務所の企画担当グループの班長を構成メンバーとしている。なお、必要に応じて専門的な知識を要する職員など構成員以外の者の参加を求めることができるので、検討内容に応じて活用していく。
また、このプロジェクトチームでは、建設部門内で連携して取り組むべき施策についての検討や調整、それから建設部門DX推進行動計画の進捗管理及び見直し、そのほか日々急速に進展するDXに関する国や県全体の動向についての情報共有などを行うこととしており、現在は行政手続のオンライン化の検討を集中的に行っている。
【委員】
プロジェクトチームのようにチームが組織され、非常に期待している。
続いて、民間事業者から伴走支援を受けることも視野に入れながらこのプロジェクトを進めていくと答弁の中にあった。具体的にどのようなことを想定しているのか。
【理事者】
建設部門が所管する手続については、図面や計算書などの多くの添付書類を要する手続をはじめ、審査をして補正指示をしたり、修正をしたり、再提出など、書類のやり取りする手続、それからほかのシステムとの連携を要する手続などがある。
このような手続について、利用者と県の担当者の双方が使いやすいシステムを構築してオンライン化するためには、ほかの自治体での先進事例やITに関する優れた知見を持つ民間事業者からの伴走支援が必要である。例えば、システム構築の委託業務において、その手続に最適な技術提案を受け、県の事務処理方法に合わせてカスタマイズしていくことを想定している。
【委員】
今年度には結果を取りまとめ、建設部門DX推進行動計画に位置づけていくとの答弁もあった。今後のスケジュールについて伺う。
【理事者】
本年7月に建設部門DX推進プロジェクトチーム会議を開催し、そこで部門内各課に行政手続のオンライン化を一層推進するための検討を指示した。
現在は、一般質問での答弁のとおり、今後オンライン化する手続の抽出、そしてオンライン化に向けた課題の整理と対策の検討を行っている。
今後は、年内をめどに各課の検討結果を一旦取りまとめ、手続ごとの考え方の方向性の整理や調整を行っていく。また、この中で関係課が連携して取り組むことが効率的と考えられる共通課題がある場合には、プロジェクトチームにおいて連携して対策の検討を行っていく。そして、年度内には検討結果を取りまとめ、建設部門DX推進行動計画の見直しを行っていく。
【委員】
DXや、オンライン化に関して、生産性の向上や働き方改革、人材確保、様々な観点から行政がオンライン化やDXを進めることは、特に人材確保に苦難する建設業界にとっても大きなメッセージになる。民間を巻き込み、今後のスケジュールも具体的に示しながら、着実に進めてもらうようお願いする。
続いて、防災対策における立地適正化計画について伺う。
本年1月1日に能登半島で地震が起きた。被害は甚大であり、地割れや地すべり、斜面崩落の被害が多く見られた。また、先般の能登豪雨により、能登半島地震で生じた亀裂や地盤のゆるみによって引き起こされたと見られる土砂崩れもあり、生命を守るために防災対策が喫緊の課題となっている。
現在、愛知県では土石流、地すべり及び急傾斜地の崩壊から県民の生命を守るために、土砂災害防止施設の整備や危険な箇所の指定など、ハード、ソフト、一体となった事前防災対策を推進しているが、土砂災害対策施設の整備状況について伺う。
【理事者】
本県では、土石流、地すべり、がけ崩れの発生により人家5戸以上もしくは公共的建物などが被害を受ける恐れがある箇所を施設整備の対象としている。
その箇所数は、土石流対策が1,555か所、地すべり対策が23か所、がけ崩れ対策が2,425か所である。これに対し、整備済み箇所数は、土石流対策が347か所で整備率は22.3パーセント、地すべり対策が22か所で整備率が95.7パーセント、がけ崩れ対策が530か所で整備率が21.9パーセントである。
【委員】
整備を要する危険な箇所が非常に多いということが分かった。この状況では、整備の完了にはかなりの時間がかかると感じており、効率的なインフラ整備、特に生命を守ることを考えれば、計画的な居住誘導も今後考えていく必要がある。
一方で、本県も2019年を境に人口減少の局面に入っている。我が国の都市における今後のまちづくりは、人口の急激な減少と高齢化を背景として、高齢者や子育て世帯にとって安心できる健康で快適な生活環境を実現すること、財政面及び経済面において持続可能な都市経営を可能とすることが大きな課題である。人口減少に対応するため、都市計画の分野では市町村が立地適正化計画を策定し居住を誘導する区域を定めるという制度を進めている。
居住を誘導するに当たり、防災上危険なところに新たに誘導することはないと思うが、現状危険とされている箇所から居住を誘導するものでもないと理解している。改めて、この立地適正化計画というのはどのような制度か伺う。
【理事者】
立地適正化計画は、都市計画区域内を対象としており、県内では51市町村が対象となる。人口減少社会に対応したコンパクトな都市構造への再構築を目指し、都市再生特別措置法第81条に基づいて市町村が策定する任意計画である。
この計画には、市街化区域の中に居住を誘導する居住誘導区域を定めるが、強制的に移住させるものではなく、個々の住宅の建て替えや住み替えなどに合わせて時間をかけながら緩やかに居住や都市機能を集約化していく制度である。
本計画においては、頻発化・激甚化する自然災害に対応するため、令和2年の法改正により災害リスクや防災に関する取組方針を示した防災指針を記載することとなった。
これにより居住誘導区域を設定する際には災害リスクの高いエリアへ新たに居住を誘導しないなど、防災の視点を含めたまちづくりを進めている。具体的には、土砂災害特別警戒区域などのいわゆるレッドゾーンとなっている区域は居住誘導区域に指定しないこととしている。
【委員】
立地適正化計画の中に防災指針を記載するとのことであったが、現在、愛知県内の市町村で立地適正化計画と防災指針の策定状況について伺う。
【理事者】
立地適正化計画は、現在、県内の30市町が策定済みで、3市町が新たに策定に取り組んでいる。
また、立地適正化計画の中に記載する防災指針は、22市町が策定済みで、11市町が新たに策定に取り組んでいる。
【委員】
現在、未策定の市町村があるが、今後、未策定の市町村が立地適正化計画を策定できるように県はどのような支援を行っているのか。
【理事者】
立地適正化計画及び防災指針は、人口減少や防災の視点から持続可能なまちづくりを進めていく上で重要な計画であることから、県内の市町村が集まる担当者会議などの場で必要性を説明するとともに策定をお願いしている。
また、市町村が策定する際には、その市町村の策定委員会に県の都市計画課が参加し、適切なまちづくりの計画となるよう、防災上の視点も含めて助言・指導を行っている。
今後も、安全安心な都市の実現に向け、市町村のまちづくりを積極的に支援していく。
【委員】
危険なところから強制的に誘導するものではないとのことであるが、届出制度もある。対象区域外での開発行為、建築行為を制限するものでもなく、人口減少時代のまちづくりの指針で、防災の観点からの居住誘導も強く入れていく必要があると思う。強制力があるものでもないため、計画のための計画にならないよう議論を進めていく必要がある。
一部の市町村で、この立地適正化計画策定は補助金をもらうためにつくるという声も聞こえている。本気で当事者意識を持つための計画になるよう、県としても後押しをお願いする。
【委員】
昨今の気候変動の影響を踏まえた治水対策について質問する。
全国各地に被害をもたらした台風10号は非常にゆっくりとした速度で進みながら日本付近に湿った空気を送り込み続けたため、台風から離れた地域でも大雨の被害が発生した。
愛知県においても、局地的にまとまった降雨があったが、県全体の県管理河川の被害状況について伺う。
【理事者】
台風10号については、東三河地域を中心として8月24日から9月2日にかけて長時間にわたる大雨をもたらし、県の新城雨量観測所においては8月27日に最大日雨量322ミリメートルを観測した。
この大雨により、県管理河川では8月27日に田原市の汐川において越水が発生し、周囲の農地が浸水した。また、水位周知河川である豊田市の逢妻女川の千足水位観測所において、8月31日に氾濫危険水位を超過した。この大雨による河川施設被害としては、新城市の宇利川において2か所、豊田市の逢妻女川において1か所で護岸が損壊した。
今後は国の災害査定を経て早期の復旧に努めていく。
【委員】
台風10号による豪雨後も、先月末には低気圧や前線の影響によって線状降水帯が発生し、石川県能登地方では大雨特別警報が発表されるなど記録的な大雨となり、大きな被害をもたらした。
これら豪雨をはじめ、毎年のように全国各地で水災害による甚大な被害が発生しており、私の地元である逢妻川を含めた境川・猿渡川流域においても同様な被害が起きるのではと心配している。
境川・猿渡川流域では、急激な都市化の進展による治水安全度の低下に対応するために、昭和50年代から総合治水対策に取り組んできた。その後、特定都市河川に指定され、2018年度から2020年度までの防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策、2021年度から2025年度までの防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の予算を活用し整備が加速されてきており、その効果を実感している。
しかし、今後も地球温暖化の進行による気候変動の影響により、降雨量の増大や、洪水発生頻度の増加が懸念をされており、治水対策の一層の充実が望まれる。
そこで、境川・猿渡川流域における気候変動の影響を踏まえた今後の治水対策の考えを伺う。
【理事者】
境川・猿渡川流域では、1982年から進めてきた総合治水対策をさらに推進するため、2012年に境川・猿渡川の一部と逢妻川を特定都市河川に指定している。また、河川などの整備に加え、流出抑制対策を位置づけた流域水害対策計画を策定し、県と市町が連携し総合的な浸水被害対策を実施している。
こうした中、気候変動による水災害の激甚化・頻発化を踏まえ、流域のあらゆる関係者が協働して流域全体で治水対策を行う流域治水への転換を図ることとし、本流域においては2021年3月にハード・ソフト対策が一体となった流域治水の全体像を取りまとめた流域治水プロジェクトに基づき取組を進めている。
さらに、流域治水の実効性を高め強力に推進するため、2021年11月に特定都市河川浸水被害対策法の一部を改正する法律が施行され、気候変動による降雨量の増大に対応した治水計画の見直しを行うこととされている。
このため、本流域では今年4月に開催した県と市町で構成する境川・猿渡川流域水害対策協議会での協議を経て、気候変動を踏まえた流域水害対策計画の見直しや、流域全体で総合的な治水対策をさらに推進できるよう、境川・猿渡川の一部及び支川の特定都市河川への追加指定について市町と調整しながら検討を進めている。
今後も流域の人々の安全・安心な暮らしを守るため、境川・猿渡川流域の治水安全度の向上にしっかりと取り組んでいく。
【委員】
まず、河川堤防の地震・津波対策について伺う。
9月21日から降り続いた豪雨により、復興途中の能登半島に土砂災害をもたらし、石川県輪島市などでは23河川が相次いで氾濫し、珠洲市、輪島市、能登町を流れる8河川においては21日と22日の2日間で2回氾濫し、氾濫した川の近くでは仮設住宅が浸水、住宅が4軒流される、住宅が傾くなどの被害が報道された。本日の報道にも、豪雨災害に関連する死者数は14人、安否不明1人、けが人47人とあり、甚大な被害をもたらしている。住民のインタビューにおいても、地震により堤防が沈下して堤防を水が乗り越えた、地震がなかったらこんな被害にはならなかったと思うと答えていた。
今回の河川の氾濫、土砂災害の理由には、能登半島の河川の特徴である、河川が短く急流であること、計画雨量の2倍以上の雨が降った場所もあったこと、元日の能登地震によって壊れた護岸が仮復旧のままの状態であったことなどを指摘した考察や、護岸や堤防の機能低下に加え海底隆起などの地形変化が河川の流下能力に影響した可能性を指摘した考察もあった。
河川の耐震については、地震発生直後の津波などの被害想定に加え、その後の起こり得る豪雨などの水害等に対する備えも必要であり、より安全な河川整備が必要であると強く感じた。
本県では、第3次あいち地震対策アクションプランを策定し、地震から県民の生命・財産を守る強靱な県土づくりを目標として、地震に強い安全な愛知を目指して対策に取り組んでいる。随時、大規模な災害など課題検証を踏まえた改定など、アクション項目の強化を図って進捗管理している。その中で重点テーマの視点1に、被害予測調査の結果を踏まえ、減災効果を高める河川、海岸、堤防等の耐震化等の推進が挙げられている。
本年8月8日に宮崎県で震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震で、気象庁は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を初めて発信したことは記憶に新しい。
建設委員会の県内視察調査の中でも、河川の堤防の耐震化について要望された地区があったことを記憶している。南海トラフ地震に備えた河川堤防の耐震化は早急に対応すべき内容である。
以上を踏まえて、県が管理する河川堤防の耐震化の考え方及び工事の進捗状況について伺う。
【理事者】
河川堤防の耐震化については、地震直後の堤防沈下による浸水や、その後に到達する津波での浸水により、人的被害など甚大な被害の発生が予測される区間を対策区間として設定しており、17河川で総延長47.6キロメートルの区間において、地震の揺れに伴う液状化による堤防の沈下を抑制するための耐震化工事を進めている。
工事の進捗状況については、昨年度末までに17河川、総延長37.1キロメートルで、計画の約8割の堤防の耐震化を完了している。
今後とも国の防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策などを活用し、地震・津波対策にしっかり取り組んでいく。
【委員】
大規模災害発生後は、復旧が速やかに行われることが重要である。そこで、災害発生時の建設事業者等との連携体制について伺う。
7月に広島県土木建築局及び危機管理課の取組を視察した。豪雨災害が頻発し甚大な被害を繰り返し受けた広島県においては、平成30年7月豪雨災害及び令和3年7月・8月豪雨災害を受け、大規模災害後の公共土木施設の被災箇所の調査、そしてその後の公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法による、災害復旧事業の申請及び復旧工事を実施するための測量・設計を迅速に行うことを目的に、令和3年6月から大規模災害時の支援協力に関するコンサルタント協定の運用を開始していた。
また、広域の災害発生時に応急工事等を実施する業者の確保に時間を要した地域もあったことから、県と市町が対応可能な業者などの情報共有を行い、速やかな応急工事が可能となるような大規模災害時の協力建設業者登録制度を創設し、早期復旧の体制づくりを行っているとのことであった。
想定外が次々と起こる異常気象に備え、建設業者や建設コンサルタントとの連携体制を構築し確実かつ速やかに応急対応を行うことで、被害を最小限に抑え、県民の生命・財産を守っていく必要がある。
以上を踏まえ、本県における災害発生時の建設事業者等との連携体制について伺う。
【理事者】
建設部門では、発災後の時間の経過、それと災害の規模に応じて、段階的な連携体制を整えている。
まず、発災直後の初期段階においては、各建設事務所及び港務所が管内のエリアごとに地元の建設業者と個別に締結している防災安全協定に基づいて、巡視による被災状況の把握と危険箇所への立入り規制などの緊急対応を速やかに行う。
小規模な災害の場合は、その後の道路啓開や堤防の仮締切りなどの応急復旧工事も、引き続き個別協定により地元建設業者が対応する。
しかし、大規模な災害になると、建設業者自体が被害を受けるなどして地元建設業者だけでは対応しきれないことが想定される。そのため、県全域を対象として建設業団体と締結している包括的な協定に基づいて当該団体を通じて対応可能な建設業者を特定し、出動要請を行い、応急復旧工事を行う体制も整えている。これにより、例えば東三河全域で甚大な被害が発生し、地元建設業者だけでは対応し切れない場合に、隣接する西三河、さらには尾張や知多地域の対応可能な業者に出動要請を行うことが可能となる。
現在、個別協定については重複も含めて381社の地元建設業者と協定を締結しており、包括協定については一般社団法人愛知県土木研究会と一般社団法人愛知県建設業協会、そして一般社団法人日本建設業連合会中部支部の三つの建設業団体と締結している。
さらに、複数県にまたがるような大規模災害時には、国土交通省中部地方整備局が管内全域を調整し、一般社団法人日本建設業連合会中部支部の会員業者に一元的に出動要請する仕組みも構築している。
また、応急対応後には、災害復旧事業による本復旧に向けた速やかな調査や測量、そして設計などが必要となるので、測量設計や地質調査に関するコンサルタント業者の団体とも協定を締結している。
いずれの協定についても、いざ大規模災害が発生した際にこの仕組みが適切に機能し、建設業者等と連携した円滑な応急対応を行うことができるよう、引き続き実動訓練の充実などに取り組む。
【委員】
衣浦トンネルと衣浦豊田道路の有料区間を無料にできないかという立場で質問する。
先日行われた建設委員会において、知多建設事務所管内に対する参考人意見の中で、半田市長が、衣浦大橋周辺の渋滞対策として、衣浦トンネルを低料金化または無料化して、交通量の分散を図ることにより、衣浦大橋周辺の慢性的な渋滞を解消することと発言した。私の地元は刈谷市であるので、衣浦大橋からは少し離れたところにあるが、それでも刈谷市民からも同じような要望を聞く機会が多くある。したがって、市長の発言には我が意を得たりと思った。
しかし、それに対する回答は、2023年度末現在で衣浦トンネルの未償還金が残っていること、あるいは衣浦大橋周辺の渋滞対策はトラス橋の架け替えなどにより渋滞対策を進めていくこと、したがって、現時点では早期の低料金化や無料化は困難と考えているという答弁であった。
また、これと同様の事例で、碧南市と豊田市を結ぶ衣浦豊田道路のうち知立市新林町から国道1号線をまたぎ豊田市生駒町までの約4.3キロの有料道路、衣浦豊田道路がある。有料区間を避けた交通によって周辺の一般道路が混雑しているので、無料化を要望する地元の声を聞くことも多くある。
そこで、この2路線についてもう少し掘り下げて議論したい。ここ数年の交通量、償還額の推移、現時点での未償還額はどのぐらいあるのか、そして償還満了の期限はいつまでか伺う。
【理事者】
衣浦トンネルの日平均交通量は、コロナ禍の2020年度に約1万5,800台であったが、その後回復傾向にあり、2023年度は約1万7,300台である。
次に、償還額は、2021年度から2023年までの3年間において1年当たり約4億円であり、現時点での未償還額は約52億円である。また、償還満了日は2029年11月である。
衣浦豊田道路の日平均交通量は、コロナ禍の2020年度に約1万4,700台であったが、その後回復傾向にあり、2023年度は約1万6,400台である。
償還額は、2021年度から2023年度までの3年間において1年当たり約1億円であり、現時点での未償還額は約159億円である。償還満了日は2034年3月である。
【委員】
衣浦トンネルは、現時点の未償還額は52億、毎年約4億円を償還して、償還満了の期限はこれから5年後の2029年である。一方、衣浦豊田道路は現時点の未償還額は約159億円で毎年約1億円を償還していて、償還満了は今から10年後の2034年である。特に、衣浦豊田道路は毎年1億円しか返せていないわけだから、普通にいえば償還までにあと159年かかり、今のペースではとても返し切れないと想定される。
料金徴収期限を迎えたときに未償還金が残ることは、当初の計画どおりの償還ができていない、つまり思ったような通行量がないことを意味していると思うが、その点を伺う。
また、料金徴収期限を迎え、仮に無料開放となる際に未償還金が残る場合は、どのように対応するのか伺う。
【理事者】
衣浦トンネルは、1970年度に2車線を事業化し、その後、1994年度に4車線化の事業変更をしている。また、衣浦豊田道路は1999年度に事業化しており、計画時の将来交通量はそれぞれの事業許可時の最新の道路交通センサスを根拠に算出している。
開通後、実際の交通量は景気の動向や沿線の土地利用状況などによる社会情勢の変化、さらには国道247号や国道419号をはじめとする周辺道路の整備状況の影響を大きく受けているものと考えている。その結果、現在の交通量と計画の交通量を比較すると、衣浦トンネルでは約8割、衣浦豊田道路では約5割と下回っている。
次に、未償還金についてである。
まずは、未償還金を少しでも減らせるよう県道路公社と運営権者の愛知道路コンセッション株式会社(ARC)と連携しながら、利用促進の取組を行い、料金収入を増加させたい。これまでに土・日・祝日に知多4路線、衣浦トンネルと衣浦豊田道路を対象とした1日1,000円の有料道路乗り放題企画を実施している。現在は、衣浦トンネルなどがデザインされた9種類のARC道路カードを配布し、県内各地の周遊に合わせて有料道路の利用を期待している。
また、償還満了に当たり未償還金が残ることが想定される場合には、大規模災害や社会情勢の変化などにより償還が滞るのを防ぎ公社の経営の安定化を図るため、料金収入の一部を積み立てて全体を一括管理し、公社が内部留保している損失補塡引当金によって未償還金を清算した過去の事例を踏まえ、事前に国など関係機関との調整が必要になる。
【委員】
計画時には将来の交通量はそれぞれ事業認可時の最新の道路交通センサスを基に算定したとのことであるが、いろいろな周辺状況が変わって、結果的に今は衣浦トンネルでは約8割、衣浦豊田道路では約5割である。
この答弁から分かるように、衣浦トンネルも衣浦豊田道路も、投資した資金に見合うだけの十分な活用がされていないと思う。衣浦トンネルも衣浦豊田道路も交通容量にはまだ余裕がある一方で、その近くにある道路は渋滞で悩まされているという現実がある。
また、損失補塡引当金等を活用しながら償還を満了することになれば、どちらにしても衣浦トンネルは5年間は現状のままであり、衣浦豊田道路も10年間は現状のままである。
また、トラス橋の架け替え等により衣浦大橋周辺の渋滞対策に取り組むといった委員会答弁があったが、それが完成するにはまだしばらく時間がかかるかと思う。今まさに困っている渋滞に対して、即効性のある対策は衣浦トンネルなどを無料にして交通量の分散を図ることだと思う。また、衣浦豊田道路にしても、無料開放によって周辺道路との交通分散も図ることができると思う。
そこで、この本来入る利用料金の収入を放棄してでも、たくさんの市民や県民に利用してもらったほうが施設の有効利用になり、市民・県民へのサービスにつながるのではないか。そこで、衣浦豊田道路の未償還額については愛知県が負担し、一括返済することで早期の無料化をすることはできないのか伺う。
【理事者】
現在、衣浦大橋周辺の渋滞に対応するため、将来の交通見通しも踏まえた渋滞対策として、衣浦大橋の整備をはじめとする周辺道路の整備を段階的に進めている。衣浦トンネルの無料化については、衣浦大橋周辺の渋滞対策の施策として想定していない。
また、衣浦豊田道路周辺の一般道路の混雑についても、無料化によって混雑の解消が見込まれるかなど、その効果は明確になっていないため慎重な検討が必要である。そのため、償還の途中で愛知県が未償還額を負担することは、よほどの必要性がない限り困難である。
今後は、衣浦トンネルや衣浦豊田道路の償還に向けて、国など関係機関と協議するとともに、周辺道路の混雑緩和に向けた取組について地元自治体など関係者と調整していく。
【委員】
無料化は難しいという答弁であった。
冒頭、さきの委員会で半田市長が無料化を要望したといったが、過去の議事録を見ると、ここ5年ほどずっと同じ要望を半田市長が行っている。それに対する答弁は、現在は未償還額が幾ら億円あるとのことである。毎年この金額は4億円程度減っているが、ずっと同じ答弁である。毎年要望しているのは、それだけ強い声が市民や県民からあるのだと私は推測する。そうであれば、実現できるような何かよい方法を模索することが大切なのではないか。
全国には、地方自治体が有料道路の未償還額を負担し、早期に無料開放した事例もある。私も市議会議員のときに視察に行った北九州市では、若松区と戸畑区を結ぶ若戸大橋あるいは若戸トンネルというものがあったが、これを9年早く無料にした。この財政負担は117億と報じられた。こういった事例もあるので、検討することは可能ではないか。
とにかく、初めから未償還金があるから難しいと決めつけてしまうのではなく、市民・県民へのサービス向上あるいは投資した道路設備の有効利用の観点で、何らかの方策を考えてもらうことを要望する。
【委員】
巨大地震発生が危惧されている本県でのブロック塀対策について質問する。
2024年1月1日の能登半島地震で多くの人が被災した。また、8月8日宮崎県で発生した震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震で、気象庁は南海トラフ地震の想定震源域では大規模地震が発生する可能性がふだんと比べて高まっているとした臨時情報が出され、巨大地震発生の不安を感じ、改めて大規模地震災害に備えた取組を加速していくことが必要だと感じた。
また、近年、日本各地で局地的な大雨によって多くの災害が発生し、今後も大雨等によって多くの被害が発生することも想定されている。
8月27日に発生した蒲郡市の土砂崩れで木造2階建ての住宅がのみ込まれ、この家に住む家族5人が生き埋めになった。
能登半島地震の災害ボランティアに行った人が、様々な場所でブロック塀が倒れているところを見たとのことである。
平成30年6月18日、マグニチュード6.1、最大震度6弱、大阪府の北部地震では、高槻市などで大きな被害が出て、ブロック塀の倒壊で子供が亡くなった。改めて説明すると、大阪市内で発生した強い地震であり、多くの人々に衝撃を与えた。また、大阪市は都市化が進んでいるため狭い地域に多くの建物やインフラが集中しており、震度6弱という揺れが多大な影響を与えた。地震後には学校や公共施設の安全性を見直し、防災対策が強化される契機となった。
地震後に全国でブロック塀の点検等の対策が取られたと記憶しており、大阪では倒壊事故への対応が取られたが、改めて本県の対応を伺う。
【理事者】
2018年6月に発生した大阪府北部地震の被害を受け、本県ではブロック塀の安全対策に取り組み、所有者に対してパンフレットや補助制度等により安全対策を促している。また、市町村が定めた避難経路等でブロック塀の安全対策に重点的に取り組んでいく区域を重点対策区域とする2段階の取組を行っている。
とりわけ重点対策区域については、県が所管する48市町村において地震後の2018年7月から8月にかけて市町村と連携して安全点検パトロールを実施している。
パトロールの結果、不適合と判定された3,275か所のうち、本年8月末までの6年間で、除却などの対策が行われたのは1,160か所で、その対策率は約35パーセントとなっている。
また、県と同等の権限を持つ名古屋市はじめ6市についても、独自に範囲や対象を定めてパトロールを行っており、今後も引き続き県が所管する48市町村や名古屋市はじめ6市と連携して、不適合なブロック塀のフォローアップを行っていく。
【委員】
その後、継続して行われている補助制度について、市町村への補助実績を伺う。
【理事者】
本県では、大阪府北部地震の発生した翌年の2019年度に、民間ブロック塀等除却費補助金を創設し、所有者がブロック塀等の除却や改修等を行う費用に対して市町村が国の補助制度を活用してその費用の一部を補助する際に県も連携して補助を行っている。
昨年度は44市町の521件に対して補助を行っており、2019年度からの累計では3,124件に対して補助を行っている。
【委員】
また、所有者に対してどのように周知しているのか伺う。
【理事者】
所有者に対しては、市町村においてブロック塀の安全対策として相談窓口の設置やホームページ、広報誌等で広く周知する取組を行っている。
そうした中、本県としても市町村や建築関係団体と連携し、ブロック塀の所有者がその危険性の有無を自己点検しやすくするため、チェックポイントをイメージイラストつきで分かりやすくまとめたパンフレットを作成し、市町村に活用してもらっている。
さらに、市町村や建築関係団体と連携して、ブロック塀診断士などの専門家の同行による戸別訪問を行い、現地で点検を実施し、具体的な対策や補助制度の説明をする取組を行っている。
今後も引き続き、市町村や建築関係団体と連携して周知啓発を行い、ブロック塀の安全対策を促進していく。
【委員】
不適合と判定された3,275か所のうち、本年8月末までの6年間で除却等の対策が行われたのは1,160か所で、その対策率は約35パーセントとなっているとのことだが、残りの約65パーセントの危険箇所のブロック塀についても対処してもらいたい。
先ほどいったとおり、公共施設の耐震化工事は行われているが、災害時に避難所として機能する施設の耐震性を高めることも重要視されている。大阪府では、この震災でライフライン耐震化、交通インフラ整備について見直しを行っている。本県においても南海トラフ地震の大規模地震が発生する可能性が高いといわれているので、改めて大規模地震災害に備えた取組をしっかり進めることを要望する。
【委員】
県立公園について質問する。
都市・交通局公園緑地課が管理する県内の都市公園は、11公園ある。この11公園、現場を見ると、本当に県民から愛され、また地域からも利用されており、利用率も高い公園である。公園の意義として、防災の観点が強いことも都市公園の特徴であるし、レクリエーションや都市緑化、環境保全など様々な観点がある。
11公園ある県立公園において、民間の活力を導入し、さらなる魅力の向上につなげている公園が幾つかある。
小幡緑地では、キャンプ場や、民間の人がレストラン等も運営し、食も楽しんでもらえる。ランチの時間帯には多くの人々が来ている状況を見た。キャンプ場は、週末には宿泊している人が、日中ではバーベキューを楽しんでいる人がいる。また、新城総合公園では、一斉に多くの人が利用できるわけではないが、自然を楽しみながら、ジップライン等も楽しむことができる工夫もされていた。大高緑地では、ディノアドベンチャー名古屋で、実物さながらの恐竜の模型がセンサーで動いて、恐竜のいる森の中を歩くという模擬体験ができる。これらは県立公園の中に民間の活力を導入して、魅力向上につなげている成功例といえる。
そこで、これまで愛知県の県立公園において、民間活力を導入した施設の、導入前から導入後における成果、利用状況、利用率の向上など、成果を伺う。
【理事者】
大高緑地のディノアドベンチャー名古屋は、動いてほえる実物大模型の恐竜が設置された樹林地を探検するアトラクション施設であり、オープン後、毎年約10万人の利用がある。
新城総合公園のフォレストアドベンチャー・新城は、樹林地を生かしたアスレチック施設であり、県内だけでなく隣接する静岡県からの来場者も多く、毎年約2万人の利用がある。
小幡緑地のオバッタベッタは、県で初めてパークPFI制度を活用し、地元の野菜を味わえるビュッフェスタイルのレストランと、バーベキューサイトやキャンプサイトから成る施設となっており、こちらも毎年約4万人の利用がある。
効果については、民間の資金をもって施設を整備するので、県が整備する費用を軽減できることはもちろんのこと、民間ならではの発想でサービスを提供するなど、近隣の公園にはない特徴的な施設であることから、地元の方々だけでなく、県内外から多くの来園者を呼び込むことができており、公園の魅力が向上するとともに地域の活性化につながっている。
【委員】
年間、大高緑地については10万人、小幡緑地については4万人の来園者がいるので、過去の数字からさらにプラスがされていると感じる。
県でこの民間活力の導入に向けて、どのような議論がなされたのか、プロセスについて伺う。すなわち、県立公園に対して民間活力を導入する際に、県の担当部局としてどのようなプロセスを踏んで導入に向けて動いているのか伺う。
【理事者】
県営都市公園は、厳しい財政状況の中、限られたコストでより質の高いサービスを提供していくことが求められており、公園のさらなる魅力向上を図るため、引き続きパークPFIなどの手法を用いて、民間事業者の資金やノウハウなど、民間活力を積極的に導入していきたい。
そこで、公園内の低未利用地や未活用用地などの区域を対象に、公園の魅力向上につながる施設の導入の可能性について、民間事業者へマーケットサウンディングを実施し事業提案を求めていく。その後、参加意欲のある民間事業者との対話を続け、民間活力導入の実現性が高いと判断された公園については、公募条件等を整理した上で事業者を公募していく。
【委員】
民間事業者に対して未利用地における事業提案等を待っているという答弁であった。未利用地などがあるとアナウンスをして、民間事業者に着目してもらい、興味を持ってもらい提案してくるのを待つということだと思う。
もちろん、そういった過程を踏みながら今までこの3か所の民間活力導入が形になっているので、一旦評価する。一方で、周辺道路の環境や、利用率の向上が見込むことができる環境の変化などがあったときには、県は先を読みながら、民間事業者に対してこれだけの効果が上がる可能性があることをプレゼンする必要がある。
例えば、東三河ふるさと公園は、御油側と御津側で二つに分けて入り口があり、未整備区間もあるが、約100ヘクタールを超す大きな県立公園である。今年度末にはいよいよ待望の約73キロメートルの国道23号名豊バイパスが、愛知県内は全線開通となる。その中において、新たにできる金野インターチェンジを下りてすぐのところに、東三河ふるさと公園の御津側の入り口がある。この県立公園において、これから魅力を向上させていくために、成功事例も幾つかあるうえで、積極的に動いていくことも必要である。
このようなことも当局として考えるべきだと思うが、状況の変化、利用率等の向上を見込むことができる環境が整っている状況において、県当局としてどのような取組を今後行っていくのか伺う。
【理事者】
東三河ふるさと公園は、豊川市東部の山林及びその周辺の持つ良好な自然環境を生かしつつ、東三河の地域性が感じられるよう地域の自然要素や歴史を取り入れた景観をつくり上げている。現在まで約136ヘクタールの区域を供用しているが、自然豊かな樹林地や御油と御津の拠点から高低差約150メートルの展望台に向かう園路や散策路は、まだまだ有効活用ができるのではと考えている。
委員指摘のとおり、国道23号蒲郡バイパスの開通によって、本公園へのアクセスが国道1号と国道23号のダブルネットワークになり、さらなる利用促進を図る絶好の機会であると認識している。
2021年度に行ったマーケットサウンディングの際には、園内の多くが樹林地であり開発できる平地が少ないことや、名古屋市など人口密集地域から遠いため十分な集客力が見込めないことから、本公園での民間活力導入について参加意欲の高い事業者はいなかったが、今後、交通アクセスの向上など、周辺環境が改善していくことなどについて、民間事業者にしっかりアピールすることで、東三河ふるさと公園への事業参入を積極的に働きかけていく。
【委員】
ぜひ積極的な取組を期待している。要望するのは、11公園のうち、30年以上経過している公園が8施設あり、約7割ある。すなわち老朽化が著しく、維持管理もしっかりしなくてはならない公園を抱えていることは把握しなくてはいけない。東三河ふるさと公園だけでも約140ヘクタールあり、万博の記念公園や大高緑地も同じである。
100ヘクタールを超す公園が幾つかありながら、その大きな面積を占めるのが樹木である。うちの近所でも、つい最近車を運転している人が、倒木が当たったという事故があった。やはりどの樹木が危ないのか、どの樹木は元気であるのかという点検もしなくてはいけない。県で樹木の点検等を行っている予算額では、これから全て点検を行っていくと20年もかかってしまうと聞いた。また、維持管理についても、一番多かった県立公園に対する維持管理費は約3億円であったが、現在では3,000万円ほどであり10分の1ほどまで低下している。その辺も踏まえて県民が安心して暮らすことができるように、また県立公園の魅力向上につながるように、ぜひ頑張ってもらいたい。
続いて、緊急輸送道路について伺う。
昨年9月の代表質問に対して答弁をもらった部分である。今日、災害の対応や防災力等向上が大変重要な時代となっている。豪雨被害や地震等の際、緊急輸送道路の確保が重要になってくるという指摘をした。昨年9月の代表質問の答弁では第3次の緊急輸送道路の指定をする、ラストワンマイルを指定するという答弁をもらった。
そこで、この第3次の緊急輸送道路の指定状況について伺う。
【理事者】
本県の緊急輸送道路については、国土交通省の中部地方整備局、愛知県などの道路管理者、防災部局、警察、自衛隊、港湾管理者などから成る愛知県緊急輸送道路ネットワーク計画等策定協議会において指定している。
本年2月に開催された協議会において、既存の緊急輸送道路から重要な防災拠点までをつなぐ道路、いわゆるラストマイルを、新たに第3次緊急輸送道路として位置づけた。
具体的には、市役所などの緊急車両を擁する行政機関170か所、豊橋市民病院など災害病院や、豊田スタジアムなどの地域内輸送拠点など158か所、合わせて328か所の重要な防災拠点をつなぐ延長176.7キロメートルの道路を第3次緊急輸送道路として指定した。
また、第3次緊急輸送道路の指定に当たっては、市町村に対して指定の方針などの説明会を行うとともに、経路の選定については市町村と幾度も調整を重ねた上で指定に至っている。
【委員】
我が豊川市でいうと、豊川市の中心を通る、姫街道国府馬場線が第2次の緊急輸送道路に指定されている。それは豊川市の中心を東西に通っている道路であり、300メートルほど南に入ると豊川市の市民病院、また100メートルほど北に入ると市役所があるなど、メインの緊急輸送道路である。ラストワンマイルが病院や市役所につながっており、この区間を指定してもらったという説明であった。この区間は市町村とも連携しながら協議し、理解をもらっているという認識の答弁であった。
そこで、この第3次の緊急輸送道路に指定されると、大きな地震等が起きたときには、救助に来てくれる人、また支援物資を運んでくる車等が円滑に通れるように道路を啓開しなくてはいけない。
すなわち、地震等があったときにも強い道路にしていかなくてはならないということである。その整備において、例えば電柱の地中化や、橋を強くすること、のり面を強くすることなどは、市町村が独自で予算を組んで整備していくのか、県が予算を出していくのか、国が予算を出してくれるのか。また、どこがリーダーシップを取りこの事業整備を進めていくのか伺う。
【理事者】
市町村における緊急輸送道路の耐震化等の対策についての予算について、こうした緊急輸送道路の事前の防災対策の推進には、国庫補助金など国の支援が不可欠と考えている。県としても、機会があるごとに防災・減災、国土強靱化のための予算、財源を継続的に確保できるよう国に強く訴えている。
また、第3次緊急輸送道路の約6割が、市町村が管理しているものである。国の補助金のほかにも、県と国土交通省中部地方整備局が連携して立ち上げた中部自治体支援ポータルサイトを活用して、市町村からのインフラ防災、維持管理に関する相談に応じたり、無電柱化に関する勉強会を開催したりするなど、技術的な支援に取り組んでいる。
また、無電柱化に関してもう一つあるが、新たな電柱の設置の抑制を目的として、道路法第37条に基づいた電柱の占用制限の手続を行うように、県から、対象となる市町村に働きかけており、これまでに今回対象の48市町村全てで告示が完了している。
さらに、大規模な災害により道路に車両が滞留した場合に備えて、2020年度にレッカー関連3団体と協定を締結し、市町村からの要請があれば、市町村もこの協定を活用できる内容となっている。2022年度からは、この協定に基づいて、車両の移動に関する訓練も実施している。市町村の職員の方にも参加してもらっている。
今後は、さらに本県の道路啓開計画である中部版くしの歯作戦に基づく初動体制の構築や、図上シミュレーション訓練などの道路啓開訓練について、関係する市町村にも参加を呼びかけるなど、国・県・市町村が一体となって取り組む。
引き続き安全で安心な愛知の実現に向け、国・市町村など関係機関と連携を図り緊急輸送道路ネットワークの強化に取り組む。
【委員】
もう一点、昨年6月2日の豪雨被害の際に、国道1号が通行止めになり、国道151号と国道1号が交差する地点が水に浸かった。この国道151号の北側が、国道151号の一宮バイパスであり、現在、県でしっかり整備をしてもらっている最中である。こちらも命の道であり、新城市の人々が第3次医療を受けるために豊川の市民病院に救急車で来ることが多いが、片道1車線の道路でありながら慢性的な渋滞をしている。
そこで、一宮バイパス整備のこれまでの進捗状況と、今年度の事業状況について伺う。
【理事者】
一般国道151号一宮バイパスは、豊川インターチェンジ北側の現道から市道上長山一宮線までの延長約3.6キロメートルの1工区と、市道から新城市川田の新城バイパスまでの延長約4.3キロメートルの2工区に分けて事業を進めている。
このうち1工区については、昨年度は用地買収を進め、その進捗率は約98パーセントとなった。また、JR飯田線鉄道交差部の橋梁の床版工事を実施した。
今年度も引き続き残る11件の用地買収を進めるとともに、JR飯田線交差部につながる区間の橋桁の架設工事を今月実施する予定である。さらには、市道交差部における函渠工事を行うなど、事業の推進を図っていく。
また、2工区については、豊川市内のうち北側に位置する東上地区で、昨年度、橋梁予備設計に加え用地測量を実施した。今年度も引き続き用地測量を進めていく。
また、南側に位置する上長山地区については、今年度は市道交差部の形状について、交通管理者である警察と調整を進めていく。さらに、2工区のうち新城市内については令和4年度から用地取得を進めており、その進捗率は約5割となっている。
今年度も引き続き用地買収を進めていく。
【委員】
この国道151号一宮バイパスは、豊川側が1工区の3.6キロで、2工区の新城側が4.3キロであり、この二つを合わせて国道151号の一宮バイパスという区間である。
事業を着手して数年たっているが、全線開通が完了という観点からすると、現状で約何割ほど完了しているのか、細かい数字ではなくて構わないので伺う。
【理事者】
愛知県の事業評価書では、全体の事業費は約170億円となっている。令和3年度までに約80億円の事業費を投入しており、そこから数年たっているので、残事業費は約70億円と考えている。
【委員】
実際に工事の半分以上終わっているのか、終わっていないのか。
【理事者】
全体の工事の進捗率について、具体的な数値は持ち合わせていないが、現場を見ると分かるように、先ほど説明したJRの上の鉄道橋をまたぐ橋梁、それから川を渡る橋梁の整備も進んできているので、これからしっかり取り組んでいく。
【委員】
この総額の約170億円という数字が明記されたのは平成21年くらいであった。この当時はまだ消費税が上がる前であった。また6月定例議会で委員から現在の燃油価格の高騰、また労務費の上昇がどの程度であるかという質問に対して、労務費は1.7倍、そして物価は1.4倍上昇しているとあった。この状況において、170億円の総事業費のうち100億円を投入する予定になっているが、現場を見ても5割、6割以上の進捗を感じず、地元からすると心配である。
総事業費について、何十年も前の170億円というものが据置きではなく、5年に1度の見直し時期があるので、燃油価格や労務費の上昇なども加味しながら取り組んでもらいたい。
【委員】
私からは、二項目伺う。
一項目めは、名古屋高速道路の大規模災害、地震対策についてである。
8月8日気象庁から発表された南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)、この臨時情報が出された期間はちょうどお盆の帰省や行楽シーズンと重なって、多くの人たちが車で移動した。
そこで、まず名古屋高速道路では、この臨時情報を受けてどのような対応をしたのか伺う。
【理事者】
名古屋高速道路公社では、地震防災応急計画に基づき30人で構成される警戒態勢を構築し、8月8日の南海トラフ地震臨時情報発表時から15日の政府による注意呼びかけ終了までの7日間、24時間体制で延べ300名の職員で対応に当たった。
具体的な活動の内容としては、まず災害対策室に対策本部を設置し、関係機関・関係業者に対して被災時における連絡体制の確認を行った。その後、臨時情報発表以降の職員体制の確認、パトロールカーや非常用発電機の燃料など資機材の確認、テレビやインターネットを通じて地震に関する情報収集などを行った。
今回の発表に関連する被害などはなかったが、日頃から関係機関などと情報共有を密にし、臨時情報発表時などには適切に対応していく。
【委員】
私も毎日のように名古屋高速道路を利用しているが、ふと高速道路上で実際に地震が起こったらどうすればいいのか、ほとんど考えずに名古屋高速道路を利用していることに改めて気がついた。
そこで、大規模災害時の高速道路利用者の安全確保に向けた取組について伺う。
まず、名古屋高速道路の利用者へ、大規模災害時の身を守る行動などについてどのように周知しているのか伺う。
【理事者】
具体的な周知方法としては、公社のホームページのほか、公社が発行している情報誌において大規模災害発生時の車両の取扱い、避難方法などを掲出している。
地震発生時には、道路上に設置された情報板によって利用者に対して通行規制などの情報提供を行い、特に震度5強以上の大規模地震が発生した際には車両を左側に停車してもらうよう通知する。
なお、路面の段差や道路施設の損傷などにより継続した走行が不可能と判断した場合には、エンジンを停止し、エンジンキーを運転席に残したままドアロックをせず避難することをお願いしている。
また、高架区間には約1,000メートルごとに路面から地上部に下りる非常階段が設置されており、路側壁面に100メートルごとに設置された表示板に従い、最寄りの非常口から階段を降り、出口扉付近に示されている広域避難場所への避難をお願いしている。
なお、トンネル区間などには約500メートルごとに非常口あるいは非常階段が設置されている。
今後も引き続き大規模地震発生時における避難方法の周知に努めていく。
【委員】
名古屋高速道路公社で、冊子を作っているとの話だった。すごくおしゃれでお金をかけたものを作っているようだが、たぶんほとんどの人が見たことがなく、もったいないと思う。その中で本当に丁寧に、大規模地震の際の避難の仕方が、写真やイラストを入れて作ってあるので、そういったものをもっと県民に見てもらえるようにしてほしい。
この項目の最後の質問であるが、南海トラフ巨大地震はいつ発生してもおかしくない状況で、地震発生時に安全を確保するために、名古屋高速道路では南海トラフ地震への備えについてどのような取組を行っているのか伺う。
【理事者】
名古屋高速道路公社では、毎年、南海トラフ地震を想定した防災訓練を計画し、本年も8月30日に名古屋市港区にある公社の船見基地にて実施した。
訓練の内容としては、特殊な資機材を使用して放置車両の移動や道路面の段差を解消し緊急車両の通行ルートを確保するまでの応急復旧作業であり、被災時の早期の道路啓開に向けて対応力の向上を図っている。
このような訓練は、大規模災害などが発生した際の復旧の第一歩として有効かつ重要な取組である。
また、本年4月からは、料金所がない一宮線北行きの春日入口及び一宮西春入口において、遠隔操作による入り口閉鎖装置の運用を開始している。これにより、従来は職員などが現場に駆けつけ入口を閉鎖していたが、遠隔操作により閉鎖することができるため、災害時の速やかな対応が可能となる。
今後も災害時に迅速かつ適切な対応を行うための防災訓練などを通して、引き続き安全安心の確保に取り組んでいく。
【委員】
名古屋高速道路でそういった訓練をしっかりしていることを知らなかった。いろいろな状況を想定して訓練をやっていると思った。あと知らなかったことは、キーをつけたまま避難することで、特に女性だとキーはバッグに入れたままだし、男性でもポケットにキーを入れたままであり、パニックになるとキーを持ったまま避難してしまうことが大いに考えられる。レッカーで車が動かせない状況が出てくるなど、車にキーがないと大変なことになるので、必ずキーはそのままにするか、車の中に置いて避難することを、もっと周知徹底してもらいたい。
2項目めは、緊急輸送道路沿いの耐震不適格建築物についてである。
この7月初旬に非常にショッキングな見出しの新聞記事が目に留まった。新聞記事の見出しは、「名古屋市震度6強で緊急輸送道路沿い建物4分の3倒壊か」とある。記事では、名古屋市内の主要都市間などを結ぶ第1次緊急輸送道路沿いで耐震診断が義務づけられる建築物342棟のうち4分の3に当たる256棟が震度6強の地震で倒壊する恐れがあることが名古屋市の調査で分かったという内容であった。
災害時に緊急車両の通行や避難、支援物資の輸送などを担う都道府県が指定する緊急輸送道路沿いでは、1981年以前の旧耐震基準で建築され、道路幅の半分以上の高さがある建物などは、耐震診断が義務づけられている。
そこで、県内の緊急輸送道路沿いの建築物について伺うが、まずは県内の耐震診断を義務づけられた路線及び距離はどのくらいあるか。
また、2021年3月に耐震診断結果を公表しているが、公表時点での対象建築物と耐震診断結果の報告を受けた建築物、そして耐震性が不十分な建築物は県全体でそれぞれ何棟あるのか伺う。
【理事者】
本県では、2014年3月に愛知県地域防災計画で定める緊急輸送道路のうち、第1次緊急輸送道路を基本に国道1号をはじめとした県内50路線、総延長約873キロメートルを愛知県建築物耐震改修促進計画~愛知県建築減災プラン2020~において、沿道建築物に耐震診断を義務づける道路として指定している。促進計画では、指定した道路の沿道にあり耐震診断を義務づけた建築物について、2019年3月を耐震診断結果の報告期限としており、2021年3月には耐震診断結果を県及び県内の6所管行政庁が公表している。
2021年の公表時点において、県内の対象建築物は531棟で、そのうち耐震診断結果の報告を受けた建築物は516棟あり、報告率は約97パーセントとなっている。
また、耐震性が不十分な建築物は401棟であり、耐震診断結果の報告を受けた建築物のうち約78パーセントを占めている。
【委員】
義務づけられた建築物が531棟で、そのうち報告を受けているものが516棟で、報告率は97パーセントであり、報告率としては高い数字だと思う。そして、516棟のうち78パーセントに当たる401棟が、耐震性が不十分だったと分かった。
ちなみに、耐震診断を義務づけられている建築物531棟で報告されたのは516棟だが、耐震診断結果が未報告であった建築物が15棟ある。その後、その15棟はどのような状況か伺う。
【理事者】
耐震診断結果が未報告であった建築物15棟については、名古屋市、春日井市、豊田市が所管しており、それぞれの所管行政庁が所有者に対し耐震診断結果を報告するよう働きかけを行い、2024年3月末時点で9棟について報告済みとなっている。
残る6棟についても、所管行政庁である名古屋市と豊田市が耐震診断結果の報告に向けて引き続き所有者と調整を行っていると聞いている。
【委員】
耐震性が不十分な建築物について、耐震診断結果の公表後に耐震改修及び除却している建築物は何棟あるか伺う。
【理事者】
耐震診断結果の公表後に耐震改修及び除却している建築物の数は27棟である。その結果、耐震性が不十分な建築物は、2021年3月の公表時点で401棟であったが、2024年3月末現在で374棟となっている。
【委員】
耐震改修及び除却している建築物は27棟であり、決して多い数ではない。やはり改修や取壊しが進まないのは、費用が高額であることだと思う。
県の取組として、耐震性が不十分な建築物の所有者に対して改修または取壊しを促進する市町村の耐震改修費補助事業に対して県は助成しているが、その取組状況について伺う。
この補助事業を行っている市町村の数と、これまでの補助件数を伺う。
【理事者】
本県では、耐震診断を義務づけられた建築物の耐震診断結果公表前である2015年度に市町村と連携して耐震改修費補助を創設し、2021年度からは除却も対象に加え、所有者の事情に応じた支援ができるよう拡充を行っている。
この補助制度の対象となる民間建築物があるのは13市町であるが、そのうち補助制度を創設しているのは11市であり、具体的には名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、春日井市、豊田市、瀬戸市、津島市、蒲郡市、豊明市、弥富市である。
また、補助制度を創設した2015年度から2023年度の累計の補助実績は46件で、そのうち改修の補助が27件、除却の補助が19件である。
【委員】
8月8日に南海トラフ地震の臨時情報が初めて発表され、全体的に減災への意識もかなり高まっている。倒壊して道路を塞ぐ恐れのある建築物が数多く存在することは大きな問題である。
そこで、本県として耐震診断を義務づけられた路線の、耐震性が不十分な建築物について、現状と課題と今後の取組について伺う。
【理事者】
緊急輸送道路沿いの耐震診断を義務づけられた建築物については、2021年3月に策定したあいち建築減災プラン2030において、耐震化の目標として2030年度までに耐震性が不十分なものを半数解消を掲げ、目標の達成に向け耐震化を促進しているが、耐震性が不十分な建築物は2024年3月現在で374棟であり、これらの建築物をいかにして耐震改修や除却に結びつけていくかが課題である。
耐震改修補助事業を実施している市からは、所有者等が耐震改修しない理由として、耐震改修の費用負担が大きいこともあるが、所有者等が耐震化の重要性をそもそも認識していないことも理由の一つであると聞いている。
こうした中で、耐震化を進めていくには何より所有者等の意識の向上が不可欠であるため、所有者等に対する周知啓発により力を入れていく必要がある。
そこで、本県ではダイレクトメールによる周知啓発に加え、所有者等への戸別訪問を実施して、改修の必要性などについて所有者等に直接働きかけを行っており、昨年度は瀬戸市の8棟で実施している。また、今年度は新たに緊急輸送道路沿いの建築物の耐震化を呼びかけるリーフレットを作成し、より効果的な戸別訪問ができるようにしていく。
大規模地震発生時に緊急輸送道路の機能を確保するため、沿道の建築物の耐震化は極めて重要であるので、今後も引き続き市町村や関係建築団体と連携し、しっかりと耐震化の促進に取り組む。
【委員】
能登半島地震では道路が寸断されて多くの集落が孤立した。こうした地域は沿道の耐震化が不十分である建物が壊れたら、救助活動も、物資の支援もできず、医療もダウンする。その中で、やはりまだ数多くの耐震が不十分な建物が残っているという現実があるので、やはり県と市町村と一緒になって、戸別訪問するなど、粘り強く進めてもらいたい。
【委員】
生活道路の交通安全対策について伺う。生活道路における交通事故、死亡事故が散見される。その中で、人命優先の安全安心な通行空間のさらなる推進を図るため、ゾーン30プラスの取組が進められている。
ゾーン30プラスとは、最高速度30キロの区域規制と、ハンプ等の物理的なデバイスの適切な組み合わせによって、交通安全の向上を図ることを目的に道路管理者と警察が連携しながら整備を進めるものである。この低速度規制の実施と物理的デバイスの設置により、生活道路における走行速度や抜け道利用が抑制されるという直接的な効果のほかにも、整備計画の策定過程の際に課題の共有ができること、また対策の必要性について地域での合意形成が図られる効果などがある。さらに、統一した看板、路面標示などを設置することにより、ドライバーへのさらなる注意を喚起するという効果も期待をされている。
このゾーン30プラスの取組における県の役割としては、生活道路の主たる道路管理者である市町村と警察による整備計画の策定が円滑に進むよう支援する立場であること、そしてまた国と連携してその策定支援に努めていくこととされている。
そこで、県内におけるゾーン30プラスについて、これまでと今後の取組状況について伺う。
【理事者】
愛知県内においては、名古屋市を除く五つの市町の8地区でゾーン30プラスの整備計画が策定され取組が進められている。また、これら以外の一つの地区においても整備計画策定を目指して、今、検討が進められている。
なお、取組を進めている八つの地区のうち五つの地区においては、当初の整備計画に基づく対策を既に終えており、その効果検証を行い、さらなる対策の必要性について再度検討している段階と聞いている。
県としては、当初の整備計画の策定時のみではなく、こうした事後の取組の段階も含め、技術的な助言や国庫補助採択に向けた対応など、必要な支援を行っていく。
【委員】
幾つかの地区については既に整備を終えて次の段階へ進んでいるので、それ以外の地区にもしっかり促し、引き続き県の役割を果たすように努めてもらいたい。一方で、今年に入って道路交通法の施行令が改正されて、2026年の9月から中央線や中央分離帯がなく道幅が狭い一般道路の法定速度の上限が、60キロから30キロに全て引き下げられる予定である。これによりほとんどの生活道路において最高速度が一律30キロに規制される。
そうした中、ゾーン30プラスの今後の取組について伺う。
【理事者】
道路交通法施行令の改正に伴うゾーン30プラスの取扱いについてであるが、現時点においては国から示されているものはないが、生活道路の速度が30キロに規制されたとしても、生活道路における事故の発生が懸念される限りは、その安全対策は何らかの形で継続していくべきである。
今後も国、市町村、警察と連携し、情報を収集しながら適切に対応していく。
【委員】
現時点では県警察にも国から何も示されておらず、基本的な対応を決めかねているとあった。ただ、生活道路が全部30キロ規制になると、地域の住民も含めて、市町村や自治体への影響が非常に大きいと思う。各自治体、そして警察としっかりと連携して、これからも生活道路の交通安全対策を進めてもらいたい。
また、併せて最高速度が30キロに規制される範囲が広がるのは、やっぱり地域の住民の意識も変わると思う。生活道路で通勤時の朝夕の時間帯に、車両が数多く通るような地域の人は、通学路であれば児童の見守りも含めて非常に安全の意識が高い。一方で、あまり関心がない地域もあり、格差があったが、安全の意識はこれからどんどん高まると思う。
例えば交差点部や、カーブ等の見通しが悪い道路はたくさんあると思うが、そういった地点で、カラー舗装をやってほしいとか、新たにドット等の道路標示を追加で実施してほしいという声が増えると予想している。そうした声にしっかりと答えていけるよう、道路維持課や県としても、しっかりと予算確保できるような体制で計画してほしい。
【委員】
前回の6月定例議会の建設委員会では、県営住宅は国から計画の確認を受けた上で、国の補助を得て県の一般会計で整備される、また、近年は用地を取得して新しい住宅を建設するのではなく、建て替えと長寿命化改善が主体でPFI手法による建て替えも行われていること、県営住宅の家賃は公営住宅法に基づく方式の応能応益方式で家賃を決定し、その会計は特別会計を設けて管理していることの説明があった。
また、現在では考えられないが、いまだに風呂設備が設置されていない県営住宅が多くある現状について質問し、管理する県営住宅の半数しか風呂設備が設置されていないことが明らかとなり、風呂設備が未設置の住戸への風呂設備の設置を進めていくとの答弁であった。
そして、入居している人が取りつけた風呂設備が老朽化して、非常に苦労している状況や、生活保護を受けている世帯は住宅扶助で風呂設備を設置できることも紹介し、県当局の答弁では、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度が利用できることや、生活保護制度の住宅扶助についてしっかりと周知していくとあった。
今回も引き続き県営住宅に関する問題について伺う。
風呂設備が設置されていないこと以外にも、今日の県営住宅が抱える問題は数多くあり、私はこれまでも県当局に対して本会議や建設委員会の場で繰り返し質問してきた。その結果、ほんの少しだけ進んだものもあるが、まだ多くの課題がある。
前回も少し触れたが、79年前の戦争によって日本各地は壊滅的な状態となり、国民は住宅を失い、命がけで厳しい冬を過ごすことを強いられていた。国は、国民が安心して暮らせる住宅を提供することが急務であり、昭和26年6月に公営住宅法を制定し、全国各地に県営住宅、市営住宅、町村営住宅の整備を進めた。
愛知県も昭和28年3月に愛知県県営住宅条例が公布され、住宅に困窮する県民に提供するため、公営住宅法に基づく県営住宅を整備してきた。条例ができた当時の県営住宅は木造やコンクリートブロックを積み上げて造った簡易耐火構造の住宅も多くあった。エレベーターが設置された高層住宅は昭和40年代半ばの高度成長期になってようやく建設され始めたが、この当時はまだエレベーターが設置されていない4階建て、5階建てのいわゆる階段室型の中層住宅の建設が中心であった。
また、法律の変遷を見ていくと、昭和26年の公営住宅法の制定により、低額所得者に対する住宅供給制度が確立され、公営住宅の種類を第1種公営住宅と、より低額所得の者に向けた第2種公営住宅に分類され、国からの建設費の補助率も第1種公営住宅は2分の1、第2種公営住宅は3分の2と、第2種公営住宅のほうが手厚いものとなっていた。その後、平成8年の法改正によって、住宅の種別区分が廃止となり、建設費の補助率も2分の1に統一され、さらには家賃も住宅の建設原価を基にした限度額家賃方式から、入居者の収入と住宅から受ける便益により定める応能応益家賃方式に改められた。
公営住宅法の制定から73年がたち、この間、公営住宅法は様々な改正が行われてきたが、法の目的は国と地方公共団体が協力して健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することで国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することは変わっていない。
愛知県の県営住宅も長い歴史の中で住宅の新設、入居、維持管理、そして建て替えといったサイクルでその役割を担ってきた。しかし、高度成長期に、大量に供給された県営住宅は、今、50年を経過して建て替えを実施する時期となっているが、その対応は追いついておらず、多くの県営住宅で老朽化が進んでいる。
そこで、まず県営住宅の建設年代別に見た状況について伺う。
昭和49年度に建設された県営住宅は今年建設から50年を迎えるが、昭和40年代以前、昭和50年代、昭和60年代以降に分けた管理状況、空き家の状況を伺う。
【理事者】
本年8月1日現在で、県営住宅は5万6,686戸あり、空き住戸は1万3,060戸となっている。これらの戸数には住棟を建て替えることとしている住宅も含まれ、建て替えの対象となっている住棟には新たな入居者の募集を行っていない。また、現在入居されている方は順次新しく建設された住棟などに移転してもらい、移転が完了すると全ての住戸が空き住戸となり取壊し工事に着手する。こうした建て替え予定となっている住棟を除いた管理戸数は、5万909戸で、空き住戸は9,899戸となっており、空き家率は19.4パーセントである。
これを建設年代別で見ると、昭和40年代、1974年以前までの年度で建設された県営住宅の管理戸数は7,122戸、空き住戸2,278戸となっており、空き家率は32パーセントである。次に、昭和50年代の年度に建設された県営住宅の管理戸数は1万6,862戸で、空き住戸は4,053戸となっており、空き家率は24パーセントである。最後に、昭和60年度以降に建設された県営住宅であるが、管理戸数は2万6,925戸で、空き住戸は3,568戸あり、空き家率は13.3パーセントとなっている。
【委員】
次に、エレベーターが設置されていない県営住宅の各階の空き家状況を伺う。
【理事者】
エレベーターが設置されていない県営住宅は、建て替え予定となっている住棟を除いて1万7,165戸あるが、そのうち4,555戸が空き住戸となっており、空き家率は26.5パーセントである。各階の空き住戸の状況は、1階は管理戸数4,218戸に対して空き住戸816戸、空き家率19.3パーセント、2階は管理戸数4,211戸に対して空き住戸888戸、空き家率21.1パーセント、3階は管理戸数4,203戸に対して空き住戸1,103戸、空き家率26.2パーセント、4階は管理戸数3,235戸に対して空き住戸1,095戸、空き家率33.8パーセント、5階は管理戸数1,298戸に対して空き住戸653戸、空き家率50.3パーセントとなっている。
【委員】
現在の県営住宅は全体で5万6,686戸あり、そのうち昭和49年度以前に建設され、建設から50年を経過する住宅で建て替えが予定されていないものが7,122戸もあり、こうした県営住宅の空き家は2,278戸、空き家率32パーセントにもなっている。
前回の建設委員会で明らかになったが、県営住宅に風呂設備を設置し始めたのは昭和61年4月からで、当然これらの建設から年数を経た古い住宅には風呂設備がない。
また、答弁にあったように、エレベーターが設置されていない県営住宅の空き家率は26パーセントを超え、その空き家は3階、4階、5階に集中し、とりわけ5階に至ってはその半分が空き家となっている。風呂設備が設置されていない住宅、エレベーターが設置されていない住宅に空き家が集中している。これが今の県営住宅の実態である。
既に建っているエレベーターが設置されていない住宅は、その住宅の構造上の問題や、エレベーターの設置に必要な敷地などに制約があり、エレベーターを後から設置することが難しいことは理解するが、前回の建設委員会でも質問した浴室スペースは、既に全ての県営住宅にある。そこに風呂設備を設置することは簡単なことだと思う。それをいつまでたっても入居者に設置させていることが問題だと思う。
エレベーターが設置されている住宅も一緒である。エレベーターが設置されていても大規模な改修がなされず、長年放置されていることは県財政が厳しいといっても行政の怠慢であるといわざるを得ない。
県は、2020年3月に策定された愛知県営住宅長寿命化計画で、エレベーターが設置されていない老朽化した5階建て以下の中層住宅は高層住宅に建て替えて入居者を集約し、また老朽化した高層住宅は大規模な改修、すなわち外壁や屋根、配管等の改修に加え、段差の解消や手すりの設置等のバリアフリー化をする長寿命化改善工事を実施して住宅の長寿命化を図っていくとしている。
中層住宅を建て替えればエレベーターも風呂設備も設置され、エレベーターのある高層住宅は長寿命化改善工事で風呂設備を一緒に設置していけば設備面の問題は解決される。
建設から50年経過しても建て替えが予定されていない県営住宅が7,122戸あるわけだが、愛知県営住宅長寿命化計画における県営住宅の建て替えと長寿命化の状況を伺う。
【理事者】
愛知県では、既存県営住宅の有効活用と長寿命化を図ることを目的として、2020年3月に愛知県営住宅長寿命化計画を策定し、2020年度から2029年度までの10年間を計画期間として効率的に事業を実施する。計画では、老朽化した住棟の建て替えと長寿命化改善を組み合わせて事業量の平準化を図ることとし、計画期間中に約6,900戸の建て替えと、約4,000戸の長寿命化改善を実施する。
2020年度から2023年度までの4年間の事業実績としては、建て替え事業では2,620戸の既存住宅の用途廃止と新たに1,137戸の建設を行い、進捗率は約38パーセント、長寿命化改善事業は1,431戸で進捗率は約36パーセントとなっている。また、現在建て替え工事着手中の住宅は5住宅359戸、現在長寿命化改善工事着手中の住宅は3住宅325戸である。それぞれおおむね順調に進捗しているものと考えている。
【委員】
説明を聞くと長寿命化計画の上では順調に進んでいるように聞こえるが、昭和40年代に建設され50年以上が経過した住宅で今なお建て替えの予定が示されていないものは今後どうするのか。このままいけば耐用年限の70年を超えても使わざるを得なくなると不安を覚える。しっかりとした予定を県民に示す責任が県にはあると考えるが、どうか。
【理事者】
昭和40年代に建設され50年が経過した住宅で建て替えの予定を示していないものについても、今後、長寿命化計画に基づき順次建て替えや長寿命化改善、用途廃止に関する具体事業の実施計画を作成し、円滑な事業が実施できるよう努めていく。
【委員】
続いて、私の地元である名古屋市名東区の高針住宅は、昭和50年、51年に新設された7階、8階建ての高層の5棟から成る県営住宅であるが、今まさに1棟から順に長寿命化のための大規模改修工事、長寿命化改善工事が進められている。
先月の9月10日に、今年度長寿命化改善工事に入る高針住宅の2棟の入居者に対して、長寿命化改善工事の工事説明会が実施され、私もその説明会に出席した。その説明会では、工事内容や工期、作業の進め方の説明と入居者へのお願いがなされた。この工事は工事期間が1年以上となる、まさしく大規模改修工事である。ただ、当初は一緒に進めるはずだった給排水管工事の入札で不調が続いて当日は具体的な説明がなかった。今も入居者の生活に重要な給排水管工事の入札が落札されず、いまだ工事に着手できない状況になっている。
なぜ、この給排水管工事の入札が不調となったのか、県がどのように分析し、どのように対応するつもりであるか伺う。
【理事者】
高針住宅長寿命化改善給排水工事第2工区は、当初の発注が不調であったので、入札参加資格の地域要件を緩和し発注したが、再び不調となった。このため、一般競争入札から指名競争入札に変更し、3度目の発注したが、今回も不調であった。3度目の発注の前に入札辞退者などへ聞き取りを行ったところ、入札不調の理由としては、技術者が不足し現場に配置できないことが挙げられており、配置する技術者の範囲が広がる指名競争入札としたが、不調となった。
今後は、指名した業者から辞退理由を聞き取り、設計内容などに反映させ、契約に至るよう検討していく。
【委員】
給排水管工事は、生活する上で最も大切な設備であり、機能しない事態が起こることはあってはならない。外壁はきれいであることに越したことはないが、多少汚れていてもすぐには生活に困らない。給排水管が壊れる、すなわち断水・漏水が発生すると、その日のうちに困る。入居者は断水・漏水の恐れがある中、生活している。しっかりと分析し、速やかに契約できるよう取り組んでもらいたい。
ここからは県営住宅の入居者の現状を踏まえ、入居者が組織し日常の住宅の管理を担っている自治会の現状を中心に、県営住宅の管理がままならないことについて伺う。
県営住宅では、入居者からの家賃を原資に住宅の修繕等を行っているわけであるが、平成8年の公営住宅法の改正により、県営住宅の家賃は、入居者の収入に応じた応能応益家賃となり、結果的には県の収入が激減した。県は、この減収に対応するため、それまで行ってきた住宅の計画的な修繕を取りやめた。安い住宅だから仕方がないといわんばかりである。古くなった県営住宅は見た目にも、中身もぼろぼろである。こんな計画的な修繕ができていない古い県営住宅に誰が入居しようと思うか。きちんと修繕されず、建て替えの予定も示されない老朽化した住宅が多く存在しているのが現実である。
なお、県は20年に一度はこうした大規模改修を行うと定めているが、今はそれができていない。高針住宅は40年たってやっと大規模改修がされたという状態である。
そして、今、入居者はどんどん高齢化し、県営住宅が最期の家、いわゆる、ついの住みかとなっている入居者が多くいる。建て替えが済んだ新築の県営住宅は見た目も中身もぴかぴかの最新で、入居を希望する若者もいるが、実際は建て替えで移転した高齢の入居者ばかりで、そこに若者が入居するとすぐさま自治会の役員を押しつけられるとのうわさでいっぱいである。このようなうわさが広まっていれば、県営住宅に入居したいと思う若者はますます減る。せっかく新しい住宅に入っても何でもかんでも押しつけられ、嫌になり退去してしまう。
ここで、確認のため、県営住宅の入居者の高齢化を端的に表していると思われる高齢の単身者の入居状況を伺う。
【理事者】
本年8月1日現在で、県営住宅に入居する4万3,626世帯のうち、65歳以上の単身者世帯は1万734世帯となっており、全入居世帯の24.6パーセントを占めている。
【委員】
県営住宅の入居者のうち25パーセント、4分の1が高齢の単身者となっている。このように高齢者ばかりとなった県営住宅の自治会は、もう限界になっている。このことは今まで何回も取り上げてきた。入居者の高齢化によって自治会役員の成り手がいない上に、共益費を払わない納付意識の低い入居者の増加により、自治会役員は共益費を徴収することが大きな負担となっていると、私のところに自治会の役員の方から声が数多く届いていた。
公営住宅法では家賃以外の金品徴収を禁止していると解釈され、共益費を県が徴収できないと長年の間、据えられていたが、共同施設の維持管理費用である共益費について、その費用を徴収することを禁止しているものではないと解されるようになり、私は自治会役員の負担の軽減につながる、県による共益費の徴収を何年も繰り返し求めてきた。その結果、県もようやく重い腰を上げ、共益費の県徴収に踏み切った。県による共益費の徴収制度は令和2年度から始まったが、県が徴収する項目は自治会が徴収している共益費の一部である。
そこで確認する。県は、共益費、県では附帯設備使用料と呼んでいるが、共益費のうちどの項目を、そしてなぜその項目を徴収することにしたのか。また、共益費の徴収を県徴収へ移行した住宅数はどのくらいあるのか。
【理事者】
現在、県で徴収できる附帯設備使用料、いわゆる共益費の項目は、愛知県県営住宅管理規則で5項目を定めており、具体的には、1汚水処理施設に係る電気料、清掃費、消毒費及び消耗品費、2排水用中継ポンプに係る電気料、3エレベーターに係る電気料、保守点検費及び消耗品費、4揚水ポンプに係る電気料、5廊下灯、階段灯及び街路灯、その他これに類するものに係る電気料となっている。
これらの5項目については、入居者が生活する上で欠かせない設備で、住宅を維持していくためのライフライン及び入居者の安全安心に関連する重要な項目として県で徴収を行うこととした。
次に、県が附帯設備使用料を徴収している住宅は、県営住宅295住宅のうち今年度から県徴収を開始した11住宅を含め104住宅となっている。
【委員】
今、ライフライン及び安全安心に関する項目である汚水処理施設やエレベーターは、入居者の生活上重要な項目であるため徴収の対象としたとの答弁であったが、排水管の清掃が項目に入っていない。
排水管の清掃は、生活する上で重要な項目ではないのか。先ほども給排水管の工事が入札不調となった理由の説明があったが、給排水管を扱えるのは専門業者であり、何の知識もない素人である自治会役員が排水管の清掃を悪徳業者に依頼してしまい、排水管が破損するなど、取り返しのつかない事態になるかもしれない。排水管の清掃も住宅を維持する上で重要項目であると認識しているのであれば、住宅管理者が責任を持って行うべきものではないか。排水管の清掃を住宅管理者で行うつもりがあるのか伺う。
【理事者】
附帯設備使用料として徴収する対象項目の検討に当たっては、県営住宅の自治会が共益費を徴収して行っている項目について、自治会へのアンケートや自治会役員へのヒアリングを行った。その結果、排水管の清掃は住宅の維持管理上重要な項目であるものの、汚水処理施設やエレベーターの保守とは異なり、住宅ごとで実施する時期や回数、清掃の方法が違い、かかる費用にも住宅ごとで差があることが分かった。
このため、まずは速やかに附帯設備使用料の県徴収制度の導入を図り、自治会役員の負担を少しでも軽減できるよう、全住宅で一律の実施が可能で、重要性の高い5項目を対象として令和2年度に制度を開始した。
排水管清掃は、住宅を適切に維持していく上で欠かせない作業であるので、各自治会と協議を進めながら研究していく。
【委員】
排水管の清掃は、エレベーターの保守と同じくらい住宅の維持管理には重要である。排水管が破損すれば入居者は日常生活を維持することができなくなる。県はこうした排水管の清掃の重要性を理解するのであれば、入居者から必要な費用を徴収してでも県が責任を持って排水管清掃を実施すべきである。県営住宅の自治会の多くは入居者の高齢化によって役員の成り手もなく、既に崩壊状態にあり、住宅の維持管理は住宅管理者が入居者から必要な費用を徴収し、維持管理を行う時代に突入している。
なぜ、今なお自治会に排水管の清掃をさせているのか。もう一度言う。入居者が組織する自治会が住宅を維持管理していく古い制度は破綻している。一刻も早くこの現実に向き合い、共益費の全てを住宅管理者が徴収して住宅を維持管理すべきである。
【理事者】
現在、全体の3分の1を超える104の県営住宅で附帯設備使用料の県徴収が始まっている。来年度から新たに県徴収へ移行を予定している住宅もある。この制度については理解が得られ、一定の成果が出ている。
このため、まずは共益費の徴収に苦労している自治会役員の負担を少しでも軽減できるよう県徴収に移行していない県営住宅の自治会に対して、引き続き丁寧に制度の説明を行い、県徴収に移行してもらうことが重要である。
しかし、自治会への制度説明の際などに実際に苦労している自治会の役員からは、排水管の清掃や草刈りなどについても費用徴収の対象として県による実施をしてほしいとの意見をもらっているので、自治会へのアンケートの実施や他の団体が対象としている項目、その実施方法などの調査を行い、附帯設備使用料の県徴収制度が効果的に運用でき、自治会役員の一層の負担軽減になるよう、しっかり対象項目の研究を進めていく。
【委員】
民間の分譲住宅の場合は、管理組合という制度を設けて、そして自分たちが自主運営して管理している。一方で、民間の賃貸住宅、すなわち大家がいる住宅は、給排水管などは大切な財産であるから、当然大家が全部管理を行っている。そういった現実をしっかりと見つめて、これからの考え方を検討してもらいたい。
次に、自治会は、住宅の維持管理以外にも駐車場の管理を県から委託を受けて行っている。もともと県営住宅には駐車をさせるスペースはあったが、入居者用の駐車場はなかった。昭和40年代、昭和50年代のモータリゼーションの進展によって、自家用車を持つ入居者も増えてきた。このため、不法駐車で周辺住民に迷惑をかけないよう県営住宅も駐車場が必要となり、自治会が県営住宅の空きスペースを白線で区画して駐車場を整備した。不足する分は近隣の民地を借りて、自治会が入居者から駐車場料金を徴収して管理運営を行ってきた。しかし、長年自治会が管理し続けると多額の金が自治会内で留保されるようになり、自治会内のトラブルや不祥事が発生した住宅が数多くあった。私は、こうしたことを防ぐために、県営住宅の駐車場は県が管理すべきであると主張してきた。
駐車場は、平成8年の公営住宅法の改正によってようやく公営住宅の共同施設として位置づけられ、県営住宅でも駐車場を共同施設として県が整備して、有料で入居者に貸し付けることが可能となった。平成11年度以降に建て替えた県営住宅は、建て替えに合わせて駐車場を整備し、既設の県営住宅は自治会との合意が得られた住宅から順次県が有料駐車場として整備してきた。
そこで、まず、現在の県が行った県営住宅の駐車場の整備状況を伺う。
【理事者】
本年8月1日現在、駐車場の整備状況は建て替えによって整備したものと、自治会との合意により既設住宅の敷地内に整備したものを合わせて、295住宅のうち250住宅で整備を行い、4万14台が県の管理する駐車場となっている。
【委員】
県営住宅の駐車場は県管理に随時移行しているが、県が駐車場料金を徴収すれば自治会は多額のお金を扱わなくて済み、自治会役員の不正などお金に絡む自治会内の不要なトラブルを防ぐことができ、駐車場の管理運営からも解放される。しかし、県は、県営住宅の周辺の駐車場と同じような駐車場料金を取っておきながら、管理は1区画当たり月額313円と安い委託料で自治会に丸投げし、何も管理もやっていない。
県営住宅の管理を代行している愛知県住宅供給公社も駐車場を管理していないため、誰がどこに駐車しているのか実態を把握せず、トラブルが起きれば、それは自治会に言ってくださいと自治会の役員に押しつけ、無責任な対応を取っている。
自治会へは駐車場管理の何を委託しているのか。県や愛知県住宅供給公社は何をやっているのか、私は理解できない。
【理事者】
県が整備した駐車場は、県営住宅の共同施設として県営住宅の管理を代行する愛知県住宅供給公社が管理を行っているが、自治会は県管理に移行する前において駐車場を管理しており、自治会の協力を得られることで、きめ細かい対応が期待できることから、駐車場の巡回や清掃、迷惑駐車の確認など、秩序保持や環境美化に関する業務の一部を自治会に委託している。
具体的には、月1回以上の夜間巡回、駐車場清掃、巡回による施設点検及び不正使用の確認などの業務を委託しており、駐車場の使用方法についての指導や不正使用に対する警告なども含まれている。
一方、愛知県住宅供給公社は、駐車場の使用契約、各種証明書の交付、使用料の徴収及び滞納者への指導等を行っているほか、自治会からの報告や公社職員の巡視で把握した損傷箇所の補修、区画線の引き直しなどの改修を行っている。
また、自治会の指導に従わない悪質な使用者に対しては、公社の職員が直接指導を行い、不正使用対策として車止めの柵を設置するなど、自治会と連携して県営住宅の駐車場の適正な管理に努めている。
【委員】
もう一度言うが、県営住宅の入居者の高齢化はどんどん進んでいる。自治会の役員も高齢者ばかりである。自治会が機能しなくなっている。それなのに、住宅の維持管理や駐車場の管理を自治会に全て任せていることは、時代錯誤が甚だしい。何度も言うが、高齢者ばかりが入居する県営住宅の自治会が住宅を維持管理することはもう無理である。自治会には住宅の維持管理や駐車場管理を任せるのではなく、県が住宅ごとに管理を担当する業者を決めて維持管理すべき時代になっている。
例えば、駐車場であれば、入居者から徴収する駐車場料金で民間の駐車場管理会社などに外部委託し、自治会の負担を軽減すべきことである。そういう時代に来ている。
【理事者】
県営住宅の入居者の方の高齢化が進んでおり、入居者で組織する自治会による従来の住宅維持管理手法が以前に比べて機能しなくなってきている住宅もあることは承知している。
このことから、自治会役員の負担軽減のため、附帯設備使用料の県徴収制度を令和2年度より開始した。先ほどの繰り返しになるが、制度開始から5年を迎え、現在3分の1の住宅で附帯設備使用料の県徴収を実施しているので、引き続きより多くの県営住宅で県徴収に移行してもらえるよう努める。
また、附帯設備使用料の県徴収に関しては、自治会から徴収項目の拡大など、様々な意見をもらっているので、排水管清掃などを徴収項目とすることができるか、その可能性について研究し検討する。
また、駐車場の管理についても、全ての県営住宅で駐車場の整備を残念ながら終えておらず、いまだ途上であるので、まずは駐車場の整備を進めていきたいが、県営住宅の駐車場のより適正な管理に向けて、他の都道府県などの事例を調査し、駐車場の管理の外部委託のメリット、デメリットについて、愛知県住宅供給公社と共に研究していく。
【委員】
県営住宅は、時代によって求められる役割や在り方が変わってきた。そして、時代に合ったやり方が求められている。戦後の住宅難から始まり高度成長期の住宅不足、そして現在は高齢者など住宅を確保するのが難しい人に向けた住宅、言い換えれば高齢者向け住宅になっている。去る9月15日に総務省が公表した人口推計によると、65歳以上の高齢者は前年比2万人増の3,625万人と過去最多を更新し、総人口に占める割合も過去最高の29.3パーセントとなり、日本の3割の方が高齢者になっている。高齢化は急速な勢いで進んでいる。県営住宅は、子供、若者、老人、様々な世代が住んでいた時代から、高齢者が数多く住む住宅に変わっている。県営住宅の間取りや仕様も時代によって変わってきた。昭和50年代前半に建設された高針県営住宅は、50平米程度の3DKを中心に建てられている。そして、室内は3部屋全てが和室か、2部屋が和室のつくりとなっている。
そこで、今、建てている県営住宅に和室はあるか伺う。
【理事者】
県営住宅を整備するに当たり、本県では建築標準図を定めており、台所、食事室に隣接する1室を和室にすることとし、従来はこの標準図に基づき設計を行い、和室を整備してきた。
一方、現在は、県営住宅の建て替え事業の多くを民間事業者のノウハウの活用などを図るためPFI方式により実施しており、和室とするか、洋室とするかについても、民間事業者からの提案による。この結果、PFI方式による場合は、住戸の間取りに和室を設けてない提案がほとんどとなっている。
【委員】
現実に、今、民間の事業者のPFI事業を見ていると、全く和室を設けてないのが現実になっていることが分かった。
現在建設されている県営住宅は、高針住宅が建て替えられた時代とは違い、室内の段差が少ないなど、見た目にはバリアフリーになっているが、畳に布団を敷いたり、押し入れに布団を片づけて上げ下げしたりすることは、高齢者にとっては大変なことであることを県は確認しているのか。高齢者は畳敷きの和室が好きであると勝手に決めつけているのではないか。フローリングであれば、そこにベッドを置けばソファー代わりにも使えるし、高齢者にとっては床に布団を敷いて寝るよりベッドに腰かけ横になるほうがずっと楽である。設備のバリアフリーに加えて、生活環境のバリアフリーも考えるべきである。和室がなくなれば退去するときの畳替えやふすま張り替えも要らなくなり、入居者にとっては金銭面の負担も少なく済む。
今も県営住宅では和室を造っているが、なぜ和室が必要なのか伺う。
【理事者】
和室に用いられる畳には、クッション性や断熱性、吸音性に優れているという長所があり、また和室には居室としても寝室としても利用できる使い勝手のよさがあるとされている。
本県が新たに建設された住宅の入居者91人に行ったアンケートにおいて、和室が欲しいか否かを伺っているが、その結果は和室が欲しいとの回答と、和室は要らないとの回答が同じ割合の約39パーセント、どちらでもよいが22パーセントであった。そのうち、70歳以上では、和室が欲しいが約44パーセント、和室が要らないが約33パーセント、どちらでもよいが約23パーセントであった。
この結果によると、現在の生活において和室が不要であるとは一概にはいえない。いずれにしても、入居者にとって安全安心で暮らしやすい住まい方ができるよう、県営住宅における居住環境の整備に努めていく。
【委員】
ここで問題なのは、県が行ったアンケートは今の説明のとおり新たに建設された住宅の入居者にアンケートを取っていることである。家賃が高いわけである。入居しているのは若い人である。高齢者ではなく中堅どころの人の意見を聴いて、これを統計に取っていること自体が異常である。もう一度そういった点も考慮して考えてほしいと思う。
質問に入るが、今回は、県営住宅ではいまだに和室が造られていることについて取り上げたが、このほかにも時代に合っていない仕様になっていないか、今後も県営住宅の整備の考え方を順次取り上げていきたい。
今の県営住宅は、建設から相当年数が経過して老朽化が激しくなってきたにもかかわらず、財政難を理由にして外壁の改修や塗装など、やるべき修繕を行わず放置し、エレベーターや電気、給排水などの設備を更新してこなかったから、そのツケが一気に回ってきたのである。住宅内の設備も本当に時代遅れで、民間賃貸住宅の水準からすると不便極まりない住宅が多くある。そして、建物などのハード面ではなく、高齢化で担い手がなくなりつつあり崩壊の危機にある自治会に住宅の管理を任せている、時代遅れの方法をいまだに続けている。
最近は、民間の賃貸住宅にも住宅セーフティーネットの役割を求められる時代になってきたが、本当に民間住宅が県営住宅と同様な役割を果たしていけるのか、疑問に思う。今後も、県営住宅は住宅セーフティーネットの中心としてしっかりとした役割を果たしていかなければならないと強く思う。
県は、県営住宅の入居者が置かれている状況、生活実態をしっかり把握し、時代の流れに的確に対応していかなければならない。委員会での質問は以上とするが、これまでの議論を踏まえ、最後に建築局長に総括して答えてもらいたい。
【理事者】
今回は、県営住宅の長寿命化計画、長寿命化改善工事、また入居者の高齢化に伴う共益費、駐車場、住宅の仕様について質問をもらった。
これらの課題については、県営住宅の整備や管理において大変重要であると考えており、担当課室から答えたとおり、課題解決に向けて着実に進めていく。
また、県営住宅が県民の住宅セーフティーネットであると同時に、そこでの住まい方について時代の流れとともに変化していると認識しており、その変化を的確に捉え、安心できる住まいとなるよう職員が一丸となって取り組んでいく。
【委員】
かつて、住宅管理室の室長が、私にこのように言った。「いろいろ問題を言われて指摘されているが、本当は私だってやりたい。でも、そのお金のきちんとした予算化は議員であるあなたの責任である。そして、建築局長、そういったことはやるべきです。そして、財政当局と当たるべきなんです。」こう言って開き直られたときに、私はなるほどと理解してしまった。やはり予算さえきちんと確保すれば、今までしてきた議論が解決できるため、建築局長も腹を据えて、財政当局と真剣になって取り組んでもらわなければならない。また、議員もそういった審議において責任があることを再認識した。
県は、これからも、県営住宅の大家であることをもう少し認識してもらいたいと思う。建物もエレベーターや給排水設備は、要するに県の財産である。その財産の管理を入居者に任せることは、もう時代に合っていない。建築局長からも、県営住宅は時代の流れとともに変化していると認識しているとの答弁があったが、まさしく時代の流れとともに変化している。建築局長の決意が建築局全体に行き渡り、局を挙げて時代に合った県営住宅の整備や管理に向けた取組を進めてもらうことを強く求めて、質問を終わる。
【委員】
今、委員から高針住宅の改修工事で給排水管の入札で不調不落が続いて工事が滞っていると話があった。原因は技術者が確保できないとのことのであったが、それとは別に委員からも道路の工事の進捗状況の質問の中で、労務費が1.7倍、また資材費が1.4倍と、工事費の全体の高騰の話があった。
県営住宅もPFIで費用を出している部分と、直営で費用を出している部分があると思う。発注単価も年々労務費や資材費の高騰を反映して上がってきている。金額ベースで10億円を超えると業者の選定や、発注の仕方が変わることがあったと思うが、実際はどうなのか。
【委員】
単価が実情に合ってないということではないか。そういうことではないか、委員。
【委員】
はい、というのは、入札方式については、金額や要件で発注方式が変わると思うが、工事単価が上がってきて、参加する業者に制限がかかり、今まで参加できた業者が参加できなくなってくると思う。
そうすると、今までちゃんと仕事を請け負うことができてきた業者が、労務単価や資材単価が上がって全体の金額が増えると、参加できないという状況も、多分、生まれる。逆に言うと、例えば、県営住宅の場合は本体の躯体は躯体、それから給排水は給排水、電気は電気という分離発注をしている。それはそれでいいが、どこか一つでも欠けると、全体の工期が延びる。例えば建て替えた場合に、工期が延びると入居者が戻って生活ができないという状況は委員が言ったとおりである。やはり入札をかけるときの要件も時代に合ったように広げる必要がある。技術が足りないところにやらせようということではなく、今までやれたのにこういう物価高騰の影響を受けて仕事ができなくなるという状況が発生するということである。
そのようなことがリンクして、努力して予算をつけて計画したものが完成しない事態が起こり得る。このような事態はぜひとも避けてほしいので、その辺りは柔軟に対応してもらいたい。これは建築局だけではなく、建設局もそうであるし、建物については、これからいろいろなところで影響が出てくると思う。だからいつまでも決めたルールが全てではないことは認識してもらい、愛知県の事業がしっかりと進んでいくように要望する。
( 委 員 会 )
日 時 令和6年10月4日(金) 午後1時~
会 場 第4委員会室
出 席 者
山田たかお、中村貴文 正副委員長
島倉 誠、山下智也、藤原ひろき、神戸健太郎、伊藤貴治、高橋正子、
朝倉浩一、細井真司、古林千恵、筒井タカヤ、神谷まさひろ 各委員
建設局長、建設局技監(2名)、土木部長、治水防災対策監、
豊川水系対策本部副本部長、豊川水系対策本部事務局長、水資源監、
都市・交通局長、同技監、都市基盤部長、リニア・交通対策監、
港湾空港推進監、空港長、
建築局長、同技監、公共建築部長、建築指導監、
収用委員会事務局長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第128号 令和6年度愛知県一般会計補正予算(第3号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第7款 建設費
第2条(繰越明許費の補正)の内
第7款 建設費
第129号 令和6年度愛知県港湾整備事業特別会計補正予算(第1号)
第134号 愛知県手数料条例の一部改正について
第139号 工事請負契約の締結について(道路改良事業一般国道247号青海インターチェンジ(仮称)上部工事(その1))
第140号 工事請負契約の締結について(木曽三川下流域Ⅱゼロメートル地帯広域防災活動拠点防災倉庫建設工事)
第141号 工事請負契約の締結について(小牧特別支援学校校舎建築工事)
第146号 特定事業契約の変更について
第148号 県の行う土木事業に対する市町村の負担金の変更について
専決第22号 控訴の提起について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第128号、第129号、第134号、第139号から第141号まで、第146号及び第148号
全員一致をもって原案を承認すべきものと決した議案
専決第22号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 道路の整備等について
2 水資源対策並びに河川、砂防、水道及び下水道の整備等について
3 土地対策、都市計画並びに公園及び市街地の整備等について
4 総合交通体系及び港湾の整備等並びに航空対策について
5 宅地建物取引及び建築・宅地造成等の規制について
6 公営住宅等の建設及び管理並びに県有施設の営繕工事について
7 建設局、都市・交通局、建築局及び収用委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(9件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 休 憩(午後3時2分)
6 再 開(午後3時15分)
7 閉会中継続調査申出案件の決定
8 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
予算に関する説明書の21ページ、歳出第7款第5項第2目土地区画整理費について、1億7,614万8,000円という補正予算がついている。7地区が対象で道路事業に充てるとのことであるが、もう少し詳しく伺う。
【理事者】
本事業は、国の補助制度を活用し、都市計画道路等の用地費、工事費の全ての費用を国から2分の1の補助金をもらいながら県が一括して土地区画整理組合に補助する事業である。
今回、国からの増額内示に伴い予算を補正し、事業の進捗を図るものである。
【委員】
土地区画整理事業は、良好な市街地の形成と生活環境の改善に大きく貢献するもので、円滑な推進と運営の安定化を図ることが必要だと考える。近年の労務単価の上昇や材料費等の高騰など、社会情勢の変化によって組合施行の土地区画整理事業を取り巻く環境は極めて厳しい状況にある。減歩や清算金などを自らの財産を担保に事業を行う地元の土地区画整理組合から、事業の進捗に対してこの物価上昇等の影響が生じるのではないかとの不安の声が上がっている。
そこで、県としては、今後どのように組合施行の区画整理事業に取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
物価高騰による事業進捗への影響については、県としても認識している。このことについては、まず組合資金の多くを占める補助金について、物価高騰等に対応した必要額の確保が肝要と考えている。
本県としては、しっかりとこの補助金が確保できるよう、要望会等様々な機会を捉えて、国に対し働きかけていくとともに、補助金に対する県予算もしっかりと確保していく。
【委員】
予算に関する説明書21ページの、中部国際空港の活性化に向けた取組推進について、まずは、施策の背景について伺う。
【理事者】
代替滑走路の整備により、2027年度をめどに完全24時間運用と、約1.2倍の処理容量が実現する見込みとなった。中部国際空港の国内線の航空需要はコロナ禍前の水準まで戻った一方、国際線は約6割程度の緩やかな回復となっている。将来の受入れ能力拡大を見据えたさらなる利用促進策を進めていく必要があることから、国の調査事業を活用した新たな取組を補正予算により、速やかに実施することとした。
【委員】
具体的な取組である訪日外国人向けツアーやイベントは、観光コンベンション局の施策のような印象を受ける。そこで、二点質問する。
一点目、都市・交通局が推進する理由について伺う。
二点目、愛知の発酵食文化の魅力を国内外へ発信することなど、同じく外国人誘致を進めている観光コンベンション局との連携について伺う。
【理事者】
まず、都市・交通局が推進する理由についてである。愛知県の観光振興事業は、観光コンベンション局を中心に、県内の地域資源の観光コンテンツ化、本県への誘客につながる効果的なプロモーション、受入れ環境の整備などの取組を進めている。
空港を所管する都市・交通局は、中部国際空港のさらなる発展を図っていくことが必要である。今回、旺盛な訪日客をターゲットに空港の利用を促すため、イベントの開催やツアーの造成を行うこととした。イベントは空港内で実施し、また、ツアーの造成に当たっては、空港を起点とし、愛知県を中心にしつつ、広域の周遊を促していく予定である。
次に、本事業については、関係部局としっかり連携して進めていく。例えば、本県の魅力的な観光コンテンツを生かしたツアー造成や、愛知発酵食文化振興協議会構成員への協力の呼びかけ、協議会特設ウェブサイトによる情報発信などを観光コンベンション局と協力して進めていく。
今後も都市・交通局としては、中部国際空港に多くの人を呼び込み、世界から選ばれる空港となるよう、しっかりと取り組んでいく。
【委員】
最後に要望する。
私は、2022年3月まで5年余り台湾で駐在していた。そして、たくさんの台湾人から、観光で中部国際空港を利用した場合に、目的地は岐阜県の飛騨高山や白川郷、下呂温泉、そして三重県の伊勢志摩や長島温泉などに向かうと聞き、愛知県での滞在が比較的少ないことを残念に感じてきた。関係部局との連携を強化して、中部国際空港を含めた愛知県全体の活性化を図り、訪日客を呼び込むことを要望する。
【委員】
工事請負契約の締結のうち、木曽三川下流域Ⅱゼロメートル地帯広域防災活動拠点の防災倉庫について伺う。
図面を見ると、1階部分と2階部分との間に随分空間があるが、これはどれぐらいの高さを取っているのか。また、この趣旨を伺う。
また、周辺には平面の駐車場があるが、もし防災で水害を考えているのならば、駐車場も2階建てにすることが基本ではないかと思うが、考え方を伺う。
さらに、防災拠点だけに一式工事となっているが、電気等の処置も含まれているのか伺う。
【理事者】
高さの考え方であるが、1階部分をピロティーにして2階を倉庫にしている。これはなぜかというと、津波の基準高さというものがあり、それが2メートルである。また、避難活動する際にボートを活用するので、その余裕の高さを2メートル、さらに1メートルの高さの余裕を考慮し、1階のピロティーの高さを定めている。
続いて、駐車場については、防災倉庫のための駐車場ではない。これは、隣接している海南こどもの国の第2駐車場であり、通常はそこで使われている。実際この防災倉庫を利用する際は浸水している前提であり、車は使わない想定で計画している。したがって、駐車場については平面のままである。
続いて、電気についてであるが、今回提案している工事は建築工事であり、電気工事は別途発注準備を進めている。自家発電については、防災安全局からは実際に防災活動を行う際にはポータブルの発電機を使って活動すると聞いており、この建物自体に自家発電設備を設ける予定はない。
【委員】
この防災倉庫と海南こどもの国の関連性は分かった。防災倉庫は、倉庫だけの用途なのか、住民が避難する場合の避難場所としても利用可能であるのか。
【理事者】
防災安全局から聞いている話であるが、浸水した際に地域の住民が避難する際にはボートに乗ってこの防災倉庫に横づけして、そこで緊急的な避難を行う。そして、屋上にあるヘリポートにて救助活動を行うことを計画している。
【委員】
次に、予算に関する説明書の21ページ、公園緑地整備交付金事業費の(ア)に、牧野ケ池緑地整備事業費1億3,200万円となっているが、この内容を伺う。
【理事者】
現在、牧野ケ池緑地の東のぼうけん広場の老朽化により、その更新の整備を進めている。その中に園路等があり、その園路の整備でも、長期間遊具の利用が制限される。その園路の整備と遊具の更新を同時に行うために、園路の整備を補正で追加するものである。
《一般質問》
【委員】
行政手続のオンライン化について伺う。
人口減少や、大都市圏への人口集中などにより労働力が不足し、公共サービスを維持できなくなると懸念されている。そのような中、行政手続等に残っている無駄や不便を解消するため、デジタル技術を適用したさらなる最適化・効率化が求められている。産業競争力の強化と労働生産性の上昇を実現していくためには、デジタル化という効率化によるコスト削減、既存事業の付加価値向上及び新規ビジネス創出を図ることによって持続的な成長につなげることが重要である。データ連携の推進や信頼性を確保しつつデータを共有できる標準化された仕組みの構築など、国際的な視点も持ち、官民で協調して取組を強化していく必要がある。
また、人口減少社会において公共サービスをデジタルの力で維持・強化していくためには、約1,800の自治体が個々にシステムを開発・所有するのではなく、国と地方が協力して共通システムを開発し、それを幅広い自治体が利用する仕組みを広げていくことが重要であり、システム標準化と効率的な運用が必要である。
先般の本会議において自由民主党愛知県議員団の平松利英議員が行った質問への答弁をもう少し深掘りする。答弁によれば、建設部門が所管する行政手続のうち、年間処理件数が1,000件以上と多いものは57手続あり、そのうちオンラインによる申請などが可能なものは30パーセントに当たる17手続あるとのことであった。
そこで、現在オンラインによる申請などが可能な手続は具体的にどのようなものがあるか伺う。
【理事者】
オンラインによる手続が可能なものとしては、都市公園の運動施設等の利用申請や、港湾への入出港届、宅地建物取引士資格試験の申込、それから建設工事の入札参加資格審査申請といった手続がある。
【委員】
では、反対にオンライン申請が可能でないとされている、残り70パーセントに当たる40手続は、なぜオンライン申請が可能ではないか伺う。
【理事者】
理由については、手続によって様々であるが、代表的なものとしては、図面などの添付書類のデータ容量が大き過ぎる、申請者にデジタルに不慣れな人が多くオンライン化が困難である、といった理由がある。
【委員】
申請者が不慣れというのは、なかなか進むスピードが上げられない要因になっていると思う。
同じく答弁の中で、オンライン化をさらに推進するために部門内にプロジェクトチームを設置するとあった。こちらはどのようなメンバーが対象で、どのようなことをしているのか。
【理事者】
プロジェクトチームは、名称を建設部門DX推進プロジェクトチームとして、建設企画課及び建設総務課が事務局を務め、建設局、都市・交通局、建築局の全ての本庁各課、そして建設事務所及び港務所の企画担当グループの班長を構成メンバーとしている。なお、必要に応じて専門的な知識を要する職員など構成員以外の者の参加を求めることができるので、検討内容に応じて活用していく。
また、このプロジェクトチームでは、建設部門内で連携して取り組むべき施策についての検討や調整、それから建設部門DX推進行動計画の進捗管理及び見直し、そのほか日々急速に進展するDXに関する国や県全体の動向についての情報共有などを行うこととしており、現在は行政手続のオンライン化の検討を集中的に行っている。
【委員】
プロジェクトチームのようにチームが組織され、非常に期待している。
続いて、民間事業者から伴走支援を受けることも視野に入れながらこのプロジェクトを進めていくと答弁の中にあった。具体的にどのようなことを想定しているのか。
【理事者】
建設部門が所管する手続については、図面や計算書などの多くの添付書類を要する手続をはじめ、審査をして補正指示をしたり、修正をしたり、再提出など、書類のやり取りする手続、それからほかのシステムとの連携を要する手続などがある。
このような手続について、利用者と県の担当者の双方が使いやすいシステムを構築してオンライン化するためには、ほかの自治体での先進事例やITに関する優れた知見を持つ民間事業者からの伴走支援が必要である。例えば、システム構築の委託業務において、その手続に最適な技術提案を受け、県の事務処理方法に合わせてカスタマイズしていくことを想定している。
【委員】
今年度には結果を取りまとめ、建設部門DX推進行動計画に位置づけていくとの答弁もあった。今後のスケジュールについて伺う。
【理事者】
本年7月に建設部門DX推進プロジェクトチーム会議を開催し、そこで部門内各課に行政手続のオンライン化を一層推進するための検討を指示した。
現在は、一般質問での答弁のとおり、今後オンライン化する手続の抽出、そしてオンライン化に向けた課題の整理と対策の検討を行っている。
今後は、年内をめどに各課の検討結果を一旦取りまとめ、手続ごとの考え方の方向性の整理や調整を行っていく。また、この中で関係課が連携して取り組むことが効率的と考えられる共通課題がある場合には、プロジェクトチームにおいて連携して対策の検討を行っていく。そして、年度内には検討結果を取りまとめ、建設部門DX推進行動計画の見直しを行っていく。
【委員】
DXや、オンライン化に関して、生産性の向上や働き方改革、人材確保、様々な観点から行政がオンライン化やDXを進めることは、特に人材確保に苦難する建設業界にとっても大きなメッセージになる。民間を巻き込み、今後のスケジュールも具体的に示しながら、着実に進めてもらうようお願いする。
続いて、防災対策における立地適正化計画について伺う。
本年1月1日に能登半島で地震が起きた。被害は甚大であり、地割れや地すべり、斜面崩落の被害が多く見られた。また、先般の能登豪雨により、能登半島地震で生じた亀裂や地盤のゆるみによって引き起こされたと見られる土砂崩れもあり、生命を守るために防災対策が喫緊の課題となっている。
現在、愛知県では土石流、地すべり及び急傾斜地の崩壊から県民の生命を守るために、土砂災害防止施設の整備や危険な箇所の指定など、ハード、ソフト、一体となった事前防災対策を推進しているが、土砂災害対策施設の整備状況について伺う。
【理事者】
本県では、土石流、地すべり、がけ崩れの発生により人家5戸以上もしくは公共的建物などが被害を受ける恐れがある箇所を施設整備の対象としている。
その箇所数は、土石流対策が1,555か所、地すべり対策が23か所、がけ崩れ対策が2,425か所である。これに対し、整備済み箇所数は、土石流対策が347か所で整備率は22.3パーセント、地すべり対策が22か所で整備率が95.7パーセント、がけ崩れ対策が530か所で整備率が21.9パーセントである。
【委員】
整備を要する危険な箇所が非常に多いということが分かった。この状況では、整備の完了にはかなりの時間がかかると感じており、効率的なインフラ整備、特に生命を守ることを考えれば、計画的な居住誘導も今後考えていく必要がある。
一方で、本県も2019年を境に人口減少の局面に入っている。我が国の都市における今後のまちづくりは、人口の急激な減少と高齢化を背景として、高齢者や子育て世帯にとって安心できる健康で快適な生活環境を実現すること、財政面及び経済面において持続可能な都市経営を可能とすることが大きな課題である。人口減少に対応するため、都市計画の分野では市町村が立地適正化計画を策定し居住を誘導する区域を定めるという制度を進めている。
居住を誘導するに当たり、防災上危険なところに新たに誘導することはないと思うが、現状危険とされている箇所から居住を誘導するものでもないと理解している。改めて、この立地適正化計画というのはどのような制度か伺う。
【理事者】
立地適正化計画は、都市計画区域内を対象としており、県内では51市町村が対象となる。人口減少社会に対応したコンパクトな都市構造への再構築を目指し、都市再生特別措置法第81条に基づいて市町村が策定する任意計画である。
この計画には、市街化区域の中に居住を誘導する居住誘導区域を定めるが、強制的に移住させるものではなく、個々の住宅の建て替えや住み替えなどに合わせて時間をかけながら緩やかに居住や都市機能を集約化していく制度である。
本計画においては、頻発化・激甚化する自然災害に対応するため、令和2年の法改正により災害リスクや防災に関する取組方針を示した防災指針を記載することとなった。
これにより居住誘導区域を設定する際には災害リスクの高いエリアへ新たに居住を誘導しないなど、防災の視点を含めたまちづくりを進めている。具体的には、土砂災害特別警戒区域などのいわゆるレッドゾーンとなっている区域は居住誘導区域に指定しないこととしている。
【委員】
立地適正化計画の中に防災指針を記載するとのことであったが、現在、愛知県内の市町村で立地適正化計画と防災指針の策定状況について伺う。
【理事者】
立地適正化計画は、現在、県内の30市町が策定済みで、3市町が新たに策定に取り組んでいる。
また、立地適正化計画の中に記載する防災指針は、22市町が策定済みで、11市町が新たに策定に取り組んでいる。
【委員】
現在、未策定の市町村があるが、今後、未策定の市町村が立地適正化計画を策定できるように県はどのような支援を行っているのか。
【理事者】
立地適正化計画及び防災指針は、人口減少や防災の視点から持続可能なまちづくりを進めていく上で重要な計画であることから、県内の市町村が集まる担当者会議などの場で必要性を説明するとともに策定をお願いしている。
また、市町村が策定する際には、その市町村の策定委員会に県の都市計画課が参加し、適切なまちづくりの計画となるよう、防災上の視点も含めて助言・指導を行っている。
今後も、安全安心な都市の実現に向け、市町村のまちづくりを積極的に支援していく。
【委員】
危険なところから強制的に誘導するものではないとのことであるが、届出制度もある。対象区域外での開発行為、建築行為を制限するものでもなく、人口減少時代のまちづくりの指針で、防災の観点からの居住誘導も強く入れていく必要があると思う。強制力があるものでもないため、計画のための計画にならないよう議論を進めていく必要がある。
一部の市町村で、この立地適正化計画策定は補助金をもらうためにつくるという声も聞こえている。本気で当事者意識を持つための計画になるよう、県としても後押しをお願いする。
【委員】
昨今の気候変動の影響を踏まえた治水対策について質問する。
全国各地に被害をもたらした台風10号は非常にゆっくりとした速度で進みながら日本付近に湿った空気を送り込み続けたため、台風から離れた地域でも大雨の被害が発生した。
愛知県においても、局地的にまとまった降雨があったが、県全体の県管理河川の被害状況について伺う。
【理事者】
台風10号については、東三河地域を中心として8月24日から9月2日にかけて長時間にわたる大雨をもたらし、県の新城雨量観測所においては8月27日に最大日雨量322ミリメートルを観測した。
この大雨により、県管理河川では8月27日に田原市の汐川において越水が発生し、周囲の農地が浸水した。また、水位周知河川である豊田市の逢妻女川の千足水位観測所において、8月31日に氾濫危険水位を超過した。この大雨による河川施設被害としては、新城市の宇利川において2か所、豊田市の逢妻女川において1か所で護岸が損壊した。
今後は国の災害査定を経て早期の復旧に努めていく。
【委員】
台風10号による豪雨後も、先月末には低気圧や前線の影響によって線状降水帯が発生し、石川県能登地方では大雨特別警報が発表されるなど記録的な大雨となり、大きな被害をもたらした。
これら豪雨をはじめ、毎年のように全国各地で水災害による甚大な被害が発生しており、私の地元である逢妻川を含めた境川・猿渡川流域においても同様な被害が起きるのではと心配している。
境川・猿渡川流域では、急激な都市化の進展による治水安全度の低下に対応するために、昭和50年代から総合治水対策に取り組んできた。その後、特定都市河川に指定され、2018年度から2020年度までの防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策、2021年度から2025年度までの防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の予算を活用し整備が加速されてきており、その効果を実感している。
しかし、今後も地球温暖化の進行による気候変動の影響により、降雨量の増大や、洪水発生頻度の増加が懸念をされており、治水対策の一層の充実が望まれる。
そこで、境川・猿渡川流域における気候変動の影響を踏まえた今後の治水対策の考えを伺う。
【理事者】
境川・猿渡川流域では、1982年から進めてきた総合治水対策をさらに推進するため、2012年に境川・猿渡川の一部と逢妻川を特定都市河川に指定している。また、河川などの整備に加え、流出抑制対策を位置づけた流域水害対策計画を策定し、県と市町が連携し総合的な浸水被害対策を実施している。
こうした中、気候変動による水災害の激甚化・頻発化を踏まえ、流域のあらゆる関係者が協働して流域全体で治水対策を行う流域治水への転換を図ることとし、本流域においては2021年3月にハード・ソフト対策が一体となった流域治水の全体像を取りまとめた流域治水プロジェクトに基づき取組を進めている。
さらに、流域治水の実効性を高め強力に推進するため、2021年11月に特定都市河川浸水被害対策法の一部を改正する法律が施行され、気候変動による降雨量の増大に対応した治水計画の見直しを行うこととされている。
このため、本流域では今年4月に開催した県と市町で構成する境川・猿渡川流域水害対策協議会での協議を経て、気候変動を踏まえた流域水害対策計画の見直しや、流域全体で総合的な治水対策をさらに推進できるよう、境川・猿渡川の一部及び支川の特定都市河川への追加指定について市町と調整しながら検討を進めている。
今後も流域の人々の安全・安心な暮らしを守るため、境川・猿渡川流域の治水安全度の向上にしっかりと取り組んでいく。
【委員】
まず、河川堤防の地震・津波対策について伺う。
9月21日から降り続いた豪雨により、復興途中の能登半島に土砂災害をもたらし、石川県輪島市などでは23河川が相次いで氾濫し、珠洲市、輪島市、能登町を流れる8河川においては21日と22日の2日間で2回氾濫し、氾濫した川の近くでは仮設住宅が浸水、住宅が4軒流される、住宅が傾くなどの被害が報道された。本日の報道にも、豪雨災害に関連する死者数は14人、安否不明1人、けが人47人とあり、甚大な被害をもたらしている。住民のインタビューにおいても、地震により堤防が沈下して堤防を水が乗り越えた、地震がなかったらこんな被害にはならなかったと思うと答えていた。
今回の河川の氾濫、土砂災害の理由には、能登半島の河川の特徴である、河川が短く急流であること、計画雨量の2倍以上の雨が降った場所もあったこと、元日の能登地震によって壊れた護岸が仮復旧のままの状態であったことなどを指摘した考察や、護岸や堤防の機能低下に加え海底隆起などの地形変化が河川の流下能力に影響した可能性を指摘した考察もあった。
河川の耐震については、地震発生直後の津波などの被害想定に加え、その後の起こり得る豪雨などの水害等に対する備えも必要であり、より安全な河川整備が必要であると強く感じた。
本県では、第3次あいち地震対策アクションプランを策定し、地震から県民の生命・財産を守る強靱な県土づくりを目標として、地震に強い安全な愛知を目指して対策に取り組んでいる。随時、大規模な災害など課題検証を踏まえた改定など、アクション項目の強化を図って進捗管理している。その中で重点テーマの視点1に、被害予測調査の結果を踏まえ、減災効果を高める河川、海岸、堤防等の耐震化等の推進が挙げられている。
本年8月8日に宮崎県で震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震で、気象庁は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を初めて発信したことは記憶に新しい。
建設委員会の県内視察調査の中でも、河川の堤防の耐震化について要望された地区があったことを記憶している。南海トラフ地震に備えた河川堤防の耐震化は早急に対応すべき内容である。
以上を踏まえて、県が管理する河川堤防の耐震化の考え方及び工事の進捗状況について伺う。
【理事者】
河川堤防の耐震化については、地震直後の堤防沈下による浸水や、その後に到達する津波での浸水により、人的被害など甚大な被害の発生が予測される区間を対策区間として設定しており、17河川で総延長47.6キロメートルの区間において、地震の揺れに伴う液状化による堤防の沈下を抑制するための耐震化工事を進めている。
工事の進捗状況については、昨年度末までに17河川、総延長37.1キロメートルで、計画の約8割の堤防の耐震化を完了している。
今後とも国の防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策などを活用し、地震・津波対策にしっかり取り組んでいく。
【委員】
大規模災害発生後は、復旧が速やかに行われることが重要である。そこで、災害発生時の建設事業者等との連携体制について伺う。
7月に広島県土木建築局及び危機管理課の取組を視察した。豪雨災害が頻発し甚大な被害を繰り返し受けた広島県においては、平成30年7月豪雨災害及び令和3年7月・8月豪雨災害を受け、大規模災害後の公共土木施設の被災箇所の調査、そしてその後の公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法による、災害復旧事業の申請及び復旧工事を実施するための測量・設計を迅速に行うことを目的に、令和3年6月から大規模災害時の支援協力に関するコンサルタント協定の運用を開始していた。
また、広域の災害発生時に応急工事等を実施する業者の確保に時間を要した地域もあったことから、県と市町が対応可能な業者などの情報共有を行い、速やかな応急工事が可能となるような大規模災害時の協力建設業者登録制度を創設し、早期復旧の体制づくりを行っているとのことであった。
想定外が次々と起こる異常気象に備え、建設業者や建設コンサルタントとの連携体制を構築し確実かつ速やかに応急対応を行うことで、被害を最小限に抑え、県民の生命・財産を守っていく必要がある。
以上を踏まえ、本県における災害発生時の建設事業者等との連携体制について伺う。
【理事者】
建設部門では、発災後の時間の経過、それと災害の規模に応じて、段階的な連携体制を整えている。
まず、発災直後の初期段階においては、各建設事務所及び港務所が管内のエリアごとに地元の建設業者と個別に締結している防災安全協定に基づいて、巡視による被災状況の把握と危険箇所への立入り規制などの緊急対応を速やかに行う。
小規模な災害の場合は、その後の道路啓開や堤防の仮締切りなどの応急復旧工事も、引き続き個別協定により地元建設業者が対応する。
しかし、大規模な災害になると、建設業者自体が被害を受けるなどして地元建設業者だけでは対応しきれないことが想定される。そのため、県全域を対象として建設業団体と締結している包括的な協定に基づいて当該団体を通じて対応可能な建設業者を特定し、出動要請を行い、応急復旧工事を行う体制も整えている。これにより、例えば東三河全域で甚大な被害が発生し、地元建設業者だけでは対応し切れない場合に、隣接する西三河、さらには尾張や知多地域の対応可能な業者に出動要請を行うことが可能となる。
現在、個別協定については重複も含めて381社の地元建設業者と協定を締結しており、包括協定については一般社団法人愛知県土木研究会と一般社団法人愛知県建設業協会、そして一般社団法人日本建設業連合会中部支部の三つの建設業団体と締結している。
さらに、複数県にまたがるような大規模災害時には、国土交通省中部地方整備局が管内全域を調整し、一般社団法人日本建設業連合会中部支部の会員業者に一元的に出動要請する仕組みも構築している。
また、応急対応後には、災害復旧事業による本復旧に向けた速やかな調査や測量、そして設計などが必要となるので、測量設計や地質調査に関するコンサルタント業者の団体とも協定を締結している。
いずれの協定についても、いざ大規模災害が発生した際にこの仕組みが適切に機能し、建設業者等と連携した円滑な応急対応を行うことができるよう、引き続き実動訓練の充実などに取り組む。
【委員】
衣浦トンネルと衣浦豊田道路の有料区間を無料にできないかという立場で質問する。
先日行われた建設委員会において、知多建設事務所管内に対する参考人意見の中で、半田市長が、衣浦大橋周辺の渋滞対策として、衣浦トンネルを低料金化または無料化して、交通量の分散を図ることにより、衣浦大橋周辺の慢性的な渋滞を解消することと発言した。私の地元は刈谷市であるので、衣浦大橋からは少し離れたところにあるが、それでも刈谷市民からも同じような要望を聞く機会が多くある。したがって、市長の発言には我が意を得たりと思った。
しかし、それに対する回答は、2023年度末現在で衣浦トンネルの未償還金が残っていること、あるいは衣浦大橋周辺の渋滞対策はトラス橋の架け替えなどにより渋滞対策を進めていくこと、したがって、現時点では早期の低料金化や無料化は困難と考えているという答弁であった。
また、これと同様の事例で、碧南市と豊田市を結ぶ衣浦豊田道路のうち知立市新林町から国道1号線をまたぎ豊田市生駒町までの約4.3キロの有料道路、衣浦豊田道路がある。有料区間を避けた交通によって周辺の一般道路が混雑しているので、無料化を要望する地元の声を聞くことも多くある。
そこで、この2路線についてもう少し掘り下げて議論したい。ここ数年の交通量、償還額の推移、現時点での未償還額はどのぐらいあるのか、そして償還満了の期限はいつまでか伺う。
【理事者】
衣浦トンネルの日平均交通量は、コロナ禍の2020年度に約1万5,800台であったが、その後回復傾向にあり、2023年度は約1万7,300台である。
次に、償還額は、2021年度から2023年までの3年間において1年当たり約4億円であり、現時点での未償還額は約52億円である。また、償還満了日は2029年11月である。
衣浦豊田道路の日平均交通量は、コロナ禍の2020年度に約1万4,700台であったが、その後回復傾向にあり、2023年度は約1万6,400台である。
償還額は、2021年度から2023年度までの3年間において1年当たり約1億円であり、現時点での未償還額は約159億円である。償還満了日は2034年3月である。
【委員】
衣浦トンネルは、現時点の未償還額は52億、毎年約4億円を償還して、償還満了の期限はこれから5年後の2029年である。一方、衣浦豊田道路は現時点の未償還額は約159億円で毎年約1億円を償還していて、償還満了は今から10年後の2034年である。特に、衣浦豊田道路は毎年1億円しか返せていないわけだから、普通にいえば償還までにあと159年かかり、今のペースではとても返し切れないと想定される。
料金徴収期限を迎えたときに未償還金が残ることは、当初の計画どおりの償還ができていない、つまり思ったような通行量がないことを意味していると思うが、その点を伺う。
また、料金徴収期限を迎え、仮に無料開放となる際に未償還金が残る場合は、どのように対応するのか伺う。
【理事者】
衣浦トンネルは、1970年度に2車線を事業化し、その後、1994年度に4車線化の事業変更をしている。また、衣浦豊田道路は1999年度に事業化しており、計画時の将来交通量はそれぞれの事業許可時の最新の道路交通センサスを根拠に算出している。
開通後、実際の交通量は景気の動向や沿線の土地利用状況などによる社会情勢の変化、さらには国道247号や国道419号をはじめとする周辺道路の整備状況の影響を大きく受けているものと考えている。その結果、現在の交通量と計画の交通量を比較すると、衣浦トンネルでは約8割、衣浦豊田道路では約5割と下回っている。
次に、未償還金についてである。
まずは、未償還金を少しでも減らせるよう県道路公社と運営権者の愛知道路コンセッション株式会社(ARC)と連携しながら、利用促進の取組を行い、料金収入を増加させたい。これまでに土・日・祝日に知多4路線、衣浦トンネルと衣浦豊田道路を対象とした1日1,000円の有料道路乗り放題企画を実施している。現在は、衣浦トンネルなどがデザインされた9種類のARC道路カードを配布し、県内各地の周遊に合わせて有料道路の利用を期待している。
また、償還満了に当たり未償還金が残ることが想定される場合には、大規模災害や社会情勢の変化などにより償還が滞るのを防ぎ公社の経営の安定化を図るため、料金収入の一部を積み立てて全体を一括管理し、公社が内部留保している損失補塡引当金によって未償還金を清算した過去の事例を踏まえ、事前に国など関係機関との調整が必要になる。
【委員】
計画時には将来の交通量はそれぞれ事業認可時の最新の道路交通センサスを基に算定したとのことであるが、いろいろな周辺状況が変わって、結果的に今は衣浦トンネルでは約8割、衣浦豊田道路では約5割である。
この答弁から分かるように、衣浦トンネルも衣浦豊田道路も、投資した資金に見合うだけの十分な活用がされていないと思う。衣浦トンネルも衣浦豊田道路も交通容量にはまだ余裕がある一方で、その近くにある道路は渋滞で悩まされているという現実がある。
また、損失補塡引当金等を活用しながら償還を満了することになれば、どちらにしても衣浦トンネルは5年間は現状のままであり、衣浦豊田道路も10年間は現状のままである。
また、トラス橋の架け替え等により衣浦大橋周辺の渋滞対策に取り組むといった委員会答弁があったが、それが完成するにはまだしばらく時間がかかるかと思う。今まさに困っている渋滞に対して、即効性のある対策は衣浦トンネルなどを無料にして交通量の分散を図ることだと思う。また、衣浦豊田道路にしても、無料開放によって周辺道路との交通分散も図ることができると思う。
そこで、この本来入る利用料金の収入を放棄してでも、たくさんの市民や県民に利用してもらったほうが施設の有効利用になり、市民・県民へのサービスにつながるのではないか。そこで、衣浦豊田道路の未償還額については愛知県が負担し、一括返済することで早期の無料化をすることはできないのか伺う。
【理事者】
現在、衣浦大橋周辺の渋滞に対応するため、将来の交通見通しも踏まえた渋滞対策として、衣浦大橋の整備をはじめとする周辺道路の整備を段階的に進めている。衣浦トンネルの無料化については、衣浦大橋周辺の渋滞対策の施策として想定していない。
また、衣浦豊田道路周辺の一般道路の混雑についても、無料化によって混雑の解消が見込まれるかなど、その効果は明確になっていないため慎重な検討が必要である。そのため、償還の途中で愛知県が未償還額を負担することは、よほどの必要性がない限り困難である。
今後は、衣浦トンネルや衣浦豊田道路の償還に向けて、国など関係機関と協議するとともに、周辺道路の混雑緩和に向けた取組について地元自治体など関係者と調整していく。
【委員】
無料化は難しいという答弁であった。
冒頭、さきの委員会で半田市長が無料化を要望したといったが、過去の議事録を見ると、ここ5年ほどずっと同じ要望を半田市長が行っている。それに対する答弁は、現在は未償還額が幾ら億円あるとのことである。毎年この金額は4億円程度減っているが、ずっと同じ答弁である。毎年要望しているのは、それだけ強い声が市民や県民からあるのだと私は推測する。そうであれば、実現できるような何かよい方法を模索することが大切なのではないか。
全国には、地方自治体が有料道路の未償還額を負担し、早期に無料開放した事例もある。私も市議会議員のときに視察に行った北九州市では、若松区と戸畑区を結ぶ若戸大橋あるいは若戸トンネルというものがあったが、これを9年早く無料にした。この財政負担は117億と報じられた。こういった事例もあるので、検討することは可能ではないか。
とにかく、初めから未償還金があるから難しいと決めつけてしまうのではなく、市民・県民へのサービス向上あるいは投資した道路設備の有効利用の観点で、何らかの方策を考えてもらうことを要望する。
【委員】
巨大地震発生が危惧されている本県でのブロック塀対策について質問する。
2024年1月1日の能登半島地震で多くの人が被災した。また、8月8日宮崎県で発生した震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震で、気象庁は南海トラフ地震の想定震源域では大規模地震が発生する可能性がふだんと比べて高まっているとした臨時情報が出され、巨大地震発生の不安を感じ、改めて大規模地震災害に備えた取組を加速していくことが必要だと感じた。
また、近年、日本各地で局地的な大雨によって多くの災害が発生し、今後も大雨等によって多くの被害が発生することも想定されている。
8月27日に発生した蒲郡市の土砂崩れで木造2階建ての住宅がのみ込まれ、この家に住む家族5人が生き埋めになった。
能登半島地震の災害ボランティアに行った人が、様々な場所でブロック塀が倒れているところを見たとのことである。
平成30年6月18日、マグニチュード6.1、最大震度6弱、大阪府の北部地震では、高槻市などで大きな被害が出て、ブロック塀の倒壊で子供が亡くなった。改めて説明すると、大阪市内で発生した強い地震であり、多くの人々に衝撃を与えた。また、大阪市は都市化が進んでいるため狭い地域に多くの建物やインフラが集中しており、震度6弱という揺れが多大な影響を与えた。地震後には学校や公共施設の安全性を見直し、防災対策が強化される契機となった。
地震後に全国でブロック塀の点検等の対策が取られたと記憶しており、大阪では倒壊事故への対応が取られたが、改めて本県の対応を伺う。
【理事者】
2018年6月に発生した大阪府北部地震の被害を受け、本県ではブロック塀の安全対策に取り組み、所有者に対してパンフレットや補助制度等により安全対策を促している。また、市町村が定めた避難経路等でブロック塀の安全対策に重点的に取り組んでいく区域を重点対策区域とする2段階の取組を行っている。
とりわけ重点対策区域については、県が所管する48市町村において地震後の2018年7月から8月にかけて市町村と連携して安全点検パトロールを実施している。
パトロールの結果、不適合と判定された3,275か所のうち、本年8月末までの6年間で、除却などの対策が行われたのは1,160か所で、その対策率は約35パーセントとなっている。
また、県と同等の権限を持つ名古屋市はじめ6市についても、独自に範囲や対象を定めてパトロールを行っており、今後も引き続き県が所管する48市町村や名古屋市はじめ6市と連携して、不適合なブロック塀のフォローアップを行っていく。
【委員】
その後、継続して行われている補助制度について、市町村への補助実績を伺う。
【理事者】
本県では、大阪府北部地震の発生した翌年の2019年度に、民間ブロック塀等除却費補助金を創設し、所有者がブロック塀等の除却や改修等を行う費用に対して市町村が国の補助制度を活用してその費用の一部を補助する際に県も連携して補助を行っている。
昨年度は44市町の521件に対して補助を行っており、2019年度からの累計では3,124件に対して補助を行っている。
【委員】
また、所有者に対してどのように周知しているのか伺う。
【理事者】
所有者に対しては、市町村においてブロック塀の安全対策として相談窓口の設置やホームページ、広報誌等で広く周知する取組を行っている。
そうした中、本県としても市町村や建築関係団体と連携し、ブロック塀の所有者がその危険性の有無を自己点検しやすくするため、チェックポイントをイメージイラストつきで分かりやすくまとめたパンフレットを作成し、市町村に活用してもらっている。
さらに、市町村や建築関係団体と連携して、ブロック塀診断士などの専門家の同行による戸別訪問を行い、現地で点検を実施し、具体的な対策や補助制度の説明をする取組を行っている。
今後も引き続き、市町村や建築関係団体と連携して周知啓発を行い、ブロック塀の安全対策を促進していく。
【委員】
不適合と判定された3,275か所のうち、本年8月末までの6年間で除却等の対策が行われたのは1,160か所で、その対策率は約35パーセントとなっているとのことだが、残りの約65パーセントの危険箇所のブロック塀についても対処してもらいたい。
先ほどいったとおり、公共施設の耐震化工事は行われているが、災害時に避難所として機能する施設の耐震性を高めることも重要視されている。大阪府では、この震災でライフライン耐震化、交通インフラ整備について見直しを行っている。本県においても南海トラフ地震の大規模地震が発生する可能性が高いといわれているので、改めて大規模地震災害に備えた取組をしっかり進めることを要望する。
【委員】
県立公園について質問する。
都市・交通局公園緑地課が管理する県内の都市公園は、11公園ある。この11公園、現場を見ると、本当に県民から愛され、また地域からも利用されており、利用率も高い公園である。公園の意義として、防災の観点が強いことも都市公園の特徴であるし、レクリエーションや都市緑化、環境保全など様々な観点がある。
11公園ある県立公園において、民間の活力を導入し、さらなる魅力の向上につなげている公園が幾つかある。
小幡緑地では、キャンプ場や、民間の人がレストラン等も運営し、食も楽しんでもらえる。ランチの時間帯には多くの人々が来ている状況を見た。キャンプ場は、週末には宿泊している人が、日中ではバーベキューを楽しんでいる人がいる。また、新城総合公園では、一斉に多くの人が利用できるわけではないが、自然を楽しみながら、ジップライン等も楽しむことができる工夫もされていた。大高緑地では、ディノアドベンチャー名古屋で、実物さながらの恐竜の模型がセンサーで動いて、恐竜のいる森の中を歩くという模擬体験ができる。これらは県立公園の中に民間の活力を導入して、魅力向上につなげている成功例といえる。
そこで、これまで愛知県の県立公園において、民間活力を導入した施設の、導入前から導入後における成果、利用状況、利用率の向上など、成果を伺う。
【理事者】
大高緑地のディノアドベンチャー名古屋は、動いてほえる実物大模型の恐竜が設置された樹林地を探検するアトラクション施設であり、オープン後、毎年約10万人の利用がある。
新城総合公園のフォレストアドベンチャー・新城は、樹林地を生かしたアスレチック施設であり、県内だけでなく隣接する静岡県からの来場者も多く、毎年約2万人の利用がある。
小幡緑地のオバッタベッタは、県で初めてパークPFI制度を活用し、地元の野菜を味わえるビュッフェスタイルのレストランと、バーベキューサイトやキャンプサイトから成る施設となっており、こちらも毎年約4万人の利用がある。
効果については、民間の資金をもって施設を整備するので、県が整備する費用を軽減できることはもちろんのこと、民間ならではの発想でサービスを提供するなど、近隣の公園にはない特徴的な施設であることから、地元の方々だけでなく、県内外から多くの来園者を呼び込むことができており、公園の魅力が向上するとともに地域の活性化につながっている。
【委員】
年間、大高緑地については10万人、小幡緑地については4万人の来園者がいるので、過去の数字からさらにプラスがされていると感じる。
県でこの民間活力の導入に向けて、どのような議論がなされたのか、プロセスについて伺う。すなわち、県立公園に対して民間活力を導入する際に、県の担当部局としてどのようなプロセスを踏んで導入に向けて動いているのか伺う。
【理事者】
県営都市公園は、厳しい財政状況の中、限られたコストでより質の高いサービスを提供していくことが求められており、公園のさらなる魅力向上を図るため、引き続きパークPFIなどの手法を用いて、民間事業者の資金やノウハウなど、民間活力を積極的に導入していきたい。
そこで、公園内の低未利用地や未活用用地などの区域を対象に、公園の魅力向上につながる施設の導入の可能性について、民間事業者へマーケットサウンディングを実施し事業提案を求めていく。その後、参加意欲のある民間事業者との対話を続け、民間活力導入の実現性が高いと判断された公園については、公募条件等を整理した上で事業者を公募していく。
【委員】
民間事業者に対して未利用地における事業提案等を待っているという答弁であった。未利用地などがあるとアナウンスをして、民間事業者に着目してもらい、興味を持ってもらい提案してくるのを待つということだと思う。
もちろん、そういった過程を踏みながら今までこの3か所の民間活力導入が形になっているので、一旦評価する。一方で、周辺道路の環境や、利用率の向上が見込むことができる環境の変化などがあったときには、県は先を読みながら、民間事業者に対してこれだけの効果が上がる可能性があることをプレゼンする必要がある。
例えば、東三河ふるさと公園は、御油側と御津側で二つに分けて入り口があり、未整備区間もあるが、約100ヘクタールを超す大きな県立公園である。今年度末にはいよいよ待望の約73キロメートルの国道23号名豊バイパスが、愛知県内は全線開通となる。その中において、新たにできる金野インターチェンジを下りてすぐのところに、東三河ふるさと公園の御津側の入り口がある。この県立公園において、これから魅力を向上させていくために、成功事例も幾つかあるうえで、積極的に動いていくことも必要である。
このようなことも当局として考えるべきだと思うが、状況の変化、利用率等の向上を見込むことができる環境が整っている状況において、県当局としてどのような取組を今後行っていくのか伺う。
【理事者】
東三河ふるさと公園は、豊川市東部の山林及びその周辺の持つ良好な自然環境を生かしつつ、東三河の地域性が感じられるよう地域の自然要素や歴史を取り入れた景観をつくり上げている。現在まで約136ヘクタールの区域を供用しているが、自然豊かな樹林地や御油と御津の拠点から高低差約150メートルの展望台に向かう園路や散策路は、まだまだ有効活用ができるのではと考えている。
委員指摘のとおり、国道23号蒲郡バイパスの開通によって、本公園へのアクセスが国道1号と国道23号のダブルネットワークになり、さらなる利用促進を図る絶好の機会であると認識している。
2021年度に行ったマーケットサウンディングの際には、園内の多くが樹林地であり開発できる平地が少ないことや、名古屋市など人口密集地域から遠いため十分な集客力が見込めないことから、本公園での民間活力導入について参加意欲の高い事業者はいなかったが、今後、交通アクセスの向上など、周辺環境が改善していくことなどについて、民間事業者にしっかりアピールすることで、東三河ふるさと公園への事業参入を積極的に働きかけていく。
【委員】
ぜひ積極的な取組を期待している。要望するのは、11公園のうち、30年以上経過している公園が8施設あり、約7割ある。すなわち老朽化が著しく、維持管理もしっかりしなくてはならない公園を抱えていることは把握しなくてはいけない。東三河ふるさと公園だけでも約140ヘクタールあり、万博の記念公園や大高緑地も同じである。
100ヘクタールを超す公園が幾つかありながら、その大きな面積を占めるのが樹木である。うちの近所でも、つい最近車を運転している人が、倒木が当たったという事故があった。やはりどの樹木が危ないのか、どの樹木は元気であるのかという点検もしなくてはいけない。県で樹木の点検等を行っている予算額では、これから全て点検を行っていくと20年もかかってしまうと聞いた。また、維持管理についても、一番多かった県立公園に対する維持管理費は約3億円であったが、現在では3,000万円ほどであり10分の1ほどまで低下している。その辺も踏まえて県民が安心して暮らすことができるように、また県立公園の魅力向上につながるように、ぜひ頑張ってもらいたい。
続いて、緊急輸送道路について伺う。
昨年9月の代表質問に対して答弁をもらった部分である。今日、災害の対応や防災力等向上が大変重要な時代となっている。豪雨被害や地震等の際、緊急輸送道路の確保が重要になってくるという指摘をした。昨年9月の代表質問の答弁では第3次の緊急輸送道路の指定をする、ラストワンマイルを指定するという答弁をもらった。
そこで、この第3次の緊急輸送道路の指定状況について伺う。
【理事者】
本県の緊急輸送道路については、国土交通省の中部地方整備局、愛知県などの道路管理者、防災部局、警察、自衛隊、港湾管理者などから成る愛知県緊急輸送道路ネットワーク計画等策定協議会において指定している。
本年2月に開催された協議会において、既存の緊急輸送道路から重要な防災拠点までをつなぐ道路、いわゆるラストマイルを、新たに第3次緊急輸送道路として位置づけた。
具体的には、市役所などの緊急車両を擁する行政機関170か所、豊橋市民病院など災害病院や、豊田スタジアムなどの地域内輸送拠点など158か所、合わせて328か所の重要な防災拠点をつなぐ延長176.7キロメートルの道路を第3次緊急輸送道路として指定した。
また、第3次緊急輸送道路の指定に当たっては、市町村に対して指定の方針などの説明会を行うとともに、経路の選定については市町村と幾度も調整を重ねた上で指定に至っている。
【委員】
我が豊川市でいうと、豊川市の中心を通る、姫街道国府馬場線が第2次の緊急輸送道路に指定されている。それは豊川市の中心を東西に通っている道路であり、300メートルほど南に入ると豊川市の市民病院、また100メートルほど北に入ると市役所があるなど、メインの緊急輸送道路である。ラストワンマイルが病院や市役所につながっており、この区間を指定してもらったという説明であった。この区間は市町村とも連携しながら協議し、理解をもらっているという認識の答弁であった。
そこで、この第3次の緊急輸送道路に指定されると、大きな地震等が起きたときには、救助に来てくれる人、また支援物資を運んでくる車等が円滑に通れるように道路を啓開しなくてはいけない。
すなわち、地震等があったときにも強い道路にしていかなくてはならないということである。その整備において、例えば電柱の地中化や、橋を強くすること、のり面を強くすることなどは、市町村が独自で予算を組んで整備していくのか、県が予算を出していくのか、国が予算を出してくれるのか。また、どこがリーダーシップを取りこの事業整備を進めていくのか伺う。
【理事者】
市町村における緊急輸送道路の耐震化等の対策についての予算について、こうした緊急輸送道路の事前の防災対策の推進には、国庫補助金など国の支援が不可欠と考えている。県としても、機会があるごとに防災・減災、国土強靱化のための予算、財源を継続的に確保できるよう国に強く訴えている。
また、第3次緊急輸送道路の約6割が、市町村が管理しているものである。国の補助金のほかにも、県と国土交通省中部地方整備局が連携して立ち上げた中部自治体支援ポータルサイトを活用して、市町村からのインフラ防災、維持管理に関する相談に応じたり、無電柱化に関する勉強会を開催したりするなど、技術的な支援に取り組んでいる。
また、無電柱化に関してもう一つあるが、新たな電柱の設置の抑制を目的として、道路法第37条に基づいた電柱の占用制限の手続を行うように、県から、対象となる市町村に働きかけており、これまでに今回対象の48市町村全てで告示が完了している。
さらに、大規模な災害により道路に車両が滞留した場合に備えて、2020年度にレッカー関連3団体と協定を締結し、市町村からの要請があれば、市町村もこの協定を活用できる内容となっている。2022年度からは、この協定に基づいて、車両の移動に関する訓練も実施している。市町村の職員の方にも参加してもらっている。
今後は、さらに本県の道路啓開計画である中部版くしの歯作戦に基づく初動体制の構築や、図上シミュレーション訓練などの道路啓開訓練について、関係する市町村にも参加を呼びかけるなど、国・県・市町村が一体となって取り組む。
引き続き安全で安心な愛知の実現に向け、国・市町村など関係機関と連携を図り緊急輸送道路ネットワークの強化に取り組む。
【委員】
もう一点、昨年6月2日の豪雨被害の際に、国道1号が通行止めになり、国道151号と国道1号が交差する地点が水に浸かった。この国道151号の北側が、国道151号の一宮バイパスであり、現在、県でしっかり整備をしてもらっている最中である。こちらも命の道であり、新城市の人々が第3次医療を受けるために豊川の市民病院に救急車で来ることが多いが、片道1車線の道路でありながら慢性的な渋滞をしている。
そこで、一宮バイパス整備のこれまでの進捗状況と、今年度の事業状況について伺う。
【理事者】
一般国道151号一宮バイパスは、豊川インターチェンジ北側の現道から市道上長山一宮線までの延長約3.6キロメートルの1工区と、市道から新城市川田の新城バイパスまでの延長約4.3キロメートルの2工区に分けて事業を進めている。
このうち1工区については、昨年度は用地買収を進め、その進捗率は約98パーセントとなった。また、JR飯田線鉄道交差部の橋梁の床版工事を実施した。
今年度も引き続き残る11件の用地買収を進めるとともに、JR飯田線交差部につながる区間の橋桁の架設工事を今月実施する予定である。さらには、市道交差部における函渠工事を行うなど、事業の推進を図っていく。
また、2工区については、豊川市内のうち北側に位置する東上地区で、昨年度、橋梁予備設計に加え用地測量を実施した。今年度も引き続き用地測量を進めていく。
また、南側に位置する上長山地区については、今年度は市道交差部の形状について、交通管理者である警察と調整を進めていく。さらに、2工区のうち新城市内については令和4年度から用地取得を進めており、その進捗率は約5割となっている。
今年度も引き続き用地買収を進めていく。
【委員】
この国道151号一宮バイパスは、豊川側が1工区の3.6キロで、2工区の新城側が4.3キロであり、この二つを合わせて国道151号の一宮バイパスという区間である。
事業を着手して数年たっているが、全線開通が完了という観点からすると、現状で約何割ほど完了しているのか、細かい数字ではなくて構わないので伺う。
【理事者】
愛知県の事業評価書では、全体の事業費は約170億円となっている。令和3年度までに約80億円の事業費を投入しており、そこから数年たっているので、残事業費は約70億円と考えている。
【委員】
実際に工事の半分以上終わっているのか、終わっていないのか。
【理事者】
全体の工事の進捗率について、具体的な数値は持ち合わせていないが、現場を見ると分かるように、先ほど説明したJRの上の鉄道橋をまたぐ橋梁、それから川を渡る橋梁の整備も進んできているので、これからしっかり取り組んでいく。
【委員】
この総額の約170億円という数字が明記されたのは平成21年くらいであった。この当時はまだ消費税が上がる前であった。また6月定例議会で委員から現在の燃油価格の高騰、また労務費の上昇がどの程度であるかという質問に対して、労務費は1.7倍、そして物価は1.4倍上昇しているとあった。この状況において、170億円の総事業費のうち100億円を投入する予定になっているが、現場を見ても5割、6割以上の進捗を感じず、地元からすると心配である。
総事業費について、何十年も前の170億円というものが据置きではなく、5年に1度の見直し時期があるので、燃油価格や労務費の上昇なども加味しながら取り組んでもらいたい。
【委員】
私からは、二項目伺う。
一項目めは、名古屋高速道路の大規模災害、地震対策についてである。
8月8日気象庁から発表された南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)、この臨時情報が出された期間はちょうどお盆の帰省や行楽シーズンと重なって、多くの人たちが車で移動した。
そこで、まず名古屋高速道路では、この臨時情報を受けてどのような対応をしたのか伺う。
【理事者】
名古屋高速道路公社では、地震防災応急計画に基づき30人で構成される警戒態勢を構築し、8月8日の南海トラフ地震臨時情報発表時から15日の政府による注意呼びかけ終了までの7日間、24時間体制で延べ300名の職員で対応に当たった。
具体的な活動の内容としては、まず災害対策室に対策本部を設置し、関係機関・関係業者に対して被災時における連絡体制の確認を行った。その後、臨時情報発表以降の職員体制の確認、パトロールカーや非常用発電機の燃料など資機材の確認、テレビやインターネットを通じて地震に関する情報収集などを行った。
今回の発表に関連する被害などはなかったが、日頃から関係機関などと情報共有を密にし、臨時情報発表時などには適切に対応していく。
【委員】
私も毎日のように名古屋高速道路を利用しているが、ふと高速道路上で実際に地震が起こったらどうすればいいのか、ほとんど考えずに名古屋高速道路を利用していることに改めて気がついた。
そこで、大規模災害時の高速道路利用者の安全確保に向けた取組について伺う。
まず、名古屋高速道路の利用者へ、大規模災害時の身を守る行動などについてどのように周知しているのか伺う。
【理事者】
具体的な周知方法としては、公社のホームページのほか、公社が発行している情報誌において大規模災害発生時の車両の取扱い、避難方法などを掲出している。
地震発生時には、道路上に設置された情報板によって利用者に対して通行規制などの情報提供を行い、特に震度5強以上の大規模地震が発生した際には車両を左側に停車してもらうよう通知する。
なお、路面の段差や道路施設の損傷などにより継続した走行が不可能と判断した場合には、エンジンを停止し、エンジンキーを運転席に残したままドアロックをせず避難することをお願いしている。
また、高架区間には約1,000メートルごとに路面から地上部に下りる非常階段が設置されており、路側壁面に100メートルごとに設置された表示板に従い、最寄りの非常口から階段を降り、出口扉付近に示されている広域避難場所への避難をお願いしている。
なお、トンネル区間などには約500メートルごとに非常口あるいは非常階段が設置されている。
今後も引き続き大規模地震発生時における避難方法の周知に努めていく。
【委員】
名古屋高速道路公社で、冊子を作っているとの話だった。すごくおしゃれでお金をかけたものを作っているようだが、たぶんほとんどの人が見たことがなく、もったいないと思う。その中で本当に丁寧に、大規模地震の際の避難の仕方が、写真やイラストを入れて作ってあるので、そういったものをもっと県民に見てもらえるようにしてほしい。
この項目の最後の質問であるが、南海トラフ巨大地震はいつ発生してもおかしくない状況で、地震発生時に安全を確保するために、名古屋高速道路では南海トラフ地震への備えについてどのような取組を行っているのか伺う。
【理事者】
名古屋高速道路公社では、毎年、南海トラフ地震を想定した防災訓練を計画し、本年も8月30日に名古屋市港区にある公社の船見基地にて実施した。
訓練の内容としては、特殊な資機材を使用して放置車両の移動や道路面の段差を解消し緊急車両の通行ルートを確保するまでの応急復旧作業であり、被災時の早期の道路啓開に向けて対応力の向上を図っている。
このような訓練は、大規模災害などが発生した際の復旧の第一歩として有効かつ重要な取組である。
また、本年4月からは、料金所がない一宮線北行きの春日入口及び一宮西春入口において、遠隔操作による入り口閉鎖装置の運用を開始している。これにより、従来は職員などが現場に駆けつけ入口を閉鎖していたが、遠隔操作により閉鎖することができるため、災害時の速やかな対応が可能となる。
今後も災害時に迅速かつ適切な対応を行うための防災訓練などを通して、引き続き安全安心の確保に取り組んでいく。
【委員】
名古屋高速道路でそういった訓練をしっかりしていることを知らなかった。いろいろな状況を想定して訓練をやっていると思った。あと知らなかったことは、キーをつけたまま避難することで、特に女性だとキーはバッグに入れたままだし、男性でもポケットにキーを入れたままであり、パニックになるとキーを持ったまま避難してしまうことが大いに考えられる。レッカーで車が動かせない状況が出てくるなど、車にキーがないと大変なことになるので、必ずキーはそのままにするか、車の中に置いて避難することを、もっと周知徹底してもらいたい。
2項目めは、緊急輸送道路沿いの耐震不適格建築物についてである。
この7月初旬に非常にショッキングな見出しの新聞記事が目に留まった。新聞記事の見出しは、「名古屋市震度6強で緊急輸送道路沿い建物4分の3倒壊か」とある。記事では、名古屋市内の主要都市間などを結ぶ第1次緊急輸送道路沿いで耐震診断が義務づけられる建築物342棟のうち4分の3に当たる256棟が震度6強の地震で倒壊する恐れがあることが名古屋市の調査で分かったという内容であった。
災害時に緊急車両の通行や避難、支援物資の輸送などを担う都道府県が指定する緊急輸送道路沿いでは、1981年以前の旧耐震基準で建築され、道路幅の半分以上の高さがある建物などは、耐震診断が義務づけられている。
そこで、県内の緊急輸送道路沿いの建築物について伺うが、まずは県内の耐震診断を義務づけられた路線及び距離はどのくらいあるか。
また、2021年3月に耐震診断結果を公表しているが、公表時点での対象建築物と耐震診断結果の報告を受けた建築物、そして耐震性が不十分な建築物は県全体でそれぞれ何棟あるのか伺う。
【理事者】
本県では、2014年3月に愛知県地域防災計画で定める緊急輸送道路のうち、第1次緊急輸送道路を基本に国道1号をはじめとした県内50路線、総延長約873キロメートルを愛知県建築物耐震改修促進計画~愛知県建築減災プラン2020~において、沿道建築物に耐震診断を義務づける道路として指定している。促進計画では、指定した道路の沿道にあり耐震診断を義務づけた建築物について、2019年3月を耐震診断結果の報告期限としており、2021年3月には耐震診断結果を県及び県内の6所管行政庁が公表している。
2021年の公表時点において、県内の対象建築物は531棟で、そのうち耐震診断結果の報告を受けた建築物は516棟あり、報告率は約97パーセントとなっている。
また、耐震性が不十分な建築物は401棟であり、耐震診断結果の報告を受けた建築物のうち約78パーセントを占めている。
【委員】
義務づけられた建築物が531棟で、そのうち報告を受けているものが516棟で、報告率は97パーセントであり、報告率としては高い数字だと思う。そして、516棟のうち78パーセントに当たる401棟が、耐震性が不十分だったと分かった。
ちなみに、耐震診断を義務づけられている建築物531棟で報告されたのは516棟だが、耐震診断結果が未報告であった建築物が15棟ある。その後、その15棟はどのような状況か伺う。
【理事者】
耐震診断結果が未報告であった建築物15棟については、名古屋市、春日井市、豊田市が所管しており、それぞれの所管行政庁が所有者に対し耐震診断結果を報告するよう働きかけを行い、2024年3月末時点で9棟について報告済みとなっている。
残る6棟についても、所管行政庁である名古屋市と豊田市が耐震診断結果の報告に向けて引き続き所有者と調整を行っていると聞いている。
【委員】
耐震性が不十分な建築物について、耐震診断結果の公表後に耐震改修及び除却している建築物は何棟あるか伺う。
【理事者】
耐震診断結果の公表後に耐震改修及び除却している建築物の数は27棟である。その結果、耐震性が不十分な建築物は、2021年3月の公表時点で401棟であったが、2024年3月末現在で374棟となっている。
【委員】
耐震改修及び除却している建築物は27棟であり、決して多い数ではない。やはり改修や取壊しが進まないのは、費用が高額であることだと思う。
県の取組として、耐震性が不十分な建築物の所有者に対して改修または取壊しを促進する市町村の耐震改修費補助事業に対して県は助成しているが、その取組状況について伺う。
この補助事業を行っている市町村の数と、これまでの補助件数を伺う。
【理事者】
本県では、耐震診断を義務づけられた建築物の耐震診断結果公表前である2015年度に市町村と連携して耐震改修費補助を創設し、2021年度からは除却も対象に加え、所有者の事情に応じた支援ができるよう拡充を行っている。
この補助制度の対象となる民間建築物があるのは13市町であるが、そのうち補助制度を創設しているのは11市であり、具体的には名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、春日井市、豊田市、瀬戸市、津島市、蒲郡市、豊明市、弥富市である。
また、補助制度を創設した2015年度から2023年度の累計の補助実績は46件で、そのうち改修の補助が27件、除却の補助が19件である。
【委員】
8月8日に南海トラフ地震の臨時情報が初めて発表され、全体的に減災への意識もかなり高まっている。倒壊して道路を塞ぐ恐れのある建築物が数多く存在することは大きな問題である。
そこで、本県として耐震診断を義務づけられた路線の、耐震性が不十分な建築物について、現状と課題と今後の取組について伺う。
【理事者】
緊急輸送道路沿いの耐震診断を義務づけられた建築物については、2021年3月に策定したあいち建築減災プラン2030において、耐震化の目標として2030年度までに耐震性が不十分なものを半数解消を掲げ、目標の達成に向け耐震化を促進しているが、耐震性が不十分な建築物は2024年3月現在で374棟であり、これらの建築物をいかにして耐震改修や除却に結びつけていくかが課題である。
耐震改修補助事業を実施している市からは、所有者等が耐震改修しない理由として、耐震改修の費用負担が大きいこともあるが、所有者等が耐震化の重要性をそもそも認識していないことも理由の一つであると聞いている。
こうした中で、耐震化を進めていくには何より所有者等の意識の向上が不可欠であるため、所有者等に対する周知啓発により力を入れていく必要がある。
そこで、本県ではダイレクトメールによる周知啓発に加え、所有者等への戸別訪問を実施して、改修の必要性などについて所有者等に直接働きかけを行っており、昨年度は瀬戸市の8棟で実施している。また、今年度は新たに緊急輸送道路沿いの建築物の耐震化を呼びかけるリーフレットを作成し、より効果的な戸別訪問ができるようにしていく。
大規模地震発生時に緊急輸送道路の機能を確保するため、沿道の建築物の耐震化は極めて重要であるので、今後も引き続き市町村や関係建築団体と連携し、しっかりと耐震化の促進に取り組む。
【委員】
能登半島地震では道路が寸断されて多くの集落が孤立した。こうした地域は沿道の耐震化が不十分である建物が壊れたら、救助活動も、物資の支援もできず、医療もダウンする。その中で、やはりまだ数多くの耐震が不十分な建物が残っているという現実があるので、やはり県と市町村と一緒になって、戸別訪問するなど、粘り強く進めてもらいたい。
【委員】
生活道路の交通安全対策について伺う。生活道路における交通事故、死亡事故が散見される。その中で、人命優先の安全安心な通行空間のさらなる推進を図るため、ゾーン30プラスの取組が進められている。
ゾーン30プラスとは、最高速度30キロの区域規制と、ハンプ等の物理的なデバイスの適切な組み合わせによって、交通安全の向上を図ることを目的に道路管理者と警察が連携しながら整備を進めるものである。この低速度規制の実施と物理的デバイスの設置により、生活道路における走行速度や抜け道利用が抑制されるという直接的な効果のほかにも、整備計画の策定過程の際に課題の共有ができること、また対策の必要性について地域での合意形成が図られる効果などがある。さらに、統一した看板、路面標示などを設置することにより、ドライバーへのさらなる注意を喚起するという効果も期待をされている。
このゾーン30プラスの取組における県の役割としては、生活道路の主たる道路管理者である市町村と警察による整備計画の策定が円滑に進むよう支援する立場であること、そしてまた国と連携してその策定支援に努めていくこととされている。
そこで、県内におけるゾーン30プラスについて、これまでと今後の取組状況について伺う。
【理事者】
愛知県内においては、名古屋市を除く五つの市町の8地区でゾーン30プラスの整備計画が策定され取組が進められている。また、これら以外の一つの地区においても整備計画策定を目指して、今、検討が進められている。
なお、取組を進めている八つの地区のうち五つの地区においては、当初の整備計画に基づく対策を既に終えており、その効果検証を行い、さらなる対策の必要性について再度検討している段階と聞いている。
県としては、当初の整備計画の策定時のみではなく、こうした事後の取組の段階も含め、技術的な助言や国庫補助採択に向けた対応など、必要な支援を行っていく。
【委員】
幾つかの地区については既に整備を終えて次の段階へ進んでいるので、それ以外の地区にもしっかり促し、引き続き県の役割を果たすように努めてもらいたい。一方で、今年に入って道路交通法の施行令が改正されて、2026年の9月から中央線や中央分離帯がなく道幅が狭い一般道路の法定速度の上限が、60キロから30キロに全て引き下げられる予定である。これによりほとんどの生活道路において最高速度が一律30キロに規制される。
そうした中、ゾーン30プラスの今後の取組について伺う。
【理事者】
道路交通法施行令の改正に伴うゾーン30プラスの取扱いについてであるが、現時点においては国から示されているものはないが、生活道路の速度が30キロに規制されたとしても、生活道路における事故の発生が懸念される限りは、その安全対策は何らかの形で継続していくべきである。
今後も国、市町村、警察と連携し、情報を収集しながら適切に対応していく。
【委員】
現時点では県警察にも国から何も示されておらず、基本的な対応を決めかねているとあった。ただ、生活道路が全部30キロ規制になると、地域の住民も含めて、市町村や自治体への影響が非常に大きいと思う。各自治体、そして警察としっかりと連携して、これからも生活道路の交通安全対策を進めてもらいたい。
また、併せて最高速度が30キロに規制される範囲が広がるのは、やっぱり地域の住民の意識も変わると思う。生活道路で通勤時の朝夕の時間帯に、車両が数多く通るような地域の人は、通学路であれば児童の見守りも含めて非常に安全の意識が高い。一方で、あまり関心がない地域もあり、格差があったが、安全の意識はこれからどんどん高まると思う。
例えば交差点部や、カーブ等の見通しが悪い道路はたくさんあると思うが、そういった地点で、カラー舗装をやってほしいとか、新たにドット等の道路標示を追加で実施してほしいという声が増えると予想している。そうした声にしっかりと答えていけるよう、道路維持課や県としても、しっかりと予算確保できるような体制で計画してほしい。
【委員】
前回の6月定例議会の建設委員会では、県営住宅は国から計画の確認を受けた上で、国の補助を得て県の一般会計で整備される、また、近年は用地を取得して新しい住宅を建設するのではなく、建て替えと長寿命化改善が主体でPFI手法による建て替えも行われていること、県営住宅の家賃は公営住宅法に基づく方式の応能応益方式で家賃を決定し、その会計は特別会計を設けて管理していることの説明があった。
また、現在では考えられないが、いまだに風呂設備が設置されていない県営住宅が多くある現状について質問し、管理する県営住宅の半数しか風呂設備が設置されていないことが明らかとなり、風呂設備が未設置の住戸への風呂設備の設置を進めていくとの答弁であった。
そして、入居している人が取りつけた風呂設備が老朽化して、非常に苦労している状況や、生活保護を受けている世帯は住宅扶助で風呂設備を設置できることも紹介し、県当局の答弁では、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度が利用できることや、生活保護制度の住宅扶助についてしっかりと周知していくとあった。
今回も引き続き県営住宅に関する問題について伺う。
風呂設備が設置されていないこと以外にも、今日の県営住宅が抱える問題は数多くあり、私はこれまでも県当局に対して本会議や建設委員会の場で繰り返し質問してきた。その結果、ほんの少しだけ進んだものもあるが、まだ多くの課題がある。
前回も少し触れたが、79年前の戦争によって日本各地は壊滅的な状態となり、国民は住宅を失い、命がけで厳しい冬を過ごすことを強いられていた。国は、国民が安心して暮らせる住宅を提供することが急務であり、昭和26年6月に公営住宅法を制定し、全国各地に県営住宅、市営住宅、町村営住宅の整備を進めた。
愛知県も昭和28年3月に愛知県県営住宅条例が公布され、住宅に困窮する県民に提供するため、公営住宅法に基づく県営住宅を整備してきた。条例ができた当時の県営住宅は木造やコンクリートブロックを積み上げて造った簡易耐火構造の住宅も多くあった。エレベーターが設置された高層住宅は昭和40年代半ばの高度成長期になってようやく建設され始めたが、この当時はまだエレベーターが設置されていない4階建て、5階建てのいわゆる階段室型の中層住宅の建設が中心であった。
また、法律の変遷を見ていくと、昭和26年の公営住宅法の制定により、低額所得者に対する住宅供給制度が確立され、公営住宅の種類を第1種公営住宅と、より低額所得の者に向けた第2種公営住宅に分類され、国からの建設費の補助率も第1種公営住宅は2分の1、第2種公営住宅は3分の2と、第2種公営住宅のほうが手厚いものとなっていた。その後、平成8年の法改正によって、住宅の種別区分が廃止となり、建設費の補助率も2分の1に統一され、さらには家賃も住宅の建設原価を基にした限度額家賃方式から、入居者の収入と住宅から受ける便益により定める応能応益家賃方式に改められた。
公営住宅法の制定から73年がたち、この間、公営住宅法は様々な改正が行われてきたが、法の目的は国と地方公共団体が協力して健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することで国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することは変わっていない。
愛知県の県営住宅も長い歴史の中で住宅の新設、入居、維持管理、そして建て替えといったサイクルでその役割を担ってきた。しかし、高度成長期に、大量に供給された県営住宅は、今、50年を経過して建て替えを実施する時期となっているが、その対応は追いついておらず、多くの県営住宅で老朽化が進んでいる。
そこで、まず県営住宅の建設年代別に見た状況について伺う。
昭和49年度に建設された県営住宅は今年建設から50年を迎えるが、昭和40年代以前、昭和50年代、昭和60年代以降に分けた管理状況、空き家の状況を伺う。
【理事者】
本年8月1日現在で、県営住宅は5万6,686戸あり、空き住戸は1万3,060戸となっている。これらの戸数には住棟を建て替えることとしている住宅も含まれ、建て替えの対象となっている住棟には新たな入居者の募集を行っていない。また、現在入居されている方は順次新しく建設された住棟などに移転してもらい、移転が完了すると全ての住戸が空き住戸となり取壊し工事に着手する。こうした建て替え予定となっている住棟を除いた管理戸数は、5万909戸で、空き住戸は9,899戸となっており、空き家率は19.4パーセントである。
これを建設年代別で見ると、昭和40年代、1974年以前までの年度で建設された県営住宅の管理戸数は7,122戸、空き住戸2,278戸となっており、空き家率は32パーセントである。次に、昭和50年代の年度に建設された県営住宅の管理戸数は1万6,862戸で、空き住戸は4,053戸となっており、空き家率は24パーセントである。最後に、昭和60年度以降に建設された県営住宅であるが、管理戸数は2万6,925戸で、空き住戸は3,568戸あり、空き家率は13.3パーセントとなっている。
【委員】
次に、エレベーターが設置されていない県営住宅の各階の空き家状況を伺う。
【理事者】
エレベーターが設置されていない県営住宅は、建て替え予定となっている住棟を除いて1万7,165戸あるが、そのうち4,555戸が空き住戸となっており、空き家率は26.5パーセントである。各階の空き住戸の状況は、1階は管理戸数4,218戸に対して空き住戸816戸、空き家率19.3パーセント、2階は管理戸数4,211戸に対して空き住戸888戸、空き家率21.1パーセント、3階は管理戸数4,203戸に対して空き住戸1,103戸、空き家率26.2パーセント、4階は管理戸数3,235戸に対して空き住戸1,095戸、空き家率33.8パーセント、5階は管理戸数1,298戸に対して空き住戸653戸、空き家率50.3パーセントとなっている。
【委員】
現在の県営住宅は全体で5万6,686戸あり、そのうち昭和49年度以前に建設され、建設から50年を経過する住宅で建て替えが予定されていないものが7,122戸もあり、こうした県営住宅の空き家は2,278戸、空き家率32パーセントにもなっている。
前回の建設委員会で明らかになったが、県営住宅に風呂設備を設置し始めたのは昭和61年4月からで、当然これらの建設から年数を経た古い住宅には風呂設備がない。
また、答弁にあったように、エレベーターが設置されていない県営住宅の空き家率は26パーセントを超え、その空き家は3階、4階、5階に集中し、とりわけ5階に至ってはその半分が空き家となっている。風呂設備が設置されていない住宅、エレベーターが設置されていない住宅に空き家が集中している。これが今の県営住宅の実態である。
既に建っているエレベーターが設置されていない住宅は、その住宅の構造上の問題や、エレベーターの設置に必要な敷地などに制約があり、エレベーターを後から設置することが難しいことは理解するが、前回の建設委員会でも質問した浴室スペースは、既に全ての県営住宅にある。そこに風呂設備を設置することは簡単なことだと思う。それをいつまでたっても入居者に設置させていることが問題だと思う。
エレベーターが設置されている住宅も一緒である。エレベーターが設置されていても大規模な改修がなされず、長年放置されていることは県財政が厳しいといっても行政の怠慢であるといわざるを得ない。
県は、2020年3月に策定された愛知県営住宅長寿命化計画で、エレベーターが設置されていない老朽化した5階建て以下の中層住宅は高層住宅に建て替えて入居者を集約し、また老朽化した高層住宅は大規模な改修、すなわち外壁や屋根、配管等の改修に加え、段差の解消や手すりの設置等のバリアフリー化をする長寿命化改善工事を実施して住宅の長寿命化を図っていくとしている。
中層住宅を建て替えればエレベーターも風呂設備も設置され、エレベーターのある高層住宅は長寿命化改善工事で風呂設備を一緒に設置していけば設備面の問題は解決される。
建設から50年経過しても建て替えが予定されていない県営住宅が7,122戸あるわけだが、愛知県営住宅長寿命化計画における県営住宅の建て替えと長寿命化の状況を伺う。
【理事者】
愛知県では、既存県営住宅の有効活用と長寿命化を図ることを目的として、2020年3月に愛知県営住宅長寿命化計画を策定し、2020年度から2029年度までの10年間を計画期間として効率的に事業を実施する。計画では、老朽化した住棟の建て替えと長寿命化改善を組み合わせて事業量の平準化を図ることとし、計画期間中に約6,900戸の建て替えと、約4,000戸の長寿命化改善を実施する。
2020年度から2023年度までの4年間の事業実績としては、建て替え事業では2,620戸の既存住宅の用途廃止と新たに1,137戸の建設を行い、進捗率は約38パーセント、長寿命化改善事業は1,431戸で進捗率は約36パーセントとなっている。また、現在建て替え工事着手中の住宅は5住宅359戸、現在長寿命化改善工事着手中の住宅は3住宅325戸である。それぞれおおむね順調に進捗しているものと考えている。
【委員】
説明を聞くと長寿命化計画の上では順調に進んでいるように聞こえるが、昭和40年代に建設され50年以上が経過した住宅で今なお建て替えの予定が示されていないものは今後どうするのか。このままいけば耐用年限の70年を超えても使わざるを得なくなると不安を覚える。しっかりとした予定を県民に示す責任が県にはあると考えるが、どうか。
【理事者】
昭和40年代に建設され50年が経過した住宅で建て替えの予定を示していないものについても、今後、長寿命化計画に基づき順次建て替えや長寿命化改善、用途廃止に関する具体事業の実施計画を作成し、円滑な事業が実施できるよう努めていく。
【委員】
続いて、私の地元である名古屋市名東区の高針住宅は、昭和50年、51年に新設された7階、8階建ての高層の5棟から成る県営住宅であるが、今まさに1棟から順に長寿命化のための大規模改修工事、長寿命化改善工事が進められている。
先月の9月10日に、今年度長寿命化改善工事に入る高針住宅の2棟の入居者に対して、長寿命化改善工事の工事説明会が実施され、私もその説明会に出席した。その説明会では、工事内容や工期、作業の進め方の説明と入居者へのお願いがなされた。この工事は工事期間が1年以上となる、まさしく大規模改修工事である。ただ、当初は一緒に進めるはずだった給排水管工事の入札で不調が続いて当日は具体的な説明がなかった。今も入居者の生活に重要な給排水管工事の入札が落札されず、いまだ工事に着手できない状況になっている。
なぜ、この給排水管工事の入札が不調となったのか、県がどのように分析し、どのように対応するつもりであるか伺う。
【理事者】
高針住宅長寿命化改善給排水工事第2工区は、当初の発注が不調であったので、入札参加資格の地域要件を緩和し発注したが、再び不調となった。このため、一般競争入札から指名競争入札に変更し、3度目の発注したが、今回も不調であった。3度目の発注の前に入札辞退者などへ聞き取りを行ったところ、入札不調の理由としては、技術者が不足し現場に配置できないことが挙げられており、配置する技術者の範囲が広がる指名競争入札としたが、不調となった。
今後は、指名した業者から辞退理由を聞き取り、設計内容などに反映させ、契約に至るよう検討していく。
【委員】
給排水管工事は、生活する上で最も大切な設備であり、機能しない事態が起こることはあってはならない。外壁はきれいであることに越したことはないが、多少汚れていてもすぐには生活に困らない。給排水管が壊れる、すなわち断水・漏水が発生すると、その日のうちに困る。入居者は断水・漏水の恐れがある中、生活している。しっかりと分析し、速やかに契約できるよう取り組んでもらいたい。
ここからは県営住宅の入居者の現状を踏まえ、入居者が組織し日常の住宅の管理を担っている自治会の現状を中心に、県営住宅の管理がままならないことについて伺う。
県営住宅では、入居者からの家賃を原資に住宅の修繕等を行っているわけであるが、平成8年の公営住宅法の改正により、県営住宅の家賃は、入居者の収入に応じた応能応益家賃となり、結果的には県の収入が激減した。県は、この減収に対応するため、それまで行ってきた住宅の計画的な修繕を取りやめた。安い住宅だから仕方がないといわんばかりである。古くなった県営住宅は見た目にも、中身もぼろぼろである。こんな計画的な修繕ができていない古い県営住宅に誰が入居しようと思うか。きちんと修繕されず、建て替えの予定も示されない老朽化した住宅が多く存在しているのが現実である。
なお、県は20年に一度はこうした大規模改修を行うと定めているが、今はそれができていない。高針住宅は40年たってやっと大規模改修がされたという状態である。
そして、今、入居者はどんどん高齢化し、県営住宅が最期の家、いわゆる、ついの住みかとなっている入居者が多くいる。建て替えが済んだ新築の県営住宅は見た目も中身もぴかぴかの最新で、入居を希望する若者もいるが、実際は建て替えで移転した高齢の入居者ばかりで、そこに若者が入居するとすぐさま自治会の役員を押しつけられるとのうわさでいっぱいである。このようなうわさが広まっていれば、県営住宅に入居したいと思う若者はますます減る。せっかく新しい住宅に入っても何でもかんでも押しつけられ、嫌になり退去してしまう。
ここで、確認のため、県営住宅の入居者の高齢化を端的に表していると思われる高齢の単身者の入居状況を伺う。
【理事者】
本年8月1日現在で、県営住宅に入居する4万3,626世帯のうち、65歳以上の単身者世帯は1万734世帯となっており、全入居世帯の24.6パーセントを占めている。
【委員】
県営住宅の入居者のうち25パーセント、4分の1が高齢の単身者となっている。このように高齢者ばかりとなった県営住宅の自治会は、もう限界になっている。このことは今まで何回も取り上げてきた。入居者の高齢化によって自治会役員の成り手がいない上に、共益費を払わない納付意識の低い入居者の増加により、自治会役員は共益費を徴収することが大きな負担となっていると、私のところに自治会の役員の方から声が数多く届いていた。
公営住宅法では家賃以外の金品徴収を禁止していると解釈され、共益費を県が徴収できないと長年の間、据えられていたが、共同施設の維持管理費用である共益費について、その費用を徴収することを禁止しているものではないと解されるようになり、私は自治会役員の負担の軽減につながる、県による共益費の徴収を何年も繰り返し求めてきた。その結果、県もようやく重い腰を上げ、共益費の県徴収に踏み切った。県による共益費の徴収制度は令和2年度から始まったが、県が徴収する項目は自治会が徴収している共益費の一部である。
そこで確認する。県は、共益費、県では附帯設備使用料と呼んでいるが、共益費のうちどの項目を、そしてなぜその項目を徴収することにしたのか。また、共益費の徴収を県徴収へ移行した住宅数はどのくらいあるのか。
【理事者】
現在、県で徴収できる附帯設備使用料、いわゆる共益費の項目は、愛知県県営住宅管理規則で5項目を定めており、具体的には、1汚水処理施設に係る電気料、清掃費、消毒費及び消耗品費、2排水用中継ポンプに係る電気料、3エレベーターに係る電気料、保守点検費及び消耗品費、4揚水ポンプに係る電気料、5廊下灯、階段灯及び街路灯、その他これに類するものに係る電気料となっている。
これらの5項目については、入居者が生活する上で欠かせない設備で、住宅を維持していくためのライフライン及び入居者の安全安心に関連する重要な項目として県で徴収を行うこととした。
次に、県が附帯設備使用料を徴収している住宅は、県営住宅295住宅のうち今年度から県徴収を開始した11住宅を含め104住宅となっている。
【委員】
今、ライフライン及び安全安心に関する項目である汚水処理施設やエレベーターは、入居者の生活上重要な項目であるため徴収の対象としたとの答弁であったが、排水管の清掃が項目に入っていない。
排水管の清掃は、生活する上で重要な項目ではないのか。先ほども給排水管の工事が入札不調となった理由の説明があったが、給排水管を扱えるのは専門業者であり、何の知識もない素人である自治会役員が排水管の清掃を悪徳業者に依頼してしまい、排水管が破損するなど、取り返しのつかない事態になるかもしれない。排水管の清掃も住宅を維持する上で重要項目であると認識しているのであれば、住宅管理者が責任を持って行うべきものではないか。排水管の清掃を住宅管理者で行うつもりがあるのか伺う。
【理事者】
附帯設備使用料として徴収する対象項目の検討に当たっては、県営住宅の自治会が共益費を徴収して行っている項目について、自治会へのアンケートや自治会役員へのヒアリングを行った。その結果、排水管の清掃は住宅の維持管理上重要な項目であるものの、汚水処理施設やエレベーターの保守とは異なり、住宅ごとで実施する時期や回数、清掃の方法が違い、かかる費用にも住宅ごとで差があることが分かった。
このため、まずは速やかに附帯設備使用料の県徴収制度の導入を図り、自治会役員の負担を少しでも軽減できるよう、全住宅で一律の実施が可能で、重要性の高い5項目を対象として令和2年度に制度を開始した。
排水管清掃は、住宅を適切に維持していく上で欠かせない作業であるので、各自治会と協議を進めながら研究していく。
【委員】
排水管の清掃は、エレベーターの保守と同じくらい住宅の維持管理には重要である。排水管が破損すれば入居者は日常生活を維持することができなくなる。県はこうした排水管の清掃の重要性を理解するのであれば、入居者から必要な費用を徴収してでも県が責任を持って排水管清掃を実施すべきである。県営住宅の自治会の多くは入居者の高齢化によって役員の成り手もなく、既に崩壊状態にあり、住宅の維持管理は住宅管理者が入居者から必要な費用を徴収し、維持管理を行う時代に突入している。
なぜ、今なお自治会に排水管の清掃をさせているのか。もう一度言う。入居者が組織する自治会が住宅を維持管理していく古い制度は破綻している。一刻も早くこの現実に向き合い、共益費の全てを住宅管理者が徴収して住宅を維持管理すべきである。
【理事者】
現在、全体の3分の1を超える104の県営住宅で附帯設備使用料の県徴収が始まっている。来年度から新たに県徴収へ移行を予定している住宅もある。この制度については理解が得られ、一定の成果が出ている。
このため、まずは共益費の徴収に苦労している自治会役員の負担を少しでも軽減できるよう県徴収に移行していない県営住宅の自治会に対して、引き続き丁寧に制度の説明を行い、県徴収に移行してもらうことが重要である。
しかし、自治会への制度説明の際などに実際に苦労している自治会の役員からは、排水管の清掃や草刈りなどについても費用徴収の対象として県による実施をしてほしいとの意見をもらっているので、自治会へのアンケートの実施や他の団体が対象としている項目、その実施方法などの調査を行い、附帯設備使用料の県徴収制度が効果的に運用でき、自治会役員の一層の負担軽減になるよう、しっかり対象項目の研究を進めていく。
【委員】
民間の分譲住宅の場合は、管理組合という制度を設けて、そして自分たちが自主運営して管理している。一方で、民間の賃貸住宅、すなわち大家がいる住宅は、給排水管などは大切な財産であるから、当然大家が全部管理を行っている。そういった現実をしっかりと見つめて、これからの考え方を検討してもらいたい。
次に、自治会は、住宅の維持管理以外にも駐車場の管理を県から委託を受けて行っている。もともと県営住宅には駐車をさせるスペースはあったが、入居者用の駐車場はなかった。昭和40年代、昭和50年代のモータリゼーションの進展によって、自家用車を持つ入居者も増えてきた。このため、不法駐車で周辺住民に迷惑をかけないよう県営住宅も駐車場が必要となり、自治会が県営住宅の空きスペースを白線で区画して駐車場を整備した。不足する分は近隣の民地を借りて、自治会が入居者から駐車場料金を徴収して管理運営を行ってきた。しかし、長年自治会が管理し続けると多額の金が自治会内で留保されるようになり、自治会内のトラブルや不祥事が発生した住宅が数多くあった。私は、こうしたことを防ぐために、県営住宅の駐車場は県が管理すべきであると主張してきた。
駐車場は、平成8年の公営住宅法の改正によってようやく公営住宅の共同施設として位置づけられ、県営住宅でも駐車場を共同施設として県が整備して、有料で入居者に貸し付けることが可能となった。平成11年度以降に建て替えた県営住宅は、建て替えに合わせて駐車場を整備し、既設の県営住宅は自治会との合意が得られた住宅から順次県が有料駐車場として整備してきた。
そこで、まず、現在の県が行った県営住宅の駐車場の整備状況を伺う。
【理事者】
本年8月1日現在、駐車場の整備状況は建て替えによって整備したものと、自治会との合意により既設住宅の敷地内に整備したものを合わせて、295住宅のうち250住宅で整備を行い、4万14台が県の管理する駐車場となっている。
【委員】
県営住宅の駐車場は県管理に随時移行しているが、県が駐車場料金を徴収すれば自治会は多額のお金を扱わなくて済み、自治会役員の不正などお金に絡む自治会内の不要なトラブルを防ぐことができ、駐車場の管理運営からも解放される。しかし、県は、県営住宅の周辺の駐車場と同じような駐車場料金を取っておきながら、管理は1区画当たり月額313円と安い委託料で自治会に丸投げし、何も管理もやっていない。
県営住宅の管理を代行している愛知県住宅供給公社も駐車場を管理していないため、誰がどこに駐車しているのか実態を把握せず、トラブルが起きれば、それは自治会に言ってくださいと自治会の役員に押しつけ、無責任な対応を取っている。
自治会へは駐車場管理の何を委託しているのか。県や愛知県住宅供給公社は何をやっているのか、私は理解できない。
【理事者】
県が整備した駐車場は、県営住宅の共同施設として県営住宅の管理を代行する愛知県住宅供給公社が管理を行っているが、自治会は県管理に移行する前において駐車場を管理しており、自治会の協力を得られることで、きめ細かい対応が期待できることから、駐車場の巡回や清掃、迷惑駐車の確認など、秩序保持や環境美化に関する業務の一部を自治会に委託している。
具体的には、月1回以上の夜間巡回、駐車場清掃、巡回による施設点検及び不正使用の確認などの業務を委託しており、駐車場の使用方法についての指導や不正使用に対する警告なども含まれている。
一方、愛知県住宅供給公社は、駐車場の使用契約、各種証明書の交付、使用料の徴収及び滞納者への指導等を行っているほか、自治会からの報告や公社職員の巡視で把握した損傷箇所の補修、区画線の引き直しなどの改修を行っている。
また、自治会の指導に従わない悪質な使用者に対しては、公社の職員が直接指導を行い、不正使用対策として車止めの柵を設置するなど、自治会と連携して県営住宅の駐車場の適正な管理に努めている。
【委員】
もう一度言うが、県営住宅の入居者の高齢化はどんどん進んでいる。自治会の役員も高齢者ばかりである。自治会が機能しなくなっている。それなのに、住宅の維持管理や駐車場の管理を自治会に全て任せていることは、時代錯誤が甚だしい。何度も言うが、高齢者ばかりが入居する県営住宅の自治会が住宅を維持管理することはもう無理である。自治会には住宅の維持管理や駐車場管理を任せるのではなく、県が住宅ごとに管理を担当する業者を決めて維持管理すべき時代になっている。
例えば、駐車場であれば、入居者から徴収する駐車場料金で民間の駐車場管理会社などに外部委託し、自治会の負担を軽減すべきことである。そういう時代に来ている。
【理事者】
県営住宅の入居者の方の高齢化が進んでおり、入居者で組織する自治会による従来の住宅維持管理手法が以前に比べて機能しなくなってきている住宅もあることは承知している。
このことから、自治会役員の負担軽減のため、附帯設備使用料の県徴収制度を令和2年度より開始した。先ほどの繰り返しになるが、制度開始から5年を迎え、現在3分の1の住宅で附帯設備使用料の県徴収を実施しているので、引き続きより多くの県営住宅で県徴収に移行してもらえるよう努める。
また、附帯設備使用料の県徴収に関しては、自治会から徴収項目の拡大など、様々な意見をもらっているので、排水管清掃などを徴収項目とすることができるか、その可能性について研究し検討する。
また、駐車場の管理についても、全ての県営住宅で駐車場の整備を残念ながら終えておらず、いまだ途上であるので、まずは駐車場の整備を進めていきたいが、県営住宅の駐車場のより適正な管理に向けて、他の都道府県などの事例を調査し、駐車場の管理の外部委託のメリット、デメリットについて、愛知県住宅供給公社と共に研究していく。
【委員】
県営住宅は、時代によって求められる役割や在り方が変わってきた。そして、時代に合ったやり方が求められている。戦後の住宅難から始まり高度成長期の住宅不足、そして現在は高齢者など住宅を確保するのが難しい人に向けた住宅、言い換えれば高齢者向け住宅になっている。去る9月15日に総務省が公表した人口推計によると、65歳以上の高齢者は前年比2万人増の3,625万人と過去最多を更新し、総人口に占める割合も過去最高の29.3パーセントとなり、日本の3割の方が高齢者になっている。高齢化は急速な勢いで進んでいる。県営住宅は、子供、若者、老人、様々な世代が住んでいた時代から、高齢者が数多く住む住宅に変わっている。県営住宅の間取りや仕様も時代によって変わってきた。昭和50年代前半に建設された高針県営住宅は、50平米程度の3DKを中心に建てられている。そして、室内は3部屋全てが和室か、2部屋が和室のつくりとなっている。
そこで、今、建てている県営住宅に和室はあるか伺う。
【理事者】
県営住宅を整備するに当たり、本県では建築標準図を定めており、台所、食事室に隣接する1室を和室にすることとし、従来はこの標準図に基づき設計を行い、和室を整備してきた。
一方、現在は、県営住宅の建て替え事業の多くを民間事業者のノウハウの活用などを図るためPFI方式により実施しており、和室とするか、洋室とするかについても、民間事業者からの提案による。この結果、PFI方式による場合は、住戸の間取りに和室を設けてない提案がほとんどとなっている。
【委員】
現実に、今、民間の事業者のPFI事業を見ていると、全く和室を設けてないのが現実になっていることが分かった。
現在建設されている県営住宅は、高針住宅が建て替えられた時代とは違い、室内の段差が少ないなど、見た目にはバリアフリーになっているが、畳に布団を敷いたり、押し入れに布団を片づけて上げ下げしたりすることは、高齢者にとっては大変なことであることを県は確認しているのか。高齢者は畳敷きの和室が好きであると勝手に決めつけているのではないか。フローリングであれば、そこにベッドを置けばソファー代わりにも使えるし、高齢者にとっては床に布団を敷いて寝るよりベッドに腰かけ横になるほうがずっと楽である。設備のバリアフリーに加えて、生活環境のバリアフリーも考えるべきである。和室がなくなれば退去するときの畳替えやふすま張り替えも要らなくなり、入居者にとっては金銭面の負担も少なく済む。
今も県営住宅では和室を造っているが、なぜ和室が必要なのか伺う。
【理事者】
和室に用いられる畳には、クッション性や断熱性、吸音性に優れているという長所があり、また和室には居室としても寝室としても利用できる使い勝手のよさがあるとされている。
本県が新たに建設された住宅の入居者91人に行ったアンケートにおいて、和室が欲しいか否かを伺っているが、その結果は和室が欲しいとの回答と、和室は要らないとの回答が同じ割合の約39パーセント、どちらでもよいが22パーセントであった。そのうち、70歳以上では、和室が欲しいが約44パーセント、和室が要らないが約33パーセント、どちらでもよいが約23パーセントであった。
この結果によると、現在の生活において和室が不要であるとは一概にはいえない。いずれにしても、入居者にとって安全安心で暮らしやすい住まい方ができるよう、県営住宅における居住環境の整備に努めていく。
【委員】
ここで問題なのは、県が行ったアンケートは今の説明のとおり新たに建設された住宅の入居者にアンケートを取っていることである。家賃が高いわけである。入居しているのは若い人である。高齢者ではなく中堅どころの人の意見を聴いて、これを統計に取っていること自体が異常である。もう一度そういった点も考慮して考えてほしいと思う。
質問に入るが、今回は、県営住宅ではいまだに和室が造られていることについて取り上げたが、このほかにも時代に合っていない仕様になっていないか、今後も県営住宅の整備の考え方を順次取り上げていきたい。
今の県営住宅は、建設から相当年数が経過して老朽化が激しくなってきたにもかかわらず、財政難を理由にして外壁の改修や塗装など、やるべき修繕を行わず放置し、エレベーターや電気、給排水などの設備を更新してこなかったから、そのツケが一気に回ってきたのである。住宅内の設備も本当に時代遅れで、民間賃貸住宅の水準からすると不便極まりない住宅が多くある。そして、建物などのハード面ではなく、高齢化で担い手がなくなりつつあり崩壊の危機にある自治会に住宅の管理を任せている、時代遅れの方法をいまだに続けている。
最近は、民間の賃貸住宅にも住宅セーフティーネットの役割を求められる時代になってきたが、本当に民間住宅が県営住宅と同様な役割を果たしていけるのか、疑問に思う。今後も、県営住宅は住宅セーフティーネットの中心としてしっかりとした役割を果たしていかなければならないと強く思う。
県は、県営住宅の入居者が置かれている状況、生活実態をしっかり把握し、時代の流れに的確に対応していかなければならない。委員会での質問は以上とするが、これまでの議論を踏まえ、最後に建築局長に総括して答えてもらいたい。
【理事者】
今回は、県営住宅の長寿命化計画、長寿命化改善工事、また入居者の高齢化に伴う共益費、駐車場、住宅の仕様について質問をもらった。
これらの課題については、県営住宅の整備や管理において大変重要であると考えており、担当課室から答えたとおり、課題解決に向けて着実に進めていく。
また、県営住宅が県民の住宅セーフティーネットであると同時に、そこでの住まい方について時代の流れとともに変化していると認識しており、その変化を的確に捉え、安心できる住まいとなるよう職員が一丸となって取り組んでいく。
【委員】
かつて、住宅管理室の室長が、私にこのように言った。「いろいろ問題を言われて指摘されているが、本当は私だってやりたい。でも、そのお金のきちんとした予算化は議員であるあなたの責任である。そして、建築局長、そういったことはやるべきです。そして、財政当局と当たるべきなんです。」こう言って開き直られたときに、私はなるほどと理解してしまった。やはり予算さえきちんと確保すれば、今までしてきた議論が解決できるため、建築局長も腹を据えて、財政当局と真剣になって取り組んでもらわなければならない。また、議員もそういった審議において責任があることを再認識した。
県は、これからも、県営住宅の大家であることをもう少し認識してもらいたいと思う。建物もエレベーターや給排水設備は、要するに県の財産である。その財産の管理を入居者に任せることは、もう時代に合っていない。建築局長からも、県営住宅は時代の流れとともに変化していると認識しているとの答弁があったが、まさしく時代の流れとともに変化している。建築局長の決意が建築局全体に行き渡り、局を挙げて時代に合った県営住宅の整備や管理に向けた取組を進めてもらうことを強く求めて、質問を終わる。
【委員】
今、委員から高針住宅の改修工事で給排水管の入札で不調不落が続いて工事が滞っていると話があった。原因は技術者が確保できないとのことのであったが、それとは別に委員からも道路の工事の進捗状況の質問の中で、労務費が1.7倍、また資材費が1.4倍と、工事費の全体の高騰の話があった。
県営住宅もPFIで費用を出している部分と、直営で費用を出している部分があると思う。発注単価も年々労務費や資材費の高騰を反映して上がってきている。金額ベースで10億円を超えると業者の選定や、発注の仕方が変わることがあったと思うが、実際はどうなのか。
【委員】
単価が実情に合ってないということではないか。そういうことではないか、委員。
【委員】
はい、というのは、入札方式については、金額や要件で発注方式が変わると思うが、工事単価が上がってきて、参加する業者に制限がかかり、今まで参加できた業者が参加できなくなってくると思う。
そうすると、今までちゃんと仕事を請け負うことができてきた業者が、労務単価や資材単価が上がって全体の金額が増えると、参加できないという状況も、多分、生まれる。逆に言うと、例えば、県営住宅の場合は本体の躯体は躯体、それから給排水は給排水、電気は電気という分離発注をしている。それはそれでいいが、どこか一つでも欠けると、全体の工期が延びる。例えば建て替えた場合に、工期が延びると入居者が戻って生活ができないという状況は委員が言ったとおりである。やはり入札をかけるときの要件も時代に合ったように広げる必要がある。技術が足りないところにやらせようということではなく、今までやれたのにこういう物価高騰の影響を受けて仕事ができなくなるという状況が発生するということである。
そのようなことがリンクして、努力して予算をつけて計画したものが完成しない事態が起こり得る。このような事態はぜひとも避けてほしいので、その辺りは柔軟に対応してもらいたい。これは建築局だけではなく、建設局もそうであるし、建物については、これからいろいろなところで影響が出てくると思う。だからいつまでも決めたルールが全てではないことは認識してもらい、愛知県の事業がしっかりと進んでいくように要望する。