委員会情報
委員会審査状況
教育・スポーツ委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和7年3月14日(金) 午後0時59分~
会 場 第5委員会室
出 席 者
中村竜彦、浦野隼次 正副委員長
直江弘文、佐藤英俊、神谷和利、朝日将貴、杉浦友昭、かじ山義章、
黒田太郎、岡 明彦、下奥奈歩 各委員
スポーツ局長、スポーツ監、
アジア・アジアパラ競技大会推進局長、アジア・アジアパラ競技大会推進監、
教育長、度会教育委員、教育委員会事務局長、同次長兼管理部長、教育部長、
教育改革監、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和7年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第9款 教育・スポーツ費の内
第1項 教育総務費
第2項 小学校費
第3項 中学校費
第4項 高等学校費
第5項 特別支援学校費
第6項 生涯学習費
第7項 保健体育費
第10項 スポーツ費
第2条(繰越明許費)の内
第9款 教育・スポーツ費
第3条(債務負担行為)の内
公立学校情報機器整備基金事業費補助
高等学校校舎整備工事
高等学校環境整備工事
高等学校施設長寿命化推進工事
小牧特別支援学校整備工事
特別支援学校施設長寿命化推進工事
名古屋東部地区新設特別支援学校建設工事
西三河北部地区新設特別支援学校建設工事
名古屋競馬場跡地後利用基盤整備事業費負担
国際スポーツ推進事業委託契約
愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会負担
総合射撃場備品購入
第 45 号 愛知県スポーツ施設及び社会教育施設条例等の一部改正について
第 46 号 愛知県立学校条例の一部改正について
第 47 号 指定公立国際教育学校等管理法人による愛知県立愛知総合工科高等学校の専攻科の管理に関する条例の一部改正について
(結 果)
賛成多数をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号、第45号及び第46号
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第47号
○ 請 願
第 72 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への対応を求める」について(教育関係)
(結 果)
賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
第72号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 学校教育の充実及び施設整備について
2 生涯学習について
3 スポーツの振興について
4 スポーツ局及び教育委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(4件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 請願審査(1件)
4 委員長報告の決定
5 一般質問
6 休 憩(午後2時58分)
7 再 開(午後3時10分)
8 閉会中継続調査申出案件の決定
9 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
第46号議案、愛知県立学校条例の一部改正について伺う。
過日の議案説明会でも説明があり、先ほども事務局長から説明があったが、本議案の主な内容は、2026年4月に開校する中高一貫校の第二次導入校の附属中学校5校及び一宮市、小牧市、豊田市の3校に夜間中学校を設置するものと承知している。
夜間中学校については、先日の本会議の一般質問でも話題となったので、この中高一貫校について伺う。
中高一貫校は、来年度より第一次導入校がスタートし、私の地元である半田高等学校でも新たに中高一貫校が始まることから、大きな期待を寄せている。また、令和5年6月定例議会の一般質問において、入学者選考について質問したが、今回の試験問題を見ると、単なる記憶力だけでなく、設問をしっかり読み込まなければ答えにたどり着けない内容となっており、集中力、読解力が求められる問題になっていた。特に探究学習を重視する中高一貫校の入試問題としても、非常に適切な内容であった。設問の構成が思考力や論理的な理解を問うものとなっており、単なる知識の詰め込みだけでなく、自ら考え、答えを導き出す力を求めるものになっていたことは、今後の学びの基盤を築く上でも大変有意義であるとともに、非常によい試験問題であったと評価している。
本議案は、開校1年前に県立学校条例を改正するものである。これは、1年かけてしっかりと開校に向けた準備をするためであると理解しているが、第二次導入校のうち、探究学習重視型である時習館高等学校、豊田西高等学校、西尾高等学校の3校では、開校に向けて前年度となる令和7年度はどのように準備を進めていくのか伺う。
【理事者】
時習館高等学校、豊田西高等学校、西尾高等学校の3校については、昨年の秋に開催した説明会において、学校の概要を説明している。令和7年度は、夏頃までに大まかな授業内容を取りまとめた上で説明会を開催し、児童や保護者に具体的に学校生活を理解してもらえるようにする。その後、約半年をかけて、時習館高等学校の文理融合の探究的な学び、豊田西高等学校のグローバル人材の育成のための実践的な語学力を身につける学び、西尾高等学校のグローカルな人材育成に向けた探究学習のカリキュラムをつくり上げ、2026年4月にしっかりとスタートできるようにする。なお、国際バカロレア教育の導入を目指す時習館高等学校、西尾高等学校では、各教科の教員を国際バカロレア機構が主催するワークショップに派遣し、国際バカロレア教育の授業を実践できる教員を養成していく。
【委員】
次に、AI、データサイエンスに関心を持つ生徒の能力を引き出す高度モノづくり型の愛知総合工科高等学校では、開校に向けてどのように準備を進めていくのか伺う。
【理事者】
愛知総合工科高等学校附属中学校についても、昨年秋の説明会で学校の概要を説明している。来年度、2025年夏頃までにAIの活用方法やデータ分析の手法に関する授業、T&E-J Challenge100と名づけているモノづくりの体験活動について、大まかな授業の内容を取りまとめた上で説明会を開催し、モノづくり体験の活動なども実際に見てもらい、児童や保護者が附属中学の学びをイメージできるように分かりやすく説明する予定である。その後、詳細なカリキュラムをつくり上げ、2026年4月に生徒を迎え入れることができるようにしっかりと準備を進める。
【委員】
最後に、不登校を経験した生徒を対象とする、公立高校としては本県初となる学びの多様化学校、いわゆる不登校特例校の開校に向けて開校準備をどのように進めていくのか伺う。
【理事者】
日進高等学校附属中学校は、不登校を経験した生徒が自分のペースで安心して学ぶための特別なカリキュラムを編成できる学びの多様化学校、いわゆる不登校特例校の制度を最大限活用した学校とする予定である。そのため一日の授業は、生徒がゆとりを持って学校生活を送ることができるように、標準より少ない午前・午後2時間ずつにする。さらに、芸術科目をひとくくりにし、自分の興味関心のある学習にじっくりと取り組める創造表現という教科や、一日を振り返りながらその日の成果を実感できるハートフルタイムといった時間を設ける。こうした授業のカリキュラムや活動のプログラムを1年間かけてしっかりと準備する。
また、生徒をきめ細かく見るための少人数指導用の教室の改修や、オンライン学習ルームやリラックスルームなどの生徒の居場所の整備、総合教育センターと連携したメタバースを活用した教育支援の準備も行う。そして、日進高等学校附属中学校が子供たちにとってどういう居場所となり、どのようなことができるのか理解してもらえるように、10月には説明会を開催し、11月には模擬授業などで学校生活を体験できる体験会を実施する。その上で、11月から12月にかけて、個別面談において生徒本人の状況や附属中学校で学ぶ意思を丁寧に確認しながら入学する生徒を決定する。
【委員】
今回、第二次導入校に関する様々なソフトや中身の面を答弁してもらったが、第一次導入校である地元の半田高等学校は資材費や人件費の高騰により大変苦労したと聞いている。こうしたハードの面についてもしっかりと対応を進めてもらうことを要望する。
次に、予算に関する説明書(1)の264ページ、歳出第9款第1項第4目4(1)ウ個に応じた教育推進事業費について、医療的ケアが必要な児童・生徒が安全かつ円滑に学校へ通学できるよう、看護師が同乗する福祉車両や介護タクシーを活用して送迎を行う取組がある。これは、保護者の送迎負担を軽減し、医療的ケア児の学習機会を保障することを目的としており、昨年6月の本委員会において一般質問した。その際、今年度からタクシー料金の支払いや見積書の取扱い、また、保護者が事業者に説明する際の負担について改善を図ったと答弁してもらった。改善して約1年となるが、その成果がどうであったか伺う。
【理事者】
今年度から、保護者の負担を軽減するためタクシー会社の見積りを2通から1通とし、保護者が一旦立て替えていたタクシー料金を学校が会社に直接支払う形に改善した。また、保護者がタクシー会社や看護師の派遣会社に支援を依頼する際に、事業の流れを分かりやすく説明できるようリーフレットを作成した。その結果、昨年度、1校6人の児童・生徒が延べ33回利用したのに対し、今年度は、1月末時点で2校16人の児童・生徒が延べ132回利用しており、利用実績が大きく伸びている。
また、保護者からは、使いやすくなった、これなら多くの人が利用するのではないかとの声をもらっている。
【委員】
当時の委員会での質疑の際に、他の肢体不自由校にも事業を拡大するように要望した。来年度、本事業に豊橋特別支援学校、岡崎特別支援学校、一宮特別支援学校、ひいらぎ特別支援学校、小牧特別支援学校及びにしお特別支援学校が加わり、肢体不自由校全8校で実施されるようになったことは大いに評価しているが、都心部の名古屋市で開始した最初の2校と比べて、地方では福祉タクシーの台数が少なく、医療的ケアの対応経験がないタクシー会社もあるため利用しづらい状況があることや、特に公共交通機関が少ない地域では、タクシーが移動の生命線となるため十分に利用できないことなどが、他県では課題となっている。モデル事業の拡大に当たって、本県においても同じ課題が想定される中、事業者目線での対応も確認しながら進めてもらいたい。特に、保護者が事業者に依頼する際の手続の煩雑さは、以前から改善が進んでいると思うが、まだこの煩雑さが残っているという声も聞いている。
今後、事業をさらによいものにしてほしいが、今後、どのように進めていくのか伺う。
【理事者】
委員指摘の地域ごとの課題については、事業者からアンケートを取るなどモデル事業の中で把握していく。また、保護者が事業者に依頼する際の負担軽減については、今年度のモデル校である名古屋特別支援学校及び港特別支援学校の保護者を対象に行ったアンケートにおいて、説明会の内容を後で確認したいと思うことがあった、何とかできないかとの要望があった。そのため、来年度は事業内容の説明動画を作成し、保護者のスマートフォンなどからいつでも視聴できるようにして要望に応えるとともに、学校への問合せを減らすことで各学校の教員の負担軽減も図る予定である。今年度作成した事業者への説明用リーフレットについても、来年度に向けて事業者から問合せの多かった内容を充実させるとともに、事業者への支援のお願いから学校への申請、支援の実施までの流れが一目で分かるようにリニューアルする。今後も保護者や事業者の意見を聴きながら、より使いやすい仕組みに改善する。
【委員】
現在の2校での運用実績を基に、送迎時のトラブルや課題も分析し、新しく加わる学校にも改善策を適用するとのことだが、地域格差など新たな課題も出てくると思う。今回のモデル事業を通じて課題や改善点を明確にし、今後の制度拡充に向けたデータを収集、分析し、利用者の声を積極的に反映し、持続可能な支援体制を構築してもらうことを要望する。
【委員】
私は、6月の本委員会で、中高一貫校である時習館高等学校、津島高等学校、西尾高等学校における国際バカロレア教育の導入に向けて、教員の採用と育成に注力していかなければならないことを質問し、その体制強化を促した。英語を教える教員ではなく、国語や数学などの教科を英語で教える国際バカロレア教員の拡充を強く訴えた。教育委員会事務局長の説明の中で、この事業費において、バカロレア教育の推進のための教員育成に資する取組についての説明があった。
今までの高大連携を活用したものだとこちらは承知しているが、具体的に教えてもらいたい。また、教員採用試験の際にどういった取組を考えているのか伺う。
【理事者】
この2年間でリベラルアーツ教育に力を入れ、国際バカロレア教員養成プログラムを持つ国際基督教大学(ICU)、それと、優れた英語教育を実践し、優秀なグローバル人材を多数輩出している国際教養大学(AIU)と連携協定を締結し、本県のバカロレア教育に力添えをもらえることとなった。そうした環境を生かし、ICUについては研究生として2人、AIUについては専門職大学院の英語教育実践領域の学生として2人、それぞれ教員を派遣し、国際バカロレア教育やリベラルアーツ、英語での指導力を身につけた教員を養成していく。そして、両大学で指導力を身につけた教員を、国際バカロレア教育を実施する津島高等学校、西尾高等学校及び時習館高等学校の核として配置し、本県の国際バカロレア教育をしっかりと進めていく。
【理事者】
令和7年度実施の教員採用試験では、国際バカロレア教員認定証を保有している者を一次試験免除とする国際バカロレア教員特別選考が新たに始まる予定である。さらに、バカロレア教育で英語以外の教科を英語で指導できる教員を確保するため、TOEFL、TOEIC及び実用英語技能検定において高い能力を有する英語以外の教科の受験者を対象として、新たに一次試験で大きく加点を行うこととしている。これらの特別選考や加点制度による新規採用者については、今後、バカロレア教育実施校に積極的に配置していきたい。
なお、文部科学省の調査によると、2021年度に国内で国際バカロレア教員資格を取得するためのコースを設置している大学は8大学あり、当該年度における資格取得者数は146人となっている。どれくらいの人に受験してもらえるか予測は困難であるが、今後、コース設置大学に対し、本県の採用試験における特別選考等について大学を直接訪問して説明を行うなど、受験者の確保に向けた働きかけをしていきたい。
【委員】
本県の中等教育改革の進捗には、まず、この3校の中高一貫校が挑戦する国際バカロレア教育の成否が一つの鍵になると思う。公立高等学校で国際バカロレアが成功した事例はあまりないと言われており、大変ハードルの高い挑戦を3校同時にするわけである。他県の失敗事例も検証しながら、中高一貫校でバカロレア教育が本格化する5年後以降を見据えてしっかりと教員養成、教員採用に取り組んでもらいたい。もし私が教員であったら、AIUやICUに留学できる仕組みを愛知県がつくるため、やる気のある、特に中堅どころで自分のスキルアップを含めて頑張りたいと思っている教員が、AIUやICUという日本を代表する大学に短期でも留学できることは大変すばらしいことであるため、しっかりと推進してもらいたい。
1月に公明党愛知県議員団で、国際バカロレア(IB)認定校である名古屋市昭和区の名古屋国際中学校・高等学校を調査した。長年取り組んできているだけあって、いろいろ考えて教員を採用していた。外国人教員の採用の在り方や、教員がバカロレア教育に資する仕組みもつくりながら、しっかりと教員育成を校内でやっていることも目にした。県は当該3校を軸にバカロレア教育に取り組んでいくため、相互に交流しながらどうやって人を育てるのかをぜひやってもらいたい。また、ありがたいことに名古屋国際中学校・高等学校からは、県内のIB認定校やIB認定を目指す学校、さらには英語教育に特化して頑張ろうとしている学校は、私立・公立問わず一緒に集まって研修会や勉強会をやるべきではないか、そうすることで公私共に英語力のある愛知県をつくっていくことも重要ではないかと提案もあった。そういう話を受けて、ぜひ教育委員会には、逆に音頭を取って流れをつくってもらうことを要望する。
次に予算に関する説明書265ページ歳出第9款第1項第4目4(2)キャリア教育推進事業費について伺う。
少し前のことになるが、2020年11月定例議会で、私は、県立特別支援学校の就労状況調査をひも解きながら、製造業への就職が本県では半数近く占めている中で、製造業に就職したものの、ミスマッチして早期に退職する生徒もいることを指摘した。生徒の特性や適性を踏まえて小売業や飲食業、IT関係などのサービス業または農業分野、そういう多職種への就職支援を強化すべきではないかと要望した。そして、昨年6月の本委員会でも、特別支援学校の生徒の就労に関する取組について質問した。その際、特別支援教育課からは、製造業以外の分野での就労支援のためにパソコンやワープロの職業技能検定を実施していることと、キャリア教育・就労支援推進委員会で他の職種における技能検定の開発を検討しているとの答弁があった。その答えを踏まえて、改めて私は、障害者の就労が大変多様化している昨今、生徒一人一人の特性に合った分野での就労支援が重要であるとして、就労の多様化には、保護者の理解も重要なので、理解を深めるとともに、民間企業との連携を強化してほしいことを要望した。
そこで質問するが、最新の県立特別支援学校の就労状況調査を示してもらいたい。その上で、本年度のキャリア教育・就労支援推進委員会においてサービス業など他の職種における職業技能検定の開発が検討されたことを踏まえ、今後の計画を教えてほしい。
【理事者】
昨年3月に卒業した県立特別支援学校高等部生徒の主な就職先は、製造業が46パーセント、次いで卸売業・小売業が11.4パーセント、医療・福祉が6.6パーセント、運輸業・郵便業が4.8パーセントとなっており、製造業が突出している。技能検定については、2024年7月に第1回キャリア教育・就労支援推進委員会を開催し、新たに開発すべき技能検定について協議した。その後、今年1月の第2回委員会において、今後開発する技能検定の種目を喫茶サービス及び清掃とした。
いずれも授業で取り組む学校があり、また、アビリンピックの種目でもあるので、作業学習を重ねた先に技能検定で資格を取得することができ、さらにはアビリンピックを目指すこともできることから、新たに開発することとした。来年度は、学校関係者と企業関係者等にも加わってもらい、検定の具体的な実施方法や評価の考え方などをまとめていく。2026年度にはプレ検定を実施し、2027年度からの本格実施を目指していく。
【委員】
特別支援学校の生徒一人一人が特性に合った分野で就労ができるように、より一層頑張ってもらいたい。
その上で、新たに門戸が開かれた障害者就労が多いので、それを意識して、保護者の理解を深めるために具体的な取組や啓発活動を行うのか、今後の進め方を伺う。
【理事者】
本県の特別支援学校卒業生の就労のパラダイムシフトとして、これまでの求人は製造業が突出して多い状況であったが、学校現場からは、最近はほかの業種の企業による学校見学が増えている、清掃の求人が多くなっていると聞いている。このように求人の動向に変化があるため、先ほど答弁したように、清掃等の技能検定の開発を進めているが、就労先の決定には保護者の意向が大きく影響することから、保護者にも状況の変化について理解を深めてもらう必要がある。特別支援学校では、保護者を対象に卒業生の職場を訪問し、実際に働く姿を見てもらう機会を設けているが、今後は清掃会社や喫茶店など、製造業以外で働く様子を見学できる機会をより充実させていく。また、進路指導を担当する教員についても、パラダイムシフトを意識して指導できるようしっかりと研修を行っていく。
【委員】
次に予算に関する説明書(1)の282ページ、歳出第9款第10項第1目5第20回アジア競技大会・第5回アジアパラ競技大会推進事業費について伺う。
アジア・アジアパラ競技大会の喫緊のメディア等による話題は、膨れ上がった予算、また、施設をはじめとするハード面に関するものが多いと思う。国際的な競技大会が滞りなく行われることは最重要だが、忘れてならないのは、大会後のレガシーとして何が残るのか、未来にわたって県民や地域に還元される何を残すのかだと思う。かつて全国1位であった愛知県のボランティアの数は、現在は東京都に抜かれていると言われている。これは、コロナ禍とはいえ東京オリンピック・パラリンピックがボランティアの裾野を広げて、その影響を受けた結果だと思う。愛知県が、以前、全国1位であったその要因の一つは、愛・地球博のボランティア活動が活発であったことにあり、その成果として全国トップと言われる地位を築いたと思う。次なる挑戦は、このアジア・アジアパラ競技大会である。この大会は、ボランティア文化を広げていく絶好のチャンスになる。
そこで質問するが、先般、大会ボランティアの募集の締切りが4月30日まで延長された。3月2日の各新聞に掲載された広報あいちにも、ボランティア募集のお知らせが大きく掲載されていた。現在のボランティアの募集状況と今後の展望について伺う。
ボランティア募集チラシ
ボランティアの募集は、これまで開催都市が主催する愛知・名古屋2026の2年前イベントや、県内各地で行われているスポーツイベントでのブース出展及びチラシ配布で積極的に行ってきた。
また、スポーツに関心が高いと思われるボランティア団体や公益財団法人愛知県スポーツ協会における競技団体のネットワークを通じた周知を行うとともに、至学館大学等のスポーツ学部を有する大学をはじめとした大学、専門学校などには、個別に説明会などを開催している。さらに、マラソンフェスティバル ナゴヤ・愛知2025のボランティア応募者など、実際にスポーツボランティアとして活動している人に直接働きかけるなど、各方面に様々な手法でボランティアの確保に努めている。あわせて、県民に最も近い存在である市町村では、広報誌やウェブサイトへの掲載とともに、市町村と関わりのある団体にも声掛けしてもらうなど、県と市町村が協力して働きかけを行っている。
なお、応募状況については、現在、集計中のため示すことができないが、目標応募数にはまだ到達していない状況である。今後は、さらに多くの人にボランティアへ応募してもらえるよう、今までの取組に併せ、メディアへの働きかけなども行っていく。
【委員】
想定人数、ボランティアの数は、アジア競技大会は2万8,000人、アジアパラ競技大会は1万2,000人、合計4万人である。今、具体的なの数字は出てこないが、いろいろなところで聞く限り、明らかに厳しい状況であると認識している。先ほど話したように、ボランティアは大事だし、レガシーとしても非常に重要な側面を持っていると思うので、我々も大きく協力させてもらうつもりだが、個人的にはもっと大騒ぎしてボランティアを集めたほうがよいのではないかと思うため、ぜひ様々な取組を駆使しながら頑張ってもらいたい。
国際的なスポーツ大会のボランティアのレガシーとして世界的に最もよく知られているのが、ロンドンの観光ボランティア、ロンドンアンバサダーと言われているものである。これは、ロンドンオリンピックの成功を受けて、彼らはオリンピックボランティアのレガシーとして、今は行政のバックアップを得て活動を続けており、ロンドンの観光を大きく支えている。
冒頭で話したとおり、今後、約1年と半年が愛知県のボランティアの力を再び大きく育てる機会となる。その上で未来を考えると若者の取組が重要だと思うので、まず、未来を担う若年者向けの取組について伺う。
令和6年2月定例議会で大村秀章知事からは、組織委員会と県内大学の学長による愛知学長懇話会が令和5年6月に連携協定を締結し、大会PRなどに学生が参加、協力する取組が進められている。こうした機会も生かしながら多くの学生ボランティアの参加を得られるよう、大学関係者との連携・協力を進めていくという発言があった。
アジア競技大会及びアジアパラ競技大会を通じて、若者が成長し、社会貢献への意識が高まることが期待されるが、ボランティアの中核ともなり得る大学生の活動を促進するために、具体的にどのような大学と連携し、どのような取組を行う計画か伺う。
【理事者】
大学との連携については、2023年6月に大会組織委員会が、愛知県全ての4年制大学52校が会員となっている愛知学長懇話会とアジア競技大会及びアジアパラ競技大会に関わる活動を通して、学生が大会に主体的に関わり、成長につながる取組を実施することを目的とした連携協定を締結し、大会のPRや機運醸成などに取り組んでいる。ボランティア募集についても、学内での周知や大学生のボランティア参加を促すため、愛知学長懇話会の会員校を中心とした各大学において学生向けの説明会を約30回実施し、ボランティア活動の意義などを理解してもらい、応募に興味を持ってもらえるよう働きかけている。
また、昨年9月3日には、スポーツ庁及び文部科学省から全国の国公私立大学及び私立高等専門学校宛てに、学生が本大会にボランティアとして活動した場合に、各大学等の判断により授業の一環として単位を付与することが可能である旨の通知が出され、学生がボランティアに参加しやすい環境づくりに協力してもらっている。さらに、今年3月3日には、大会組織委員会が、県内外7校の外国語大学により構成される全国外大連合との連携・協力に関する協定を締結した。今後、大会やボランティア募集を学内に周知してもらうことを予定している。これにより語学面で専門性が必要なボランティアへの学生の参加が期待できる。
【委員】
未来を担う若者のボランティア活動への参加促進を願う。
最後に、ボランティア活動の大会後のレガシーについて伺う。
東京大会のボランティアに参加した人の多くは、活動を通じて得た経験やスキルを生かして、この東京大会以降、職場や地域社会でのボランティア活動に積極的に参加しているようである。ボランティア活動のレガシーとして幾つかの報告もされているので紹介する。
まず、ダイバーシティー、多様性への理解や、また、企業であれば職場でのエンゲージメント、いわゆる仕事への熱意が向上したという報告が幾つかされている。また、企業において、社員のボランティア活動を支援する仕組みを導入する動きが見られているという報告もあった。具体的に言うと、ボランティア休暇制度の導入、また、社員が専門的なスキルを生かして社会貢献活動に参加できるプログラムの提供などが進められているようである。まさに東京大会以降、その当地でボランティア文化が定着しているという証左であり、これこそが大きなレガシーととなっている。
そこで伺うが、大会のボランティア活動を通じて得たスキルや経験を今後のボランティア活動や地域貢献につなげていくかなど、持続的なレガシーとして生かしていくためにどのように考えているのか教えてもらいたい。
【理事者】
大会におけるボランティアは、その活動がレガシーとして持続的に社会に貢献し続けることが大切であり、そのための取組の一つとしてコミュニティーやネットワークの形成が挙げられる。一例として、豊田市は、2019年に開催されたラグビーワールドカップを契機に、市民ボランティアの活動のより一層の拡充に向けたスポーツボランティアとよたを立ち上げ、各スポーツイベントなどのサポートや来場者対応などの活動を行っている。このため愛知・名古屋2026大会においても、コミュニティーやネットワークの形成を図るため、ボランティアの採用イベントや研修を対面形式で実施し、ボランティアの参加者同士の交流機会を提供することで新たなコミュニティーの形成を促すとともに、ボランティア活動を支援するネットワークの構築などの取組も検討している。また、ボランティア休暇の促進といったボランティアへの参加環境の整備や、今後の国際スポーツ大会などにおけるボランティア組織運営に生かせるよう、大会によって得られたノウハウを共有するといった取組についても大会組織委員会とともに検討している。
【委員】
今の答弁を聞くと、レガシーとして残るなら夢や希望がたくさんあると思ったのでぜひ頑張ってもらいたいが、最初の質疑であったように、そもそもボランティアが集まらなければそこにつながらないので、しっかり取り組んでもらいたい。
県のいろいろな事業を見ていると、幾つかのところで同時にボランティアを集めている。例えば国際芸術祭、これはまた秋に行われるが、ここもボランティアを1,000人ぐらい集めるため動いている。
さきに一般質問でも少しやり取りがあったが、10月、11月に開催される第79回全国レクリエーション大会、この大会でも各市町で競技、または体験会が行われるが、これも話を聞くとボランティアを集めている。アジア競技大会もボランティアを集め、国際芸術祭もボランティアを集め、全国レクリエーション大会もボランティアを集めているので、一緒にやればよいのではないかと思う。一緒にやれば、例えば国際芸術祭であれば英語ができる人など、いろいろな人が出てくる。また、レクリエーション大会は、スポーツ大会としての要素を持っているため、アジア・アジアパラ競技大会のプレ大会的な要素を持っている。本当に県全域で集めようとするのであれば、みんなで協力してボランティアを集めなければ、その次につながらないので、これにはスポーツ局だけでなく、多くの部門が連携する必要がある。愛・地球博のときにボランティアとして活動した人々も多く、あれから20年たつが、再び参加したいという意欲を持つ人もいる。このような経験を生かし、幾つかのイベントを通じてボランティアを募集する取組を行ってもらいたいと思う。また、本来はプレ大会でボランティア研修をやるのが普通だが、プレ大会がない。そのため、プレ大会に代わるボランティア研修の場として、全国レクリエーション大会を使えばよいのではないかと思う。様々な視点からしっかりと成功に導く取組をしてもらうことを要望する。
【委員】
予算に関する説明書(1)276ページの歳出第9款第7項の保健体育費について伺う。
この間、生理用品を県立高校の全てのトイレに設置を求めてきた。今回の新年度予算の中でどのようになっているのか、予算額を示してほしい。また、これまでの予算の推移についても併せて示してほしい。
【理事者】
生理の貧困に対する予算として、物価高の影響などにより、来年度は、前年度の約138パーセントとなる280万1,000円を措置している。また、これまでの予算額の推移については、この事業を開始した2023年度が215万1,000円、2024年度が203万5,000円となっている。
【委員】
予算が増額していることは、私も繰り返し質問もしてきた。その点は、努力も一定はしているが、まだ微増にとどまっている。前回の委員会で示したように、東京都は約1,300万円の費用を投じている。県教育委員会は、これまで答弁で、生理用品は使い慣れたものを持参するのが一般的な感覚と答弁してきた。財源のあるなしとかではなく、県の姿勢も問題だと思う。ここ数年で生理用品を学校だけではなく公共施設のトイレに設置する取組も始まってきている。生理用品がトイレに設置されていることを当たり前にしていかなければならない。生理の貧困にとどまらない、人権の視点での取組に発展させていくべきだと考える。
そこで、来年度に向けて2倍、4倍と、予算の思い切った拡充へと踏み出してほしいと思うがどうか。
【理事者】
本事業は、県立高校に通う生徒が経済的理由で生理用品を用意できない場合や、急な生理や生理用品を切らした場合などに備え、生理用品を配備するものである。引き続き、必要なときに生理用品が入手でき、安心して学校生活を送ることができるよう予算を確保していく。
【委員】
思い切った拡充が大事だと思う。急な生理や生理用品を忘れたとき、用意してきたが足りなくなったときなど、生理期間を健康に安心して過ごせる教育現場の環境にしていくことが必要である。
県の答弁の中で、月経は女性として避けることのできない生理現象であり、生理用品は必要不可欠なものだとの認識を示してもらった。その認識の下で、新年度、学校に生理用品を積極的にトイレに設置してほしいことを学校に働きかけてほしいと思うがどうか。
また、生理用品が手元にないときに、トイレットペーパーでの代用や同じものをつけたままにするのは、健康を害することにつながる。健康と権利を保障するという立場に立つことが大事だと考えるがどうか。
【理事者】
これまでどおり各県立高校に対して、トイレへの備付けや保健室での配布など、学校の実情に応じて生徒の手に届きやすい方法で配布するよう働きかけていく。学校が生徒にとって心身の健康を維持し、安心して学べる場であることは大切なので、急な生理や生理用品を切らしたときなどに生理用品を入手できるようにしていく。
【委員】
学校の実情に応じて、トイレに設置する、すぐ手に届くところに置くことの重要性をぜひ伝えてもらいたい。高校のトイレに生理用品を設置することは、生徒が自分たちの権利が守られていると感じることにつながり、学校への信頼につながっていくと思う。安心して授業を受けることもできるため、ぜひその権利を守る立場に立ってもらい、生理用品を全ての高校のトイレへ設置するよう積極的に取り組んでほしいことを要望する。
次に、予算に関する説明書(1)280ページの歳出第9款第10項スポーツ費について、2026年に開催される愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会について、いろいろ今準備が進められている。まず、2016年作成のアジア競技大会開催構想の中で大村秀章知事の挨拶が掲載されている。その中で、2027年度には、国家的な事業としてリニア中央新幹線の開業が予定されており、愛知・名古屋は首都圏と約40分で結ばれ、リニア大交流圏が形成される。愛知・名古屋での開催に当たっては、この世界初の超電導リニアプロジェクトも併せてアジアに発信し、アジア競技大会への注目度を一段と高めていくことも述べられている。
そこで伺うが、アジア競技大会の中でリニアプロジェクトもアジアに発信していく、この点について現在も変わっていないのか。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会への注目度を一段と高めるとともに、大会を通じた地域活性化を図るという観点で、リニアプロジェクトや本県の産業力、観光資源などを引き続き発信していく。
【委員】
アジア競技大会・アジアパラ競技大会を活用した地域活性化ビジョンの四つの視点の中でも、リニア開業を見据えることが記載されている。大村秀章知事が会長を務める中部国際空港第二滑走路期成同盟会は、中部国際空港機能強化への要請活動を行っている。一般社団法人中部経済連合会の会長は、アジア・アジアパラ競技大会を契機に海外での認知度が上がると理由に挙げ、滑走路整備を着実に進展させる必要があると訴えた。アジア・オリンピック評議会(OCA)憲章では、アジアにおけるスポーツまたは選手のあらゆる政治的・商業的、その他の不適切な利用に反対するとある。
アジア・アジアパラ競技大会を口実に、リニアや中部国際空港の機能強化のビッグプロジェクトの宣伝の場になっているのではないかと思う。愛知県で開催することの意義、スポーツの発展にどのように寄与し、多様性を尊重した共生社会の実現にどう貢献するのか、この大会の開催意義について伺う。
【理事者】
開催の意義についてだが、アジア・アジアパラ競技大会は2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催によるスポーツへの関心の高まりを引き継ぐ、日本のスポーツ界の次なる大きな目標として位置づけている。また、世界有数の産業力を誇るこの地域が一体となってアジアを代表するアスリートに最高のパフォーマンスの場を提供し、スポーツの振興や国際交流の促進、大会開催を通じた人づくり、また交流人口の拡大や国際競争力の強化など様々な効果を生み出し、愛知、名古屋のみならず日本全体の成長に貢献したい。あわせて、日本で初めてとなるアジアパラ競技大会の開催により、障害への理解促進や障害のある人の社会参加の促進の大きな役割を果たし、ひいては多様性を尊重し合う共生社会の実現への貢献を目指している。
【委員】
この大会では、簡素で合理的・機能的な大会運営が掲げられている。東京2020オリンピックについて、大会経費の肥大化、汚職、談合事件、ジェンダー平等への体系的な取組の不十分さが大きな課題として指摘されている。この苦い経験も踏まえて、今度のアジア・アジアパラ競技大会は、県民生活に負担をかけず簡素な大会にしたいのだと思う。この間も、できるだけ経費を圧縮できるよう調整していると答弁があった。建設資材や人件費の高騰など社会経済状況の変動により、大会の経費には上振れの要因があることも答弁していた。
そこで伺うが、このまま簡素で合理的・機能的な大会運営に徹するという方針を貫くことができるのか。
【理事者】
愛知、名古屋でのアジア競技大会、アジアパラ競技大会は、引き続き、簡素で合理的・機能的な大会運営を目指した開催準備を進めている。
【委員】
引き続きということであったが、アジア・アジアパラ競技大会の積立金について、2016年の大会招致時点では、大会主催者負担経費が約850億円、愛知県の負担額は約400億円、それが今では、アジアパラ競技大会と合わせた大会経費が約1,080億円から、約1,900億円とも報じられる事態となった。私は、愛知県の負担額は、現時点で組織委員会への負担金が約898億円、開催都市として名古屋市と共同で実施する事業の経費も合わせると約1,281億円とされていると指摘した。これでは、簡素な大会だと言われても納得や理解は得られないのではないかと思う。アジア・アジアパラ競技大会への愛知県の負担額は、現時点では約1,281億円だが、クルーズ船や移動式宿泊施設の経費など、現時点では金額が分からないかもしれないが、今後の新たな負担となるものはどんなものがあるのか。それらを見込んだ大会経費の総額についてはどのような規模になるのか、明らかにしてもらいたい。
【理事者】
2025年度当初予算では、組織委員会への負担金や開催都市として名古屋市と共同で実施する事業の経費について、債務負担行為を含め当該年度に必要となる経費を計上している。来年度の大会組織委員会への負担金の主な内訳としては、競技対策費として約78億円、宿泊対策費として約37億円、大会情報システムの開発等の情報技術対策費として約28億円、競技会場の仮設整備費として約12億円などの事業費を計上している。
また、2026年度までの債務負担行為として、今答弁した項目以外に、メディア関連費、警備対策費、式典文化プログラム対策費、輸送対策費など約419億円を計上している。現在、大会組織委員会では、OCAやアジアパラリンピック委員会(APC)、各競技団体等と協議・調整を行いながら大会の運営に係る様々な計画の作成を進めつつ、経費の縮減・合理化をしながら経費の精査を行っているところなので、大会経費の全体像を示すことができない状況である。理解してもらいたい。
【委員】
新年度の予算にアジア・アジアパラ競技大会の関連道路整備事業費も計上されている。大会に関わる競技用ルート、輸送ルートなど関係者等の利用が想定される道路の整備だと聞いた。大会組織委員会等と調整して詳細を決めるようである。予算の概要参考資料などでは、この事業に対して幾らかかるのか、各局にわたるものであったら、この局はこれだけの予算、この局はこれだけの予算と概要説明などでは書かれている部分もあると思うが、そういう全体図が本当に分かりづらいものになっている。今、発言したその道路整備事業費であっても、大会関連経費だと考えるべきだと思う。本当に全体、幾らなのかというのを明らかにしてもらいたい。先ほども発言したように、組織委員会への負担金は約898億円、これまでの答弁は、アジア競技大会の開催経費約850億円のうち行政負担は約600億円、愛知県が約400億円、名古屋市が約200億円、行政負担の変更の予定はないという一点張りであった。しかし、大会1年前の時点で予定していた約400億円の2倍を超えている。どういうことなのか、改めて説明を求める。組織委員会が必要とする費用が増えたら自動的に県・市の負担も増えるのか。当初は約850億円のうち約600億円が行政負担であった。その比率がそのまま維持されて県・市の負担が増えるのか。それとも、県400億円、市200億円という金額は変えずに、あとの増加分は組織委員会の裁量と責任で財源を賄うのか。大会組織委員会の経費と行政負担との関係を明確にしてほしい。また、どういうルールになっているのか示してほしい。負担が増えないというような何か歯止めとなるものや約束等があるのかも伺う。
【理事者】
大会組織委員会の経費は、大会の準備・運営に係る経費であり、県・市からの負担金のほか、スポンサー収入やチケット収入などで賄う。アジア競技大会における愛知県と名古屋市の行政負担約600億円について、県・市の負担割合は2対1となっている。大会経費については、建設資材や人件費等の物価高騰により上振れの要因があることから、経費の縮減・合理化を徹底するとともに、パートナー企業のさらなる獲得に向けたセールス、寄附金募集活動の実施など財源の確保に取り組むとともに、国に対しても引き続き財政支援を強く要請していく。
【委員】
歯止めがあるのかないのか、どちらか答えてもらいたい。
【理事者】
大会経費については、先ほども答弁したとおり、建設資材、人件費等の物価高騰により上振れの要因があるという状況を踏まえて、今後もいろいろ財源の確保等に努めていく。
【委員】
歯止めのあるなしは、はっきりと答弁してもらえなかったが、経費については上振れの要因があるとのことであった。議会では、その変更の予定はないと答弁しながら、方針変更の説明もないまま負担金が増やされていると思う。いつどこで誰がそうした方針を変更したのか、これは議会軽視になるのではないかと思うが、答弁を求める。
【理事者】
アジア競技大会の大会経費については、建設資材や人件費等の物価高騰など社会経済状況の変動等により大変厳しい状況にあることから、当初計画の行政負担約600億円に加え、別途、財源として、愛知県競馬組合からの収益金、配分金など約500億円を新たに確保し充当することでこの2月定例議会へ予算議案を提出している。組織委員会への負担金については、これまでも、毎年度、議会に必要となる予算を計上し、審議してもらっており、承認してもらった予算に従い執行している。
【委員】
議会に本当に説明がない。必要な資料も出てこない問題もあると思う。
大会に向けて、人員の体制についても確認しておきたい。アジア・アジアパラ競技大会推進局等の職員を269人増やす、県では職員定数を前年度比603人増やすとしたが、そのかなりがアジア・アジアパラ競技大会推進局の職員増である。主に県庁内の各部局から職員を異動させるとともに、任期付職員の採用も行うと説明されている。県を退職した人にも募集案内を送付したと聞いた。何人に案内を送り、何人採用する計画なのか伺う。あわせて、これは組織委員会が募集していることなのか伺う。
【理事者】
2025年度は大会の前年度となり、組織委員会の体制整備が本格化する中、円滑かつ着実に業務を遂行するため、大会関連業務に従事する人員の大幅な増員が必要となる。現状では、現役職員のみによる対応が困難な状況があることから、各局を通じて県のOB職員へも声がけしている。その後、OB職員から300人を超える従事意向の希望があり、募集案内を送付し、順次、面接を行っている。この採用については、組織委員会の採用となる。募集案内に欠員状況等を踏まえて決定すると記載している。採用人数については示されていない。なお、今回の募集案内は、組織委員会のホームページにも掲載されており、随時、必要に応じて職員の募集を行っている。
【委員】
大会運営のボランティアを約4万人確保する計画だが、昨年募集を開始し、今年1月までの期限が4月まで延長された。先ほどボランティアの人員は確保できたのか、今後の見通しについて質問があり、いろいろ説明してもらったが、それでも集まらなかったのは、募集条件が厳しいのか。いろいろな努力をしても集まらなかったことについて、理由をどのように考えているのか伺う。
【理事者】
募集の状況については、現在、集計中で示すことができない。目標応募数にはまだ達していない状況である。今までもいろいろな場面で募集について、チラシの配布、ブース出展などで声がけしてきた。今後も、大学や各競技団体、企業等に対して個別に参加を働きかけるなど、引き続きボランティアの確保に努める。
【委員】
要望になるが、先ほども人数は、今、集計中だから示せないとのことであったが、途中段階であっても、今ここまで集まっていて、あとこれだけ集めなければならないため募集すると、きちんと示していく必要があるかと思う。
次に、新年度予算のときに配られる予算の概要参考資料について、新年度予算の中から幾つかピックアップして、重点事業の幾つかが掲載される。2025年度の資料に愛知県の重点施策は108項目紹介されているが、ビッグプロジェクトであるはずのアジア・アジアパラ競技大会がどこにも掲載されていない。昨年度は、アジア・アジアパラ競技大会の開催に向けた取組を進めるという項目があった。大会1年前にもかかわらず、そのビッグプロジェクトである大会のことが掲載されなかったのは、不自然だと思った。なぜ掲載されなかったのか理由を伺う。
【理事者】
OCAやAPC、各競技団体との協議・調整、社会経済状況の変動など不確定要素が多いことから、総合的に判断して2025年度当初予算の参考資料は作成していない。
【委員】
不確定要素が多すぎて、示せないことがたくさんあるということか。しかし、大会の開催を応援してもらいたいなら、そういう情報を本当に明らかにしていくことが大事だと思う。これまでも、このアジア・アジアパラ競技大会について質問してきたが、本当に何も分からない、不透明なことばかりだと思う。大会開催への進め方については、原則公開で透明性を確保して、途中段階であっても、その経過を公開して、民主的な運営で進めていくことが必要だと思う。
議会は、県民の納めた税金がどのように使われているかをチェックする機関である。大会に関して議決してもらうと答弁にあったが、何に使われようとしているのか分からなければ、何もチェックできないし、白紙などとてもできない。積算根拠も含めて明らかにしてほしい。このまま経費と負担の増大が歯止めなく続くのならば、簡素で合理的な大会運営は貫けず、県民生活と愛知県財政を大きく圧迫する事態になりかねない。今こそ大会の是非も含めて思い切った判断をすべきときだと要望する。
【委員】
予算に関する説明書(1)281ページの歳出第9款第10項第1目3(4)ISUグランプリファイナル国際フィギュアスケート競技大会2025開催費負担金について、支出先となる支援委員会はどのような組織であるか伺う。
【理事者】
ISUグランプリファイナル国際フィギュアスケート競技大会2025は、国内外から注目が集まる国際大会であり、この大会のインパクトを最大限に生かし、大会を通じたスポーツの振興、地域活性化、愛知県の魅力発信などに取り組みたいと考えている。こうしたことから、関係者と連携して支援委員会を設置することにより、本大会の機運を醸成し、大会の成功を支援することとした。支援委員会には、愛知県及び名古屋市、愛知県スケート連盟、さらには大会のテレビ中継を行う名古屋テレビ放送株式会社の参画を予定している。
【委員】
それでは、支援委員会はいつ立ち上がって、委員会としての具体的な取組内容が決まるのはいつなのか。
【理事者】
支援委員会の設立は3月末を予定しており、そこで具体的な取組内容の方針を決めていく。現在、関係者と調整中だが、大会の開催機運醸成、フィギュアスケートの普及、大会を活用した観光誘客などの事業を検討している。この方針を基に、ノウハウを持つ民間イベント関係者から企画提案を募るなどして、来年度のできるだけ早い時期に具体的な事業内容、取組内容を決定する予定である。
【委員】
具体的な取組内容が決まっていない段階で予算を計上する理由を伺う。また、計上しようとしている予算は、どのような根拠で算出した数字なのか、併せて伺う。
【理事者】
大会は12月だが、多くの人に観戦してもらい、地域活性化につなげることができるよう、十分な広報期間の確保や幅広い関係者と連携した取組を実施するため、速やかに準備を進めていきたい。
こうしたことから令和7年度当初予算に計上した。また、グランプリファイナルは、2017年に続いて2回目の開催となる。今回の予算案については、前回の大会時に行ったスケート教室や会場周辺の装飾などの取組を参考に、名古屋市や国際スケート連盟、公益財団法人日本スケート連盟等にも意見聴取を行いながら、効果的と思われる取組を想定して積算した。
【委員】
支援委員会は、幅広い分野の団体が参画するとのことだが、県の想定と大きく異なる取組内容を決める可能性はないのか。
【理事者】
支援委員会は、愛知県が代表事務局を務めるほか、会長は愛知県、副会長は名古屋市から選任される予定となっている。愛知県がリーダーシップを取り、構成員と連携しながら取組内容をしっかりと調整し、この大会のインパクトを最大限に生かせるよう、大会を通じたスポーツの振興、地域活性化、愛知県の魅力発信などに取り組んでいく。
【委員】
まず、大事なことが三点あったと思う。一つは、過去の取組内容を根拠に予算額を算出したこと、二つ目は、今般の取組内容を決めるに当たって、その決定過程に県が関与できること、三つ目は、当初予算に計上しておけば、取組内容が決まった時点ですぐに支援委員会として動き出せること、この三つが大事だと思う。これが確認できたので本件は納得した。
では、この大会そのものだが、スケートにさほど関心がない人でも興味を持つ大変大きな大会だと思う。県は、これを有効利用して愛知の発展に結びつけてもらいたいと思う。そうした意味では、このスポーツの分野だけではなく、観光コンベンション局などとも連携して、大いに知恵を出してもらうことを要望する。
《請願関係》
なし
《一般質問》
【委員】
アジア・アジアパラ競技大会のボランティアについて、本県で開催されるアジア競技大会及びアジアパラ競技大会まであと約1年半となった。現在、様々な形で準備が進められており、大会の大成功に向けて大きな期待を寄せている。
一方で、先ほど議案質疑でもいろいろな委員から質問があり、また新聞報道等によると、物価や人件費の高騰に伴い、開催経費が大きく上振れする可能性があることや、宿泊施設の確保といった課題が指摘されている。その中でもボランティアの参加者が不足している話を耳にしている。現在、ボランティアの募集期日を延長して募集が行われており、大会ボランティアは約3万6,000人、都市ボランティアは4,000人の確保を目指している。
ところで、今回のボランティアの募集要項を確認すると、応募資格は18歳以上となっている。この点については、国際的な大会では、18歳未満を労働者として扱うのは望ましくないとの考えがあると聞いている。しかし、平日開催される国際スポーツ大会のボランティアは、仕事がある世代にとっては参加が難しく、高齢者に偏る傾向があることも課題である。現役世代は就業時間と重なるため休暇を取りにくく、収入減の懸念や家庭との両立が障壁となる。また、決して高齢者がいけないわけではないが、高齢者中心の体制では、体力的負担やデジタル対応の難しさといった課題が生じ、多様なニーズに応えにくいのが現状ではないかと思う。
そこで海外の事例を見てみると、フランスでは、国民の意識醸成を目的に、15歳から16歳を対象とした国民奉仕制度が導入されている。これは、参加者が2週間程度、奉仕活動や救助訓練に従事するものであり、若年層の社会貢献の意識を高める取組となっている。
このような状況を踏まえ、日本社会に目を向けると、近年、社会貢献の意識が低下しているとも言われている。そこで、高校生に既存のボランティアのサポートをする形で参加を促し、今のボランティア募集とは別枠で、教育、課外授業、キャリア教育の一環としてボランティア活動に参加してもらうのはどうかと考える。
そもそもキャリア教育の一環として行われる職業体験も、ある意味ではボランティア活動の一つといえると思う。具体的には、文部科学省の学校教育法施行規則において、ボランティア活動は高等学校の単位として認められることが明記されている。1単位は35単位時間、1単位時間は50分で、時間換算にすると約30時間となる。仮に1日6時間従事すると、5日間の参加で1単位が認定される計算になる。その上で、生徒の募集については、学校ごとに学校長の手挙げ制とし、伴走者は、協賛企業の若手社員や県内の大学生を想定してはどうか。そして、最終的な参加可否については、各学校の学校長の判断とするのが適切ではないかと考える。
このように高校生が国際スポーツ大会のボランティアに参加することは、愛知県の教育目標を示したあいちの教育ビジョン2025にも合致している。特に、世界とのつながりへの意識向上や社会性を育む主権者教育の観点からも、非常に有意義な機会となるはずである。また、大学入試においても、総合選抜型試験が増加し、1点刻みの学力試験から総合的な評価へとシフトしている中で、このようなボランティア活動は、高校生がどのように社会参画していきたいか、将来どのような進路を選ぶのかを考える上で極めて重要な経験になると思う。そして、何より世界規模の大会が、今後、短期間のうちに愛知県で何度も開催される可能性は高くない。そのため、高校生がアジア競技大会やアジアパラ競技大会にボランティアとして参加することは、国際理解の深化、障害者スポーツへの認識向上、実践的なスキルの習得、社会貢献の意識形成、スポーツの魅力の再発見といった幅広い意義を持つものだと思う。これは、単なるお手伝いではなく、彼らにとっても成長の機会となり、将来の進路や社会への関わりに大きな影響を与える貴重な経験となると考えるが、教育委員会としての所見を伺う。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会でボランティア活動を行うことは、学校の授業だけでは得られない経験を積むことや、コミュニケーション能力、リーダーシップなど将来に役立つスキルを身につけることができるため、高校生にとっても自身の成長を感じられ、将来の進路について考えるよい機会になる。
なお、高等学校におけるボランティア活動の単位認定については、現在も認められている。委員の提案のとおり、今のボランティア募集とは別枠の仕組みとして18歳未満の高校生も参加できるようにしてもらえれば、県立高校へ積極的に参加するよう呼びかけていく。
【委員】
教育委員会としては、大変前向きに進めていきたいという答弁をもらったが、次に、ボランティアを受け入れる側として、現在、アジア・アジアパラ競技大会推進局では、18歳以上としているが、今の教育委員会の提案について所見を伺う。
【理事者】
愛知・名古屋2026大会のボランティアに参加できる年齢については、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの例を参考として決定している。東京2020大会において、ボランティアの参加年齢について検討した際、国際オリンピック委員会(IOC)から、18歳未満の子供については、世界的に児童労働と見られるとの意見があった。愛知・名古屋2026大会においても、ボランティアの募集年齢を18歳未満に引き下げることは困難である。
一方、委員の指摘のとおり、高校生にも大会に関わってもらうことは、スポーツの振興をはじめ、国際交流や共生社会の理解促進にもつながる大変意義のあることである。
東京2020大会では、中高生を対象としたボランティア体験の制度が設けられていた。東京大会が新型コロナウイルス感染症の影響で無観客となったことを受け、実際には、この制度は運用されなかったと聞いている。開催都市においても、こうした事例を参考に、当初からボランティアとは別の枠組みで高校生が活躍できる場を想定してもらい、引き続き教育委員会や大会組織委員会と連携し、高校生ならではのホスピタリティーが様々な場面で発揮できるよう、前向きな検討を進めていく。
【委員】
これが大会ボランティアとして参加なのか、または都市ボランティアとして参加なのか、あるいは完全に切り離したサポート部隊としての役割なのか、知恵を出してもらい、何とか高校生も参加できる仕組みをつくってもらいたい。
また、最後に、単に単位が取れるから、よい経験になるからといった理由だけではなく、県内の高校生が一体となって楽しみながら参加できる環境づくりが非常に重要ではないか。そのためにも、高校生も同じユニフォームを着用することで参加者同士の一体感を高めるとともに、支給されたユニフォームが手元に残ることで大会の記念となり、参加の意義をより実感できるようになるかと思う。こうした形としても思い出に残る仕組みを取り入れることで、より意義のある参加につながる。こうした配慮を含め、前向きに検討してもらうことを要望する。
【委員】
英語教育について、自由民主党の一期生、二期生を対象として、教育委員会からの勉強会を実施してもらったが、その中で、英語教育は大きなテーマの一つであった。そこを拾って端的に質問する。
昨年の9月定例議会における我が団の増田成美議員の一般質問の答弁で、小学校3年生から高校3年生までの10年間の英語教育を一貫したものと捉え、小中高の英語教育をスムーズにつなげるあいちリーディングスクール事業を実施しているとのことであった。また、先日は、我が団の代表質問に対して、教育長から、早い段階から英語に触れる、慣れる、使うというキャッチフレーズで環境づくりにチャレンジしていくという方向性が示された。
そこで伺うが、あいちリーディングスクール事業とはどのような事業なのか。
【理事者】
あいちリーディングスクール事業では、旭丘高等学校、時習館高等学校、千種高等学校、刈谷北高等学校の4校が事業推進の柱となり、グローバルリーダーの育成などをテーマに研究し、県立高校に広く発信するとともに、中村高等学校、尾北高等学校、安城東高等学校、豊橋東高等学校の4校が研修の中核となり、地区別授業研修を通して先進的な取組を他の高校にも広げていくことで、本県全体の英語教育の充実を図っている。地区別の授業研修では、小学校、中学校の教員も加わり、互いの授業を参観し合い、それぞれの学びの状況を把握することで、小中高での学びが段階的に積み上がり、円滑に接続しているかを確認するなど、小中高で一貫した学びになるよう取り組んでいる。
【委員】
それでは、今年度のあいちリーディングスクール事業における小中学校の取組の状況を伺う。
【理事者】
先ほどの地区別授業研修は、今年度、現在までに10回実施されており、小学校教員23人、中学校教員92人の合計115人が参加した。小中学校の教員にとっては、高校で教えている内容を知ることができ、自身の授業を見直す大変よい機会となっている。
【委員】
一貫したものをつくるという趣旨の下であるので、小中学校と高等学校が連携しているのは非常によいことだと思う。最後に質問するが、この英語教育をいかに底上げしていくかであるが、教育長の触れる、慣れる、使うというキャッチフレーズに表された早い段階からの英語教育について、今後どのような展開を考えているのか。
【理事者】
早い段階から英語があふれる環境や、英語で英語を学ぶ授業をつくり、シームレスな形でつないでいくためには、教員のさらなる力量向上が必要だと考える。より多くの小中学校の教員にあいちリーディングスクール事業で行う授業研修への積極的な参加を促していく。また、県内には、教育課程特例校として、小学校1年生から英語の授業を行っている自治体もある。ほかにも外国語指導助手(ALT)が1・2年生と一緒に給食を食べるなど、早い段階から英語に触れる機会を積極的につくって英語に慣れるよう工夫している学校もある。今後は、その成果等を把握して広く県内の小学校に紹介していくことで、より早い段階から子供たちが英語に触れる、慣れることができる環境づくりに取り組んでいく。
【委員】
触れる、慣れることを教育課程でしっかりやってもらい、使えるようになることが重要である。ボトムアップを図るために先生の教育も、また、特例校があるという話もあったが、そういった部分で底上げしてもらっている。
豊橋市に八町小学校という学校があって、英語のイマージョン教育をやっている。これは豊橋市の事業であり、早い段階から英語に親しむ学校がある。このたび中高一貫校の第二弾として、時習館高等学校が国際バカロレア教育を導入する形で、令和8年度の開校を予定している。この流れ自体が、早い段階から触れる、慣れる、使うの精神にまさに合致しており、これは、英語を特に学びたい生徒にとってみれば、まさにその環境が整ったといえる。こういった事例として、ほかにバカロレア教育がある中高一貫校は、津島高等学校と西尾高等学校である。県内にこうした流れを広めていくことも大事ではないかと思っている。英語が話せない日本人というのは、日本にとっても積年の課題である。義務教育課程及び高等教育においてその課題に引き続きチャレンジしてもらうことを要望する。
次に、名古屋競馬場跡地の後利用事業について、名古屋競馬場跡地は、名古屋競馬場の移転に伴い、その跡地をアジア・アジアパラ競技大会開催時に選手村として活用するとともに、それを契機としたまちづくりを行う後利用事業が実施される計画であった。その後、選手村整備は取りやめとなった。まちづくりを行う後利用事業はどのような状況であるのか、これまでの経緯も併せて伺う。
【理事者】
後利用事業については、2020年10月にこの事業を担う民間事業者を募集し、2021年6月に中部電力を代表法人とする事業者グループを契約候補事業者として決定した。しかし、2023年3月に、組織委員会の理事会において、名古屋競馬場跡地における選手村整備を取りやめる方針が示されたことから、後利用事業の事業スキームの見直しが必要となった。このため、2023年度に事業者グループと事業スキームについて協議を行い、土地売却に関する事項や基本計画協定及び基本計画の変更等の方針に関して合意し、選手村整備が取りやめとなった場合においても、募集要項及び基本計画協定に基づき後利用事業は継続して履行することを確認した。今年度も事業者グループと後利用事業の実施に向けた協議・調整を重ね、2025年2月中旬に事業者グループから基本計画の変更の申入れを受け、県と名古屋市で2025年2月28日に変更承認を行った。また、土地売買契約の締結に向けて、県と名古屋市は、委託業務により不動産鑑定評価を実施しており、3月下旬に業務を完了する予定である。
【委員】
この後利用事業は、一体どのようなまちづくりを行っていくのか、また、基本計画の変更を行ったということだが、どのような変更を行ったのか。
【理事者】
事業者グループの計画は、賑わいゾーンに複合商業施設などを、住まいゾーンに分譲マンションや戸建て住宅、複合福祉施設などを、学びゾーンに高校や大学、民間研究施設などを整備する計画である。また、ただ単に施設を整備するだけでなく、まちづくりに関する事業方針として、事業区域内の活性化などを目的としたエリアマネジメント体制を構築することも計画されている。
今回変更を行った内容については、選手村整備の取りやめに伴い、選手村に関する事項を削除するとともに、事業者グループの新たな提案を計画に反映しているが、グランドコンセプトなどの変更はなく、変更内容は、全て基本計画の趣旨を損なわず、合理的なものと認められるものとなっている。主な変更内容については、住まいゾーンの戸建て住宅エリア内において、敷地を効果的に活用するために事業者グループが整備する道路を追加するほか、より快適で効率的な暮らしを実現するために、当初、学びゾーンに単独の施設として配置されていた子育て支援施設を、子供の迎えついでに買物ができるよう、賑わいゾーンの複合商業施設内に機能を維持したまま移動できるよう変更している。
【委員】
子育て支援施設が賑わいゾーンに行くことも含めて計画変更が行われたことは分かった。しかし、このまちづくりが旧来型、言わば20世紀型のまちづくりであってはならないと考える。これからの時代を見据えた未来型のまちづくりを進めるべきではないかと思うが、所見を伺う。
【理事者】
事業者グループの計画は、多様な人々がつながり、共につくる次世代型のまちづくりをグランドコンセプトに掲げ、最先端のサービスや技術に見守られ、健康で安全・安心に暮らせる持続可能なまちを目指すとしている。具体的には、まちづくりに関する事業方針として、マイクロモビリティーなどの交通技術の導入、IoTやICT技術を活用したサービスの提供、防災力を強化する取組、太陽光発電設備や下水熱利用設備の導入など、最先端の技術を導入するとともに、防災や環境意識の高いまちづくりを目指す計画となっている。
【委員】
マイクロモビリティーやエネルギー関係、防災事業などに取り組んでもらえるとのことだが、当然、伊勢湾台風の被害を受けた地域であり、海抜ゼロメートル以下でもあるため、安心かつ未来的なまちづくりが望ましい形ではないかと思う。また、詳細が決まっていく段階で、よいと思えるものになるように、各事業者との接触が非常に大事だと思う。そういった未来型のまちづくりを県のほうから逐一アプローチしてもらうよう願う。
土地売買契約の締結に向けて不動産鑑定評価を実施しているとのことだが、今後のまちびらき、開業に向けてどのように進めていくのか。
【理事者】
県と名古屋市は、不動産鑑定評価実施後、価格決定手続を経て、2025年度、事業者グループと土地売買契約を締結する予定である。また、事業区域内の骨格となる道路や土地造成、浸水対策の雨水貯留施設などの基盤整備工事を行っており、2026年度末におおむね完了する見込みである。一方、事業者グループは、2027年5月頃の土地の引渡しを経て施設整備に順次着手し、2029年度中のまちびらきを目指している。このような状況を踏まえ、県としても、事業者グループが行う後利用事業を促進していく。
【委員】
選手村にすることで競馬場が弥富市のトレーニングセンターに移転された。選手村にするのは取りやめたという説明があったが、競馬場は何で弥富に来たんだろうと思う弥富市民が結構おり、私のところに問合せがくる。この取りやめたことに関して、関係自治体や競馬組合を通じてでも構わないが、市民への細かな配慮も私は必要だと思う。そうしたところにも少し重点的に説明しながら、この事業を進めてもらうとよりよい。
【委員】
教員不足について、今、中高生が中心となり活動している団体が、全国陳情アクションというものを行っている。その中で、教員が足りず学校の質が低下していることが述べられていた。同団体が中高生を対象にしたアンケートで、教員不足が授業や学校生活に影響を与えているかの質問に、約6割が非常に感じる、ある程度感じると回答したことが報道されていた。教員不足の影響を受けている子供たちからも声が上がるほどに、事態は大変深刻になっている。教員不足の解消は、今、待ったなしの課題である。
一昨年の6月定例議会の当委員会で、私は、教員不足の問題を取り上げ、質問した。そのとき、教職員の担当課の職員は、本来配置しなければならない教員が配置されていない学校があることについて、早急に解消すべき課題であると認識していると答弁した。その後、教員不足の問題は解消されたのか。2023年、2024年の5月1日時点での教員不足数についてどのような状況になっているのか伺う。
【理事者】
2023年5月1日現在の教員の未配置数については、名古屋市を除く本県の公立の小学校で52人、中学校で47人、高等学校で19人、特別支援学校で22人、合計で140人であった。また、2024年5月1日現在では、小学校で44人、中学校で61人、高等学校で52人、特別支援学校で13人、合計で170人である。
【委員】
今示してもらったように、いまだに解消されていないのが実態だと思う。その結果、現場では、記憶がなくなるほど多忙になっている。教員不足により体育の先生が社会を教えることも起こっていると、深刻な事態である声が寄せられた。
昨年12月定例議会の委員会で不登校の問題についても取り上げさせてもらったが、愛知県で全国と同様に不登校が増えている。その原因に教師との関係など、学校が一因となっていることが明白となった。実際に子供たちが落ち着かないことや、不安定になって教室から脱走してしまう子供もいることも聞いた。まさに教員不足のために、子供たちに手厚い教育ができない事態になっている。教員も子供と向き合う余裕がなく、本当はもっと丁寧に接したい、けれどもできない状態になっている。
令和元年度以降の欠員補充の臨時的任用の教員数、教員採用の合格採用数と補欠数を伺う。
【理事者】
2019年度の欠員補充の臨時的任用の教員数は2,364人、合格者数は1,475人、補欠者数は227人であった。2020年度は、欠員補充者は2,354人、合格者1,490人、補欠者350人であった。2021年度は、欠員補充者は2,368人、合格者1,530人、補欠者318人であった。2022年度は、欠員補充者は2,502人、合格者1,570人、補欠者313人であった。2023年度は、欠員補充者は2,515人、合格者1,710人、補欠者343人であった。2024年度は、欠員補充者は2,456人、合格者1,610人、補欠者418人であった。
【委員】
この状況、毎年のように臨時的任用講師が2,000人を大きく超えて生まれているのに、実際に採用されている教員の数は2,000人に満たない。退職の年齢が上がるのでそれを加味しているとか、子供の人数が減るため、先生が余るとその処遇に困るという話もあるようだが、実際に恒常的に2,000人を大きく超える臨時採用がされている。これは、抜本的に教員の採用数が少ないことだと思うが、その点、どのように認識しているのか。
【理事者】
児童・生徒数は、今後、減少することが見込まれる。それに伴い、教職員の必要数が減少することが想定されるので、臨時的任用講師を一定数確保して対応する必要がある。
【委員】
それでは、大変不十分だと思う。現場の先生にも話を聞いたが、教員が余ることは、現実には起こってない、むしろ足りない。話を聞いた人は、年間100時間を超えて残業している人である。日本共産党は、今年の1月30日に、教員に授業準備と子供と向き合う時間をと提言し、その中で、教員残業代ゼロ制度の廃止、授業に見合った教員定数を求め、授業の持ちコマ数を減らし、基礎定数を1.2倍に引き上げることを求めている。少なくとも県では、臨時的任用数を上回る教員採用を行うことが必要ではないかと思うがどうか。
また、臨時的任用である人は、現実に教員としての役割を果たしているのだから、希望者を全て正規採用にすべきと考えるがどうか。
【理事者】
本県では、正規教員の採用は、退職者や子供の増減に伴う教員の過不足数に、教科担任制の拡充や少人数学級の導入といった施策に伴う増減を加えて、毎年、採用計画をつくり、計画的に行っている。臨時的任用講師の数を上回る採用については、教員の必要数を超過することからそういった採用はできないと考えている。
また、臨時的任用講師で正規採用を希望する人については、採用試験において適正な評価を行っている。
【委員】
本当に教員の欠員をなくすためにやることをきちんとしているのかと思う。今の答弁は、あまり積極的だと思わない。
長時間労働や精神的ストレスのため精神疾患で休む人や辞めてしまう人も多いとも聞いている。県では、その数はどうなっているのか。先ほど同様、令和元年以降、小中高別で示してもらいたい。
また、産休や育休で休む人もいると思うが、その数も示してもらいたい。
【理事者】
精神疾患による休職者数については、2019年度は、小学校で108人、中学校で59人、高校で41人、特別支援学校で29人、合計で237人であった。2020年度は、小学校で114人、中学校で51人、高校で35人、特別支援学校で35人、合計で235人であった。2021年度は、小学校で124人、中学校で46人、高校で32人、特別支援学校で42人、合計で244人であった。2022年度は、小学校で147人、中学校で65人、高校で43人、特別支援学校で46人、合計で301人であった。2023年度は、小学校で175人、中学校で87人、高校で62人、特別支援学校で37人、合計で361人であった。なお、退職理由については、退職願に病名など詳細な記載を求めていないため、精神疾患で退職した人数は把握していない。
次に、出産休暇取得者、育児休業取得者については、各年度5月1日現在で、2019年度は、小学校で1,210人、中学校で424人、高校で197人、特別支援学校で172人、合計で2,003人であった。2020年度は、小学校で1,236人、中学校で424人、高校で237人、特別支援学校で185人、合計で2,082人であった。2021年度は、小学校で1,233人、中学校で435人、高校で228人、特別支援学校で192人、合計で2,088人であった。2022年度は、小学校で1,232人、中学校で446人、高校で236人、特別支援学校で211人、合計で2,125人であった。2023年度は、小学校で1,246人、中学校で476人、高校で225人、特別支援学校で222人、合計で2,169人であった。
【委員】
退職者は、理由を把握していないとのことだが、少なくない人が休職している。これらの人は、新学期のときから休職することが分かっている人もいるが、学期の途中で休職する人もいると思う。こうした欠員を補うために中途での採用も必要と考えるが、県では中途採用を行っていないと聞いている。中途採用をやらない理由が何なのか、ほかにやっている県があるのか、教えてもらいたい。
【理事者】
教員採用試験の複数回実施については、2023年度に20の自治体で行っているが、幾つかの自治体に確認したところ、志願者が少なく、欠員を補う効果が小さいと聞いている。本県では、年度当初に予定した採用試験で教員の採用予定数を確保できているので、実施の予定はない。また、年度途中に欠員が発生した場合は、臨時的任用講師を充てて対応している。
【委員】
問題なのは、毎年の教員採用試験で補欠合格者が生まれている。この人たちは、欠員ができたときに採用されているのか、採用人数を示してもらいたい。また、欠員が埋まっていないのに採用されていないのであれば、その理由を教えてもらいたい。
【理事者】
昨年度の教員採用試験では、採用前の辞退者が118人出たので、補欠合格者を追加で採用した。さらに、今年度採用後に退職した新規採用者を補充するために22人を繰り上げて採用した。また、児童・生徒数は、今後、減少することが見込まれ、教職員の必要数が減少することが想定されるので、臨時的任用講師を一定数確保して対応する必要がある。
【委員】
途中で休養という形で休職する人もいる。新規採用だけにかかわらず、採用資格を持っている人から採用すべきだと思うがどうか。
【理事者】
補欠合格者は、採用辞退者数や新規採用者の退職者数を見込み、適正な規模を算出しており、それ以外の目的に充てることは難しい。
【委員】
現在の教員の欠員の多くは臨時的任用講師で支えているわけだが、労働条件が十分見合うものになっていなければ、臨時的任用講師の継続や正規採用を目指す意欲にはつながらない。この人たちの給与が頭打ちになっていると聞いた。どういう実態にあるのか、なぜそうなっているのか、明らかにしてもらいたい。
【理事者】
臨時的任用講師の給与の頭打ちについては、給料表上、講師に支給できる最高額を基準とした約35万5,000円となっている。臨時的任用講師は、授業は正規教員と同様に行うが、校務の運営については、講師相当として正規教員より職務が軽減されていることを考慮し、頭打ちを設けている。
【委員】
教員不足の解消のために採用数を抜本的に増やすこと、中途採用、補欠の積極的採用や臨時的任用の人の労働条件の改善を指摘したが、教育の現場からは、もっと先生がいたら子供たちの悩みを聞くことができるのに、もっと先生がいれば、一人一人に寄り添って褒めることもできるのに、子供に当たりが強くなった教員も増えた、大人も追い込まれているという悲鳴のような声が幾つも寄せられている。子供たちは、教育を受け、豊かに成長する権利を持っているが、それが大きく侵害されている。子供たちの権利を守り、保障するためにも、今回、指摘した問題を真剣に検討してもらい、一刻も早く教員不足の解消を解決してもらうために全力を挙げてほしいことを要望する。
次に、中高一貫校について、4月に開校する県内初の県立中高一貫校の合格発表が1月24日にあった。探究学習重視型と呼ばれる4校の受験者数、合格者数、倍率について伺う。
【理事者】
明和高等学校附属中学校の普通コースは、受験者数1,341人、合格者数80人、倍率にすると16.8倍、音楽コースは、受験者数36人、合格者20人、倍率で1.8倍、津島高等学校附属中学校は、受験者数163人、合格者数80人、倍率にすると2.0倍だ。半田高等学校附属中学校は、受験者数391人、合格者数80人、倍率で4.9倍、刈谷高等学校附属中学校は、受験者数805人、合格者数80人、倍率にすると10.1倍であった。
【委員】
高い倍率であるため多くの不合格者数が生まれている。私は、昨年3月の委員会の議案質疑で、受験競争の過熱化や低年齢化について質問し、落ちこぼれた子供は自己肯定感や希望を持てず、能力や人格の発達も阻害されかねないと危惧すると述べたが、今回、多くの不合格者が同じような挫折感を味わうことになったのではないかと思う。
私立中学の受験で実績のある進学塾の人が、不合格を経験した児童へ受験後の適切なケアをしなければ、中学で再スタートが切れないと指摘していた。
そこで伺うが、こうした子どもたちへのケアについてどのような対応を考えているのか。
【理事者】
各小中学校においては、日頃から教員やスクールカウンセラーなどが連携し、子供たちの心の変化を見逃さないよう、きめ細かく見守りをしている。中学校受験については、これまでに国立や私立で実施されており、希望がかなわなかった児童・生徒に対しては、頑張った子供たちの気持ちを大切にしながら、その後の学校生活を前向きに送ることができるように、各学校においてきめ細かくサポートしている。県立中高一貫校の受験生についても、同様に子供たちの心に寄り添いながら丁寧に対応していく。
【委員】
日頃から教員やスクールカウンセラーが目配りするとのことだが、教員は不足しており、なかなか子供たちに向き合う余裕がないのが、今の教育現場の実態である。スクールカウンセラーも、各校に1人ずつ常にいる状況ではない。それでケアができているとは、とてもいえないのではないか。マスコミに紹介された識者の見解によると、多くの保護者が、高校受験がなくなり中学校でゆとりある教育が保障されるのではないかと期待し、子供たちに受験させたのではないか。こうした受験競争に勝ち抜かないと、ゆとりある教育、探究重視型教育が保障されないのは問題だと指摘されている。県はこの指摘についてどのように考えるのか。
【理事者】
探究的な学びは、これからの時代を生きる子供たちにとって必要なものである。学習指導要領において、全ての学校で実施することが求められているので、中高一貫校だけで行われるのではなく、県内の各小中学校において既に取り組まれていると認識している。
【委員】
子育て中の人から、私の周りでは中高一貫校に合格させるために小学生から塾に通わせた方が、中学校で塾に通わせるより安く済むので、小学生から塾に通わせる親が増えたとの声が寄せられている。前回、塾に通って小学校の範囲を超える内容まで学習しなければ解けない問題は出題しないと答弁したが、実際には、県民の認識は、塾に通わないと合格できないとなっているのではないかと思った。結果的に、経済的格差が教育の格差を広げる要因をつくってしまっているのが実態だと思う。また、中学受験のプロが、サンプルより難しく、予想より難易度が高かった、愛知県の公立入試よりも難しいかもしれないと言っている記事が中日新聞で報道されていた。
そこで、愛知県の公立入試よりも難しいかもしれないと記事で指摘されているように、実際には難易度の高い内容になっていたかと思うが県の認識を伺う。
【理事者】
中高一貫校の入学者選抜の適性検査は、小学校の学習指導要領の範囲内であり、適切な難易度であった。
【委員】
しかし、こういう指摘もされている以上、私が懸念していた過度の受験競争が行われ、回避されることなく同様の試験がこれからも引き続き行われることになる。チェンジ・メーカーの育成を目指すというが、教育は、教育基本法が指摘するように、人格の完成を目指し、それぞれの子供たちの多面的な成長を促す営みである。
探究型と呼ばれる各校は、文部科学省が進めてきたスーパーサイエンスハイスクール構想など、一部のエリートを育成する教育を受け継いだものだ。学歴が高くないと豊かな生活ができないと思わせる政治の責任は重いという声も寄せられた。本来の教育のあるべき姿に立って、改めて中高一貫校は見直すべきである。
大阪・関西万博への修学旅行について、現在、県立高校で修学旅行の日程に大阪・関西万博を予定している学校が何校あるのか示してもらいたい。小中学校の修学旅行についても把握しているのか。もし把握しているのであれば、何校、万博へ行く予定なのか教えてもらいたい。
【理事者】
県立高校の修学旅行の日程で大阪・関西万博を予定している学校は、6校である。
【理事者】
小中学校については、修学旅行を実施する場合、設置者である市町村教育委員会に計画を提出することになっており、県教育委員会では把握していない。
【委員】
小中学校は把握しておらず、県立高校は6校予定しているとのことだが、前回、質問した際、修学旅行など集団宿泊行事や遠足を行う際には、児童・生徒の安全確保は何より大切という認識が示された。大阪・関西万博は、安全確保されているといえるのか。今、大阪・関西万博で、大阪府や近隣自治体が実施する学校単位での無料招待事業をめぐって、来場を取りやめる学校や自治体が相次いでいることが報道されている。問題は何か。多くの学校が挙げるのが、熱中症などの安全面のリスクである。公益社団法人2025日本国際博覧会協会は、ミスト付扇風機などで対応するとしている。大阪府吹田市長は、真夏の暑さは、ドライミストでは対応できないと指摘している。また、災害時の対応、救護所の状況についても満足できる回答はなく、安全面の確認ができなかったと述べている。吹田市の教育委員会と吹田市の学校長名で、学校行事として見合わせるという趣旨の文書を保護者宛てに通知しており、その中で、特に留意すべき児童・生徒の昼食場所及び待機場所での熱中症対策や、安全に団体行動するための動線及び点呼、待機場所の確保が不十分であるという見解に至ったと述べている。
そこで、安全面の確認ができなかったと吹田市は述べているが、安全面に大きなリスクがあることを県教育委員会が認識しているのか伺う。
【理事者】
これまで文部科学省からは、大阪・関西万博について、大きなリスクがあり、修学旅行先とすることは見合わせるべきという通知は来ていないので、県立高校については、通常の修学旅行と同様に旅行中の健康・安全の管理について細心の注意を払って実施していく。
【理事者】
小中学校についても同様に、各市町村、各学校において旅行中の健康・安全の管理について細心の注意を払って実施すべきものと考えている。
【委員】
通知が来ていないからとの答弁だが、報道で幾つか明らかになっている問題がある。前回の答弁で、大阪・関西万博について、安全確保に関する情報を把握した場合には、学校担当者指導主事会等で情報提供した上で、児童・生徒の安全に配慮した実施となるよう改めて指導していくと述べていた。県教育委員会の責任で本当に子供たちを安全に万博への修学旅行に送り出せるのか、情報を把握し、学校と共有すべきだと思う。
そこで伺うが、現地への確認、安全面について大阪府へ問合せはしたのか。
【理事者】
大阪府等への問合せはしていないが、2024年8月と12月に、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が実施した大阪・関西万博の修学旅行のためのオンラインの説明会に参加しており、その際に安全対策についても説明があった。
【理事者】
小中学校についても大阪府等への問合せはしていないが、修学旅行先として検討している場合には、高等学校教育課から答弁のあったオンラインの説明会に参加するよう案内している。
【委員】
私もその説明会の資料を見たが、大変不十分だと思う。しかもメタンガスについては安全宣言が出ていない。まだ危険も解消されていない。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会がメタンガスの発生はないと決めつけていたパビリオン周辺でも5か所で検知されている。メタンガスの濃度は刻一刻と変わる。工事の進展に伴って想定外のところにたまってしまう恐れもある。また、万博会場の夢洲では、埋め立てたごみから危険な濃度のメタンガスが発生し続けており、ガス抜き管が83本突き出していることや、万博の駐車場周辺にもその管が立ち並んでいることが我が党の国会議員の現地視察で確認された。国会で衆議院議員の辰巳孝太郎議員が火気厳禁と書かれたガス抜き管の写真を示し、遠足や修学旅行の児童・生徒が降り立つ場所だ、降りたらすぐそこは危険箇所ではないかと指摘している。さらに、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、ガス抜き管から排出されているガスの濃度について計測しており、爆発する濃度の回数が16回あったことが判明するとともに、ガス濃度が一番高い数値が検出された場所は、交通ターミナルの中の測定箇所になると国会で答弁があった。交通ターミナルは、バスを利用する来場者が利用するところである。その場所が爆発濃度を超えるところになっているため、何が起こるかは分からず、本当に危険だと思うが、県教育委員会はこうした事態を認識しているのか。
また、安全確保が大事なのであれば、大阪・関西万博を検討している学校に対して、今からでも行き先を変更するよう指導・助言すべきではないかと思うがどうか。
【理事者】
メタンガスの危険性については、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が会場内のガス濃度測定結果を定期的に公表しており、また、オンラインの説明会では、状況に応じて必要な対策を講じると説明があった。県立高校については、大阪・関西万博の開会後に、教員が事前に下見して安全確認していく。仮に危険な状況が生じた場合には、直前であっても取りやめや変更をしていく。
【理事者】
小中学校についても、下見で安全確保が十分でないと学校が判断した場合や、その後、危険な状況が生じた場合には、直前であっても修学旅行を取りやめや変更するなど子供の安全を最優先することとなっているので、各市町村、各学校において適切に対応してもらえると考えている。
【委員】
答弁はいろいろ不十分な点もあったが、直前であっても修学旅行を取りやめるなど変更することもあり得ることは確認させてもらった。万博の会場となっている夢洲1区は、まだ現役の廃棄物の最終処分場のままである。PCB袋が3,000袋、生ごみの焼却灰、水銀、六価クロム、ダイオキシンが埋まっており、一酸化炭素、硫化水素、アンモニアが発生している。硫化水素は大気より重いため下にたまる。あるジャーナリストが身長の低い子供たちが大量に吸い込んでしまったら命の危険もあることを指摘している。これを聞くだけでも、私も子供たちを安全に連れて行けるところなのかと、本当に危険な場所ではないかと思う。命輝くどころか命に関わる有害な物質が出続けている万博に子供たちを連れていくことは、やはり安全面から考えてぜひ見直しを促してもらいたい。
【委員】
委員の中高一貫校の受験の不合格者に対するフォローについて、先日の中日新聞の記事で教育長がインタビューを受けており、不合格になった子供たちを現場でどうフォローしていくのかを答えていた。私はその記事に対して何でそんなこと聞くのか、それに答えなければならないのか違和感を覚えた。例えば明和高等学校ならば倍率は16.8倍となっているが、本人や親が好きで受験している、受験させているわけである。その結果、不合格になってしまった子供たちを学校でフォローしなければならないのか。それは家庭、親がフォローすべきことであり、学校の先生がやるべきことでは、絶対にないと思っている。勉強の受験ではなく、例えばサッカーや野球の強豪クラブチームを受けて、不合格となってしまった子供たちも学校でフォローしなければならないのかとの話になってくる。どこまで過保護に学校がやらなければならないのかと思った。小学校6年生の子が2学期から学校を休んで塾に通っている話も聞いており、そういった子を見るクラスメイトは、それこそ自分たちが取り残されている気になっているのではないか。そういった子たちに対して、それこそ先生たちが、進む道はそれぞれあるのだから受験する子が偉いわけではないといったようにフォローしなければならないと思う。そこで伺うが、もう既に不合格になった子供の親から学校からフォローしてほしいなど、そういった声はあるのか。
【理事者】
委員指摘の点は、実際、受験前は少し危惧する声はあった。実際、入試が終わってからも、保護者からそういった声が届くのではないかと心配していたが、そういう声は1件も届いていない。
【委員】
教育委員会の中でも学校でフォローすべきだという人もいれば、私と同じように、それは家庭でやるべきだという人といろいろあると思うので、また個別に教えてもらいたい。
【委員】
経済団体や企業と連携したキャリア教育について、少子高齢化の進展により生産年齢人口が減少し、本県産業界においても地域産業の担い手不足が懸念されている。
本県がモノづくり愛知として活力を維持して今後も継続的に発展していくためには、地域産業を支える人材の育成がますます重要になってきている。高校生には、地域の企業やそこで働く魅力を発見して進路選択の幅を広げ、将来の地域産業を担ってもらいたい。令和6年9月定例議会における、自由民主党代表質問に対し、教育長から、地域産業を担う人材の育成に向けて、昨年度、新城市と美浜町の2か所で、地元商工会の協力を得て高校生と地元企業のマッチングフェアを開催したところ、生徒、企業の双方から好評であった。今年度は、この2地区に豊田市の足助町、あま市、幸田町の3地区を加えて実施していくという答弁があった。地域産業の担い手を育成していくために地域の学校と商工会が連携を強化していくことは、大変有用であると思う。
マッチングフェアについて、今年度、既に取組が終了している地域もあると思うが、取組の内容や参加人数など当日の状況はどうであったか。
【理事者】
今年度、既に新城地区、美浜地区の2か所の取組が終了している。12月20日に開催した新城地区では、新城有教館高等学校、新城有教館作手校舎、田口高等学校の3校から生徒62人、教員10人、商工会会員企業12社の参加があった。12月23日に開催した美浜地区では、内海高等学校、半田農業高等学校、半田工科高等学校、半田商業高等学校、武豊高等学校の5校から生徒27人、教員9人、商工会会員企業9社の参加があった。キャリアディスカバリーとタイトルをつけたこのイベントに企業から若い社員を中心に来てもらい、なぜ地元で働こうと思ったのか、仕事のやりがいについて話を聞いた。生徒は、興味のある3社から4社を選んで順にブースを訪れて、ここでしか聞くことのできない地元企業の話を熱心に聞いていた。終了時には、教員と企業で意見交換する時間も設け、企業の求める人材や高校の進路指導に期待することなどについて直接聞くことができ、大変有意義なものとなった。
【委員】
教育長は答弁の中で、昨年のマッチングフェアに参加した生徒から地元企業の魅力を発見できたという声や、企業から生徒と直接話せる機会は貴重であったとの声があったと述べている。2年目となる今年だが、参加した生徒、企業からどのように評価してもらっているのか、分かれば教えてもらいたい。
【理事者】
新城地区では、一つのブースの人数を昨年より少なくし、ワンサイクルを15分から20分に延ばした。企業からは、昨年よりしっかりと話をすることができた、生徒からは、企業から具体的な話が聞けてとてもよかったという声が出るなど、双方の満足度が高くなった。美浜地区では、昨年より参加企業が2社増え、話をしてくれた企業の人のようなかっこいい人に自分もなりたいという生徒の声や、全ての企業から来年も参加したいという感想をもらうなど、充実した取組となった。
また、両地区とも、参加した教員からは、2回目の参加となる企業が多く、昨年以上に地元企業の強みや働く魅力を意識した話をしてもらうことができた、教員も地元企業とそこで働く人の魅力をしっかり感じ取ることができたという声が上がっており、参加した生徒、企業、そして教員にとっても意義深い取組を実施することができた。
【委員】
来週にも新しい3地区で、このマッチングフェアを開催すると聞いているが、この3地区を選んだのはなぜか、また、このマッチングフェアを今後どのように進めていこうと思っているのか。
【理事者】
3地区とした理由だが、参加することになる足助高等学校、美和高等学校、幸田高等学校が、これまでも地域と連携した取組を熱心に進めてきたことから、この3地区で実施することとした。足助高等学校では、現在の観光ビジネスコースを2026年度から観光科とし、地元の観光協会や商工会と連携した、観光をテーマとした学びを充実していく。また、美和高等学校は、これまでも地元の商工会等と連携した取組を行っており、2026年度からは、地域連携型の中高一貫校となる。幸田高等学校では、2022年度から企業連携コースを設けて地元企業での長期インターンシップに取り組んでおり、この春、初めての卒業生を出した。この3地区において本事業を導入し、地域での就職につながる連携の取組を強化し、充実させていく。また、マッチングフェアについては、昨年度から実施している新城、美浜にこの3地区を加えた5地区において、まずはしっかりと取組を定着させていく。県内には、産業人材の育成を望む地域がほかにもあるので、県立高校と地域の連携状況などを踏まえながら、できることについて検討していく。
【委員】
先日の本会議における自由民主党の代表質問で、教育長は、早い段階から職業意識を持てるよう企業や商工会、商工会議所などと一体となって小中高を通じたキャリア教育に力を入れていくと答弁していた。今後、教育委員会としてどのようなキャリア教育を進めていこうと考えているのか。
【理事者】
キャリア教育については、これまで小中高、それぞれの段階に合わせて実施してきた。しかし、担い手不足が社会的に大きな問題となる中、高校卒業時点では、自分のやりたいことが見つかっていない生徒も多く、産業人材を送り出す観点から課題と捉えている。そのため、地域の企業、商工会、商工会議所の力を借りながら、小中学校段階では、働く人の話を聞く機会や職場体験を行う機会を充実させ、早い段階から将来の夢を持ち、自分の進路を思い描けるようにしていきたい。高校では、職業学科だけでなく、全ての学科においてインターンシップや大学の体験入学などで企業や大学を実際に見たり調べたりすることで、具体的なイメージを持って自分なりの将来設計を立て、進路選択ができるようにしていきたい。これらの活動を通して、早い段階から働くことのリアルを体験する機会を充実させ、生徒たちが将来の夢につながる進路を選択することができるよう、小中高をつなぐキャリア教育を進めていく。
【委員】
本当にこのキャリア教育というのは、これからますます重要になっていくと思う。
マッチングフェアだが、高校卒業のときに地元企業を選ばなかったとしても、大学へ4年間行った後に、そういえば高校のときにマッチングフェアであの地元の会社の説明を聞いたなと思い出すことがあれば、それが就職に結びついていく可能性があるので、まずはこの5校でしっかりと毎年積み重ねし、長い目で育てていってもらいたいと思う。また、小学校、中学校においても職業教育を充実してもらうことを要望する。
【委員】
ICTを活用した教育活動について、今年度1月27日の本委員会県内調査で春日井市立高森台中学校を視察した。先生が黒板の前でリーダーシップを取る当たり前の授業風景とは異なり、生徒一人一人がタブレット端末を自由に使いこなし、グループごとで問題解決の答えを導き出し、それをどう発表するか、生き生きと話し合っていた教室での光景は、とても印象的であった。高森台中学校では、生涯にわたって自ら学び続けられる子供たちを育成するという理念の下で、体育の水泳の授業、音楽、美術の授業など、教科を問わず日常的なICT活用を進めているとのことであった。また、クラウドを活用することで、クラス全体やほかのグループ、友達などの考えを容易に共有していた。どの教科においてもこのような活動を共有する仕組みが日常的に行われていた。このように先進的な取組をしている春日井市立高森台中学校は、全国でも有名なICTを活用した教育活動の実践校である。
そこで伺うが、県内の市町村におけるICTを活用した教育の状況を教えてもらいたい。
【理事者】
春日井市の取組は、全国的に見ても最先端のものであるが、ほかにも国のリーディングDXスクール事業の対象となっている一宮市や知多市の学校では、1人1台端末を活用して、例えば修学旅行の行き先について各個人が調べたことをグループチャットに入力し、多くの情報を協力して収集する授業を行うなどしている。また、岡崎市、豊田市などでも、国の事業の対象とはなっていないが、従来から、それぞれ工夫しながらICTを活用した教育に取り組んでいる。
一方で、これからもICTを活用した教育のアップグレードに向けて、県の支援が必要と考えている市町村や学校もある。このため、県総合教育センターでは、全ての小中学校でICTを活用した教育が実践されるよう、研究指導主事と現場の教員をメンバーとしてICT授業活用に関する研究を行っており、例えば自分たちが跳び箱を跳ぶ様子をお互いに動画で撮影し、グループで分析して、よりよいフォームを探究する学習などの成果を公表している。また、小中学校の教員を対象としたICT活用実践講座において、1人1台端末を使用した模擬授業を生徒の立場で体験した後に授業案を作成するワークショップ型の研修を行っている。
【委員】
私も高森台中学校の美術の先生をネットで見た。その美術の先生は、塗り方を自分で動画撮影し、それをクラウドにアップロードしていた。生徒たちはその動画を見て、塗り方を学びながら作業を進めていた。
見たいときに動画を見て、それを参考にして塗ることができるというのは、新しいやり方である。教員が不足していて一人一人に対応できないときでも、このような方法を使うことで、きめ細かな教育が可能になるため、私は感動した。高森台中学校はこのように先進的な取組をしっかりと行っているが、次の段階として、この先進的な取組を県内の他の市町村にも展開する必要があると思う。これは県教育委員会がリーダーシップを取って推進すべきことだと思うが、どのように働きかけていくのか伺う。
【理事者】
昨年度から実施している市町村教育委員会の指導主事を対象とした研修や教員が参加する講演会等において、春日井市などの先進的な取組を紹介している。また、今年度は、春日井市の小中学校の先進的な授業を教員に実際に見てもらう機会として、授業公開を計3回開催し、授業を実施した教員や春日井市の指導主事を交えて、実践するためのノウハウなどについて質疑応答や情報交換を行った。参加した教員から、子供が主体的に活用し、学びを深めている姿を見ることができた、どのようにICTを活用していくべきかの見通しを持つことができたという意見が多かったことから、今後は、授業公開の回数を増やし、春日井市以外の学校においても開催するなど、各市町村が互いに刺激し合って、県内小中学校のICT教育が全体的にレベルアップしていくよう取り組んでいく。
【委員】
高森台中学校が最初にICTを使って学校の業務を始めようとしたとき、それは子供の教育ではなく、教員の校務に関することから始まった。最初は、学校の先生たちが、これは便利だと感じ、ICTを使うことで様々な業務が効率化され、毎朝の会議で話し合っていたこともICTによりスムーズに進められるようになった。特に、校務が楽になることを実感した先生たちが、そこからさらに、これを授業に使えば、授業がこう変わるのではないかという想像力を生み出すようになったと聞いている。よく教育長が言われるイマジネーションとクリエイティビティー、想像力と創造力、全くそのとおりだと思う。先生が体験して、次はこんなこと、あんなことというイマジネーションを巡らして、先生たちが体験を通じて次々とアイデアを巡らせ、子供たちと一緒に新しい取組をつくり上げていくプロセスが、高森台中学校で大切に培われてきたことを高森台中学校で見て、とても印象的で感動的であった。今年度一番有意義な視察であったなと本当に思った。県教育委員会も、せっかくこの高森台中学校があるため、その意義を本当に県内にしっかりと広めていってもらうことを要望する。
【委員】
さきの本会議の一般質問で、教育長から県立高校における生徒のアルバイトや有償ボランティア等についての見解が答弁された。その質問を踏まえ、ここでは、アントレプレナーシップ教育との関係から、高校生の起業について質問する。
県は、アントレプレナーシップ教育を推進し、高校生が起業家精神を身につけるためのプログラムを増やしている。県教育委員会からは、我が党の木藤俊郎議員の本会議一般質問において、来年度の具体的モデルの取組について答弁があった。
そこで伺うが、教育長が答弁したアントレプレナーシップ教育の教育プログラムづくりを推進するための三つのタイプ、一つ、中高一貫校の6年間、じっくりと時間をかけて起業家精神を育成するタイプ、二つ、大学の指導を受けながら一体となって学んでいくタイプ、三つ、スタートアップ企業や地域の企業とのつながりの中で実践していくタイプ、この三つのタイプの研究校はどこになるのか。
【理事者】
アントレプレナーシップ教育のプログラムづくりの三つのタイプのうち、一つ目は、半田高等学校と附属中学校において中高一貫校の6年間で起業家精神を育成するタイプ。二つ目は、豊明高等学校において、藤田医科大学の指導を受けながら一体となって学んでいくプログラムを開発するタイプ。三つ目は、スタートアップ企業や地域の企業とのつながりの中で実践していくタイプだが、これは瀬戸地区にある県立4校の瀬戸高等学校、瀬戸西高等学校、瀬戸北総合高等学校、瀬戸工科高等学校を一つのグループとして、地域の企業等と連携して開発と実践を進めていく。
【委員】
それぞれ非常に特徴があって、興味深い取組になっていくのではないかと思う。特に私が注目しているのは、三つ目のプログラムである瀬戸4校の取組である。瀬戸高等学校、瀬戸西高等学校、瀬戸北総合高等学校、瀬戸工科高等学校の4校は、それぞれ学校の立ち位置が異なる。瀬戸高等学校は伝統校の一つであるし、瀬戸西高等学校は昭和の新設校として、ある意味で規律・規範で鍛えた学校の一つ、そして瀬戸北総合高等学校は総合学科、瀬戸窯業高等学校であった瀬戸工科高等学校は工業高校、それぞれ全く違う立ち位置にある高校が、エリア全体でこのアントレプレナーシップ教育をやっていく。瀬戸市というエリアを活用し、隣接する愛知県立大学でインキュベーション施設が出来上がり、スタートアップの卵となる場所もある。子供たちはここでロールモデルをそこで見ることができるため、極めて面白い取組になっていると思う。今回、私立学校の無償化の話の中で、公立学校が沈没するのではないかと言われているが、県立高校は魅力化をずっとテーマにしてきた。その魅力化をエリア全体で、異なる学校種が協力して行う新たなモデルをつくろうとしている。公立高校もこの大きな流れの中で変わっていかなければならない。このアントレプレナーシップ教育に大きく期待し、今の三つのモデルについても、今後、見守り、サポートしていきたい。
さきの本会議における私の議案質疑において、スタートアップ支援事業費を活用して小中高生を対象とした起業家育成プログラムを教育委員会と連携して一層進めるという答弁を経済産業局はした。県民文化局は、県立大学インキュベーション施設の話を教育委員会と連携すると言っていた。つまりこのような取組と教育委員会のモデル事業がうまく連携して進めば、将来、本県で次々と高校生起業家が誕生することが期待される。
そこで伺うが、高校在学中に起業を目指す生徒が出てきた場合、学校はどう支援していくのか。
【理事者】
県立高校においては、今後、先ほど答弁したプログラムを活用しながら起業家精神を育成し、その過程で起業を目指したい生徒が生まれてくることを期待している。在学中に起業しようとする生徒には、起業家や起業を目指す人とつながり、支援を受けられるよう、STATION Aiや県立大学の長久手キャンパス内に2027年度完成予定のインキュベーション施設、また、地元の商工会議所の起業家セミナーなどを紹介し、生徒の意欲を後押ししていく。
【委員】
今、高校生の起業家を支援していく話があったが、先般の中日新聞の県内版には、耳につけないイヤリングを発明し、小学校6年生で会社を設立した中学生社長の記事が掲載されていた。彼女は起業から約2年で約500万円、1年間で約250万円の売上げを達成し、これは非常に立派である。しかし、危惧するのは、アルバイトや有償ボランティアと高校生の起業との関係である。県立学校の中の多くは、アルバイトについて、あまり積極的ではない学校の先生もたくさんいる。そうした中で、多様な立ち位置の学校で起業家が生まれたときに、しっかりと後押ししないとその子たちは育たないのではないかと心配している。そのため、今どう支援していくかを質問した。小学生、中学生から社長が生まれる時代になってきていることは事実である。その上で、愛知県内では、教育委員会、経済産業局、県民文化局が連携を密にしてそういう人材を生み出そうとする、そういうスキームができ始めている。そういう時代であるので、まさに教育委員会が目指しているチェンジ・メーカー、また、愛知県が推進するスタートアップ、新しい産業の創出を考えると、県立学校でしっかりとそういう子供たちを生み出す支援を、また教育をきちっとやっていくことが最も重要だと思う。
【委員】
先ほど委員もICT教育についていろいろ質問し、今は委員からアントレプレナーシップについて質問があった。これはひとえにICT、IT、AIに関することである。これほど教育界でITに関する議論がされることは大変よいことである。
もう5年前になるが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、人と人との出会いができない状況になった。学校も行けず、リモート教育が導入されることになり、国がGIGAスクール構想を前倒しして小中学校にタブレットを1台ずつ提供することになった。我々自由民主党愛知県議員団は、これは大変なことだから、ハードウェアもよいがソフトウェアが必要だといろいろ検討し、リクルートのスタディサプリがよいだろうと考え、導入してもらった。
それを受けて我々は、格差があってはいけないと、その分、補助金をつけてほしいと働きかけ、一挙に高校にタブレット端末が配布された。
これからはITからAIの時代になった。先ほど校内の多忙さ、ブラックだという話があった。確かにそうである。しかし、ITやAIでデジタル化すると負担が少なくなる。そして、保護者もいろいろな要求をしてくるが、保護者との時間が取れるようになる。分析や評価などはみんなコンピューターにやらせればよい。私は、今、愛知県の教育委員会は日本でも一、二だと思う。このきっかけをつくったのは教育長だということで、感謝する。
これからはAIの時代である。2年前のチャットGPT、生成AIが誕生してから一挙に日本の失われた30年を取り戻すチャンスが来た。ユーチューブで正月に見たが、エヌビディアのジェンスン・フアン社長とソフトバンクの孫正義氏が会談していた。チャットGPTの基礎技術は日本の技術であり、それを組み合わせただけだと言っていた。日本はAIを活用できる名操縦者をつくる下地がある。工場はほとんどロボットになる。ロボットで、AI同士が情報交換してできたデータを人間が分析しどのような製品をつくるか、サービスをするかという時代になる。
そういう時代になる中、私も長年、教育・スポーツ委員会に所属してきたが、30年前とそう変わっていない。普通科高校への進学が7割で、ほとんどの子が一般の大学に行く。企業は即戦力が欲しいのに、困ることになる。何が言いたいかというと、AIを使って学び直しすることである。高校生は最初から学力に差がある。記憶力がよいとか偏差値が高いのも一つの才能だが、それが全てではない。美術で絵が上手な子もいれば、体育が上手な子もいる。千差万別である。その子に目的を持たせ、それに見合う勉強をさせ、将来はこういう人になりたいと夢を持たせることが重要である。その芽が出ているのは総合学科、総合高校であり、うまくいっている。私はいつも南陽高等学校の話をするが、現役で筑波大学や静岡大学といった国立大学へ進学した。目標を持っているからである。これからの教育は、教員の在り方を見直さなければならない。教員はファシリテーターである。タブレットを持っているので、テーマさえあれば、いろいろなアプリが活用できる。そのアプリを見ながら勉強する。
私は、佐賀県武雄市に行き、小学校4年生の社会科の授業を参観した。
地震が起きたらどう対処するか、どういう行動をすればよいかを子供たちに考えさせる。発表の日には35人ぐらい全員が手を挙げる。みんなで話し合って、自分たちがどうするか分かっておりディベートみたいになっていた。これはすごいと思った。もはやそういう時代である。
AIはそれぞれの習熟度に合わせたアプリがたくさんあるため、中学校の授業が分からない子には中学校の内容をやらせればよい。ある私立大学に行ったら、既にやっているそうである。不得意な面をAIでやらせたら、理解が進み生徒がやる気を取り戻していた。子供の仕事は勉強であるため、勉強が面白かったら一生懸命学校に行く。勉強が面白くないのは、真ん中の層に照準を合わせているからである。勉強ができる子が物足りなくて塾に行く、勉強ができない子は放置される。それはストレスがたまる。ちょっとしたことで先生や友達同士でけんかをする。そこからいじめ等が起こり、結果として不登校になる。教員の在り方そのものが問われる時代になっている。子供がいかに勉強するかという、雰囲気をつくることが教員の役目であると考える。教育長の意見を伺う。
【理事者】
昨年の今頃は、AIに対してまだ少し疑わしい印象があったかもしれないが、この1年で大きな進歩を遂げ、今では生活の様々な場面に浸透している。委員が話したとおり、教育の中でもAIをしっかりと活用していく必要があると、私たちも真剣に取り組むべきだと感じている。学校ごとに少しずつ成果が見え始めている。
安城南高等学校や犬山総合高等学校では、生成AIを使って、自分たちでプログラミングしてアプリを作る芽が出てきているので、教育委員会がやらなければならないのは、それをいろいろなところに教えていく活動である。これはしっかりやっていこうと思っている。また、委員が言った学び直し、またそれぞれの習熟度に応じた学びだが、まさに生成AIを使った学習アプリが有効だと思っている。各社がいろいろ出してきているので、そういったものを積極的にこれから使っていこうと思っている。
現在、県立高校の中でも、委員の地元である南陽高等学校が生成AIを使い始めている。特に数学において効果が出ているという話もあり、天白高等学校も積極的に取り組んでいるため、今後さらに力を入れていかなければならないと思っている。そして、先日視察した春日井市立高森台中学校について、私が特に印象的であったのは、授業のスタイルがこれまでとは大きく異なっていた点である。授業が始まる前に、ホワイトボードに教員が今日の目的を表示し、教科書や副読本のどの部分を扱うかが明示されている。そして、先生はポイントだけを教え、その後は生徒たちが習熟度別に学び進めるスタイルである。
その後は、まさに委員が言ったように、優秀な生徒や進度の早い生徒は、自分で勉強を進め、他の生徒たちに教えることもある。一方で、もう一度確認したい生徒は教科書を見直し、さらに詳しく知りたい生徒は貼り付けてある動画を見直して学んでいる。先生は、つまずいている生徒に個別に対応していた。こういったスタイルについて先生に聞いたところ、実はこういった教育をやりたかったと言っていた。従来の授業では、全体を一度に見るため、どうしても真ん中の生徒に合わせることが多く、本当に目を配りたい生徒に十分な時間を割けないという悩みがあったと言っていた。このような取組を我々も進めていかなければならない。
そして、春日井市立高森台中学校の取組を指導した春日井市教育委員会の水谷年孝教育DX推進専門官には、県でしっかりと指導してもらえるようお願いしており、今、一生懸命アプローチをかけているので、県の教育にも関わってもらえることを期待している。
AIによって学びの形が大きく変わった。教育現場で子供たちが迷わず、先生たちもスムーズに対応できるよう、しっかりとサポートしていくことが我々の役割だと思う。この意気込みを持って教育委員会として前進していきたいと思うので、引き続き指導してもらいたい。
【委員】
教育・スポーツ委員会の県外調査で、苅田町立新津中学校の校長がAIに関心があるということで調査に行った。そこでは文部科学省から伴走者の派遣を要請し、大学教授が来たこともあった。最初は先生にAIの活用を提案していたが、たまたま修学旅行の時期でもあったことから、中学生に生成AIで修学旅行の計画をする運びとなった。中学生たちは予約からルートまで全てを企画し、先生も巻き込んで見事にやり遂げた。旅行業者の投資マージンに匹敵するほどの成果を上げた話を聞いた。その中で、何で春日井市の高森台中学校に生成AIの活用で有名な水谷年孝教育DX推進専門官がいるにもかかわらず、視察に来たのかと言われた。そこで県内調査で高森台中学校に行ったわけである。だから、ぜひ水谷年孝教育DX推進専門官に県の教育現場における生成AIの活用について指導をお願いしたい。ほかの理事者においても、教育長が先鞭をつけてくれたので、これを継続して、さらにバージョンアップしてもらうよう要望する。
【委員】
教育長が今年度末をもって退任する。就任した2022年度は、コロナ禍で教育活動が制約される困難な状況にあったが、教育長は、今までにない革新的なアイデアで様々な課題に取り組み、今まさに愛知の教育が変わろうとしていると実感している。教育長は、この3年間、どのような思いで愛知の教育改革を進め、また、この改革をどのように引き継いでいくのか伺う。
【理事者】
教育長としてこの3年間、愛知の学びの変革に取り組んできた思いを答弁させてもらう。
県立高校の全日制の進学率は年々低下している。今年度の欠員は1,984人であったが、何とか2,000人を切った。それでも、2021年から2023年までの3年間は2,000人を超える欠員が続いた。これは単に子供の数が減っているだけでなく、県立高校が子供たちに選ばれていないと感じた。子供たちにぜひ県立高校で学びたいと思ってもらえるようにするため、県立高校のアップデート、つまり愛知の学びの変革を進める必要があると考えた。
その中心となったのが、三つのプロジェクトである中高一貫校、フレキシブルハイスクール、そして夜間中学である。今年と来年の2週間で、中高一貫校11校、フレキシブルハイスクール4校、夜間中学4校の19校が一気に開校する。この三つのプロジェクトの狙いは、子供たちの選択の幅を広げ、自分の目指すものや居場所づくりなど、自分の学びたいスタイルを選べるようにすることが大きな目標であった。特に中高一貫校の明和高等学校、津島高等学校、半田高等学校、刈谷高等学校の附属中学4校には、多くの子供たちが入学希望を寄せてもらった。子供たちや保護者からの関心の高さ、期待の大きさをひしひしと感じた。その期待を超える圧倒的に質の高い学びを提供し、子供たちが笑顔で伸び伸びと自分の関心や興味を追求し、可能性を無限に広げていけるアクティブな学びを実現したい。子供たちには生きる力、共感力、他者へのリスペクト、そして想像力、イマジネーション・アンド・クリエイティビティー、そういったものにあふれるチェンジ・メーカーになってほしいと心から願っている。
このアクティブな学びは、子供たちがグローバル化や、そして情報化の波をサーフィンのように乗りこなしながら、そして誰とでも国境を超えて当たり前に付き合える、そんな人間力またはコミュニケーション力をつけていく、そんな学びであってほしいと思っている。学校の早い段階から、触れる、慣れる、使う、そういったものでステップアップし、英語で英語を学ぶ授業を軸に、学校生活のあらゆる場面で英語があふれる環境づくりをしていきたいと思っている。中高一貫校と地元の小学校を英語でつなぐ、英語で一緒に学び、遊び、そして行事を行うといった、シームレスなラーニングに取り組み、特に国際バカロレア校においては、毎日、英語のシャワーの時間を設けるなど、英語で考え、そして英語でコミュニケーションができる、これを目標にしていきたい。そして、それをアントレプレナーシップ教育にしっかりとつなげていきたい。
そして、もう一つ重要だと思っているのは、早い段階からのキャリア意識、職業観を育てることである。
産業界からの高卒採用へのニーズは大変大きく、多くの工業高校では10倍、そして20倍を超える求人をもらっている。しかしながら、その求人に十分に応えることができず、産業人材を生産現場にきちんと輩出することができていない状況にある。その一方で、職業学校、高校への入学希望は大変低くて、大きく定員を割り込んでいる学校もある。まさに進路と職のミスマッチが起こっていると感じている。もっと早い段階から将来職に就く意識をきちんと育てて、そして、そのために何をどこで学ぶことがベストな選択なのかを、子供たち、そして何より保護者に考えてもらえるような学びを実践する産業教育へアップデートしていかなければならない。小中高を通じたシームレスなキャリア教育、まさに現場を支える仕事の質の高さ、またはやりがい、そして環境のよさを実体験できる機会をもっとつくっていきたいと思っている。将来の夢や希望を持たずに、取りあえず普通科高校、そして大学へ進学といった、そんな進路選択はなくしていきたい。
そして、職業高校では、様々な職業スキルを学びながら専門分野を決めていける仕組みや、総合学科の良さを取り入れたり、近隣の職業高校がグループを組んで授業を選択して受けたり単位認定を行うなど、フレキシブルな仕組みづくりを進めていかなければならない。
急速に子供たちが減っていく15年から20年先をイメージしながら、県立高校の全体を子供たちに選ばれる県立高校にしていかなければいけないと思う。各校が子供たち、そして保護者から何を期待されているのか、そして、その期待にきちんと応えられているのかを、いま一度、じっくりと考えて、各校の売りを明確にして、子供たちの心に刺さる県立高校にアップグレードする、そういった出口戦略をつくっていかなければならない。
この3年間の愛知の学びの変革で積み重ねてきた思い、そしてそのスピリッツを後任の教育長にもしっかりと引き継ぎ、さらに前へ進めていきたい。今後とも、この愛知の学びの変革への力強い支援をもらいたい。