戦争遺跡の保存・継承についての意見書 戦後80年を迎え、戦争の体験談を直接聞くことが困難となる中、戦争遺跡は、戦争の記憶を後世に伝える場としての役割が重要となっているが、所有者の意向による取り壊しや開発による撤去、経年劣化などにより、消滅の加速が危惧されている。 戦争遺跡の保存・継承は各地方自治体がそれぞれの実情に応じて取り組んでおり、本県では、戦争遺跡についての現状調査を行い、適切な保存・継承に向けた対応を検討しているところである。 しかし、国において戦争遺跡の明確な定義や保存方針がなく、地方自治体には、所有者に対して遺跡の保存を求める権限がないことや、老朽化に対応する工事に多額の費用を要することなどから、保存が困難となっている。 平和の尊さを理解し、戦争の悲劇を繰り返さないためにも、戦争遺跡を通じて、戦争の悲惨さを若い世代が感じ取ることができるよう、地方自治体や所有者等が適切に保存・継承できる環境を整備することが求められている。 よって、国におかれては、戦争遺跡の保存・継承を図るため、下記事項について特段の措置を講じられるよう強く要望する。 記 1 戦争遺跡を適切に保存・継承していくため、国による定義を定めるとともに、保存方針及び保存対象を明らかにすること 2 地方自治体等が戦争遺跡の保存・継承を円滑に行うことができるよう、取組事例を紹介するほか、管理や修理、公開などの取組に対して必要な財政支援を行うこと 3 やむを得ず遺跡を解体する場合は、資料として後世に継承されるよう、移転や記録保存に向けた取組の支援を行うこと 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 令和7年3月24日             殿 愛知県議会議長     直江弘文 (提 出 先)     衆議院議長      参議院議長     内閣総理大臣     文部科学大臣     文化庁長官