公訴時効の撤廃及び延長に向けた法整備についての意見書 公訴時効制度の根拠は、時の経過とともに証拠が散逸し、訴追が困難になることや、社会一般の処罰感情が希薄化することなどにあるとされているが、殺人罪などの重大犯罪であっても、時効が完成すれば罪に問われなくなることに対して疑問の声が高まったことを受け、平成22年に刑事訴訟法が改正された。 改正法では、強盗殺人罪、殺人罪等は公訴時効が撤廃され、傷害致死罪や自動車運転過失致死罪等は公訴時効の期間が倍に延長されるなど、被害者が死亡した事件については、より長く捜査できる環境となったが、一方で、被害者が重篤な障害を負いながらも死亡に至らなかった犯罪は、凶悪なものであっても、公訴時効見直しの対象とならなかった。 このため、衆議院での附帯決議において、人を死亡させた犯罪以外の犯罪について公訴時効を含めた処罰の在り方について更に検討していくとされたところである。 また、救護措置義務を果たさず被害者を死亡させたひき逃げ事件や、被害の申告が困難な未成年への性犯罪の公訴時効のあり方についても、被害感情や実態に即した議論が求められている。 凶悪犯罪の未然防止には、加害者の逃げ得を許さない制度設計が必要であり、世論や被害者・遺族らの感じる理不尽さに鑑み、公訴時効のあり方について早急に改めて検討すべきである。 よって、国におかれては、公訴時効の撤廃及び延長に向けた法整備を図るため、下記事項について特段の措置を講じられるよう強く要望する。 記 1 被害者が重篤な障害を負った凶悪・重大な殺人未遂事件等の公訴時効について、撤廃を含めて再検討すること 2 重大な死亡ひき逃げ事件における公訴時効の撤廃や、未成年者が被害者となる性犯罪における公訴時効の更なる延長等について、議論を加速させること 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 令和7年7月8日            殿 愛知県議会議長     川嶋太郎 (提 出 先)     衆議院議長         参議院議長     内閣総理大臣        法務大臣