居住施策に関するアンケート調査

氏   名 田中 英紀
所属・役職 中部大学工学部建築学科・准教授
専門分野 建築環境設備

愛知県の住まい・まちづくりを取り巻く状況について、それぞれの専門の分野から、特に注目している現状と今後重要となってくる課題についてのお考えをお聞かせください。

自然環境・社会環境・技術環境等の変化がとりわけ著しい時代にあるが、特に省エネルギー法の大幅改正やエコまち法の新たな施行、国等の支援措置など、低炭素・循環型社会の構築に係る政策がこれまでにも増して積極的に推進され、またCASBEEなど住まいを含む建築物や建築群の環境総合性能評価システムが徐々に社会に浸透し、地方自治体はじめ様々なシーンで活用されている現状に注目している。
上記の法規や評価システムで対象とされる評価項目群は、今後の住まい・まちづくりにおける、防犯や防災対策を含めた安心・安全性、耐久性、利便性、衛生・健康・快適性や豊かさの向上、化石燃料使用抑制や自然共生などに対する肝要な視点を具体に示すものであるため、これらの視点をより多くの人々に認識・浸透させ、質の高い建築ストックやまちなみの形成を実現してゆくことが重要である。
また、今後は建築物や地域における自然災害等への危機管理のありかた、その建築的な備えと平常時の活用方法、個人および建物単体と地域規模で対応するものの役割分担などが課題となる。
キーワード 低炭素・循環型社会の構築、質の高い建築ストック、自然災害への備え

上記の課題解決のために推進すべきと考える住まい・まちづくりに関する取組みについてのお考えをお聞かせください。

質の高い建築ストックやまちなみ形成を実現してゆくために、建物単体の性能向上への努力もさることながら、住まいやまち(街区)の美や魅力づくりに注力し、住まい・まちに対する人々の愛着、誇り、憧れなどの付加価値創出によって、既存住宅ストックの流通量増加や既存街区の空洞化等への対策を積極的に推進していくことが重要である。また、この過程においては、都市の空洞化や少子高齢化の問題に柔軟に対応すべく、既設建築の減築やリノベーションなどの建築的な対応ならびに、これまでの資本や土地の効率的活用を主眼とした開発でなく、物質以外のものに価値を見出す(演出できる)、住まい・まちづくりに力点を置いてゆくことも重要である。
この様なまちづくりでは、新興住宅地の開発や既設街区の再開発や区画整理などに合わせて、自治体も深く関与しながら、自転車・歩行者専用通りと車道の明確な分離(子供の遊び場、散歩道を兼ねた自動車の進入のない通りの形成)や、これに合わせて住民で管理する共同連続緑地帯の配置なども考えられるであろう。
また、低炭素な循環型社会の構築に対する個人やコミュニティの取り組みや地域的な自然災害に対する備えの促進に対しては、その努力が個人やコミュニティに対して報われるような、報奨的な社会活システムが構築されることも非常に重要な課題であると考えている。
キーワード 魅力づくり、既設建物の減築、リノベーション、住宅地の車道分離、報奨的社会システム