居住施策に関するアンケート調査

団体名 公益社団法人 日本建築家協会東海支部愛知地域会
役職・氏名 地域会長 鈴木 利明
専門分野 建築設計(~地域計画)

愛知県の住まい・まちづくりを取り巻く状況について、貴団体での取組みの経験やそれぞれの専門の分野から、特に注目している現状と今後重要となってくる課題についてのお考えをお聞かせください。

  私たち日本建築家協会(JIA)は個々の建築家の職能集団として、広範な建築・地域形成に大きな視座に立ちますが、日常の実践は場所と人に根差すべきことをよく自覚しています。その意味では、その東海支部愛知地域会(JIA愛知)はまさに当地で先端活動する建築家集団です。今回の「愛知県の住まい・まちづくり」の観点について、団体総意のお答えは難しく(「住宅研究会」など分化されたチームはありますが、)地域会長個人のご回答といたします。
 私自身は全国的組織事務所に属し、実務的には公共建築物や高層ビルなど非住宅・大規模案件が多いのですが、建築の土着性ゆえ出身地・愛知にこだわって活動してきましたし、建築の原点が「住まい」にあることは学生時代から信奉しています。お問いかけのテーマの「現状と課題」について考えるところを、まず、以下にざくっと列記します。(次項でやや情趣的に詳述します。)
 愛知県下は土地・環境事情に比較的恵まれ郊外一戸建て志向が強いが、近年、医療・文化など生活利便性から都心居住もニーズ急増 / 永住の持ち家での可変性追求か積極的住替えか、いずれ、ライフスタイル・ライフステージへの対応性の重視 / 圧倒的なストック(含:再生配慮)に提起型フローの付加 / 環境負荷軽減と自然享受への回帰 / コミュニティ意識の再興 / ・・・
キーワード 郊外一戸建てか都心集住か 、 永住か住替えか、 ライフスタイル・ライフステージ、 ストックとフロー 、 環境共生・循環社会、 コミュニティ意識

上記の課題解決のために推進すべきと考える住まい・まちづくりに関する取組みについてのお考えをお聞かせください。

 私は実は、わが愛知の愛すべき「田舎性」とともに住まう天賦の叡智を敬服しています。県都の大都市・名古屋が「偉大なる田舎」と称される? のはとても名誉なことだと受取るべきです。「住まいとまち」も喜々としてその好立地に根差し、より磨きをかけるのが最善かと考えます。
 建築界でも近年とみに重視される地球環境問題からも、既存ストックのリニューアル改善志向はもとより、新たなフローはスペースや安全性にゆとりのある長寿命建築を目指すべきですし、ライフサイクルを意図したフレキシブルなインフィル更新を最大限に配慮するべきです。
 少子・高齢化などの人口動態からも、安心して暮らせて日常交流や共同意識を育む住まい環境を再興することが一層肝要な時代かと感じます。郊外型コミュニティではもちろん、都心型高密集住環境でもなお、やさしく力強くこうした視点での施策推進を期待します。
 かつて一世を風靡した県下の「高蔵寺ニュータウン」も、当時の新入市民が世代代り・流出し建物も老朽化して、急激な「まち」の活性後退が問題化しています。東京の多摩も大阪の千里も、鳴り物入りの大施策「ニュータウン」は「住まいとまちづくり」の本来的なお手本にはなりえませんでした。
 知を愛するわが愛知は、温故知新的な、地に足の着いた地域社会醸成型のお手本をじっくり示すことを期待してやみません。
キーワード 愛すべき田舎性の享受と発信、 ゆとりある長寿命建築と経年フレキシビリティ、 安心・安全と心地よさを育む地域社会施策