居住施策に関するアンケート調査

団体名 NPO法人 レスキューストックヤード
役職・氏名 代表理事 栗田 暢之
専門分野 災害救援NPO、地域防災、災害時要援護者

愛知県の住まい・まちづくりを取り巻く状況について、貴団体での取組みの経験やそれぞれの専門の分野から、特に注目している現状と今後重要となってくる課題についてのお考えをお聞かせください。

これまで主に日本国内の自然災害の現場約35カ所で支援活動を展開してきた。地震・噴火・水害などの災害種別やその規模・範囲、都市部・郡部等の社会環境によって被害の状況は大きく異なるが、いずれも「災害に強いまちづくり」に対するハードによる対策の限界を痛感させられる。それは例えば世界一を誇る防潮堤を軽々乗り越えた津波や時間雨量100ミリを超えるような豪雨が山間部の裏山の土砂崩れを起こし、都市では行き場を失った雨水が一気に内水氾濫を引き起こす状況からも明らかである。特筆すべきは、今後も豪雨は増加傾向にあること、また南海トラフ巨大地震が懸念されているなど、災害に強いまちづくりは喫緊の課題であることにある。そこで重要になってくるのは「災害に強いひとづくり」などのソフト対策である。ただし単に住民の防災意識を高めるということでは極めて不安定であるため、必要なハード対策とソフト対策を連携させた施策が重要だと考えている。東日本大震災から2年半が経過し、せっかく日本全体が災害に対しての関心が高まっているにもかかわらず、なかなか有効な手段が見受けられないのは、自戒を込めて大いに課題があると感じている。
キーワード 今後も災害は増加する、ハード対策とソフト対策の連携

上記の課題解決のために推進すべきと考える住まい・まちづくりに関する取組みについてのお考えをお聞かせください。

全国各地の被害状況を鑑みた時、被害は起こるべきところに起こっている。つまり、軟弱な地盤や急傾斜地のすぐ下、住宅等密集地や古い木造家屋、超高層ビルなどの被害が顕著なことが代表的な例である。そこで、まずは住民自らが住む地域のハザードを理解し、起こるべき被害についての現実をまずは知ることが大切である。そこで必要なハード対策を施し、ただしそれにはおのずと限界があることを認識したうえで、自らも必要な対策や避難について考え、それをその地域社会全体で共有することが重要だと考えている。これは当たり前のことではあるものの、現段階においてはハードもソフトも対策がバラバラな状態にあり、一貫性や目的意識の共有に乏しい。住民、行政はもとより、建設業、コンサル業、災害救援NPO、有識者などの関係者が総合的な視野から災害に強いまちづくり・ひとづくりが実績できる事業モデルを創出する必要があると考えている。また、南海トラフ巨大地震を強く意識し、向こう10年間程度はその対策を強力に推し進める決意を県あげて表明する必要がある。またそのターゲットは、この災害に必ず遭遇する若い世代としたいが、自主防災組織に代表される地域の防災リーダーは高齢者に偏っている。学校、企業、労働組合、PTA、JC、青年団などを巻き込むことも重要だと考えている。
キーワード ハザードの理解、事業モデルの創出、若い世代