愛知県土壌汚染等対策指針の概要

第1 趣 旨

 県民の生活環境の保全等に関する条例(平成15年愛知県条例第7号。以下「条例」という。)第38条第1項の規定に基づき、土壌及び 地下水の特定有害物質による汚染の状況等の調査並びに土壌及び地下水の特定有害物質による汚染により人の健康又は生活環境に係る被害 が生ずることを防止するために講ずべき措置に関する指針を定める。


第2 土壌又は地下水の特定有害物質による汚染の状況等の調査

  1 過去の特定有害物質等取扱事業所設置状況等調査 (第39条の2第1項)
 土地改変時における過去の特定有害物質等取扱事業所の設置状況の調査は次のとおり実施する。また、土壌汚染対策法に定める 指定調査機関(環境大臣が指定)に実施させることが望ましい。

  過去の特定有害物質等取扱事業所設置状況等調査(履歴調査)の概要
届出者 調査義務の対象となる
土地の形質の変更
調査内容
土地の形質の変更を行おうとする者 土地の形質の変更の部分の面積が3,000m以上(水質汚濁防止法に規定される特定施設で特定有害物質を使用している事業場等の敷地においては、900u以上)であるもの (1)土地の利用履歴を過去の地図、航空写真、登記事項証明書等により、過去の特定有害物質等取扱事業所の設置状況等について把握する
(2)過去の特定有害物質の使用、排出等の状況を当該事業所を設置していた者等への資料の閲覧依頼や聴取り等により把握する
(3)特定有害物質等取扱事業所以外の土地の使用履歴や過去の調査結果、その他汚染のおそれの有無を推定するために有効な情報についても把握する

  2 特定有害物質等取扱事業者及び土地の形質変更を行う者が行う汚染の状況の調査
 条例第39条各項及び第39条の2第2項の規定により行う汚染の状況の調査(概況調査)は次のとおり実施する。概況調査は、土壌汚染対策法に定める指定調査機関(環境大臣が指定)に実施させることが望ましい。
 また、自主調査を行おうとする者は、概況調査に準じて行うことが望ましい。

 (1)調査の対象となる特定有害物質及び土地

  特定有害物質等取扱事業者 土地の所有者等 自主調査を行う者
第39条第1項、
第2項
第39条
第3項
第39条
第4項
第39条の2
第2項
第45条
第1項
特定有害物質 取り扱い又は取り扱っていた特定有害物質 知事から報告を求められた特定有害物質 汚染のおそれのある特定有害物質
土地(以下「調査対象地」という。) 特定有害物質等取扱事業所が設置されている土地 知事から報告を求められた土地 自主調査を行おうとする土地

 

 
自主調査の場合の調査対象物質は、履歴調査に準じ調査を行った結果、汚染のおそれがあると認められる特定有害物質とする。なお、履歴調査の実施が困難な場合は、土地を代表する1以上の地点で調査した結果により選定してもよいとした。

(2)調査対象地の区分
 調査対象地を容易に入手できる範囲で汚染のおそれを推定する有効な情報により、3種類(@汚染のおそれがない(山林、グランド等)、A汚染のおそれが少ない(事務所、倉庫等)、 Bその他(特定有害物質等の使用施設及びそれを設置している建物等))に区分する。

(3)調査方法
特定有害物質 第1種特定有害物質
(揮発性有機化合物)
第2種特定有害物質
(重金属等)
第3種特定有害物質
(農薬等)
分析内容 土壌ガス調査
土壌溶出量(土壌ガス調査で検出された場合)
土壌含有量及び土壌溶出量 土壌溶出量
試料採取地点 100m(単位区画)に1地点で調査地点を選定(ただし、汚染のおそれが少ない区域→900mに1地点、汚染のおそれがない区域→調査地点なし)
試料採取方法 土壌ガス調査は、地表から概ね1m下のガスを採取し測定 土壌含有量及び土壌溶出量は、汚染のおそれが生じた位置(不明な場合は地表)から深さ50cmまでの土壌を採取し測定


第3 土壌又は地下水の特定有害物質による汚染の拡散防止のための応急の措置

 条例第40条第1項から第3項の規定による土壌又は地下水の汚染の拡散の防止のための応急措置は、汚染土壌の飛散防止や、雨水により有害物質が溶け出し地下水の汚染が生じさせないようにするため、必要に応じ次の措置を実施する。なお、条例第45条第1項の規定による報告を行う場合についても、必要に応じ応急措置をすることが望ましい。

  応急の措置
1 土壌溶出量または地下水基準に適合しない場合
 (1)不透水シート、アスファルト舗装等による雨水の遮断
 (2)土壌・地下水等のモニタリング
 (3)周辺飲用井戸管理者への通報・周知
 (4)遮水壁の設置及び地下水揚水による汚染の拡散防止
 (5) その他必要と認められる事項
2 土壌含有量基準に適合しない場合
 (1)シート等による汚染土壌の被覆
 (2)防風ネットの設置
 (3)立入禁止柵の設置
 (4)種子吹付け工等の植栽工による基準不適合土壌の被覆
 (5) その他必要と認められる事項


第4 土壌又は地下水の特定有害物質による汚染除去等の措置

 条例第41条第1項の規定による土壌又は地下水の汚染の除去、汚染の拡散の防止その他必要な措置(以下「汚染の除去等の措置」という。)を定めた土壌汚染等処理計画書の作成に必要な事項について、次のとおり定め実施する。

  1 汚染の状況
 基準不適合土壌の存在する範囲(平面範囲及び深さ)並びに地下水の汚染の状況を確認するための調査(以下、「詳細調査」という。)を次のとおり実施する。

    詳細調査の概要
詳細調査の対象となる特定有害物質 知事から措置を命じられた特定有害物質
詳細調査の対象となる土地 知事から措置を命じられた土地
調査地点及び調査深度 (1)調査地点は、原則として、汚染の除去等の区域が適切に設定できるよう概況調査の結果を考慮し単位区画ごとに設定
(2)調査深度は原則として10mとする。ただし、10m以内に帯水層の底面がある場合は、当該底面より深い位置を除く。
 なお、基準不適合土壌が存在する範囲が確認できない場合は、確認できるまでの深度とする。
(3)汚染のおそれが生じた位置及び当該位置から深さ5cmから50cmまでの土壌(第1種特定有害物質については深さ50cmの土壌)並びに深さ1m以上の深度について1mごとの土壌を試料として採取し、分析する。
地下水の汚染の状況 地下水は、汚染の状況を的確に把握できると認められる1地点以上で採取する。

 

 
土壌含有量基準に適合せず、舗装、立入禁止、区域外土壌入換え若しくは盛土のいずれかの措置を講ずるとき、又は土壌溶出量基準に適合せず、地下水汚染の拡大の防止若しくは地下水の水質の測定のいずれかの措置を講ずるときは、土壌の深度別の調査を省略することができる。
 
  2 汚染の除去等の措置を実施する区域
 汚染の除去等の措置を実施する区域(以下「処理区域」という。)は、詳細調査により確認された基準不適合土壌が存在する範囲とする。

  3 汚染の除去等の措置の方法
 実施する汚染の除去等の措置は、次の表に掲げる措置から汚染の程度を考慮し、適切な方法を選定して実施する。
 また、基準不適合土壌を処理区域外へ搬出する場合には、土壌汚染対策法第18条及び第20条の規定に順じ、適正に運搬及び処理されるように努めるものとする。

    汚染の除去等の措置
  実施すべき措置(汚染の程度及び土地の状況等により選定べき措置を規定している)
土壌溶出量に適合しない汚染状態にある土地
(地下水経由の観点からの措置)
○原位置封じ込め、○遮水工封じ込め、○地下水汚染の拡大の防止、○原位置不溶化、○不溶埋め戻し、○遮断工封じ込め、○土壌汚染の除去、○(地下水汚染が生じていないとき)地下水の水質の測定
土壌含有量に適合しない汚染状態にある土地
(直接摂取の観点からの措置)
○盛土、○舗装、○立入禁止、○土壌入換え、○土壌汚染の除去
地下水基準のみに適合しない汚染状態にある土地 ○地下水汚染の拡大の防止、○地下水汚染の除去


第5 土壌又は地下水の特定有害物質による汚染除去等の措置

 条例第40条第4項から第7項までの規定による土壌又は地下水の汚染の拡散を確実に防止する措置(以下「拡散防止措置」という。)を講ずるに当たり、必要な事項を次のとおり定める。

  1 汚染の状況
 詳細調査を次のとおり実施する。

    詳細調査の概要
詳細調査の対象となる特定有害物質 概況調査又は土壌汚染対策法の規定による調査において基準に適合していない特定有害物質
詳細調査の対象となる土地 拡散防止措置が必要である範囲の土地
調査地点及び調査深度 第4の表に掲げる方法により実施する
地下水の汚染の状況 第4の表に掲げる方法により実施する

  2 拡散防止措置を実施する区域
 拡散防止措置を実施する区域(以下「拡散防止措置区域」という。)は、詳細調査により確認された基準不適合土壌が存在する範囲とする。

  3 拡散防止措置の方法
 実施する拡散防止措置は、第4の3による方法又は次の方法を選定して実施する。
 また、基準不適合土壌を拡散防止措置区域外へ搬出する場合には、土壌汚染対策法第18条及び第20条の規定に順じ、適正に運搬及び処理されるように努めるものとする。

    汚染の除去等の措置
  実施すべき措置
調査対象となった土地である一連の周辺において地下水基準に適合しない地下水の汚染が生じていないとき 地下水の下流側の当該土地の周縁における地下水の水質の測定を選択できる
専ら自然的要因又は他の土地からの汚染された地下水の拡散により土壌溶出量基準又は地下水基準に適合していないと判断される特定有害物質に対しては、拡散防止措置の実施を要しないものとする。
また、土壌含有量基準に適合し、土壌溶出量基準に適合しない特定有害物質がカドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒(ひ)素及びその化合物、ふっ素及びその化合物並びにほう素及びその化合物のいずれかであり、かつ、調査結果の最も高い値が土壌溶出量基準の3倍以下である場合(土壌溶出量基準に適合しない土壌が地下水面から2m以上離れている場合に限る。)においては、拡散防止措置の実施は要しないものとする。


第6 リスクコミュニケーションの推進及び措置の期間中の環境保全対策

1 周辺住民に対し、次の内容について、説明会の開催や、ホームページへの掲載、報道機関への公表など、積極的に情報を公開する等のリスクコミュニケーションに努めるものとする。
(1)土壌・地下水の汚染の状況、(2)汚染が判明した経緯及び発生した原因、(3)汚染による健康リスク、(4)汚染の拡散の可能性及び地下水の汚染の可能性、(5)地下水の利用に当たっての注意、(6)既に講じた措置の内容及び今後の対策の計画、(7)対応体制及び問い合わせ先

2 周辺環境に支障を及ぼすことのないように、必要に応じ次の環境保全対策を実施する。

    環境保全対策
(1)粉じん防止対策、(2)搬出の際の運搬に係る飛散等防止対策、(3)排水・雨水等対策、(4)周辺の地下水位の低下等の影響防止、(5)騒音・振動・悪臭対策、(6)作業者への教育 等


   (参考)
    1 単位区画の設定
     単位区画の設定は、以下の方法により行う。
(1) 調査対象地の最北端の地点(磁北とし、複数ある場合は最も東にある地点)を起点として定める。
(2) 起点から東西方向及び南北方向に10m間隔の格子状に調査対象地を区画(単位区画)する(図1参照)


図1 一般的な単位区画の設定方法(参考例)

    2 単位区画の調査区分
具体的には、土壌又は地下水の汚染が存在するおそれで分類した土地に、設定した単位区画を重ね合わせ(図2参照)、各単位区画に含まれる汚染が存在するおそれの分類に基づき、単位区画を第一調査区分区画、第二調査区分区画及びこれら以外の単位区画に分類する。



図2 単位区画の調査区分