生活排水対策に関する基本方針

 県民の生活環境の保全等に関する条例(平成15年愛知県条例第7号)第83条第2項の規定に基づき、生活排水対策に関する基本方針を次のように策定し、平成15年10月1日から施行する。
  平成15年8月22日
愛知県知事 神 田 真 秋 

 近年、環境と人間のかかわりについて、新しい視点が求められるようになってきた。水は環境資源として決して無限のものではなく、後世と共有する貴重な資源であり、このため、水を健全に循環させ確保することが私たちの重要な課題である。
公共用水域における水質の汚濁は、工場等からの産業排水に対する規制が強化され排水処理対策の進んだ今日、台所や風呂・トイレなど日常生活に起因する生活排水が水の汚れの大きな原因となっている。
一方、私たちは暮らしの多くの場面で水を使い快適で便利な生活をしているが、水の恵みを受けるのは、人間はもとより地上の生きとし生けるものすべてであり、将来の世代により良い水環境を引き継いでいくことが必要である。
この基本方針は、このような認識のもとに、県民、事業者と県や市町村の行政が、公平かつ適切な役割分担のもとに、生活排水による公共用水域の水質汚濁の防止を図る施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的事項について定めるものである。

1 生活排水対策についての県民及び事業者に対する啓発に関する事項
 生活排水対策についての啓発を行うに当たっては、県民及び事業者が各々の役割を果たすため、多様な啓発事業により意識の高揚及び効果的な実践活動を促進する。

(1)県民運動の推進
 生活排水対策を県全体で取り組むため、生活排水対策活動の普及及び定着化に向けて、県民、事業者及び行政が一体となった県民運動を推進する。
 多様な啓発事業の展開
 生活様式の変化や価値観の多様化を背景に、日常生活に起因する水質の汚濁を防止する必要があることから、啓発の対象年齢層や地域の実情に応じた、講演会、学習会などの様々な啓発事業を展開する。
 「クリーン排水推進月間」等における啓発事業の実施
 生活排水による水質の汚濁を防止するため、水田からの落ち水などがなくなり、河川の水量が減って、身近な河川等で汚れが顕著となる10月を「クリーン排水推進月間」と定め、生活排水への関心を高めるとともに、公共用水域に排出される汚濁負荷量を減らす実践活動に向けた啓発を集中的に実施する。
 また、浄化槽の普及促進及び浄化槽法(昭和58年法律第43号)の周知を図るため、浄化槽法が全面施行された10月を「浄化槽強調月間」と定め、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換促進や浄化槽の保守点検など適正な維持管理について集中的に啓発を行う。
 年間における実施計画の策定
 県民運動を総合的かつ計画的に実施するため、毎年度の初めに実施計画を定める。

(2)県民に対する啓発
 生活排水は日常生活に起因し排出されることから、台所対策など実効ある生活排水対策を進めるため、県民一人ひとりの積極的な実践活動が求められている。
 実践活動の普及及び定着化
 発生源対策として生活排水からの汚濁負荷を削減するため、調理くずの適正な処理等の実践や地域における小川を守る活動など県民一人ひとりによる生活排水対策実践活動の普及及び定着化に向け、リーフレットなどの生活排水対策啓発資材を作成し啓発を行う。
 合併処理浄化槽の設置及び単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換促進
 下水道認可区域以外については、合併処理浄化槽の設置が浄化槽法により義務付けられ、既存の単独処理浄化槽について合併処理浄化槽へ転換するよう努力義務が定められていることから、設置及び転換を促進するための啓発を行う。
 浄化槽の適正な維持管理
 合併処理浄化槽は下水道と並ぶ生活排水処理施設ではあるが、その適正な維持管理を行わなければ所期の性能が発揮できないので、浄化槽設置者に対し、法定検査を受けるとともに、保守点検及び清掃を実施するよう啓発を行う。
 下水道整備地域における早期接続
 下水道の供用が開始された場合には、遅滞なく接続することが下水道法(昭和33年法律第79号)により義務付けられているので、速やかに接続するよう啓発を行う。
 農業集落排水施設等整備地域における早期接続
 農業集落排水処理施設等の供用が開始された場合には、早期接続が指導されているので、速やかに接続するよう啓発を行う。

(3)事業者に対する啓発
 すべての事業者は、生活排水による汚濁負荷量の低減を図るための製品の開発・製造及び行政が推進する生活排水対策への協力に努めなければならない。このため、事業者が企業としての社会的責任を果たし、自ら生活排水対策に取り組むよう啓発を行う。
 また、生活排水対策と密接な関係のある事業者に対しては、製品の開発・製造等について、積極的な協力を働きかける。
 浄化槽の製造業者、建築設計業者及び建設業者
 浄化槽の製造業者には、生活排水を適正かつ低廉に処理できる小型で、窒素及びりんの処理ができる高度処理型浄化槽の開発について、協力を働きかける。
 また、建築設計業者及び建設業者には、住宅等の建設工事を依頼する者に対する浄化槽の設置、維持管理等に関する情報の提供について、協力を働きかける。
 浄化槽保守点検業者及び浄化槽清掃業者
 浄化槽の保守点検業者及び清掃業者には、浄化槽設置者に対し浄化槽の適正な維持管理を実施することともに、法定検査の受検率の向上及び単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換について、協力を働きかける。
 洗剤の製造業者及び販売業者
 洗剤の製造業者及び販売業者には、生活排水の汚濁負荷の低減に有効な洗剤の開発及び供給について、協力を働きかける。
 日用品販売業者
 日用品販売業者には、生活排水対策に有効な製品の販売コーナーを設けるなどその普及及び販売促進について、協力を働きかける。
 ちゅう房機器製造業者
 ちゅう房機器製造業者には、流し台に附属するストレーナーなど、より効果的な規格の附属品の開発及び供給について、協力を働きかける。

(4)生活排水対策関係法令の周知
 生活排水を排出する者及び事業者には、次に掲げる法令に責務等が定められているので、その趣旨を啓発資料の配布やインターネットなどの広報媒体を利用して広く周知する。
 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)
・第14条の5(国民の責務)
・第14条の6(生活排水を排出する者の努力)
 浄化槽法
・第3条及び第3条の2(浄化槽によるし尿処理等)
・第10条(浄化槽管理者の義務)
 下水道法
・第10条(排水設備の設置等)
・第11条の3(水洗便所への改造義務等)
 県民の生活環境の保全等に関する条例
・第84条(生活排水を排出する者の責務等)
・第85条(生活排水の適正な処理)

2 市町村が実施する生活排水対策に関する施策の総合調整に関する事項
 生活排水対策は、上流・中流・下流域の市町村が連携して施策を行うことが重要である。このため、県は市町村が実施する生活排水対策のための施策の総合調整を行う。
 また、生活排水の排出による公共用水域の水質の汚濁を防止するために、生活排水対策の実施を推進することが特に必要である地域について、水質汚濁防止法に基づき「生活排水対策重点地域」の指定を行う。

(1)生活排水処理施設の整備の促進
 生活排水処理施設の整備については、下水道、農業集落排水処理施設、浄化槽等の施設整備を県内全域にわたり効率的かつ計画的に進めるため、地域の実情などを踏まえた各市町村の計画を基に策定した、「全県域汚水適正処理構想」に基づき、生活排水処理施設の適正な整備の促進を行う。

(2)市町村における生活排水処理施設整備に関する協力・支援
 市町村における生活排水対策推進計画等で定められた、生活排水処理施設の整備について、必要な協力及び支援を行う。

(3)生活排水対策重点地域を有する市町村間における調整及び協力・支援
  生活排水対策重点地域を有する市町村にあっては、当該市町村における生活排水対策推進計画に定められた、生活排水処理施設の整備、生活排水対策に係る啓発その他の必要な事項の実施について、必要な連絡調整及び協力・支援を行う。

(4)市町村に対する技術的支援及びその他の支援
  市町村におけるその他の生活排水対策事業を促進するため、生活排水対策指導者の育成、身近な水環境に対する理解を深めるための水生生物調査の実施など、必要な技術的支援その他の支援を行う。

3 その他生活排水対策に関し必要な事項
(1)生活排水対策関係団体との連携

 生活排水対策の推進には、県民、事業者及び行政が一体となって、連携を図りながら施策を推進することが重要である。
 このため、生活排水関係団体及び生活排水対策を行うNPOとのパートナーシップのもと、生活排水対策の推進に関する施策を実施する。

(2)生活排水対策に関する情報の収集及び提供
 県内及び他の都道府県で行われている効果的な生活排水対策の最新実践事例等の情報収集に努め、その情報をインターネットなどの広報媒体を利用して広く提供する。

(3)生活排水対策に関する調査・研究及び処理技術の開発
 生活排水対策関連事業の効果測定のための水質調査はもとより、市町村の支援や事業者へ協力要請するための調査・研究及び処理技術の開発を行う。