愛知県が実施している海岸整備事業について紹介します。

  愛知県では、地震、老朽化、海岸侵食に対する海岸の整備を進めています。
 以下に愛知県で実施している事業の実施事例について紹介します。

1.地震対策(海岸堤防の耐震化)

三河湾・伊勢湾沿岸の背後は低平地市街地であり、多くの人口・資産を抱え中部の産業・経済の中心となっていますが、地盤は緩い沖積砂層が厚く堆積しており、地震に対して非常に揺れやすく液状化しやすくなっています。沿岸22市町村すべてが平成14年4月に東海地震に対する地震防災対策強化地域に、平成15年12月に東南海・南海地震防災対策推進地域に指定されています。近年、発生が危惧されている東海・東南海地震等では沿岸のほとんどの地域で震度6弱以上が予測されており、地震による液状化で海岸堤防が崩壊・沈下し、その直後に来襲する津波から背後地を守ることが課題となっています。

また、本県では、「あいち地震対策アクションプラン」を策定し、限られた時間の中で被害軽減策を効果的かつ効率的に海岸堤防の耐震整備を推進しています。

 

○矢板による耐震対策の効果のイメージ図

○矢板による堤防耐震化工事の様子

豊橋海岸 吉前・神野新田地区(豊橋市)

二重鋼矢板工法施工中写真

完成写真

※二重鋼矢板工法
 堤防の法肩に鋼矢板を設置して頭部をタイロッド等で連結する構造で液状化に伴う地盤の流動を抑えて堤防の沈下を軽減する工法。

○地盤改良による耐震対策の効果のイメージ図

○地盤改良による堤防耐震化工事

(サンドコンパクション工法施工写真)吉良海岸

※サンドコンパクションパイル工法(SCP工法)

重機により鋼管を液状化層に貫入させ、所定の深さに達した後に砂を排出しながら、引き抜きと再貫入を細かく繰り返して地中に締った砂杭を構築するとともに、砂杭間の周辺地盤も締固により地盤を改良して液状化に対する強度を増大させるものです。

 

.老朽化対策(老朽化した海岸堤防・水閘門の対策)

 愛知県の三河湾・伊勢湾沿岸においては、昭和28年の台風13号、昭和34年の伊勢湾台風の2度に亘り大きな被害を受けました。その復興として昭和38年頃にはほとんどの沿岸に海岸堤防、水門等が築造されています。しかしながら、復興で一度に整備していることから、築後50年近く経過した施設が多く、老朽化・地盤沈下等による機能低下や背後地の開発による機能不足も著しくなっていますので、海岸堤防、水門等が高潮・津波に対して十分な機能を発揮させることが課題となっています。

 

○老朽化した堤防の更新

豊橋海岸 杉山地区(豊橋市)

老朽化してクラックの入った堤防写真

更新完了写真

南知多海岸 内海山海地区(南知多町)

老朽化で護岸が倒壊している

更新完了写真

○老朽化した水門の更新

美浜海岸 山王川樋門(美浜町)

旧水門写真

新水門完成写真

 

.海岸侵食対策(遠州灘沿岸の侵食対策)

遠州灘の伊良湖岬から東へ浜名湖まで、遠州灘沿岸の約50キロは通称で『表浜海岸』と呼ばれています。太平洋の外洋に面した海岸で、東西に弓状に広がる豊かな砂浜と海食崖(かいしょくがい) が連綿と続く雄大な景観は、国定公園にも指定されており、絶滅危惧種のアカウミガメの産卵地や貴重な海浜植物の自生地としても知られています。近年、土砂の供給源である海食崖や天竜川からの土砂供給の減少とともに、場所によっては防波堤や潜堤に代表される人工構造物の設置により、漂砂が遮られ、砂浜が消失する海岸侵食が進んでいます。 

○海岸侵食対策の事例

(人工リーフの設置箇所航空写真) 渥美海岸 伊良湖・日出地区(田原市)

渥美半島先端の伊良湖岬には島崎藤村の小説『椰子の実』で有名な恋路ヶ浜があり、日本のなぎさ百選に選ばれている景勝地です。海岸侵食による砂浜の流出が懸念されたため、砂浜を保全するために沖合には長さ150mの人工リーフ6基(写真の赤い部分)が設置されています。景勝地でもあり三河湾国定公園にも指定されていることから景観に配慮して人工リーフが設置されています。

 

 

※潜堤・人工リーフ

潜堤とは堤体が水面下に没した消波構造物であり、潜堤のうち、天端水深を深く、天端幅を広くしたものを人工リーフといいます。自然のサンゴ礁を真似た構造物で、海岸付近に幅広い浅瀬をつくるものです。波は水深が浅くなると砕けてその勢いを失うことから潜堤や人工リーフによってつくられた浅瀬により沖のほうで波が砕け、波の小さい海域を広く取ることで海岸侵食を防ぐことができます。常に海面に沈んでいるので景観に影響を与えない消波施設です。

潜堤

人工リーフ