第1回「21世紀にふさわしい公園づくり委員会」委員発言要旨


(文責事務局)

事務局 あいさつ
21世紀最初の万博開催まで残すところ143日となり、世界から122ヶ国、6国際機関が参加する中で活気に満ちた会場の建設が進んでいる。
愛知青少年公園は昭和45年に青少年の健全育成を目的として開園し、平成13年度末に閉園するまでの32年間、年間約280万人が利用していた。
県としては万博を機会にこの会場跡地を対象に 新しいニーズへの対応、青少年公園の歴史を活かす、万博の理念と成果の継承、多様な自然環境を育む の4つの基本方針を基に新しい都市公園としての整備を進めていきたいと考えている。また、公園が果たす防災機能の重要性も改めて認識されているところである。
この公園が以前にも増して県民に親しまれ愛される素晴らしい公園となるよう、ご議論いただきたい。

涌井委員長 あいさつ
来年度を目標に愛・地球博の跡地の公園計画を固めていくという事は、博覧会の開催と同時並行でいろいろ議論をしないと間に合わないという状況であり、そのためにこの委員会がある。
この委員会に先駆け開催された懇話会において予め議論をしており、その議論をもとにアンケート調査を実施し、その議論についての県民のニーズを把握してきている。
懇話会では、4つの基本方針と併せて各委員から市民協働、参加交流、地域連携、環境先進県などのキーワードを頂いた。
博覧会が開催された記念すべき公園となるように、また長い歴史の中で愛知県民から愛されたこの公園が博覧会と同調した形で素晴らしい公園となるように懇話会でのキーワードを生かし、議論を深めていきたい。


会議の概要

【主な発言要旨】

委員長:

この公園が、年間280万人あるいは290万人の来園者があった以上に魅力的な公園にするには、一歩も二歩も踏み込んだ検討が必要であるので、自由に御発言頂きたい。

委 員:

青少年公園計画の策定を行うということだが、この公園名称に入っている「青少年」というものが重要なキーワードなのか、それとも仮の名前として入っているのか。

事務局:

この公園名称は仮である。新公園名は中間報告の段階でパブリックコメントを行い、公募したいと考えている。ただし、新しい公園の基本方針には、前の公園の歴史を踏まえたものにするという方針があるので、その点を考慮して頂きたい。

委 員:

計画をつくるうえでゾーニングは重要であるとは思うが、「もりのゾーン」と「ひろばのゾーン」という2つのゾーンがうまく連続性を持つようにできないか。森と広場が分かれてしまわないように配慮した方がよい。



また、特に「ひろばのゾーン」については、最初から全部を計画し全てを作り上げてしまうのはなく、公園を作っていくプロセスを上手く見せられる様な仕掛けがあってもいい。

委 員:

以前の青少年公園は、もともとは青少年の健全育成を目的として開園されたわけだが、アンケートの結果を見てもわかるとおり、必ずしも青少年だけではなく家族連れやお年寄りといった幅広い層の人々がスポ−ツレクリエ−ションの場として活用していた。


また、豊かな県民の生活を考えた時に、スポーツレクリエ−ションの必要性が高く、大きな県民ニ−ズであり、子供からお年寄りまでが豊かな自然の中で一緒になって楽しく過ごせるようなスポーツがこれから求められると思う。



この公園をリニューアルするにあたっては、本当に県民がここで豊かな生活・素晴らしいライフワークを展開できるものを計画していかなくてはいけない。

委 員:

先月行われた国際シンポジウムのパネルディスカッションのテーマが「サスティナビリティ」(※1)だったが、上海の方の発言を聞いて、私たちが考える「サスティナビリティ」と2010年に行われる上海万博とでは随分違うんだろうなという気がした。
(※1サスティナビリティ:存続可能、持続可能)


愛知万博の理念とその継承ということになると、「サスティナビリティ」(=持続可能な社会)ということが大きな軸になると思う。そういった意味で、青少年公園の新しいコンセプトとして、(これまでの公園の歴史の継承は当然のこととして)公園全体が「サスティナブルデザインパ−ク」になってくるのではないか。ただし、「サスティナビリティ」というのは環境問題だけではなく、身体、文化、自然、社会など多面的であり、そうした問題について、この公園では楽しみながら体験できること、分かち合えることを基本ベースにおいたらよいのではないか。

委 員:

資料の「整備・活用の方針案」に市民参加が謳われているが、この公園では具体的にどういった市民参加をイメージしているのか。市民参加というのは様々な捉えられ方があるのでお聞きしたい。

事務局:

市民参加を含めた公園の運営形態については、委員さんから御意見を伺いながらこれから具体的に考えていきたい。

委 員:

市民参加というのは大きく分けて3つくらいのフェーズがあるが、公園自体をまさに作り上げていくグランドワーク的な考え方や視点はあるのか。

事務局:
そういう可能性があれば教えて頂きたい。

委員長:

4つの基本方針に基づいて懇話会で議論をしたものを「整備・活用の方針案」の中で枠組みとしては示したが、具体についてはこの委員会の中で議論をしてほしいということである。

委 員:

私はユニセフとタイアップし、子どもたちに自由に公園を作らせるというユニセフパ−クプロジェクトに国営公園の明石海峡公園で関わっている。具体的には、公園の中の一定の土地を全く白紙で子どもたちに任せているわけだが、この青少年公園の計画策定にあたっては、どこから市民に参加してもらうのか。計画づくりからか、運営からか、それとも全部市民の方に作ってもらうのか。この委員会の役割にも関わるので、そこを明確にしてほしい。

委 員:

「もりのゾーン」では自然系環境学習・自然教育を行い「ひろばのゾーン」では生活系環境学習(リサイクルなど)を行うといった具合に分離したゾーニングをするのではなく、相互に融合していかなくてはならない。


環境負荷の軽減に配慮することや、自然の再生、修復、保全といったこと自体が、サスティナブルなプログラムそのもので、そのようなプロセスをどう作っていくかという議論が一番大事なのではないか。

委員長:

市民参画をどういうレベルで捉えるのか。計画段階、あるいは整備、運営段階、あるいは個別のプログラムで位置づけをするなど、様々な位置づけの仕方がある。

委 員:

市民参加とは、何でも参加させることではない。コンセプトの中で市民がやるところと行政がやるところがある。ただし、全体の視点としては、常にユーザーオリエンテッド(※2)であることが何よりも重要であり、それを実現するにあたって、専門家が計画すべきところも出てくる、というような領域設定が一番重要となると思う。
(※2ユーザーオリエンテッド:利用者重視)

委員長:

この委員会の議論は、ユ−ザ−オリエンテッドではあるが、計画的にある一つの枠組の中で議論していくということでよいか。

委 員:

ということは、計画・立案の部分に対しての市民参加はなしということか。

委 員:

グランドワ−クという観点からは、計画・立案の段階から市民(ユーザー)が入るというのが前提だと思う。ただし、(行政がやらなければならない部分はあるといったような)領域設定は必要だということ。

委 員:

ユーザーというのをどのくらいのレンジで考えているのかが問題なのだと思う。ユーザーに任せるといっても、短期的な話に陥る危険がある。当然、百年後のユーザーには参加してもらえないので長期的な展望は開けないということ。やはり、専門家が自信を持って百年後を見据えた方針を示すべきである。

委員長:

そのとおりで、普遍的な部分や計画的な配置の議論などは非常に基幹的で重要な部分であり、ユーザーだけでは議論がしつくされないので、我々専門家の議論が必要である。ただし、市民参画、ユーザーに任せるといった視点があっても良い。

委 員:

市民協働というのはすごくいいが、どういうことをきっかけにしてやっていったらいいのか。ハード面だけでなくもう少しソフト面のイメージもあわせて考えていくと内容的にも豊かなものになると思う。


博覧会後のことでもあり、かつ愛知県の県営公園であるので国際的な視野で、ソフトプログラムにも目を向けた公園であることが分かるようにしてほしい。

委員長:

本日の資料では、市民協働による先導的な公園をつくると謳いながら、ややハードの側面だけのイメージで、そのプロセスやメニューについてイメージが湧き上がってこない。

委 員:

博覧会に向けて先行整備している部分(=日本庭園やもりのゾーンなど)と、今後新しく整備していく部分(=ひろばのゾーンなど)や市民参加というものをどう整合をとっていくのか非常に難しいと思う。例えば、先行整備している部分のデザインなどは、新しく整備していく部分にどれくらい反映されるのか。

事務局:

具体的なデザインレベルまでは進んでいない。全体190haという公園の中、その全てが同じデザインコンセプトである必要はないと考えている。

委員:

今の時点で考えている環境学習の拠点というコンセプトが、これからずっと長い間維持できるとは限らない。公園づくりの実験的な事を出来るような空間を残しておいて実験を繰り返していける様な部分があってもいい。つまり、最初から全部設計をしてしまうのではなく、ある部分を例えば十年というスパンでその時代のある担い手に任せるといった余地を意図的に残しておいても良いのではないか。

委 員:

今ここにいる委員で全ての青写真を作り上げるのか。あるいは、他の御意見の取り込みや小委員会的なものを設定し、計画づくりを進めるということはあるのか。

事務局:

設定する委員会はこの委員会だけである。これから委員会での議論を重ね、具体的なプランづくりを進めたいと考えている。

委 員:

この委員会は、アドバイス・アイデアを出す、事務局から出てきた案を評価する、ということだと理解している。公園計画に対し、どこでどのように決めるのか、それに対して我々はどんな役割をどこまで果たしたらいいのか、についてもう少し整理していただきたい。


市民参加については、市民が何でも決めるとは思っていないが、市民参加が実現しないのは、専門性がないからではなく、行政が責任を取らさない、ものを決めさせないことが大きな原因だと思っている。

事務局:

事務局の方で案を出し、それをもとに議論し委員会としての決定をしていただきたい。ただし、実際に公園を整備・運営していくのは県なので、実現性が難しいものについては調整させていただく。

委員長:

この委員会で、新しい青少年公園の様々な案について議論を重ね、こうあった方が望ましいという深い評価をしていくことにより、(県の)意志決定に近づいていくということだと思う。委員会が全てを決定するということになると、委員の責任負担が大きすぎる。

事務局:

第一回目の委員会ということで委員の皆様のいろんな考えをお聞きしたい。

委 員:

ひろばのゾーンのコンセプトは都市的環境のイメージか、あるいは二次的な自然環境としての農村といった農村的環境のイメージか。計画づくりにあたり大きな分岐点となる。

委 員:

21世紀の公園づくりということで、ポイントは21世紀という「時代」と21世紀初めての国際博覧会が開かれたという「場所」であると思う。この2つのポイントにこだわって新しい青少年公園の整備の構想が成り立っていると思う。



時代という点では、20世紀後半の時代の総括、反省、そこから出てくる展望をこの公園で象徴的に形に表していくべきで、この公園を利用する次世代への贈り物にしたいと思う。



場所という点では、公園になる前は長久手にとって非常になじみ深い場所であったということを認識しておいていただきたい。村人の入会地であり、水源地であり、三河へ抜ける2〜3本の道が通る所であったという歴史があるということを捉えると、21世紀の環境・自然の切り口が、より具体的に次世代に感じとってもらえるのではないか。総合的な環境学習として、そのような具体例が活かされ継承されていくていくことを願っている。



(この公園が)広域的な防災機能を持つというが、具体的に何が出来るのか。もう少し詰める必要がある。

委 員:

これまでの公園計画というものは、ハ−ドの整備イメ−ジが一般的であった。しかし、博覧会を契機とした新しい青少年公園の計画は、従来の公園計画では対応しきれないような様々な意見・問題が出てきており、それをクリアするのがこの委員会であろう。



市民協働というものを具体的にどうするんだという部分が重要な論点になる。計画を作る部分も市民協働であるが、全てを一般の人に任せる議論ではないということを確認したい。



これまでの住民参加は行政が主体でやっていたが、これからは誰が何をどうするかということから議論をする必要がある。(県は)物を作るノウハウは持っているが、どういう主体が何をやるかというプログラムを組み立てるノウハウはこれからの取り組みである。



今後は市民協働がとても重要だという共通認識を持って議論を進めていくことが重要。

委 員:

この公園は、「環境」と「万博後の公園」であるという二つが非常に大きなコンセプトであり、はっきりしている。また、公園を整備・管理する側は、時代時代の市民の声を吸収するなど柔軟に対応すべきである。よって、整備方針の中に公園自身が「サスティナブル」であることや「成長する公園」を目指すということを明示すべきである。



パブリックコメントをする際は、状況や県が考えているイメージを明快に示し、何をパブリックコメントしようとしているのかを明確にすること。例えば、もう整備している日本庭園については、ハード面については意見を求めないが、運営面について意見を求めるなど。また、良い意見に対してはどんどん変えていくという柔軟な対応が必要。

委 員:

環境学習とか市民協働のことを考える時には、この地域を少し広域的な視点で見て、ここがどういう機能を果たすべきなのかということを考えなければいけない。出来れば少し広域的な図面も用意していただきたい。

委 員:

この公園は、時間が変化、人が成長して変化していく、時が流れていく、そういう流れの中で捉えるべきであると思う。つまり、長い目で見て考えると使い勝手が良いものになると思う。



公園全体が樹林に囲まれているので全体として自然が基調となってくる。よって、ゾーニングをきっちり分けて考えない方がいいと思う。

委 員:

市民参加の実態がどうなっているのかということをもう少し整理しておいた方がいい。つまり、以前の公園での市民参加、博覧会中の市民参加、そしてその成果をどう継承していくのかといった流れでの整理が必要であるということ。

委員長:

今後の議論を進めて行くにあたり、この公園がどうあるべきなのかというような哲学的な、あるいは思想的な部分について客観的な整理をする必要があると思う。



例えば、市民参加・市民協働を唱えるに際しても、長久手におけるこの土地の歴史、人との関わり、そして公園として整備され、博覧会が開催される〜といった一連の流れ・背景を踏まえることが必要であるので、資料として整理してほしい。



また、以前の公園は公物公園であったが、今後は都市公園となるという位置づけの相違、枠組みの違いを認識し、超広域的な視点の中でこの公園の位置づけがどうあるのか、その中でどのように公園が役務を分担していくべきなのか、また、公園の性格付けというものを考えていきたい。



本日の議論の中では、「サスティナビリティ」というのが大きなキーワードであった。これは、公園が永続的に発展をしていくということで、例えば、計画をはじめに全て決めてしまうのではなく、余地を残しておき未来(のユーザー等)に託すとか、博覧会中の市民参加のプログラムを後にキャッチアップしていく、などというもの。



現実論として、既に先行整備している区域はハード面での議論の余地はない。このような制約をきちんと示していただいた上で、ソフトとハードとその両面からこの公園のコンセプトを議論し、結果として、「サスティナビリティ」につながっていければよいと思う。

委 員:

例えば「新しいニーズ」というものは非常に多様で、皆が考えていることがバラバラであったり、相矛盾するものが混在したりする。



よって、「新しいニーズに対応する」や「博覧会の理念と成果の継承」というスローガン自体は皆が賛同できるが、そこには相矛盾した内容のものが含まれているということを意識して、計画の具体化をしてほしい。

委員長:
事務局の方もそのような点について配慮し資料整理をお願いしたい。また、委員の先生方も次回に備えていろいろ考えを詰めて頂ければありがたい。

事務局:
熱心なご検討と貴重なご意見ありがとうございました。次回までに本日頂いた宿題や御意見を集約・資料整理して事務局案として示させて頂く。また、本日の御意見を全て実現しようとするには、空間が狭すぎるというような印象を抱いており、それについても整理したい。