第2回「愛・地球博 理念継承エリア検討委員会」委員発言要旨



(文責事務局)
平野委員長 あいさつ

第1回検討委員会では、博覧会の成果としてどのようなことが考えられるのかという観点から意見を出していただいた。一市町村一国のフレンドシップ事業が国際交流の観点から重要な貢献をしたと同時に、産官学及び市民との連携、子ども達に何らかの形で生命の大切さや社会性を身につけさせることにおいても大いに役立ったと思っている。また、市民挙げてボランティアの方々と一緒に事業を実施できたというのは非常に大きな財産ではないかとご意見をいただいた。このような理念をいかにして公園に活かしていくかということについて、博覧会を記念するオブジェ、市民参加のエネルギーを継承する市民センター、ホール、モニュメントのようなものはいかがであろうかという提案もいただいた。
テーマゾーンの中で、どのような形で博覧会の理念を生かしていくかということがこの委員会の重要な課題である。第1回検討委員会のご意見を事務局により整理した。この内容を踏まえて、今回は博覧会の理念と成果の継承を実現していくために必要となる管理運営上の問題や、施設整備の規模等々についてもご意見をいただきたい。また、費用をどうしたらいいのかということも後々で考えていく必要がある。


会議の概要


【主な発言要旨】

委 員:

テーマゾーンの位置をもっと拡充し、グローバルハウス、こいの池、蓮池を含めて設定した方がいいのではないか。背景として、経費の捻出をどうするかがある。万博の収益金が45億から75億円あるが、使い方はまだ決まっていない。青少年公園で、その理念と成果を継承していくものを作っていくために、この収益金の一部を充ててもらうことを国に強く要望する必要があると思う。そういった事を考えると、今のエリアの設定は5ヘクタールと狭い。後世の県民、国民が「あぁ、いいものをつくってもらった。これだけ立派なものをつくってもらった」というような「自分達で守り、育て、さらに自分達の子孫にも残していきたいというもの」を作らなければ意味が薄い。


スケート場と温水プールについては、民間活力の時代であり、民間でやっていただいた方がいい。県が毎年、毎年赤字を補填して運営していくという価値は低くなったと思う。

委 員:

イデアのひろばの中で、どこででもできそうなソフトまで組み込むことがいいのかどうか。ソフトに対しては予算も付けていく事となる。むしろ、ここでは、場所を提供する事が大事であり、広く市民のどなたでも、どのNPOやNGOでも活用できる場であるということが重要である。

委員長:

今回は、どのようなハード面を重視して理念を公園利用に活かしてもらえるようにすべきか、ということが検討内容と考える。活動自身は参加型でいくべきであり、今後、県がサスティナブルという点を考慮しながら、どれだけ費用を負担するのかということを示す必要がある。ソフトというのは非常に重要である事は間違いないが、関連するものとして考えていった方が話としては進めやすい。

委 員:

県民の方々が、ここを永く使えるような何かがあるということは、とても重要なことである。また、万博を継承していくには、一つの思い出を大切にしていける何か種があるということが大事だ。そうしないと、想いがそこに生まれてこない。地球環境をもっと持続可能にしていくためには、これは何のためにやるのかということがアイデアとして出てくるといい。


青少年公園と万博はどういう関係があったのかということもすごく大事である。大阪・千里に行き、岡本太郎さんの太陽の塔を見ると、「あぁ1970年代の万博だなぁ」というイメージを感じ、また、それが思い出になってもいる。それで30年前の万博が、そのまま継承されているかというとそうでもない。そのようなことも考えた上で、この公園での万博の継承をどういうふうにするかということを、私たちの万博は、モニュメントではなく、もうちょっと煮詰めた方がいいのではと思う。

委 員:

博覧会の記憶を残すというのがすごく大事だと思う。


テーマパークは、ディズニーランドを除いてほとんどが失敗している。ディズニーランドの成功の秘密は、古典を利用していることにある。共通の記憶を利用するというディズニーの賢さがある。これは、非常に重要な事で、万博という歴史を共有した記憶が古典になればしめたものである。万博の記憶をどうしたら、しっかりした記憶にしていくかが勝負どころだと思う。常に新しいものはいい事だという流行り病があるが、過ぎ去った事のすごさ、これをどうやって残すかということこそ、サスティナビリティーである。だから、その意味で万博の記憶をどうやったら残せるかという部分をもうちょっと絞った方がいい。

委 員:

コマーシャル的に残して、それを商売にするというようなことを考えてはどうか。例えば入場料を取って何かやるとか、お土産を売る。日本人はお土産が好きである。県の公園として、できるかどうかの問題はあるが、ただ見るだけでなくて、来て楽しいという事からは、結果として商売的なものがあったほうがいいと思う。


ブリュッセルで、今から何年か前に万博が行われ、その記念公園がある。公園では、主要な出展国の特徴的な建物を何分の一かに縮小したミニチュアが展示してある。そこで土産物を売っていたり、万博にはこういう出品をしていたとかという昔の写真を見たりすることができる。


記憶に残るというのは、もう1回見ないとなかなか残らない。今現在、一番新しい技術として各国が一生懸命展示したものを、現物、もしくはそのミニチュアを並べると、もう1回それを見て「あぁ、そうだったなぁ」となる。そういう記憶を、目で見て喜ばせるということが必要である。俗世的な話で申し訳ないが、広い場所もあるので、そういうような民活、商売の場所としての利用も考えてはどうか。

委 員:

一目でわかり、永久に残す価値のあるものを一つ作ることが必要ではないか。海上の森会場では、愛知県館、日本政府館が残されて、森林体験、里山、環境学習というような環境を中心としたテーマが展開される。イデアのひろばには、万博のメインテーマであった自然の叡智、環境、芸術文化、交流、つどい、が必要である。今回の万博で、最も環境万博というテーマを具現化したのはモリゾーやキッコロで、イデアのひろばにモリゾー・キッコロのドーム的なものをつくって、どこからでも「あっ、モリゾー・キッコロが見える。あそこで万博をやったんだ」ということが分かるような形にしてはどうか。ドームの中には、毎年1回、万博記念のつどい等をやることが記念としていい。モリゾー・キッコロドームは、万博の収益金を充ててつくるのがいい。


イギリスのエデンプロジェクトは、素晴らしいガーデンとなっているようであるが、木を植え、花を生けると長年にわたって費用がかかり留意する必要がある。植物を見たければ、植物園に行けば立派なものが名古屋市にあり、それよりも、モリゾー・キッコロをイメージとして利用したシンボリックなものを作って、あらゆる面に利用していく事の方がいいのではないかと思う。

委 員:

イデアのひろばに具体的にどのような空間をしつらえるのが望ましいかということが重要なテーマになる。危険なのは様々なメニューを盛り込んでいくと、一体性を欠いてしまうことである。例えばあの空間の中に、パークセンター、記念館といったそれぞれの機能を一体化するような空間を考えていく事が非常に重要となる。空間の形態としては全天候型で、空間そのものが光触媒や呼吸できる構造、パッシブソーラーなどが備わっている循環型となっているような大空間を形成してはいかがか。大空間であると、様々な交流や用途が自在に出来る。


もう1点は、今回の博覧会が、何を世界に向けて発信したのかということ。その一つに、生き物、自然に学んだということがあったと思う。例えば、ドイツ館、トルコ館、英国館、あるいは日本政府館にしても、今までの科学技術というものの基盤を、生き物というものを正面に据えて、その中から知恵を学んでいくということを世界に向けて初めて発信した。すぐ近くには科学技術センターがあり、そこで、様々な技術的な検証が行われるという事もあるので、イデアのひろばの中にコア施設として、子ども達に未来の循環型、あるいは自然と共生するスタイルでの科学技術の方向を体感してもらうというようなしつらえも小規模ながらあってもいいのではないか。そこに民間企業、大学が総合的に参画をしていくというアイデアもあるだろう。


結論から言えば、多目的、多用途の空間を用意すべきであり、その空間のしつらえそのものが、非常に世界から興味を引くようなものであってほしいと考える。私はこれを膜構造というもので提案をさせていただいている。そして、そのコア施設に、今回の博覧会の一つの特徴として、エキスポジション(陳列)ではなくてエクスぺリエンス(体験)であるということがあり、そのエクスペリエンスの部分を充分活用した展開をしていく。差し支えなければ次回の委員会までの間にスケッチ風にして県にお預けするので、各委員の先生方に見ていただきたい。

委 員:

公園全体の委員会の位置付けで、全体としての統一感を損なうという事を少し危惧をしている。公園計画の4つの基本方針として、「新しいニーズに対応した都市公園」、「青少年公園の歴史を生かした都市公園」、「博覧会の理念と成果を継承する都市公園」、「多様な自然環境を育む都市公園」がある。これがパッチワークではなくて、レイヤーとして存在しているのだと思う。


公園全体が博覧会の収益金の対象に、なぜならないのかなと思う。5ヘクタールからのエリア拡大という発想よりも、公園全体が対象ではないかと思う。考えの整理のために、どういう状況になっているのかが分かると範囲が狭められる。シンボルは必要だが、博覧会の理念と成果の継承というのは公園全体にあって当然いいだろう。


科学技術、遊び体感という部分について、技術の暴走自体が環境破壊を起こしたと考えているので、先端技術と人間の関係について、いかにどうコントロール、使いこなしていくかというところの遊び体感である、とさらにいいと思う。

委 員:

公園の統一感についてですが、ディズニーランドに行くとマジックキングダムとフューチャー、アメリカのフロンティアランドと、全てがマジックキングダムの中で存在していて、それが上手にオーバーラップするような形でデザインがきちっとされているから、バラバラに見えないで一体感がある。これはデザイン能力一つに左右されると思う。


博覧会では、いろんな海外要人の方々をご案内させていただいた。日本庭園の中にベルギーの皇太子様をお連れした時にすごく感動された。その時に日本庭園に茶室があって、お茶をそこで味わっていただいた時に、「これはスピリッチュアルなものですね。」って言ってくださった。博覧会で日本の美しさ、素晴らしさを世界に見せつけたわけである。今回この日本庭園を設計された造園家の北山氏は海外からも招かれて日本庭園の設計をされている。要するに、日本庭園は世界的に注目されている日本文化である。外国のいろんなもの、前にあったような物にとらわれて、それを真似して公園を設計してしまうことは、すごく残念な事だと思う。日本の四季の中で、日本の文化が育って、その素晴らしさを大切にしながら博覧会後の公園を捉えていくことが、本当の意味での万博の継承になると思う。

委 員:

収益金については、いろんな所から万博の継承の立候補があると思う。博覧会協会でも、理念の継承については、どんな切り口があるかということを、検討委員会を始めておられる。


切り口の一つは、環境技術をどうやって、このアドバンテージを日本、この地域に形成していけるのかという観点である。もう一つは、国際交流。国際交流の様々な機運が出来上がっており、その機運を具体的な日常の社会実務、交流のプラットホームに、どうやって日常的に置き換えられるか、そういう社会力みたいなものをどうつくれるかということである。それから、もう一つは、市民参加。いろんな市民参加があり、市民参加の多様性の豊かさと意義について、どうやって継続発展させるか。


それから、みんなの中に残った記憶の大切さ。その非常に良いイメージをどうやって継続させるのか。それを、全てこの公園の中に入れようとすると特徴のないものになってしまう。万博の記念公園というオーバーレイを、全体としてかけてしまうということがいいのかどうか。記念公園としての意味というのは、このイデアのひろばだけということでいくのか。規模を広げるかということについては、公園全体を継承事業と考えるのか、あるいは、あるエリアを象徴的にそういう継承エリアと考えるのか、という整理をやった方がいいだろう。


この公園の持っている位置づけという意味で言うと、海上の森は、里山やもう少しワイルドな公園で、自然を学ぶとかより自然との交流という事については、工夫が今後出てくるのではないかと思う。青少年公園は都市公園であり、都市的な生活と公園との関わりを考えた時に、ロンドンの人達がキュー・ガーデンにいつでも行っている、楽しんでいるというような姿は当然必要だろう。同時に、今後の公園のあり方として、ボランティア参加、県民参加をもっとうまく、楽しく、活性化させていくような姿というのが欲しい。それが、生物を生かした技術であったり、自然と共生したライフスタイルの豊かさであったりする。そういうものを、10年、20年、30年かけて、どこにも負けないものを作っていく事だと思う。そこには、一つの大きな万博の理念を継承する公園としてのベクトルが要る。


日本の木の文化がグローバルループ、北ゲート、モジュール型のパビリオンなどの大空間を作った。多くの人達は、そのことを非常に評価している。私は、膜構造の大きな空間を作るというのも賛成だが、それが木造で一体になっているようなものがいいのではと思う。パークセンターと愛・地球市民センターを一体的に考えて、ファシリティマネジメントもうまく取り込んでして、この博覧会が持っていた本当の豊かさみたいなものを再創造する。その中で、市民参加の継承事業を検討すべきだと思う。そのために協会の残置資金を記念地球市民の交流事業としてお願いをするというのは、一つのストーリーだと思う。

事務局:

(参考資料の説明)


体験、交流などを通して様々なテーマを展開している施設を8つほど例示した。展示、体験や交流を、屋内、屋外の両方で調和させながら整備している例として、昭和記念公園、アイランドシティ中央公園を表示した。屋外での施設を活用した活動・展示の事例として、国営木曽三川公園にある河川環境楽園、岐阜県にある養老公園の養老天命反転地、富士山こどもの国、十勝エコロジーパークの4ヶ所を掲げた。また、エンターテイメント性に焦点を絞り、イタリアをテーマに物販とか食を提供する商業施設として、名古屋にある名古屋イタリア村を表示した。さらに、交流を目的とした事例として、施設に多くの木材を使用している一戸町コミュニティセンターをご紹介した。

委員長:

これを見せていただいた時に、整備費が非常に多く必要だと思った。今日ここで、整備費は議論対象外であるが、それをある時点では考えを示す必要があろう。

事務局:

(欠席委員ヒアリング内容の紹介)。


イデアのひろばについては博覧会の理念を継承することを第一に考えるべきで、テーマとしての環境、交流は妥当である。公園全体とリンクした環境学習、あるいは交流の場として県内の体験学習の拠点とすると共に、世界交流を視野に入れるならば、白川郷、熊野古道などの隣接県の世界遺産や自然体験施設との連携も考慮すべきである。


施設づくりにあたってはNPO、ボランティアによる運営システムを前提とすること。それから施設整備については、あまり費用をかけるべきではないこと、モニュメント、オブジェのような博覧会の開催を記念するものは、新たにつくる必要はないこと、などの意見をいただいている。

委員長:

こういう公園、あるいは何かの記念の場というのは、多目的な交流できる広場、建物を中心として、何らかの形で考えが共有出来るような場がいるのではないか。もう一方では、そういう建物をつくったとき、維持管理を含めて将来に十分対応ができ、そして有効に利用してもらえることが可能であろうかということも出てくる。


展示物をこの中でどう保管をし、見ていただくか。特に、例えば、議論になっている展示物、諸外国からいただいた展示物等々については、事務局は対応を何か考えておられるか。

事務局:

各国からいただいた展示物については、迎賓館とレセプションホールにおいて公開していくというところまで決まっている。具体的な展示のための、設計、計画作りの作業を本年度行うことにしており、その概要をお知らせすることができるのは3月下旬になる。

委 員:

展開にあたっては、地域のバランスがすごく大事だと思う。白川郷、熊野古道、昭和村、大正村、明治村など、いろんなところがあるわけで、バランス的に公園として全てをここに盛り込もうとなると、他施設と競合してしますようなことになってしまう。本来「やるべき事をやる」という考え方でないと、とてもアンバランスになる。


メンテナンス費が、年間これいくらかかっているかという材料もあった方がいい。そうしないと比較対照が出てこない。青少年公園にとって一番大きなポスト万博の問題は、年間どれだけの経費が、ここを維持管理していくのにかかるかということである。


青少年公園が、たとえ建物が何もなくても、毎週のようにNGO、NPOの方々が人を集めて、利用されている状況になれば、魂がいつまでも抜けない公園となると思う。何かがあっても使われてなければ本当の意味での万博の継承にならない。

委 員:

類似施設の事例を紹介するならば、もう少し外国の事例も入れてユニークなものをつくっていただきたい。


青少年公園全体を万博の記念公園とするのか、それともイデアのひろばを中心にやるのかという話が重要である。私は、青少年公園はあくまでも、スポーツ、健康、文化に対応した都市公園であり、全体を万博の理念とか、遺産継承の公園にというのは、県当局も考えていないと思う。万博を記念するものをつくっていくとすれば、イデアのひろばに集中した方がいい。一点に集中するためには、エリアをもっと広げて、その中によりよいものをつくっていくという方向がよい。

委 員:

費用面で博覧会の収益金を当てにと考えておられるのなら、シフトをしっかりした方がいいと思う。環境技術と国際交流と市民参加というようなしっかりとした目的があるなら、そこにシフトして収益金に対応する計画づくりをしないと間に合わない。そうでなかったら、もう少し時間をかけてじっくりやった方がいい。その辺の事情を教えてほしい。

委 員:

青少年公園は、もともとは県民に親しまれた公園を博覧会会場として活用させてもらうということで、県民の方からお借りをした場所である。博覧会を経由して、4つの基本方針で博覧会の再整備をしていこうとしている。当初、博覧会の継承、理念をさらに発展させていくというよりは、博覧会が開催されたということで迎賓館にメモリアルな展開を図るとか、記念植樹をやるとかとして進めてきた。ところが、「21世紀にふさわしい公園づくり委員会」で検討していただく中で、大阪万博のエクスポジション・エクスポーズ(陳列)するということから、博覧会のテーマ、交流という意味からもエクスペリエンス(体験)という面の重要性が生じ、メモリーだけでは物足りないこととなった。


そこをどうやっていくか。博覧会と深く関わって、博覧会が行われたということを重く受け止めて進めていくことが必要であると考えた。その時に、モリゾーとキッコロをメモリアルなものとして残すことを考えたが、それはもう廃っていく話である。モリゾーとキッコロは生身であり、ディズニーと違ってどちらかというとサザエさんの世界。サザエさんのキャラクターは永遠不滅であり、物語はどんどん変わっていく。だからモリゾーとキッコロというのは廃っていくのではなく、博覧会の理念を語らせたら結構いけるかなという気がしている。


維持、運営、パフォーマンス、イベントについてボランティアやアマチュアにやっていただくということが鉄則かなと思っている。それによって面白くなるし、費用も安くできるということで、何か突破口が見つかると思う。そういう意味で、一つの例であるが、博覧会で行われたエクスペリエンス、自然の叡智、環境問題について、さらに継承しながら発展をさせていくという仕掛けができれば相当いいことになる。



協会の残余財産に対しての話だが、ちょっと食い違っているところがある。この委員会の取り組みに対し、協会の理念検討委員会がどういう価値、展望、期待を認めてくださるのか。協会の理念検討委員会は年度内に結論を出されるとのことであるので、この委員会で具体的にお金をいただけるような形でお示しすることは到底不可能だと思っている。ただ、心意気を認めていただいて、是非、然るべきご支援をいただければと思っている。



県としてどの程度の費用負担かということは、理念継承にふさわしいものであることや費用についての留意など、委員会でいろんなご意見をいただいており、そういう中で収斂をしたところで国のご支援もいただきながら、是非がんばっていきたい。

委 員:

万博は成功したと思うが、市民参加とかボランティア活動をされている方々にとっても大きな舞台になってくれたと思う。例えば、エコマネー、NPO、NGO活動は、博覧会ありきで出来たわけではない。それは前からやっていた人達が、博覧会という一つ傘の下に、舞台の上にのって活動をしていたという状況がある。



博覧会の形がなくなっても活用し続ける場所であるということがすごく大事。市民の皆さんが活動をし続けられる場所づくり、そしてなお且つ、彼らが愛着を持つ一つのプレイスとして博覧会の跡地を考えて、活用し続けられるような環境づくりをしていくことがとても重要である。


博覧会記念公園という名前はあっても、全部が博覧会というイメージでなくてもいい。公園は、博覧会が終わったあとの30年後、50年後、100年後も、時代によって変化し続けていくものだと思う。どれだけたくさんの場所を提供する事ができるかという中で、イデアのひろばでなるべくメンテナンス費用がかからない、なお且つ、みんなが来た時に「あぁ、ここに博覧会があったんだね」「確か、2005年でしたね」と言えるようになること、何かがそこに記憶として継承されていくことが大事だと思う。

委 員:

環境に関する記事は、調査をすると意外と読まれていない。推測であるが環境というのは、明治時代に勝手に翻訳して作った言葉で、ずっと家庭環境、教育環境とか、ほとんど日本語では人文科学として捉えてきた。ところが、80年代になって、環境というと地球環境の話になって用法が変わったので用語として上滑りしている。


日本語で、山川草木皆仏様というのが、一番腹に落ちる言葉であり、そういう日本人の心情というのが脈々として流れているものが木造につながっている。脳死問題の時に梅原猛さんは「脳が死んだら死んだと言ったら、脳ミソがない植物は死んでいるのか」と言われた。それは西洋人独特の発想である。日本人は脳ミソがない草木にいたるまで命の素晴らしさを見出しており、ここに日本人の自然感のすごさがあると思う。万博で再確認をされたことを、もうちょっと利用してもいいと思うのは、何でもすべて木造にするというようなことだ。



僕はパスポート券で何十回も行った人を多く知っており、これを利用しない手はないと思う。例えば、オーストラリア・シドニーのタロンガ動物園は、「ズーフレンド」という動物園友の会に特徴がある。それはタロンガ動物園を支えている市民団体であり、大したお金ではないが会費制で多くの会員がいる。ズーフレンドになると、例えば閉園後の深夜の動物園に寝袋で泊まることが出来る。固定客を作って動物園を中心としたコミュニティが間違いなく出来ている。


万博のパスポート券方式は明らかに成功したのだから、万博という共通の歴史を中心にしたコミュニティを作る手があるのではないか。万博で成功した、あるいは面白いというアイデアをそのまま利用する、それが持続可能な市民参加だと思う。だから、この公園を中心にした目に見えないコミュニティをどうやったら出来るかというように絞り込んでやってみるとよい。歴史・風土に反しないやり方は、みんな成功している。この地域にあったやり方について万博でいろんなことを学んだわけであり、それをこの継承事業に応用できないかと思う。

委 員:

市民参加の舞台としてパークセンター、愛・地球市民センターが考えられる。



そこでは単機能の身体的なものが必要で涌井委員がロハスという言い方をされたが、都市型のライフスタイルの構築とか、科学技術とか、単機能をいくつか絞って、プログラムの組み立てと同時に、来場者と一緒にやれるような形として組み入れる。例えば、ソーラー、NPO、子ども、2007年問題の人たちとかいろんな人たちが、担い手になるし、巻き込む装置にもなる。

委員長:

具体的にその場所に行くと楽しいとか得になるという装置がないと、なかなか人は来ないと思う。装置づくり自体が、公園づくりに充分なっていくので、テーマをしっかりやるという形と市民参加はうまく重ねられるのではないかと思った。


市民の皆さんが万博を自分のもののように思って参加されたことが非常に重要である。市民、あるいは地域も含めて、何らかの形で関与できるような場、あるいは、そこに行って自然にふれながら次のことを学んでいけるような場が必要であると思う。今日のお話を元にしながら、もう一度、さらにご提案をブラッシュアップして内容を詰めていきたい。また、その時に、費用の話はサイドに置きながら、集客面やメンテナンスのことも頭に描きながら話を絞っていきたい。


万博協会の検討委員会は別に検討が進んでいるが、理念という点においてどちらも共有は当たり前である。ただ、収益金といわれる金額について、ここでは別な形にしておいた方がよろしいのではないかと思う。



この委員会は、来年の秋ぐらいに最終取りまとめを出すということであり、まだ息が長い。しかし、ずっと後世にまで子孫の方々に今の環境を借りているわけですから、そういう人達が、共有して活動できるような公園にしていくことが鉄則ではないか。その立場で、またさらにご議論をいただければと思う。

事務局:
長時間にわたりまして、熱心に貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。事務局としまして、若干、方向性が出てきたなという感じで、ほっとしているところである。次回は、来年2月の上旬ということで開催を予定しており、よろしくお願いいたします。


寒さ、厳しい折でございます。ご自愛いただきまして、新年をお迎えいただきますよう、お祈り申し上げております。本日はまことにありがとうございました。