企業の介護アクション Student Report(学生レポート) 企業の介護アクション Student Report(学生レポート)

Student Report01:ユニー株式会社×介護の魅力ネットあいち 学生インタビュアーの写真

企業紹介

ユニー株式会社

総合小売業のチェーンストア、ユニーはCSR(Corporate Social Responsibility)活動の一環として、高齢社会が抱えるさまざまな課題に取り組んでいます。その1つとして5年程前から店長をはじめ従業員が認知症サポーターの教育を受け、地域と連携し認知症の方でも安心して買い物ができる店舗を「認知症買い物セーフティーネット店舗」として認証しています。また、自治体や認知症支援のNPOと協働で店舗での認知症啓発イベントを行い、一般への理解と協力も広めています。
 東海市の東海荒尾店で行われているオレンジカフェ(認知症カフェ)も地域貢献活動の一つ。オレンジカフェは現在アピタ千代田橋店(名古屋市千種区)と2店舗で定期的に開催しています。

どんな介護アクションに取り組んでいますか?

オレンジカフェ(認知症カフェ)

オレンジカフェ(認知症カフェ)

認知症の人やその家族が地域の人や専門家と相互に情報を共有し、お互いを理解し合う場。お茶を飲みながら気軽に話をして、認知症の方の気分転換、介護者の方の息抜きの場となっています。国の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で設置が進められていることから「オレンジカフェ」と呼ばれています。

開催に至った経緯や支援への思いとは 開催に至った経緯や支援への思いとは

ーアピタ東海荒尾店さんのお話ー

<小島さん>

 東海荒尾店でオレンジカフェをオープンしたのは2018年3月。毎月第二水曜日に開催しています。告知はポスターを店内に貼ったり店内放送でご案内して、カフェにはのぼりを立てています。最初は参加者が少なかったのですが3回目には26人の参加者があり、口コミで広がりつつあると感じています。

 ユニーは地域密着型のお店ですので、オレンジカフェを認知症の方やご家族の憩いの場にしていただきたいと同時に、一般の方への認知症に対する理解も深まればとの思いです。今は東海荒尾店と千代田橋店の2店舗で、ここが最初のモデル店になります。

 お店は地域のお客さまで成り立っており、自治体やNPOと協力して地域に貢献していくことが大切です。「お店は地域のコミュニケーションセンター」を合言葉に、誰でも気軽に訪れて安全に楽しく過ごしながら、お買い物を楽しんでいただければと思っています。

 ユニーではオレンジカフェの取り組み以外にも、店舗内で認知症啓発イベントを行ったり、従業員に対する認知症サポーター教育を行っています。サービス介助士資格取得も進め、サービスレベルの向上を目指しています。今後も認知症の方やそのご家族、高齢の方、障がいをお持ちの方のお買い物サポートや一般の方の理解を深める活動に取り組んでいきたいと思います。

アピタ東海荒尾店の副店長小島浩明さんの写真

オレンジカフェの役割とは オレンジカフェの役割とは

ー一緒に運営する東海市社会福祉協議会さんのお話ー

<大野さん>

 オレンジカフェには認知症の方ご本人より、介護をしていらっしゃるご家族の方がいらっしゃることが多いです。これまで認知症の話を気軽に話せる機会がありませんでしたので、気分転換の場として気楽にしゃべれるところがあればと開催しています。認知症の中にはデイサービスなどに行きたくない方もいらっしゃいます。そういう方に出掛ける場所ができたらという思いです。同時に従業員さんや一般のお客さんへの啓発の意味もあります。

<栗原さん>

 同じ家族さん同士の気持ちの吐き出し場所ですね。認知症の方の症状にもよりますが、外出を嫌がられる方を、買い物しながらちょっと寄って行こうと言えるので、きっかけとして出掛けやすいです。相談電話はハードルが高いのですが、そういえば買い物に行ったときにアピタの2階で何かやっていたなーと思い出していただけたら。それにはコンスタントにここで開いていることが大事だと思います。そして、相談を承った以上、何か解決に繋がることを持って帰っていただけたらと職員一同心掛けています。

東海市社会福祉協議会の栗原美和子さん、大野史絵さんの写真

ー一緒に運営する認知症の人と家族の会さんのお話ー

<尾之内さん>

 ここは、企業が場所を提供してくれていることに大きな意味合いがあります。お店の中のカフェは施設でやるよりも来やすいと思います。アピタさんと協働で認知症買い物セーフティーネットや啓発活動に取り組んでいたご縁でオレンジカフェに場所を提供していただけることになり、1か月遅れで千代田橋店でも始まりました。今後、アピタさんの全店舗でやっているくらいになるといいですね。

 介護の経験は重要な社会資源。私たちの目的は介護経験が地域の中で社会資源として根付いていくことです。国の財源が厳しくなっていく中、介護者が力を付けることが大事。介護者が変わると世界は変わってくると思っています。

認知症の人と家族の会 愛知県支部特定非営利活動法人 HEART TO HEART代表 尾之内直美さんの写真

オレンジカフェを訪れた看護者の男性に聞きました。 オレンジカフェを訪れた看護者の男性に聞きました。

<介護者の男性>

 認知症の家内がデイサービスに行っている間、お茶飲んでホッとしようとここに来ました。ここで同じように奥さんの介護経験があるサポーターさんと話をしていると、みんな同じ思いだと分かりますね。だから頑張れるというのはあります。

 ここにオレンジカフェがあることは家族の会で教えてもらいました。僕も同じように介護で悩んでいる人に知ってもらいたいと、知らない人にはここのパンフレットを渡すこともありますよ。ここはショッピングセンターの中にあるので、やっぱり来やすい。こういう開かれた空間でみんなとおしゃべりするのは、いいことじゃないですか。

 介護をしているとよく女房から叩かれます。でも自分が認知症にならなくて良かったと思います。女の人が叩いてもたいして痛くない。僕が叩いたらきっと女房は痛かっただろうと思うからね。今、いろんな自治体のオレンジカフェに参加していますが、できればもっと行く回数を増やしたい。家にいるよりこういったところで話した方が自分にも女房にもいいのではないかと思っています。

東海市社会福祉協議会の栗原美和子さん、大野史絵さんの写真

取材後記

愛知淑徳大学 鈴木恵介さんの写真

 取材させていただいた中で最も心に残ったのは、オレンジカフェの運営側と利用者の思いが通じ合っていると感じたことです。一般の人が多く集まる商業施設において、このような場があることは認知症の人、介護者の方にとって気分を楽にし、外出のきっかけになると相談者の方がおっしゃっていました。

 自分の家族の辛さを他人に打ち明けることは難しいことですが、同じ状況の相手になら苦しみを打ち明けることができる。一人ではなく仲間がいるのだと思える大切な場所であると感じました。企業がこのような活動に積極的に協力するのは、地域の人たちとそれに関わる団体の広報活動に対しても大きな影響を与えていくと思います。

同朋大学 中野滉大さんの写真

 オレンジカフェが、買い物という目的プラス認知症のご家族とご本人の憩いの場になっていると思いました。

 お話を聞いたサポーターの方が「昔はこんな場所どころか認知症に対して理解してもらえず、介護を一人手探りで行っていた。そしてオレンジカフェがその経験を伝えられる場所だ」とおっしゃっていました。現在介護を行っている人は「さまざまなところへ行くことが大切」とおっしゃっていて、認知症やそのご家族にとって外に出ることが大事なのだと思いました。

 オレンジカフェは気軽に立ち寄ることができる介護者の大切なリフレッシュの場であることが分かりました。

同朋大学 五條はるなさんの写真

 企業が取り組むことで、買い物のついでやフラッと気軽な気持ちで立ち寄ることができる場所になるのだと思いました。取材する前は専門職の方との相談だけなのかと予測していましたが、当事者同士がお話をして、愚痴や不安な気持ちを吐き出すというピアカウンセリング部分が大きいというのも発見でした。

 お話の中で特に印象に残ったことは、介護者の男性が、「妻に叩かれる分には痛くないけど、自分が認知症になって妻を叩くようなことにならなくて良かった」とおっしゃられていたことです。当事者の方にお話を聞けてとても勉強になりました。