企業の介護アクション Student Report(学生レポート) 企業の介護アクション Student Report(学生レポート)

Student Report03:トヨタ車体株式会社×介護の魅力ネットあいち 学生インタビュアーの写真

企業紹介

トヨタ車体株式会社

 基本理念に「豊かな社会づくり」「お客様第一よい商品」「創造力と活力」「共存共栄」を掲げ、その実現に向けて取り組むトヨタ車体株式会社。社会から必要とされる企業であるためには企業としての社会的責任を果たし、地域から信頼されることが大切であると考え、トヨタ車体グループらしさを生かした領域「環境・福祉・次世代育成」で社会貢献活動の充実に取り組んでいます。ハンドボール教室、バレーボール教室などでのスポーツ支援、環境学習会の開催などの地域と連携した活動や間伐・植樹などの緑化活動も行っています。

どんな介護アクションに取り組んでいますか?

移送サービス「おでかけくん」

移送サービス「おでかけくん」

 トヨタ車体株式会社のボランティアサークルが行っている「おでかけくん」は、体が不自由な方や車椅子を使用されている高齢者など、一人では外出が困難な方を対象に行っている移送サービスです。土・日曜日に、買い物や病院、レジャーなど、利用希望者を目的地まで福祉車両で送迎します。「おでかけくん」は、刈谷市社会福祉協議会と協働で22年前からスタートし、三重県いなべ市では15年前から活動を行っています。

移送サービス「おでかけくん」の流れ

移送サービス「おでかけくん」の流れ 移送サービス「おでかけくん」の流れ

福祉車両の紹介

福祉車両の紹介 福祉車両の紹介

インタビュー

開催に至る経緯や支援の思いを担当者さんに聞きました。 開催に至る経緯や支援の思いを担当者さんに聞きました。

ートヨタ車体 総務部総務室社会貢献活動担当 中西宣裕さんのお話ー

 トヨタ車体は社会貢献活動の3本柱「環境・福祉・次世代育成」を掲げ、さまざまな活動を行っています。その中の福祉分野の活動の一つである移送サービスには、刈谷市と三重県のいなべ市合わせて17人の社員が参加しています。

 

 福祉分野では他に、富士松工場の北側にある「トヨタ車体・刈谷 ふれ愛パーク」内に福祉施設の方を招いて、そこで育てたさつまいもを収穫する芋掘り体験を行ったり、就労支援として障がい者施設の方が作ったスイーツを社員食堂で販売したり、スペシャルオリンピックスへの社員ボランティア派遣、ボッチャ体験会を催してパラスポーツ界を盛り上げる活動なども行っています。

 

 弊社では福祉車両の企画・開発から生産までを手がけていることもあり、「トヨタ車体らしさを活かして地域のために活動し、お役に立ちたい」という社員の思いを引き継いできました。移送サービスを始めて20年以上になりますが、今後も活動を継続していくことが大切だと考えています。

トヨタ車体 総務部総務室社会貢献活動担当 中西宣裕さんの写真

「おでかけくん」でドライバーを担当するボランティアサークルの社員のみなさんのお話 「おでかけくん」でドライバーを担当するボランティアサークルの社員のみなさんのお話

ー三浦芳幸さんのお話ー

 私が福祉車両の開発に携わっていたころ、実際に車を使用する方と接することで、どんなことが必要とされているのかを知りたいと考えたことがボランティアを始めたきっかけです。今回は、たまたま同じ部署の知り合い同士が参加しましたが、仕事では顔を合わせることがない人ともこのボランティアサークルで知り合えるので、人脈も広がりました。社内のボランティアサークルのリーダー同士が話し合う横の繋がりもあり、新しい活動のアイディアが生まれることもあります。

ー谷和徳さんのお話ー

 福祉車両の開発を担当するようになり、どのような使われ方をするのか知りたかったというのが活動を始めたきっかけです。運転も好きなので、好きなことで誰かのお役に立てるなら、という思いもありました。目的地に向かう車内でみなさんが楽しそうにお話され、帰りにはゆっくり寛いでいただける。車の中でも団らんできるのがいいなぁと初めて参加したときに思い、活動を続けています。移送の際に気をつけていることは、安全運転はもちろん、急発進、急ブレーキをしないこと。普段の運転でも当たり前のことですが、利用者の方は高齢の方が多いので、特に優しい運転を心掛けています。

移送サービス「おでかけくん」利用者の方に聞きました。 移送サービス「おでかけくん」利用者の方に聞きました。

ー知立市の視覚障害者支援グループ
「ボランティアあいタッチ」のみなさんのお話ー

≪代表の都築さん≫
 知立市の社会福祉協議会に置いてあったパンフレットで「おでかけくん」のことを知りました。利用するのは今回で3回目です。視覚障害者のグループなので見ることにはハンディがあり、私たちガイド(ガイドヘルパー)も含めて皆さん食べることが大好き。これまでメロン狩り、みかん狩りと利用しましたが、参加した方々にとても喜ばれました。今日は20人が参加して12人を福祉車両に乗せてもらいました。私たちボランティアは女性が多く、運転が心配なこともあります。私自身も昨年、運転を取りやめました。運転手が足りなくて大変なので、「おでかけくん」で車を出していただけることは本当にありがたいです。

≪柳澤さん≫
 運転手さんがいてくれることで、私たちガイドは介助に専念できます。運転しながら介助というと注意力散漫になり事故の原因にもなると思うので、頼りがいのある運転手さんたちのおかげで助かっています。今日も車内で話が盛り上がりました。自分で運転していたときは、なかなかこちらから参加者に話し掛けられませんでしたが、移送サービスを利用することで交流もより活発になったと思います。

取材後記

同朋大学 五條はるなさんの写真

 私はCSRという言葉を知っていましたが、実際の現場を見た経験がありませんでした。CSRという言葉には、会社が社会に対してやらなければならないという強制的なイメージを持っていました。しかし、トヨタ車体さんの「おでかけくん」というサービスを通して、社会で困っている人達を助けたいという一人ひとりの社員の思いを実感することができました。サービスを利用される方の話を聞いても、このサービスのおかげでスタッフは介助に徹し、移動中から楽しい雰囲気を作ることができると感謝されていました。この取り組みはなかなか外出しようと思っても人手が足りなく、出掛けられない人たちに対して、多くの機会を与えることができる素晴らしい取り組みだと思いました。またトヨタ車体ボランティアサークルの方から利用されるみなさんが楽しんでいる姿を見るのがやりがいだとお聞きし、自ら関わったことが誰かの役に立つことが嬉しさや楽しさにつながっているのだと知りました。
 介護・福祉の社会課題は多くあると思います。その課題を解決するため、確かに「おでかけくん」で使用される車のように便利な機能はたくさん生み出されてきていると思います。ですが、今回、現場を見て、介護・福祉の問題は最終的には人が関わらないと解決できない問題なのではないかと感じました。どれだけテクノロジーが発達しようが、最後には側にいる人が必要です。サービスを生み出すだけではなく、このように企業がCSR活動として取り組むことは今後、大事になってくると考えます。

同朋大学 中野滉大さんの写真

 私はこの企画を通して初めて企業がこういった社会貢献の取り組みをしていることを知りました。お話を聞いて、仕事とボランティアサークルの両立は大変なのではないかという疑問が浮かびましたが、移送サークルに加入されている方々はこの活動が楽しいと言っておられました。義務感でやっているのではないと分かり驚いたものの、確かに楽しいという気持ちがなければ続けられない活動であると感じました。
 今日の課題として、福祉の担い手が少ないことが挙げられると思いますが、それは裏を返せば、専門職が少ないということではないかと考えました。また、私は福祉の特徴として『誰でもできる』ということが挙げられると考えています。トヨタ車体さんのボランティアサークル活動はまさに誰でも参加できるものであり、自分の専門や好きなことを活かした理想の福祉の在り方であると感じられました。
 移送サークルに参加されている方は車の中で楽しそうにされている利用者の方を見てやりがいを感じており、移送サービスを利用されているボランティア団体の方はこの活動があるから自分たちのボランティアが成り立っていると言っておられました。それらを聞いてさらに関心を持ったとともに、自分も就職した際にはこのような活動に参加してみたいという気持ちになりました。また、この活動が広がり、認知されていくことでより良い地域の発展や福祉の拡充に繋がると思いました。