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スペシャルコラム

多田えりかさん

多田えりかさんプロフィール
小牧市出身。同志社大学文学部社会学科社会福祉学専攻(当時)卒業後、社会福祉士資格を取得。特別養護老人ホームやデイサービスにて介護職員、生活相談員、施設長として勤務。並行してラジオ、テレビ、イベントなどでタレント活動を20年以上行う。「福祉・介護の楽しさを広めたい!」との思いで、現在もタレント活動を継続しながら地域包括支援センター(名古屋市熱田区いきいき支援センター)にてケアマネジャー(介護支援専門員)として活躍中。

更新日:2026年2月
取材日:2026年1月28日

ラジオやイベント会場で、明るく爽やかな声で私たちの耳と心に心地よい風を吹き込み、穏やかなひとときを演出するタレントの多田えりかさん。愛知県を中心に東海地方で長年、芸能活動を続ける一方で、介護の現場でも長く働き、現在は地域包括支援センターでケアマネジャーとして忙しい毎日を送っています。地域の高齢者と家族のために奮闘する多田さんに、介護職への思いと、“二足のわらじ”を続ける理由を伺いました。

中学生のときのボランティアで介護職に興味

 私が介護に興味を持ったのは、通っていた中学校が福祉協力校に指定されたことがきっかけです。それまでお年寄りが周りにいなくて苦手意識があるくらいだったのですが、ボランティアで老人ホームに行くことになりました。山の奥にある老人ホームで正直、「どんな所?何をすればいいの?」と怖かったです。今思うと認知症の方だったのだと思います。話し掛けても反応が返ってこない方に食事介助をするように指示されて、私が食べ物を口に運んだ瞬間「おいしい!」って言われたんです。お話しできない方でも、好きなものを食べるとこんなに笑顔になるんだ!と、その変化に驚きました。それからは、私がアプローチしたことで反応が返ってくるやり取りが楽しくて。このお仕事、ちょっとやってみたいなと思いました。自分は元々ひょうきんな性格なので、私みたいな人間がいれば、ホームも明るくなるんじゃないかって考えたことも介護職を目指した理由です。専門的な研究をして、当時の施設にあった閉鎖的なイメージを変えたいとの思いもあり、福祉が学べる大学へ進学しました。

多田えりかさん

介護の楽しさを現場から伝えたい、“二足のわらじ”を続ける理由

 卒業後は特別養護老人ホームに就職。仕事内容に関しては、分かっているつもりだったものの、就職したからこそ湧いてきた疑問もありました。例えば、毎日同じ時間に全員のおむつ交換をする。入浴も週2日と決められていて、車椅子で一斉に運んで流れ作業のように入浴介助をするといったことです。当時は介護保険導入直前で、まだ認知症の方のことを痴呆と呼ぶ時代。「ご本人のペースで、その方らしく、楽しく過ごせる生活」になんとか変えられないかとの思いを抱きつつ、働いていました。
 そんなとき、私と働いている施設をテレビ局が取り上げてくれることになりました。取材の際、なぜ介護の仕事に就いてるのかを尋ねられ、いろんなことをお話しした中に、私が学生の時にいじめられた経験があったことも言いました。すると、いじめられた過去の辛い経験を癒すために介護の仕事に就いたと放送されてしまったんです。いや、それは違う。私は単純に介護が楽しいし勉強もしたいし、もっと変えられる何かがあるんじゃないかと思って今ここにいる。違う捉え方をされてしまったと思って、悔しい気持ちになりました。医師や看護師に子どもたちが憧れるように、介護職も誰かの憧れになる、もっと評価されるべき仕事だということを自分の手で、口で伝えたいと思い、だったら今度はアナウンスの勉強をしなきゃ、番組を作るってどういうことなのか勉強しなきゃと、メディアの世界に飛び込みました。
 その後、介護の仕事をしていない時期もあったのですが、デイサービスで相談員と施設長をしながらタレント業も続けるようになり、現在はラジオパーソナリティーや司会業と、ケアマネジャーの両輪で働いています。なぜなら、介護の現場からメディアを通して「介護の楽しさ」を伝えたいからです。介護の現状を知ることが発信者としては非常に強みになりますし、メディアで培った伝え方、しゃべりの技術は介護の現場でも役立ちます。両方の経験が互いに良い影響を与えながら仕事ができていると感じています。

多田えりかさん

利用者さんの生きる力を引き出す介護職はクリエイティブな仕事

 介護の仕事は、その方の生きる力を引き出せるところが最大の魅力だと思っています。例えば家で座りっぱなしだった人がデイサービスで運動することで歩けるようになった!といったことが数少ないですけど、あります。そういった変化や、何歳になっても人間は進化できるのだという現場に立ち会えた時に、よっしゃ!って思います。
 私は今後もケアマネジャーとして色々な方の相談に乗るためには、介護・看護のサービス、医療、地域の集いの場などの社会資源、制度、社会保障などの知識を増やし続けることが大切だと思っているので、ここで先輩方に教えていただきながら勉強を続けていきたいです。更には、介護サービスを利用している方々の「いきいきした姿」をケアプランに入れたいという希望を持っています。「昔やっていた社交ダンスをもう一度踊りたい!」「青森ねぶた祭に行きたい!」といった願いや、デイケアを利用しながらも美容部員として週数回働いている方、DIYの講師経験をお持ちの方など、それぞれに抱く夢や仕事・特技などをプランの目標に入れたい。「年を取るとできないことが増えてくる」=「誰かのお世話になる」だけではない。介護サービスを受けているからこそ見えてくる「人生の次のステップ」を全力応援し、クリエイトできるケアマネになりたいと思っています。
 今回、私の夢や目標をお話ししましたが、実際の介護現場では息つく間もないほど忙しく、体力気力を奪われることもたくさんあります。最前線で働いていらっしゃる皆さんもそうでしょう。でも、ご自身を信じてぜひ挑戦していただきたい。辛さやしんどさより、利用者さんの“できる”を見つけるところにベクトルを変えてみてください。介護職は誰かの生きる力を引き出す、最高にかっこいい、クリエイティブな仕事だと思うので、誇りを持って続けていきましょうと伝えたいです。
 私は普段から華やかな色合いの洋服で訪問に行きます。あるときの訪問で、利用者さんがおしゃれなスカーフを巻いていて「あんたがいつも可愛らしい格好しとるもんで、私も50年前のスカーフをタンスから出してきた」って言ってくださった。すごく嬉しかったです。よく考えたら、これも私が中学時代に施設で感じた、暗いイメージを払拭する1つの方法だったのかもしれません。わずかな時間でも明るくなっていただきたいですし、そんな楽しい掛け合いのひとときをいつか「利用者さんがラジオ番組にご出演!」という形で実現できたら・・・。たぶん、めっちゃ聴きごたえあると思います!

多田えりかさん
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