取材:2024年12月19日
私の母は看護師で、介護施設で働き始めたことが介護の仕事について知ったきっかけです。母からの話で介護について耳にすることが増え、興味を持つようになりました。そのとき私は高校2年生。漠然と調理関係の仕事がしたいと思っていたので、家政学も学べる高校に通っていました。
母の話を聞くまでは、介護の仕事に対して正直、マイナスのイメージを持っていました。報道での悪いニュースなどを見ていたからです。でも母は、自分の体験から介護職員さんたちの仕事ぶりや施設のこと、将来性など話してくれて、介護職員になることを勧めてくれました。また、介護施設で働き出す前から手に職をつけることが大事だと言われていたので、その点でもお勧めだったのだと思います。母親と同じく、父も看護師として働いているので両親ともが応援してくれています。最近は、母が話す介護系の専門用語が聞き取れるようになってきたのがちょっと嬉しいです。
それまで調理の勉強をしていたことで進路に関して全く悩まなかったといったら、そうではありません。高校3年生のときは本当に悩みました。たまたまこの学校でオープンキャンパスに来たとき、学校の“目の前の人に寄り添う「いちばんの存在」になる”というポリシーにひかれて介護系に進むことを決心しました。
高校のときの友だちは皆、調理関係の仕事や学校に進んだので、たまに会うと「介護の仕事は大変だよね?」って聞かれます。私は「意外にそうでもないよ」と答え、これまで行った4回の実習で感じた楽しさを伝えるようにしています。実習で特に印象に残っているのは、グループホームでの最初の実習です。コロナ禍で長い期間、外出できなかった利用者さんと一緒に散歩に出掛けました。そのときの利用者さんの嬉しそうな表情は忘れられません。私たちが普段、当たり前に感じている風や空気感、季節の変化も、1人では出掛けられない利用者さんにとってはとても貴重なものだということに気付きました。本当にいい時間だったと今も思います。

私はもともとコミュニケーションをとることが得意ではありません。初めての実習でもどう話しかけたら良いのか全然分かりませんでした。でも職員さんが話のきっかけをくださって、周りに助けられながら実習を重ねるうちに話しかけることもできるようになりました。本当に自分でもびっくりするほどです。コミュニケーションは得意かと聞かれると、今でも大好きとまではいきませんが、入学当時の自分とは違うと思います。最初はコミュニケーションをとりたくないというのがあったのが、今では楽しさを感じるほどです。他にも実習でたくさんのことを学ばせてもらっています。高校を卒業してすぐ働く道もあったと思いますが、学校で学んでおいて良かったと痛感しています。
ICT化が進み、ロボットも普及する中で、利用者さんに寄り添うケアというのは人間にしかできません。そこが介護職の一番の魅力だと思います。触れ合いの中で、利用者さんの表情や仕草から、体調の変化に気付くことは人間にしかできないことです。利用者さんと関わる職種は看護師、医師、栄養士、リハビリ職などたくさんありますが、一番長く関わるのは介護職です。私は利用者さんの些細な変化、体や表情の変化に気付ける介護福祉士になりたい。そのためには利用者さんに関心を持つ努力を続け、利用者さんに寄り添い、信頼される介護職員になりたいです。

卒業後は、介護老人保健施設(老健)に就職することが内定しています。老健を志望した理由は、色々な職種の方と医療連携を通してチームケアを行うことに憧れがあったからです。介護技術に関しては、働きながら覚えることもできると思いますが、認知症の方の思いやコミュニケーションの方法などの学びや、さまざまな種類の事業所での実習など専門学校に進学したからこそ経験できたことがたくさんあります。それと、自分と同じ夢を持つ友人と出会えたことが本当に大きかった。専門学校に進んで本当に良かったです。
私は母が介護施設で働くようになる前、介護職に対してマイナスイメージを持っていましたが、母の話や学校での授業や実習を通して介護の魅力に気付くことができました。私と同じように一人でも多くの人に介護の魅力が伝わるといいなと思っています。