取材:2025年6月30日
なぜ介護の仕事に就いたのかを説明するのは難しいのですが、10年間製造業で働いて転職したときのことを振り返ってみると、まず人の役に立ちたいとか、困っている人を助けたいという思いが根本にありました。プラス、小学生のころに他界してしまった鹿児島の祖父母が、会いに行くとただただ可愛がってくれて、すごくいい思い出しかなかったこと。お年寄りに対して良いイメージしかなく、助けが必要なら力になりたいという気持ちから介護業界にはずっと興味がありました。
このまま製造業で働いても、これ以上のキャリアアップは難しいのかなと思い始めていたこともあり、ずっと興味を持っていた介護の世界に何も分からないまま飛び込みました。お年寄りのお手伝いをするのかな?くらいの感覚です。不安は全く無く、だめならまた次を考えればいいという気持ちでした。

最初、介護老人保健施設で働き始めて感じたのは、想像していたほど大変ではないとうこと。「人はこういう風に年を取っていくんだ」とか、病気や認知症のことなど学ぶことがたくさんありました。こんな世界があるんだという新鮮さの方が強く感じると同時に「転職して正解だったな」との思いが強くなっていきました。
経験も知識も無くて介護の仕事を始めることをためらっている方には、僕のように専門的な教育を受けていなくても、やってみたいという思いがあれば、やっていけると伝えたいです。男性社員も僕が入ったころと比べると随分増えてきている印象ですし、男性は特に異業種からの転職が多い。待遇も改善されてきている結果だと思います。
僕は介護業界に関しては経験以上に人間性の方が大事だと感じます。色々なことに気付いてすごいなって思う人でも、経験が浅く、介護福祉士の資格にもまだ挑戦していない場合もありました。自分がやりたい、やれるという気持ちがあればやっていけますし、必要な人材になっていくんじゃないのかなと思います。

入居される方はほとんどの方が施設で最期を迎えます。僕たちは人生最期の数年間に関わることになる。その責任を感じると同時に、普段の会話から僕たちの知らない時代の話を聞けることが楽しいです。この職業に就いていなければ、そういう機会はなかなか無いですからね。
ご本人やご家族は不安を抱えている方が多いので、寄り添って力になれることが自分の人生にとっても貴重な体験になります。また、看護師やリハビリ職とコミュニケーションを取りながら連携して利用者さんのケアを行うことで、多職種の社員の意見を聞いたり、そんな視点もあったのかと発見できたり。常に学びがあり、成長できる職場ですし、お互いを高め合える面白さを感じます。
それは他の職種とだけではなく介護職員同士でもそうです。ただ黙々と利用者さんと接すればいいのではなく、他の介護職員とコミュニケーションを取って刺激し合いながら、自分はここまでできていなかった、よし、次からはこうしよう!と、高め合える点も楽しい。認めて、認められて、認め合う。そんなところも介護職のやりがいだと感じます。
副施設長になって、現場で利用者さんと接する以外に、管理者としての事務仕事が増えました。パソコンにも戸惑うことが多いです。社員の管理についても、人数に余裕をもってできる状況ではないので苦労が多いです。ただ、この苦労は自分のキャリアアップのためにも必要なことですし、介護保険のことなど学んでおくことも大事だと思っています。順当に行けば施設長にステップアップする流れにはなると思うのですが、そのために今は与えられた仕事や求められていることをしっかりこなしていきたいです。
テレビなどで取り上げられることだけが介護ではないと常々、思います。仕事って大変なことがそれぞれありますが、それは一部です。介護の仕事においても、どんな施設や職種があり、色々な働き方があるという現状を、一度自分で調べてみてほしい。やっぱり大変なんだというよりは、もう一歩踏み込んでみるとリアルなところが見えてきます。そうすると見方が変わってくるはずです。
給料も随分、良くなっています。休みもちゃんと取ることができます。何より人の生活に一番近くで関わっていく仕事です。目に見える以上の魅力があると感じていただきたいです。施設見学だけでもいいですし、ニュースで取り上げられている以外の現実を自分も目で確かめてみてください。