取材:2025年8月29日
ヘルパー2級から介護職員初任者研修に変わるタイミングで、受験料が少し高くなるという噂を聞いて、そうなる前に資格を取っておこう!くらいの軽い気持ちでヘルパー2級の資格を取得しました。元々、母親が介護業務をやっていて、介護の仕事に抵抗が無かったことも影響していたかもしれません。資格取得から数年後、美容師をしていた29歳のとき転職を考え、危険物取扱者など持っていた資格の中から、どれを使うか考えて介護業界に決めました。今働いている施設に就職して12年目。介護リーダーをしています。

介護は1人ではなくチームで行うものです。みんなが目標に向かって一人の利用者さんにアプローチしていく。利用者さんは最初、こういう人が入所しますよ、と介護度や症状などの基本情報が書かれた介護サマリーが送られてきます。その後、御本人と会って、一緒に生活して、チームで対応する中で、これまで出来なかったことができるようになったり、その方の能力を引き出せたとき、チームとして「よっしゃ!」という気持ちになれる。その達成感をチームで分かち合えたときが嬉しい瞬間です。
例えば、入所時は車椅子に乗っていた方が、もしかしたら歩けるかもしれないと思って、機能訓練指導員と相談しながらリハビリをして、歩行器を使えるようになったことがありました。また、ずっとおむつだった方がトイレで排泄できるようになり、夜間はおむつでも昼間はおむつ無しになったこともあります。介護度は普通、上がる一方です。でも、その中で能力を見いだせる身近な存在が介護職員だと思います。
介護の仕事は大変だとか3Kだとかよく言われますよね。僕自身も言われることがあります。でも、どんな仕事でも大変なことはあるんじゃないですか。外から見ているだけでは、その大変さが分からないだけです。介護職員にとって排泄介助は仕事の一部。僕は抵抗ありませんでした。利用者さんの身体をきれいにすることは大切な仕事の一部ですし、きれいにすれば利用者さんも僕もうれしいですしね。あと、今思い返すと良かったのは、入職したときに教えてくれた先輩が、これ終わったら休憩してきていいよーとか、仕事にメリハリをつけて指導してくれる先輩だったので、自分もそこまできついと思うことなく慣れることができました。

ですから、介護職に就いたばかりの人には、きついと思っても半年は続けてほしい。慣れれば全然きつくないし、季節も行事を通して味わってほしいんです。介護職はある程度、続けないと見えてこない部分もあります。また、利用者さんを継続して見続けることで分かる利用者さんの頑張りが僕らのモチベーションにもなります。入って2、3か月で辞めて…を繰り返すのは、教える方も負担だし、本人も何の経験値にもならないのは残念なことですよね。
キャリアアップのことは、真剣に考えたことはありません。ただ、パソコンの前でずっと座っているのはしんどいので、現場全体を見渡しながら、職員が少ないときに応援に入るくらいの感覚ではいたいですね。具体的にこういう身分になりたいというのはありませんが、自分も仕事仲間も余裕を持って働くことが目標です。根を詰めてしまうと辛いですから。プラス面白そうな介護の資格があればチャレンジしてステップアップしていきたいと思います。

介護の現実を知らない若い人たちには、ぜひ一度施設を訪ねてほしいです。年に一度、職場体験で中学生が来てくれるのですが、そんなときは2人1組で車椅子に乗ったり、押したりしてもらっています。体験した子は体験していない子と比べると、介護職に対しての意識が変わってくるように思います。あと、車椅子だと少しの段差でも超えられないので、街で困っている車椅子の人がいたら押してあげると優しいよ、と伝えています。それが介護職の魅力を知ってもらうことに繋がるかどうかは分かりませんが、誰かの役に立つことは自分も嬉しいと知ってもらえたらいいですね。