取材:2025年11月5日
介護の仕事に就いたきっかけは、友だちに誘われたからです。20年くらい前、私とその友だちは、介護とは関係の無い製造業の職場で一緒に働いていて、2人とも転職を考えていました。先に辞めた友だちが再就職したのが介護業界。「楽しいよ」と誘われて、じゃあ私も!と軽い気持ちのまま同じ特別養護老人ホームで働き始めました。
実際に楽しかったので、自分に合っていたのかなと思います。前はひたすら静かに作業する仕事でしたが、介護は人と接することが多い仕事ですよね。知らない者同士が信頼関係を築き、「ありがとう」と言われるのが嬉しかったですし、特養で暮らす方たちと一緒に生活する、一緒に過ごし、みんなで楽しめるレクリエーションを考えることにやりがいを感じていました。排泄介助や入浴介助は赤ちゃんにも必要ですし寝たきりの方にも必要なことです。人生って誰しも順番にそういう時期が巡ってくるのだとの考え方だったので、全く抵抗はありませんでした。
特養では介護の基礎を学ばせてもらいましたが、子どもの習い事の関係で退職。一度は製造業の仕事に戻ったものの派遣切りに遭い、あらためて自分に合っている仕事を、と考えた結果2008年にこちらの施設に就職して今に至ります。
コミュニケーションを通して信頼関係を築いていけることが介護職の魅力の一つだと思います。ケアだけが介護ではなく、日々の生活に何か問題が起きたとき、それに気付いてどう対処するのか。それにはご家族とも情報交換が必要ですし、住環境のことなら住宅の業者さんに頼らなければなりません。老健ですから施設を卒業した後に、地域でどう過ごしていくかを考えることが大切です。長く働いていると連携する方もどんどん増えていくことに気付き、情報の共有やコミュニケーション能力、洞察力、何より思いやりの心が必要であると分かってきました。自分が身についていなかったものをここで教えてもらい成長できることは、介護の仕事に就いたからこそです。人生の大先輩たちである利用者さんと日々接して、教えてもらっていることも本当に多い。自分の人生の幅が広がることに繋がっているのではないかなって思います。
そんな中で上司から勧められて「介護技術コンテスト」に出場しました。これは裏話なのですが、私の出場順は最後で、一人ずつ控室から出て行ってしまうんです。あまり考え込まないでおこうと隣にいた田島さん(準グランプリ)と話したら、とても楽しい方で。緊張しすぎて自分のリズムを崩してしまうといけないなと、友だちとの会話みたいに話していたのでリラックスできたように思います。いよいよ最後1人になってしまったときは、やることが無いのでラジオ体操をしていました。
平常心で臨めたからか、おかげさまでグランプリをいただきました。コンテスト以降、誰が聞いても心地よい声掛けというのがあることを再認識し、言葉掛けを一層気にするようになりました。気を付けていることは周りにも伝わるので、広げていけたらいいなと思っています。そして今年も後輩がコンテストにエントリーされましたので、一方通行にならないように声掛けや確認の仕方など裏話も含めて伝えました。当日は応援に行きますよ!
介護の仕事は一昔前まで大変とかきついとか言われていましたが、今はDX化で記録の効率化や体に負担がかからないような機械の導入などの対策も進んでいます。介護は一人で行うものではなく、いろいろな人たち、ここで言うと看護師がいてリハビリスタッフがいてそして支援相談員がいる。更に事業所内にはケアマネジャーもいます。チームワークで働くのが介護です。私も、さまざまな情報を持ち寄って対話することによって、より良い道を見付け、実践したことで利用者さんの状態が改善していく様子を実体験できることが楽しいですし、それが介護職の魅力なのではないかなって思っています。今、働いているのが通所リハビリテーションなので、利用者さんが普段どのように生活しているのかを訪問して確認し、家で生活するためにはどうしたらいいかをみんなで一緒に考える。その行程にやりがいを感じます。
介護職は仕事をすることで介護力が身に付くだけでなく、コミュニケーション能力や思いやりの心など人として成長できる仕事です。それに介護は特養やデイサービス、通所リハビリテーション、訪問ヘルパーなどいろいろな種類があり、働き方もさまざまです。自分に合った職種や働き方を知っていただけたらと思います。





