取材:2017年5月1日
小さなころから子供の世話をすることが好きで保育士を目指していました。高校生のとき、祖母が脳梗塞で倒れ、介護が必要になったことをきっかけに、母から介護の仕事を勧められたのですが、私には無理だと思っていました。介護イコールきつくて汚いと思い込んでいたからです。でも祖母を介護して下さったヘルパーさんたちの仕事を実際に見たり、ヘルパーさんからお話を聞くうちに私もできるかもしれないと思い始めました。
今、振り返ってみると介護職がどういうものか分からないうちは、介護職イコールきつくて汚いという固定観念を持っていたように思います。実際働いている方と接してみると、介護の仕事にはやりがいがあり、働きながらでも国家資格(介護福祉士)を取ることができると分かりました。私は早く自立したいと思っていたこともあり、進学して資格を取ってから働くのではなく、働きながら資格取得を目指すことにしました。
今の会社では訪問入浴とデイサービスを経験した後、自分から希望して訪問介護を担当して8年くらいになりました。
訪問介護で利用者さんのお宅に初めてうかがうときは緊張しましたが、だんだん慣れてきて今は自然に訪問できます。経験を積むうちに慣れていけると思います。
訪問介護の難しさは、お宅によって使用しているものが違うことです。また、お宅によって“普通”も違います。掃除機の掛け方、ご飯を作るときの野菜の切り方一つとっても“普通”はお宅それぞれ。ですから最初はサービス提供責任者が担当し、そのお宅の“普通”を把握して、それぞれのお宅の希望を他のヘルパーと情報共有した上で、ケアの内容を固めていきます。

利用者さんによってオーダーメイドの介護を行うことは大変なことですが、そこが訪問介護の良い点・魅力だと思います。訪問介護は1対1なので、利用者さんに応じたケアが行えます。利用者さんが今まで生きてきた人生に私たちが寄り添って、ストレス無くご自宅で過ごせるのが一番。私たちのやり方を押し付けるのではなく、利用者さんに合わせ、利用者さんが今まで通りご自宅での生活を保つことができるのが訪問介護の魅力だと思います。私たちは日頃からいろいろなお宅にうかがっており、その経験により何気ない会話の中から利用者さんのご自宅での様子を感じ取って、利用者さんが少しでも楽に過ごせるよう提案したり、介護者さんが介護をしやすいような創意工夫をしています。それで感謝されるととてもうれしく、やりがいを感じます。
訪問介護は利用者さんご本人だけでなく介護者さんを支える喜びも多く、何より自分を待っていてくださることを実感できる喜びがあります。同じ介護職でも在宅・施設でいろいろな働き方、役割があります。自分に合った働き方を見つけられるのも介護職の魅力ではないでしょうか。
訪問介護のコツは、自分は女優だと思うことかなと考えます。様々な利用者さんと円滑なコミュニケーションを取るためには柔軟な対応や気持ちの切り替えが必要で、時には認知症の方で、その日・その時の状態に合わせた対応をすることもあります。訪問介護は1対1でお宅ごとに“普通”も違うからこそ、色々な役をこなす女優のような、利用者さんそれぞれに合わせたコミュニケーションの仕方を心がけています。

介護は3K職場だとよく聞きます。実際経験してみると大変なこともありますが、いいところもたくさんあります。やりがいのある仕事であると強く感じますし、もっと多くの人に介護の良さを知ってもらいたいです。
私自身も最初は自分には無理だと思っていました。自分には無理だと思ってみえる方や介護の仕事に少しでも興味のある方はぜひ見学だけでも行って介護の現場を感じてみてください。私の夢はいつか訪問介護の会社を立ち上げることです。これまでの経験を生かして夢を実現したい。介護職は夢を抱ける、そしてその夢を実現できる仕事だと思っています。