取材:2017年7月6日
フィリピンにいる母が自分の母親と義理の母親の2人を介護しているのを見て育ったので、大学を出たとき介護の勉強をしようと決心し、ちょうどEPAが始まったので日本に行ってみようと思いました。父の友達に日本で長く働いたエンジニアの方がいたので、いろいろ話を聞いて日本に親しみを持っていたというのもありました。
来日当時はいろいろ悩みました。言葉の壁も文化の違いもある。フィリピンで共同生活をしながら日本語の勉強と日本の方を介護する実習をしてきましたが、やはり言葉が一番問題かなと思います。特に漢字が大変。介護の専門用語もありますし、最初はあまり日本語もしゃべれません。利用者さんに言われたことが一部分からないこともあって、どう返事をするのか、どう対応すればいいのか慣れるまで大変でした。泣くこともありましたし、ホームシックでフィリピンに帰りたいと思うこともありました。でもせっかく日本に来たのだから頑張らなければ!と思い、毎日母に電話して乗り越えました
。
来日して1年間はまず日本語能力試験2級合格を目指し、コミュニケーションをしっかり取れるよう勉強しました。それから2年間は介護福祉士試験のための勉強を週3〜4日、2、3時間くらいずつして、1回で合格できて良かったです。ここは働きやすい職場で、分からないことは同僚が優しく教えてくれました。人間関係もうまくいっていますし、働いている施設が勉強の支援をしてくれたことと、皆さんが親切に教えてくださったおかげで合格できたと思います。

私はEPA介護福祉士候補者の1期生なので、最初のころはほかの職員の方も利用者さんも外国人に慣れていないと感じました。でもこちらから頑張って積極的に声を掛け、たくさん話すことでスタッフとも利用者さんとも信頼関係ができてきました。今ではスタッフや利用者さんとの間のコミュニケーションで困ることはありませんし、利用者さんとおしゃべりするのが楽しいです。認知症の方のケアで、例えば同じことを何度も言われたりすることがあります。そんなときでも全くムッとすることはなく、明るく対応します。元々明るく前向きな性格なのがいいのかもしれません。利用者さんに寄り添うことができるよう、できるかぎり側にいることを心掛けています。
今、同じ施設にEPAの介護福祉士が6人、介護福祉士候補者が2人います。一緒にご飯を食べに行くことがリラックス方法になっています。私はできるだけ長く日本で働いていたいですし、両親を招いて一緒に日本旅行をするのが夢です。将来的にはケアマネジャーの資格も取って、もっと介護を学びたい。EPAで来日する後輩たちの手本になれるよう働き続けたいと思っています。全国老健大会でも発表させてもらいましたが、EPA介護福祉士の存在をもっと知ってもらい、理解してもらうための努力をこれからもしていきたいと思っています。

限られた時間の中で日本語も覚え、介護福祉士の資格を取るのは大変ですが、EPAで来日する後輩には諦めずに頑張って!と言いたいです。自分の国と日本の文化は違いますが、介護福祉士の仕事は日本人、外国人関係なく利用者さんから感謝され、やりがいがある仕事です。資格を取って長く日本で働き、夢を実現してほしいと思います。
※EPA介護福祉士候補者について
日本とインドネシア、フィリピン、ベトナムとの間で締結された経済連携協定(EPA)に基づき、各国から訪日し、日本の介護施設等で就労・研修をしながら4年の間に日本の介護福祉士国家資格の取得を目指す。なお、介護福祉士国家資格取得後は、EPA介護福祉士として引き続き日本で就労可能。