取材:2018年4月25日
私は子どもの頃から近所の子の面倒をみるのが好きで、人の世話をするのが好きという感覚は当時から持っていたと思います。中学2年までは保育士か幼稚園の先生になりたいと考えていましたが、教科書で「少子高齢化」の単語を目にするようになり、今後需要があるのはお年寄りの世話をする人だと思ったんです。このとき、将来の夢は老人ホームで働くことになりました。
高校は普通科の学校に進んでも、気持ちが揺らぐことはなかったです。卒業してすぐに働くことも考えましたが、母の助言もあり、介護福祉学科のある短大に進学して介護福祉士の資格を取得しました。新卒で現在の施設に入職し、今年で11年目。ユニットスタッフの中では一番の古株です。
何年経ってもやりがいに感じるのは、利用者さんがやれなかったことをお手伝いすることで、できるようになったとき。例えば、車いすの利用者さんが歩きたくて歩行器を使い、最初は1歩だったのが5mまで歩けたとき、またその感覚をご自身で味わうことができたときの笑顔は「この仕事をしていて良かった」と思わせてくれます。
ユニットリーダーになってからは、9年が経ちました。心掛けているのは、嫌われる覚悟を持つこと。人に言いにくいことを伝えたり、注意するのは誰でも嫌なものですが、たとえ嫌われてもリーダーとして言わなきゃいけないときがあります。とはいえ、私もユニットリーダーになった当初は人に注意できないタイプでした。

少し前に、職員同士でお互いの良い部分を無記名で出し合う試みが行われ、私には「リーダーとしてしっかりしてきた」「嫌な顔をすることなく率先して職務を全うしている」など、リーダーとしての自分を認めてくれているコメントが集まりました。自分のやっていることは間違っていなかったと思うことができてうれしかったですね。
今年度は、フロアで「みんなは一人のために、一人はみんなのために」という目標を立てました。職員皆が長く勤めたいと思ってほしい、仕事へのモチベーションをさらに上げてほしいという願いも込めていて、そうなれば利用者さんに目が向き、ケアの質も上がると思うんです。私も含めて日々意識するためにも、仕事に入る前に全員の目に入るよう出入り口に目標を書いた紙が貼ってあります。
誤解を恐れずに言えば、介護の仕事はさぼろうと思えばさぼれる仕事ですが、どんな仕事よりも思いやりが必要だと思っています。この人をきれいにしてあげたいとか、おいしくご飯を食べていただくための工夫がしたいとか、心の持ち方次第でやってあげたいこと、やりたいことをどんどん増やすことができるのは、この仕事の魅力でもあります。

介護の仕事をする上では、学歴なんて関係ありません。思いやりに加えて、根性があれば完ぺき。性格も、明るくてユーモアのある人なら、普段はレクリエーションに興味のない利用者さんに参加したいと思わせることができるかもしれませんし、引っ込み思案だとしても、利用者さんの中にはおとなしい人の方が話しかけやすいという方もいます。つまり、いろんな人が活躍できる仕事なんです。
私自身は10年続けてこられたので、今後も大丈夫かなと思っています。ただし、思いやりを持って楽しく働きたいという介護職に就いたときに抱いた初心は忘れずにいたいです。