取材:2020年6月29日
母親が在宅で祖母(母からすれば姑)の介護をしていてデイサービスやショートステイを使っていたので、子どものころから介護の仕事のことは知っていました。でも、福祉科のある高校に進学したのは家から近かったからです(笑)。当時は卒業すればヘルパー2級の資格が取得できるのも魅力でした。
入学してみて感じたのは、介護の仕事は大変だということ。実習で排泄の介助を見て、これが自分にできるだろうかと不安になり、卒業後はサービス業に就きました。
しかし、サービス業で働きながらずっと抱いていたのは、せっかく高校で学び、資格を取ったのにそれを生かしていない残念な気持ちです。そのころ新規で介護付き有料老人ホームがオープンする話があり、挑戦してみようと思いました。新しいところなら自分のやりたいことをやらせてもらえるチャンスもあるのではないかと思ったからです。そこに転職し、生活相談員になったのが22歳のときでした。仕事内容は、契約のための書類を整えたり営業を行ったり、事務作業がほとんど。介護の現場とは少し離れていましたが、現場の人手が足らないときはお風呂の介助などを行っていました。
今振り返ってみて、介護の仕事に転職して良かったと思います。利用者さんやそのご家族、施設のスタッフなど、いろいろな人と関わる仕事が自分に合っていると感じているからです。利用者さんやご家族から相談を受け、それを実現するために自分が動き、手助けしていく仕事なのでやりがいもあります。

ただ、それぞれの思いを利用者さんやご家族、介護スタッフに相互に伝え、それを相談しながら実現していくことは簡単なことではありません。でも苦労した分、利用者さんやご家族に喜んでいただけて「ありがとう」と言ってもらったり、笑顔が見られたときは、やっていて良かったと思います。誰かに喜んでもらうことが今の自分のやりがいです。
施設には前職がコンビニ店員の方、教員の方など異業種から転職された方も少なくありません。僕自身もそうです。高校のとき学んだことを生かせるだろうと言われるかもしれませんが、実際はほとんど覚えていませんでした。知識として頭に入っていたかもしれませんが、それがどこでどのように使われるのか分からない状態で、ほとんどが介護職に就いてから現場で学んだことです。認知症に対する考え方なども、高校のときとは変わっていた部分が多く、あらためて現場で教えてもらっています。ですから介護職は、知識ゼロから飛び込んだとしても学ぶ気持ちがあればやっていける仕事だと思います。
介護職に就いたころは友人から、「排泄介助とかよくできるね。」と言われていました。高校を卒業するときは自分自身もそれが嫌で介護の仕事を選びませんでした。でも、他の仕事を経験して介護の世界に戻ってきたときには抵抗無くやっている自分がいました。それは社会に出てみて、仕事自体がそもそも大変なものなのだと分かったからだと思います。

この会社を選んだのは、元上司がいたという縁もありますが、「自分の親を入居させたい施設」という理念に共感したからです。今の目標は、この施設に以前あった居宅のケアプランセンターを自分がケアマネジャーの資格を取って復活させることです。
介護のことをあまり知らない方にとっては、キツい仕事のように思われるかもしれませんが、実際働いてみるとキツいことばかりではありません。施設の中にいろいろな部署があり、その人に合った仕事があります。楽器演奏や絵画、料理など好きなことや特技が生かせますし、前職の知識が生かせることもあるはずです。
介護の仕事は景気に左右されず安定しています。今後もますます必要とされる仕事なので、ぜひ興味を持って体験してみてください。