取材:2021年6月25日
ずっと専業主婦で、外で働いたことがなかった私が介護業界で働き始めたきっかけは、ただなんとなくというのが正直なところです。特別な理由があったわけではなく、興味があったわけでもありません。知り合いがこの施設を始める際に「手伝って」と言われて、介護職員初任者研修を修了した後、施設の立ち上げと同時に働き始めました。
ですから気負いも無く。ここにいらっしゃる利用者さんは自分の親世代です。でも自分もこの年齢ですし、子育ても経験しています。特に不安もありませんでした。他の職業を知らないのでなんとも言えませんが、仕事ってどの仕事だろうと大変だと思います。利用者の方々の今は、自分たちが行く道です。「年寄り笑うな行く道だもの」って言うじゃないですか。ある程度いろいろな経験をされて他のお仕事を経験してきた人や、私みたいにお仕事の経験がなくても今まで経てきた経験がある方が就くには、介護ってとてもいい職業だと思います。自分の親を看るような気持ちで、この世界に入ってきてほしい。体力も使わないことはありませんが、元気な60代なら大丈夫。人生経験が生かせる面白い職業だと思いますよ。
3年経験を積めば、国家資格である介護福祉士の受験資格も得られます※。60歳過ぎてもちょっと体を使って、親世代の利用者さんと言葉のキャッチボールをしながら自分も知識を深め、頭を使うこともできます。私、国家試験を受けるんだ!と。国家試験を受けることは目標になると思います。そうして働けばちょっと楽しくありませんか。私も今年、受験して受かりました。合格率の高い試験ですが、60歳からでも受かるのよって。今まで運転免許しか持っていなかった私が国家資格をいただける。それはそれで面白いなって思いながら働いています。

途中で辞めたくなったことは一度もありません。せっかく入ったなら、国家試験を受けるまでは頑張ろうと思っていました。あっという間の3年間でした。これから次のステップを目指すか、体力のこともあるので働く時間を少なくしていくのか。自分にはどちらが向いているのか、働きながら選んでいきます。ただ、家族の協力は必要です。働き始めるとき、主人には「これからは今までみたいにできません」って宣言しました(笑)。私の分まではいいから、せめて自分のことは自分でやってくださいって。私が先に逝ったら困るじゃないですか。だから共働きでやっている方は素晴らしいなって。そういう面も分かるようになりました。
※3年の実務経験に加え、介護福祉士実務者研修の修了が必要です。
この仕事をしていると、利用者さんもスタッフもよく笑う人が多いです。つられて笑顔になってしまう。だからいやなことはあまり覚えていません。どんな仕事も辛いと思えば辛い。本人次第だと思うんですよ。

体がキツいんじゃないかという心配があるとよく聞きますが、それは正直無いとは言えません。でもボディメカニクスといって、介護する側もされる側も楽な方法を学べば体を壊すことは防ぐことができます。これは、これからの自分自身にも役に立つ知識です。どうすればうまく立ち上がることができるのか。足腰が弱くなったときのために覚えておいて損は無いと思います。
仕事ではタブレットを使っていますが、すぐ使えるようになります。60歳を過ぎて使い始めた私でもできたのですから、心配しなくて大丈夫。若くして介護に対する高い志を持った人が介護業界で働き、キャリアを積んでいくのはもちろんとても素敵なことです。でも、それと同じくらい社会や子育ての経験を積んだ人も介護業界に向いていると私は思います。利用者さんと歌を楽しむにしても、この世代はこの歌!って分かります。話も通じることが多い。中年以降から働き始めたとしても、それを優れた点として生かせるのが介護のお仕事だと思います
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