取材:2021年8月23日
初めて介護の仕事に触れたのは、小学生のころに課外授業で訪れたグループホームだったと記憶しています。幼いころに母を亡くし、祖母が母親代わりのおばあちゃん子だった私は、いつかは介護の仕事がしたいとこのときから思っていました。接客業などを経て、介護の仕事に就いたのは20代後半になってからで、今の法人に入職して7年目になります。

介護の仕事の現場は、利用者さんと家族のように関われることが良いところの一つとされていますが、全くその通りだと思います。私自身も、無償で自分のことを気にかけてくれる大人がたくさんいる場所だと常々感じていて、「あんた、お付き合いしている人はいないの?」「孫の顔を早く見せなさいよ」などと冗談めかして言ってくださる利用者さんとのやりとりが、楽しみの一つです。
職場が特別養護老人ホームなので、利用者さんの中には認知症の方もいらっしゃいます。認知症ではない方とは異なる接し方が求められますが、そこには喜びもあります。いつもはあいさつをしても無反応な方が「こんにちは」と返してくださるだけでなく、ときどき「ありがとう。元気?」などと会話が続くこともあり、毎日根気よく話しかけて良かったと思わずにはいられません。それを同僚たちと共有すれば、喜びはひとしお。もしかしたら、ご家族より過ごしている時間が長い私たち職員だからこそできるコミュニケーションなのかなと嬉しくなります。

また短期記憶があいまいな方でも、例えば毎日顔を合わせている利用者さんならば、私のことをなじみの顔として認識していただいているようなんです。接する機会の少ない職員のことは忘れてしまっても、私のことは覚えていてくださる。些細なことですが、ありがたく思いましたし、介護職のやりがいは利用者さんとの関わりの中にあることに気付いた瞬間です。
今後の目標としては、職員が今以上に笑顔でいられる職場を作りたいと思っています。もちろん利用者さんのためにより良い環境にすることが私たちの役目ですが、そのために働く職員にとっても良い環境にしたいのです。職員が笑顔でいれば、利用者さんにも伝わります。利用者さんのことばかり考えるのは決して悪いことではありませんが、仕事がハードになりがち。仕方のないこととはいえ、その中で私たち職員にとって幸せな職場作りを考えています。

幸いにも、背中を押すように施設全体がそういう方向に進んでいます。職員が居心地の良い環境、仕事がしやすい環境になりつつあるのです。それに応えようと、私たち職員も一層効率よく仕事ができるように知恵を出し合っています。歯車がかみ合い始めた今、介護職としてますます充実した仕事ができそうです。
