取材:2022年11月21日
僕はもともと飲食業、イタリア料理のシェフをしていました。しかし体調を崩してしまい、退職してしばらく休養を取ることになり、親が通っていたジムに気分転換がてら通うことにしました。そこはご年配の方もたくさんいて、トレーニングをしながらおしゃべりしたり、講座を行ったりして交流を深める場でもありました。親がご年配の方々との仲を取り持ってくれたこともあり、ジムでいろいろな年齢層の方と話をするようになっていきました。

そのうち一人で通うようになり、ご年配の方たちにちょっと人気と言ったら大げさですが、「動けなくなったらこういうお兄ちゃんに世話をしてもらいたい」と言われる機会が増え、介護に興味を持ち、どんな仕事なのかと調べ始めたのが介護職に就いたきっかけです。
それまで介護について何も知りませんでしたし、ニュースや新聞などの報道から仕事内容や給料、働き方に対して良いイメージを持っていたわけでもありません。しかし、どんな資格があるのか、どんな仕事なのかなど、調べれば調べるほど今までのイメージはなくなりました。そのころ通っていたハローワークで実務者研修と介護職員初任者研修を両方取得できる講習があると知り、そこで資格を取得した後、今の法人に就職しました。
資格取得のために実習を行ったとはいえ、直接関わることができたのは数日間です。仕事として毎日関わるのは未経験だったので、やはり慣れるまでは大変でした。実際の職場は思っていたより若い職員が多く、予想以上に男性職員が多いとも感じました。大学新卒の人もいますし、夜間高校に通いながら介護施設でアルバイトをしていた人もいます。いろいろな経験を経たさまざまな年齢層の方が働いていることを現場に出て初めて知りました。それともっと年齢層が高い人が働いていると思っていたので、20〜30代の若い職員も多いことは、ちょっと意外でした。

介護の仕事は毎日大変ですが、利用者さんの笑顔が見られたり、「ありがとう」と言ってもらえるとうれしいです。利用者さんのADL(日常生活動作)が目に見えて良くなることがあるので、そういった瞬間を経験するとやりがいを感じます。病気になったことで体力が落ち、歩けなかった方が歩けるようになったり、何も食べられなかった方がゼリーでもおかゆでも何か食べられるようになるのは、僕ら介護職員だけではできないことです。医師や理学療法士、管理栄養士、看護師ら専門職みんなが協力してチームとしてのケアを行い、利用者さんが元気になるのを見ると、この仕事をやって良かったと思います。
もちろん、そのためには利用者さんと僕たちの信頼関係が大事です。僕も利用者さんとコミュニケーションを取りながら、無理しない範囲でリハビリを頑張ってもらえるよう心掛けています。
飲食業での経験が介護の仕事に生きていると感じることもあります。お店では外国の方を含め、いろいろな方と接する機会があったので、施設で働き始めたときも利用者さんと緊張して話ができないとか、先輩と話せないということはありませんでした。
ただ、利用者さん世代が好きな相撲とか昔の歌謡曲とか、それまで触れる機会が無かったので、この仕事を始めてから昔の曲を聴いたり、相撲のことも興味を持って見るようになりました。今まで知らなかった世界を知ることができるようになり、利用者さんと更にコミュニケーションがとれるようになりました。

中高生の皆さんには是非介護の現場を見に来ていただきたいです。介護施設の時間の流れ方や職員と利用者さんとの明るい雰囲気など実際の現場を見れば、介護職員になろうと思う人が増えると思っています。今はコロナ禍で難しいかもしれませんが、チャンスがあればボランティアや介護講座などに行ってみてほしい。行ってみると僕みたいに“介護の仕事やってみたい”というきっかけにはなると思います。
あと、他の職種で働いている方でも、人とコミュニケーションを取ることが好きな方は向いている仕事です。また、以前働いていた飲食業とは違い、休みも多く決まった時間で働くことができています。働き方や待遇面でもとてもいい仕事だと感じています。
今後は勉強して社会福祉士の資格も取りたいですし、その先にケアマネジャーの資格も取りたいと考えています。介護の業界で働き続けるためにも、経験を積みながらキャリアアップしていきたいです。