取材:2023年4月28日
高校の進路相談で、「ほかの人の力になれたらいいな」と思って介護の道に進もうと決めました。商業科に通っていたので、介護の専門的な勉強や実習をしたことはありません。中学校の職場体験や高校のインターンシップでデイサービス施設に行ったことはあるものの、元気で明るい利用者さんと一緒におしゃべりやゲームなどをする体験でした。知らない世界でしたが、スポーツが好きだったからか体を動かして働きたかったし、人のためになる介護職がいいなと思ったんです。家族にそう話したら、最初は「大丈夫?」と心配されましたが、「自分が決めたことをやりなさい」と応援してくれました。

そして今の勤務先に入職。実際に働き始める前に、介護職員初任者研修を受けさせてもらいました。ゼロからのスタートだったので、すべてが新鮮でした。初めて聞くことばかりで、あぁそうなんだ、こういうことをするんだ、と発見や驚きとともに知識を吸収していきました。何も分からない状態から基本を知ったことで、自分は大丈夫だろうかと少し不安を感じた一方、安心も得られました。
介護の現場で働き始めたら、なかなか教科書通りにはいかなくて…。こちらの思いが伝わらず、意思疎通が難しいなと感じました。先輩の様子を見て、「次はこうやってみよう」と工夫したり、疑問があればすぐその場で確認したりして周りの方に学びながら少しずつ慣れていきました。体力には自信があったのですが、毎日筋肉痛でしたね。たぶん、運動とは違う筋肉を使っているんだと思います。最初のうちは新しいことばかりでとにかく大変でした。でもそれが楽しいんですよね。

1年ぐらい経つと、自分なりの工夫もできるようになり、コミュニケーションの取り方もわかってきて、成長を感じるようになりました。3年目は“濃い”一年でしたね。介護福祉士の資格を取得しようと一生懸命勉強したからです。会社側も、夜勤を減らし勉強会を増やしてバックアップしてくれました。普段は、資格をもっている先輩に質問できるし、勉強会では同じ目的を持つ人たちと一緒に学べて心強かったです。資格を取得した4年目からは、考え方や気持ちが少し変わった気がします。例えば、認知症といってもいくつか種類があり、それぞれ特徴や進行の仕方などが異なることが分かったため、それに合わせて対応方法を変えるなど、幅が広がりました。だけど“正解”はなくて、そこに介護の奥深さや仕事の楽しさを感じます。そして9年目を迎えた今、介護は一人ではできず、チームワークが大切だなと改めて思っています。
私がこの仕事にやりがいを感じるのは、利用者さんに感謝された時です。以前、お花を好きな方を花壇のある屋上にお連れしたら、「花を見ることができたし、外の空気や風景を楽しめて気分転換になった」とすごく喜んでくれました。多くの方にとって最期を迎える場になるここでは、一日でも長く楽しく過ごしてほしい。人間だから悲しんだり怒ったりしても、できるだけたくさん笑顔でいてもらえるとうれしく思います。冗談を言ってみたり、利用者さんの好きなものや趣味を話題にしたりと試行錯誤しています。

こうした仕事が好きなので、将来は現場の責任者である介護主任になりたいと考えています。管理職を目指すというより、現場で利用者さんと接していたいですね。
中学生や高校生の方は、介護というと具体的なイメージが浮かばないことも多いと思うので、職場体験やインターンシップで実際に見て体験してもらうといいのではないでしょうか。もしかしたら暗いイメージをもっているかもしれませんが、明るい雰囲気の職場が多いんですよ。このユートピア第2つくもでは、最近10歳代の職員が増え、私の入職当時より、若い世代の活気があるように感じます。介護の仕事の基本は対面でのコミュニケーションなので、人と話すことが好きな方は向いていると思います。また、今介護職を検討している方には、できるだけ様々なタイプの施設を見学することをお勧めします。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームなど多様な種類があるので、自分に合うところをじっくり見つけてほしいです。