取材:2023年6月27日
以前はエステティシャンをしていて、介護業界にほとんど興味をもっていませんでした。ただ、介護職のお客様は結構いらっしゃり、「大変なお仕事ですよね?」と話しかけると、多くの方が「大変です」といわれ、さらに続けて「でも楽しい」とお答えになるんです。そんな介護の仕事とは「一体どういうものだろう」と徐々に興味がわいてきて、やがて「私もやってみたい!」という思いに変わっていきました。それは約6年前のことです。年齢を考えると今しかないと転職を決意しました。

まったく知識も経験のない業界に飛び込むことに、家族は「大変じゃないの?」といいつつも、応援してくれましたね。私自身は不安がまったくなく、それよりも新しい仕事への好奇心が勝っていました。
今の職場を選んだ理由は、働きながら学校で学べるシステムがあったからです。まったく未知の業界だったので、学校があるというのが決め手でした。それは心強かったですが、仕事は転職前の好奇心だけで突き進むことができず、葛藤の連続でした。経験がない分、お一人おひとり状況が異なる利用者さんに応用がきかず、最初は自分にダメ出しばかりしていました。今日はあれができなかった、これもダメだったって。
でもある時から考え方を変えたんです。今日も勉強させてもらった、と捉え、自分のできることに目を向けるようにしました。できることを一生懸命、手を抜かずにやりきろうと切り替えたのです。
転職後しばらくは、覚えること・やるべきことに追われ、日々ついていくのに精一杯でしたが、1年ほど経つと、この場合はどうしたらいいのかとより良い方法を考えるゆとりが生まれていきました。
今なら「大変だけど楽しい」の意味がわかります。利用者さんという、人生経験豊かな先輩に学び、その人に寄り添い、最期に向かう時をともに過ごせる、尊い仕事だと実感しています。それは難しいけど、とてもやりがいがあります。

もちろん仕事ではありますが、あまり“仕事”という感覚はなく、楽しいことをしている感じです。一日の中で必ず、利用者さんも私も笑顔になる瞬間があり、逆に元気づけられ、与えてもらっているからです。
実は、施設長の前には介護主任を務めており、リーダーとしてみんなをまとめるマネジメント業務も担うようになった時は、不安やつらさでいっぱいになったこともありました。でも、持っている力を精一杯出して一日一日を積み重ねてきたからこそ、今につながり、見えた景色があったのだと感じています。それに改めて分かったのは、介護は一人ではできないということ。お互いに助け合って、周りの人に感謝することが大切です。
介護は、人間だけができる仕事だと思います。知識に終わりはなく、ずっと学び続ける必要があります。利用者さんはそれぞれ違うので、その都度、迷い悩むこともあります。答えのない世界ですが、人と人のつながりを感じ、自分を成長させていけることが仕事の魅力だと思いますね。

もし、異業種から介護業界への転身を考えている方がいたら、ご自身の“思い”を大切にしてくださいと伝えたいです。介護には知識と技術も求められますが、何より相手を思いやる気持ちが欠かせません。誰かの役に立ちたいとか寄り添いたいという思いが最も大事なので、その心を持ってチャレンジしてほしいです。