取材:2023年10月3日
中学生のとき、時々顔を合わすとあいさつをする高齢の方が近所に住んでいました。その方を、車で迎えに来た介護施設の職員さんの様子を見たことが、介護の世界に興味を持ったきっかけです。近所の方は体のどちらかが動かしにくい状態だったのですが、職員さんはしっかりと支えつつ、優しく声をかけて車イスから車へ移乗する介助をしていました。テキパキとした動きとニッコリした笑顔が強く印象に残ったのです。そういう仕事を目指したいと家族に話したら、私の「性格に合っているんじゃない。向いている仕事かもしれないね」「人を支えるのはいいことだね」と賛成してくれました。それで高校を卒業したら介護の専門知識や技術を身につけようと名古屋福祉専門学校に入学しました。
専門学校の授業のなかで実技をおもしろく感じています。生活支援だったり、ベッドから車イスへの移乗だったり…。最近実践した入浴介助も印象的でした。寝たままや座ったままの状態で入浴できる特殊な機能を備えた機械浴槽で、まずは利用者側として寝ながら入浴することに。体が動かなくても意外とラクに入れるんだなと、介助される立場で考えたり感じたりする良い機会になりました。次に介助役をやってみると、相手に安全に入浴してもらうために注意しなくてはいけない点がたくさんあります。利用者さんによって適したお湯の温度は異なるので、声をかけて確認して温度調整したり、体の状態に気をつけながら寒くないようにかけ湯をしなくてはいけません。二人で介助するので、もう一人との連携にも気を配りながら進めました。また、移乗の実技では、練習のときはうまくいったのに、確認テストで戸惑いました。緊張したからというのもありますが、先生がその都度設定する利用者さんの状態に臨機応変に対応するのが難しくて…。

気をつけるところがたくさんあって大変ですが、やり甲斐のある仕事だなとますます感じています。先生がおっしゃるには、施設ごとに設備や方法が異なるケースが多く、学校では「基本中の基本」を教えているということなので、今ここでしっかりと基礎を身につけるようにしたいです。
実習はまだしていませんが、夏休みにボランティアで特別養護老人ホームに行ってきました。利用者さんとのコミュニケーションでは、最初に世間話をしたら、段々と何を話していいのか分からなくなってしまいました。それに、利用者さんの動作や表情などから体調を読み取るよう指導されていましたがうまくできませんでした。実際に利用者さんを目の前にするとなかなか難しいなと感じています。
これから実習が1年生の間に1回、2年生で2回あります。実習では、ボランティアのときにあまりできなかったコミュニケーションを積極的に取りたいし、観察力も磨いて相手とふれあいたい。できれば、実習先の職員さんがどんなふうに介助しているのかもよく見たいなと思っています。観察力については、最近、母の体調はなんとなく分かるようになってきました。毎日顔を合わせて声を聞いているからだと思いますが、以前より日々の小さな変化をつかめるようになった気がします。まずは家族から始めて、ほかの人の顔色や表情や言動などをよく観察するように努めていきたいです。そしてゆくゆくは、利用者さんの変化にすぐに気づけるような介護職員になりたいと思います。体だけでなく、気持ちの変化にも敏感になって、利用者さんの心に寄り添う介護をしたいです。

介護職は利用者さんの一番近くにいる人。相手の人生を支えているといえるほど大きな存在ではないでしょうか。そういう存在になれるのが、介護の魅力だと考えています。そうなるためには、様々な知識や技術を吸収し、なかでも2年生になったら学ぶ医療分野もしっかり身につけたいです。
介護の仕事に就くには、覚えることがいっぱいあるけど、やはり人の役に立つために必要なこと。介護業界に興味を持っている高校生の皆さんには、実践につながることは特に重要なので機会があれば見たり聞いたりふれたりしてほしいし、私も実技をもっとがんばっていきたいと思います。