取材:2023年10月10日
小・中学生のときに適性テストを受けたら、将来は介護の仕事が向いているという結果でした。それ以来、介護業界が気になっていて、高校で介護職の求人情報を見つけたとき、進学ではなく就職するのもいいなと思ったんです。自分が働く姿を想像して、介護の仕事についていろいろ調べるようになりました。機械では代用しにくいところがいっぱいある、人間がする仕事というところにも惹かれました。
就職しようとして家族に話したら、「たくさん吸収できる若いうちに学んだ方がいい」という意見をもらったんです。介護はこれから需要が高まっていく分野だから、専門的な知識を身につけた方がいいのではないかって。それでチャンスがあるなら学んでみようと専門学校に進学を決めました。その時からずっと家族が応援してくれています。今も授業やテストで大変なときに「がんばりなさい」っていう励ましが私の気持ちの支えになっているんです。
これまで特に印象的だったのはレクリエーションの授業です。“レクリエーション”というと身近で関わってきたので容易にできるんじゃないかなと思っていました。けれども、“介護でのレクリエーション”は全然違って、介助される方の身体機能や精神面を考慮したリハビリも兼ねたもの。一人で行う、複数で行う、などパターンや種類も様々で、どう接するかはかなり難しく、最初の認識の甘さや過信を痛感しました。

座学で学んだ後、演習でロールプレイをした際、クラスメートは高齢者の役をしても耳が聞こえるし動くこともできるので実情とは違いますが、いろいろな発見があってかなり盛り上がりました。演習を機にそれまであまり会話したことのなかったクラスメートとも交流するようになり、同じ目標を持つ友達とのコミュニケーションが深まったのもよかったなと感じます。
特別養護老人ホームで1カ月間行った実習でも、レクリエーションが印象に残っています。皆さん楽しそうに笑って「またやりたい」と言ってくれました。ある方は翌日、その時に使ったウサギのお面を車イスに付けて「いいでしょ?すごく楽しかったんだよ」とおっしゃられたり、実習期間中によくお話をした利用者さんは最終日に「1カ月間ありがとう。私も今の生活をがんばるから、あなたも勉強をがんばって」ってお手紙をくれたり。自分が伝えた思いが、相手の中で残っているのがすごくうれしくて…。もともと人と話すのはあまり得意ではなく、1回言葉にして相手に聞き取ってもらえないとそこで諦めていましたが、様々な状況の人がいるなかで聞き取ってもらえないのは当たり前。でも相手のストレスもできるだけ減らしたいから、何回も繰り返さなくても1回で理解してもらえるように、大きな声ではっきりと話す姿勢が実習を通して身についてきたと思います。
専門学校を卒業したら、“上を目指す”介護福祉士になりたいです。今後成長していっても、現状に甘んじず、それよりもさらに進んでいきたいんです。高校時代に介護職を考えたときは、命をあずかる仕事だから「技術」が一番大事と思っていましたが、今はそれだけでは十分とはいえないと考えています。利用者さんとの「信頼関係」と「コミュニケーション」が同じくらい大事です。コミュニケーションを通した信頼関係があるからこそ、身を任せてもらえ、そこで初めて技術を発揮できます。でもそこで技術がないと、信頼関係を損ねてしまう。すべてがめぐりめぐっているので、全部が大切。それらを備え、向上させていく介護福祉士が理想です。

普段、年齢が上がるとともにお礼を言う機会が減ってきたのですが、そんな「ありがとう」という言葉が飛び交っているのが、介護業界の魅力だと思います。利用者さんの「ありがとう」を聞けるし、介助者も「手伝ってくれてありがとう」「話してくれてありがとう」と伝え、お互いの感謝にあふれています。もともとそうしたイメージを持っていましたが、専門学校で学んでますます強まりました。介護は人と関わる温かいものだと実感しています。
私の場合は、小さなきっかけがたくさん結びついて今ここにいます。もし今、介護の道に興味はあるけれど、大きな目標がないから命と関わるような介護の仕事はムリかもしれないと迷っている高校生の方がいたら、諦めないでほしいと思います。自分が目指したい姿を想像して、がんばりたいという今の気持ちを大切にしてほしいです。