取材:2024年7月1日
介護の仕事に興味を持ったきっかけは、中学生のときの職場体験です。保育園に行くコースを希望したのですが、人数が多すぎたため、介護職体験に振り分けられました。ところが、うかがった小規模なケアハウスで、お年寄りたちとおしゃべりしたことが、とても楽しく、良い思い出として残っています。その頃は将来の職業として介護職を考えるまでにはなりませんでしたが、大学進学時に職業体験を思い出し「福祉の仕事」、介護職をやりたいと先生に相談したところ、社会福祉士という道もあるとアドバイスを受け、大学へ進学。社会福祉士の国家試験に合格して、就職したのが今の施設です。

大学時代がコロナ禍と重なり、実習を十分には行えなかったため、まずは現場で介護職員として働きはじめた頃は、不安もたくさんありました。でも、うちの法人にはチューター制度があり、先輩に付いて1対1で教えてもらったり、相談することができます。チューター以外の先輩も優しくフォローしてくださり、とても心強い環境の中で色々なことを学ぶことができました。
1年間、介護の現場で働いて思ったことは、やはり楽しいだけではやっていけないということ。こちらが笑顔になれば、利用者様も笑顔になる理想を抱いていましたが、実際はそうでないこともあり、難しいと感じることも正直ありました。しかし、現場で働いた経験が相談員として働いている今、とても役立っていると感じています。例えば、ご家族の方にどんな介護を行っているか、お風呂はどんな様子なのか、どんなレクリエーションをしているか、またその目的はどういったことなのかなど、施設の中身や状況についても細かくお伝えすることができます。相談員として利用者様と1対1で関わることが少なくなっている今でも、現場の職員に聞いてご家族に説明することができるのも、介護職として働いた1年があるからだと思います。

介護職や相談員の仕事の魅力は、利用者様をはじめ、ご家族や外部のケアマネジャーさんから感謝されることです。例えば今日からショートステイを利用させてほしいという方がいらっしゃったとして、今日は空いているから大丈夫ですよ、とお話しできたとします。お迎えにうかがうと、本当に良かった。ありがとう!とご家族から言ってもらえたり、ケアマネジャーさんから「受け入れてくれてありがとう」と感謝されたりすると、お役に立てて良かったと思います。
しかし、反省しなければならない出来事もありました。介護の現場で働いていた時のことです。普段デイサービスを利用しており、たまたまショートステイを利用した方が「ここはデイサービスと違って楽しくない」と言われたことがあったのです。とてもショックで、当時は業務の時間に追われて余裕が無かった自分を反省しました。ご指摘を受けたことをきっかけに、ショートステイでも楽しく過ごしていただけるよう、季節の飾り付けやレクリエーションを考えて工夫するように努めています。今では楽しんでいただけているのではないかと思います。
私にとって理想の介護は、その方の普段の生活からニーズを汲み取り、支援につなげていくことです。利用者様のしたいこと、できることを現場の職員から聞き取り、実現する。先日は、ビールが飲みたいという利用者様がいらっしゃり、看護師と相談してノンアルコールで1日だけという約束だったのですが、ご家族の許可を取り、ご希望のビールを飲んでいただきました。利用者様はとても喜んで下さり、その様子を見た私も嬉しくなりました。

まだ相談員として2年目で、精一杯の感じが続いているのですが、理想の介護を実現できるよう経験を積んでいきたいと思っています。介護の仕事にネガティブなイメージがあるのは、知る機会が少ないからだと感じています。私の小中高校時代には福祉や介護について知る機会は、あまりありませんでした。親世代から聞いた古いイメージがそのまま子どもに伝わっているような気がします。もっと介護の現場を知って、触れ合う機会が増えれば「大変以上に楽しい」ということが感じてもらえるのではないでしょうか。
清洲の里では昨年から地域の方と交流できる福祉サロン「かぼちゃカフェ」を始めました。特別養護老人ホームが培ってきた介護の知識や情報を発信し、地域の方の介護不安を少しでも解消できるよう地域に貢献したいとの思いからです。学生さんのボランティアもこれから受け入れていこうと計画しています。そういった各施設の開かれた場を利用して、どんどん介護の楽しさを知っていただけたらいいなと思っています。