愛知県では、介護職の魅力とやりがいを広く知ってもらうことで、介護職に対する理解を深め、関心を高めてもらおうと県内の高等学校を介護理解促進福祉協力校に指定し、高校生が介護職体験などを行う「介護理解促進福祉協力校事業」を行っています。今回は令和7年度の協力校の中から愛知県立一宮北高等高校の学びを紹介します。
- 【令和7年度介護理解促進福祉協力校】(5校)
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学校名 所在市町村 愛知県立一宮北高等学校
一宮市 学校法人愛知真和学園愛知啓成高等学校 稲沢市 学校法人河原学園人間環境大学附属岡崎高等学校 岡崎市 学校法人豊川閣妙厳寺豊川学園豊川高等学校 豊川市 学校法人尾張学園名古屋大谷高等学校 名古屋市
事前学習会
取材日:2025年7月3日 講師:介護経営総合研究所 福祉経営コンサルタント 服部暁生さん(介護福祉士) 一宮北高等学校では、「福祉実践コース」1年生20人が事前学習会を受講。夏休み中に特別養護老人ホーム葉栗の郷(一宮市)、地域密着型小規模特別養護老人ホームゆとりの郷(同)で介護体験学習に参加しました。同校「福祉実践コース」では看護、介護、リハビリテーション、幼児教育などの分野でリーダーとして活躍できる人材の育成を目指しています。
7月の事前学習会で生徒たちは、福祉経営コンサルタントで介護福祉士の服部暁生さんによる出前講座を受講。介護の仕事内容や介護の仕事の魅力について解説があり、熱心に耳を傾けました。
「介護の仕事のイメージは?」との問い掛けには「時間が取られて大変」「肉体的にも精神的にも結構大変」「施設にいる高齢者に対して介助する人が少ない」などネガティブなイメージが続出。服部さんは、介護の仕事は感謝にあふれる仕事であること、その人の人生と触れ合う面白い仕事であること、安定しているなどの魅力を挙げ、実際どんな仕事なのか体験学習で見てみようと伝えました。
更に、施設体験学習に向けて生徒たちに、何を目的に行くのか、自分なりのテーマを考えてみることが大事だとアドバイス。生徒たちからは「一緒に話してみたい」「スタッフがどんな風に介助しているかを見たい」「介護を受ける側の人はどんな感情なのか聞きたい」「働く場所の雰囲気を感じたい」と、各自がテーマを掲げ、体験学習に備えました。
介護体験学習
取材日:2025年8月4日 夏休み中、生徒たちは一宮市の特別養護老人ホーム葉栗の郷、地域密着型小規模特別養護老人ホームゆとりの郷で2日間の介護体験学習を行いました。葉栗の郷ではこの日、1年生女子生徒3人が介護体験に参加。実習服姿の3人は、1人ずつ分かれて1ユニット(入居者10人)を担当し、職員さんの指示に従って整理整頓や食事の準備などを行いました。
午前中は緊張ぎみだった3人ですが、午後は入居者さんとも打ち解け、笑顔で話ができるようになりました。
◆参加した生徒の感想◆

もっと制限された環境の中で生活していると思っていましたが、入居者さんは皆さん自由に行動していて驚きました。今日はたまたま入居者さんの願いを叶える日で、パンケーキが作りたいという入居者さんのために一緒にスーパーへ買い物に行ったのが楽しかったです。介護の仕事は大変そうですが、楽しそうでもありました。ガチで仕事!という雰囲気を出すのではなく、利用者さんと家族のように触れ合っている職員の方々が格好良かったです。

施設の食事の時間は一斉に始まるのかと思っていましたが、食べたい人が食べたいとき、その方の生活のリズムで食べていたので、そこが想像していたのと違っていました。配膳を手伝ったり、食器を洗ったり、お話をする中で気づいたのは、職員さんは入居者さんのお薬の時間などすべて記憶していてすごいということです。今まで思っていたのとはちょっと違う難しさが介護の仕事にはあると分かりました。でも、将来進みたいと思っていた看護か保育の道に、今回介護も加わりました。

それぞれの寝室があって、みんなのリビングがあって。リビングにはソファーがあって。施設というより家にいるように感じました。お茶に3段階のとろみをつけて飲ませてもらったのが面白かったです。職員さんと入居者さんがとても仲が良く、入居者さんが何も言わなくても職員さんは何がやってほしいのかを理解してあげているのがすごいと思いました。私は看護師を目指していて、介護の仕事は視野に入れていませんでしたが、体験したことで今は視野に入ってきました。
事後学習会
取材日:2025年10月31日 講師:介護経営総合研究所 福祉経営コンサルタント 服部暁生さん(介護福祉士)10月には事後学習会を開催。「体験を言葉にし、学びを将来に活かす」を授業のゴールに設定し、施設での体験学習を振り返り、気付いたこと、学んだことを発表しました。
◆実習を終えた生徒の感想◆

認知症の人が一人で部屋を出ていっても、戻ってこられるように建物の構造ができていることに驚きました。

介護士さんが全てやってあげているのかと思っていましたが、入居者さんと一緒に洗濯物を畳んだりして楽しそうでした。

掃除をするよう言われたのですが、どこからどこまでやっていいか分からず、隅から隅までやりました。

入居者さんに手伝ってもらいたいとき、上手に声かけをしていたのが、すごいと思いました。

何を話したらいいか分からなくて、入居者さんとのコミュニケーションに困りました。

職員さんはコミュニケーション能力が高いと思いました。僕が話してもすぐ終わってしまいますが、職員さんは長く会話が続いていました。

体験を通して、周りの状況を見て判断する力を身に付けたいと思いました。

年齢関係なく、会話するのが楽しかったです。コミュニケーションは大事だと思いました。
講師の服部さんは、皆さんが体験で困ったことは、地域に住む要介護者がいる家庭が直面している問題でもあり、福祉施設はそんな地域の「困りごと」を引き受け、地域を支える拠点でもあると説明。社会に占めるお年寄りの割合がどんどん増えていく今、今回体験したこと、学んだことは今後社会で役立つはずだと話しました。
授業のまとめとして生徒たちは今後日常生活で意識したい「具体的行動」を発表。「外で困っているお年寄りがいたら声を掛けたい」「おばあちゃんに歩調をあわせて歩きたい」「職員さんの対応力のすごさを知って、自分もちゃんと会話できるようになりたい」と体験から得たさまざまな“気付き”を共有しました。
◆特別養護老人ホーム 葉栗の郷◆
「その人の立場に立って、その人らしい普通の暮らしをつくる」ことを職員全員で意識して取り組んでいます。お部屋はすべてプライバシーが守られる個室。職員は入居者さまの暮らしをより自宅の生活に近づけるよう支援を行い、入居者さまの気持ちに寄り添いながら共に考え、行動しています。
TEL:0586-78-1010
URL:https://genki-kotobukikai.jp/hagurinosato/
◆地域密着型小規模特別養護老人ホーム ゆとりの郷◆
自然光や草木など自然を感じながら生活できる木造平屋建て、地域密着型の施設。交流室や憩いの広場もあり、明るく暖かな雰囲気づくりに取り組んでいます。「入居者さまとご家族に寄り添ったケア」をモットーに、一人ひとりの尊厳を大切にし、その人らしい暮らしが継続できるよう生活支援を行っています。
TEL:0586-78-8600
URL:https://genki-kotobukikai.jp/yutorinosato/


