
外観
■指定理由
萬徳寺は、奈良時代の創建と伝える古刹で、現在は真言宗に属している。
多宝塔は、下層を三間四方、内部に二本の円柱を立て来迎柱とし、前に仏壇を置く。屋根は宝形造、檜皮葺とし、頂に相輪をあげる。
建立時期が確認できないものの、様式・技法等から室町時代後期の建築と推定される。
■詳細解説

上層
萬徳寺は現在真言宗の寺院で、創建は奈良時代に遡るという。多宝塔建立に関する明確な史料はないが、様式・技法等から室町後期のものと推定される。
下層は三間四方で、外側四周に立つ側柱(がわばしら)は四隅の稜角を削った面取角柱とし、柱上の組物には出組(でぐみ)を置く。正面と背面の中央柱間に簡素な桟唐戸(さんからど)を吊って戸口とし、戸口以外は板壁で窓を設けない。内部には中央やや後方に二本の円柱を立てて来迎柱(らいごうばしら)とし、その前に和様の仏壇を置く。
上層は下層屋根上に円形土壇状の亀腹(かめばら)と高欄(こうらん)を配し、円周上に12本の円柱を立てる。柱上には前方斜め下へ突出する尾垂木を付けた、手先が四つ前へ出る四手先斗(よてさきときょう)を載せる。垂木は上・下層とも二軒繁垂木(ふたのきしげたるき)を平行に配する。屋根は宝形造、檜皮葺で、頂に相輪(そうりん)をあげる。
和様を基調とし、比較的簡素ではあるが美しい多宝塔である。(岩田敏也)