
正面(入口庇の痕跡がある)
■登録理由
乃木将軍が明治5年(1872)頃に名古屋に赴任したことにちなんで名付けられたと伝える名古屋城御深井丸に位置する旧陸軍の火薬庫。煉瓦造、平屋建で、屋根を切妻造、桟瓦葺とする。角を石積み風に造り出す等の高度な技術に見るべきものがある。
登録の基準 | 再現することが容易でないもの |
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■詳細解説

背面
明治維新後、名古屋城内は名古屋鎮台(当初は東京鎮台第三分営)となったが、さらに、明治7年(1874)、歩兵第六連隊が設置された。当時の建物とされるのが、御深井(おふけ)丸に残る煉瓦造の倉庫で、旧歩兵第六連隊弾薬庫とされている。
この倉庫は乃木倉庫と呼ばれているが、これは、明治天皇崩御に際して殉死した陸軍大将乃木希典(のぎまれすけ)に因んだもの。明治初年(1868)頃、乃木は第弐心得として名古屋に勤務。明治20年代には第五旅団長として名古屋に再赴任している。
乃木倉庫は、桟瓦葺、切妻造、平屋建、煉瓦造で、基礎は石造、小屋組は洋風トラス。延床面積は約100m2、壁厚は約60cmある。床は板張であるが、床下は煉瓦造の曲面天井で支えられており、乾燥のためか、床下空間を大きくとっている。隅石は漆喰で造り出したもの。
明治初期の煉瓦造建築物として名古屋市内では極めて貴重なものである。(瀬口哲夫)