○愛知県警察犯罪被害者支援基本計画の策定

令和3年6月22日

務住発甲第117号

この度、警察庁犯罪被害者支援基本計画が策定されたことに伴い、別記のとおり愛知県警察犯罪被害者支援基本計画を策定し、令和3年4月1日から適用することとしたので、その効果的な推進に努められたい。

別記

愛知県警察犯罪被害者支援基本計画

第1 総則

1 目的

この計画は、愛知県警察における犯罪被害者支援を計画的に推進するために講ずべき施策及びその推進要領を定めることにより、犯罪被害者の権利利益の保護を図ることを目的とする。

2 定義

この計画において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ次に定めるところによる。

ア 犯罪等 犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。

イ 犯罪被害者 犯罪等による被害を受けた者及びその家族又は遺族をいう。

ウ 二次的被害 犯罪被害者が必然的にかかわらざるを得ない刑事手続、医療等の過程で配慮に欠けた対応をされることによって受ける精神的又は身体的被害をいう。

3 計画期間

令和3年4月1日から令和8年3月31日までの間

4 推進上の留意事項

(1) 県、市町村その他の関係機関、民間の団体等と緊密に連携し、及び協力し、取組の一層の強化に努めること。

(2) 犯罪被害者に対する県民の理解及び関心を深め、犯罪被害者を社会全体で支える気運を一層醸成するように努めること。

(3) デジタル技術その他の新たな手法を取り入れながら、社会生活の変化に対応した施策の推進に努めること。

第2 推進施策

1 相談及び捜査の過程における犯罪被害者への配慮及び情報提供

(1) 相談体制の充実等

全国統一の警察相談専用電話「#9110」番、ハートフルライン、性犯罪相談、少年相談等の個別の相談窓口の効果的な運用及び交通事故被害者からの適切な相談受理等の相談体制の充実を図る。

また、犯罪被害者の住所地、実名又は匿名の別等を問わず、相談に応ずるとともに、犯罪被害者の要望に応じ、被害者支援連絡協議会等のネットワークに参画する関係機関又は団体(以下「関係機関等」という。)に関する情報の提供又はこれらへの引継ぎを行うなど、相談しやすい体制を構築し、犯罪被害者の負担軽減を図る。

さらに、暴力団が関与している犯罪、少年福祉犯罪、児童虐待、人身取引(性的サービス、労働の強要等を含む。以下同じ。)事犯等に関する通報を匿名で受け付け、有効な通報を行った者に対して事件検挙等への貢献度に応じて情報料を支払う、匿名通報ダイヤル制度の適切な運用により、これら事件の早期認知及び検挙に努め、犯罪被害者を早期に保護する。

(2) 告訴、告発、被害の届出等の適切な受理等

告訴又は告発については、直ちに聴取し、検討を行った上で、迅速に受理するように努める。

また、被害の届出があったときは、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、迅速かつ確実に受理するなど、犯罪被害者の視点に立って適切に対応する。

また、立件措置の可否の問題とは別に、事案の状況に応じ、加害者に対する指導又は警告による被害拡大防止について検討するとともに、捜査部門以外の部門又は他機関による対応が適切なものについては、確実に引き継ぐなど、必要な措置を講ずる。

(3) 刑事手続等に関する情報提供の充実

犯罪被害者の意見又は要望を踏まえ、刑事手続、少年保護事件の手続、警察その他の犯罪被害者支援に関係する機関、団体等による犯罪被害者の保護及び支援のための制度等について分かりやすく取りまとめた「被害者の手引」、パンフレット等を作成し、その内容の充実を図るとともに、配布方法等を工夫し、犯罪被害者への早期提供に努める。

また、外国人の犯罪被害者に対しても適切な情報提供ができるように作成し、配布している外国語版の「被害者の手引」についても、必要に応じてその内容の充実及び見直しを図り、その確実な配布及びウェブサイトにおける紹介に努めるとともに、外国人を対象とする防犯教室、自治体の外国人向け広報誌等の発行を通じ、警察の犯罪被害者支援施策について周知する。

(4) 捜査に関する情報の適切な提供等

捜査への支障等を勘案しつつ、犯罪被害者の要望に応じて捜査状況等に関する情報を提供するように努める。その際は、被害者連絡責任者及び被害者連絡担当係を指定し、犯罪被害者に対する連絡の実施状況を把握するとともに、連絡が確実に行われるような措置を講ずる。

また、被害者連絡等を通じて把握した犯罪被害者の状況及び要望のうち、他機関又は民間被害者支援団体と共有すべきものについては、犯罪被害者の同意を得て情報提供を行うなど、関係機関等との連携を図る。

(5) 損害賠償請求制度等に関する情報提供の充実

損害賠償請求制度その他の犯罪被害者の保護及び支援のための制度の概要について紹介した冊子、パンフレット等の内容の充実を図る。

また、当該冊子、パンフレット等を警察本部、警察署、運転免許試験場等の窓口等の来訪者の目に触れやすい場所に備え付けるとともに、各種会合の機会又は各種広報媒体を活用し、制度の周知を図る。

(6) 犯罪被害者に関する情報の保護

被害者の氏名の発表に当たっては、匿名発表を望む犯罪被害者の心情に配慮する一方、報道の自由及び国民の知る権利を理由に実名発表を望むマスコミの要望があることを踏まえ、プライバシーの保護、発表することの公益性等の事情を総合的に勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるように配慮する。

なお、報道発表を行う場合には、犯罪被害者に対し、事前に必要な情報の提供を行うように努める。

(7) 犯罪被害者の意向を踏まえた証拠物件の適正な返却又は処分

証拠物件が滅失、毀損、変質、変形、混合又は散逸することがないようように留意し、その証拠価値の保全に努めるとともに、検察庁と連携し、捜査上留置の必要がなくなった証拠物件は、その還付方法について犯罪被害者と協議し、その意向を踏まえた上で返却又は処分するように努める。

(8) 海外における犯罪被害者に対する情報提供等

警察庁、外務省等の関係機関等と連携し、海外における邦人の犯罪被害に関する情報の収集に努めるとともに、日本国内の遺族等及び帰国する犯罪被害者に対し、国内における支援に関する情報提供、空港等における帰国時の出迎え等の支援に努める。

(9) 地域警察官による犯罪被害者への訪問・連絡活動の推進

地域警察官は、捜査部門の職員との緊密な連携を図り、犯罪被害者の心情に十分配慮し、被害回復、被害拡大防止等に関する情報提供、防犯指導及び警察に対する要望又は相談の聴取を行うなど、地域警察官による犯罪被害者への訪問・連絡活動を効果的に推進する。

(10) 被害少年等が相談しやすい環境の整備

被害少年が早期に適切な支援を受けることができるように、相談窓口を愛知県警察のウェブページ、SNS等に掲載するほか、非行防止教室等の様々な機会を利用するなどして、被害少年及びその保護者に対する効果的な周知及び広報を図る。また、少年相談室を整備するなど、被害少年等が相談しやすい環境の整備を図る。

(11) 被害児童からの事情聴取に対する配慮

被害児童の負担軽減及び信用性の高い供述の確保のため、被害児童からの事情聴取に先立ち、検察庁及び児童相談所と協議を行い、これら関係機関の担当者のうち、代表者1人が聴取する取組を実施するほか、事情聴取の場所、回数、方法等を考慮するなど、被害児童に十分配慮した取組を推進する。

(12) 精神に障害を有する性犯罪被害者からの事情聴取に対する配慮

精神に障害を有する性犯罪被害者の心情及び特性に配意した事情聴取を行うため、被害者の事情聴取に先立って検察庁と協議を行い、その担当者のうち、代表者1人が聴取する取組を実施するほか、事情聴取の場所、回数、方法等を考慮するなど、被害者に十分配慮した取組を推進する。

(13) 性犯罪被害相談への適切な対応

性犯罪被害相談については、相談者の希望する性別の職員が対応するとともに、執務時間外においては、警察署当番員等が対応した上で担当者に確実に引き継ぐなど、適切な対応を推進する。

(14) 性犯罪被害者による情報入手の利便性の向上

ハートフルステーション・あいち等の相談窓口に関する広報等を行うことにより、性犯罪被害者による情報入手の利便性の向上に努める。

また、事件化を望まない性犯罪被害者に対しても、当該被害者の同意を得た上で、連絡先、相談内容等を公益社団法人被害者サポートセンターあいち(以下「被害者サポートセンターあいち」という。)をはじめとする犯罪被害者等早期援助団体に提供するなど、性犯罪被害者が早期に同団体による支援を受けやすくなるように努める。

(15) 医療機関等における性犯罪被害者からの証拠資料の採取等の促進

医療機関等において、警察への被害の届出前の性犯罪被害者からの証拠資料の採取が適切に行われ、当該採取資料が性犯罪被害者のプライバシー保護に配慮した上で適切に保管されるように、証拠資料の採取及び保管に必要な資機材の整備並びに産婦人科医会等の関係機関への働き掛けを行い、被害の届出前に証拠資料が滅失することのないように努める。この場合においては、産婦人科医会等とのネットワークを活用するなどして、性犯罪被害者からの証拠資料の採取方法を医師等に教示するとともに、捜査に支障のない範囲で、医療機関等で採取した証拠資料の鑑定状況に関する情報を提供する。

(16) 遺族に対する司法解剖等に関する適切な説明等

検視、司法解剖等に関し、パンフレットの作成及び配布により、犯罪被害者の遺族に対し、その目的、手続等に関する適切な説明を実施するとともに、その心情に配慮した適切な対応に努める。

なお、遺族に対する死者の臓器等の適切な返還を行うため、法医学関係機関等と調整の上、その手続については個別に検討を行う。

(17) 適正かつ緻密な交通事故事件捜査の一層の推進等

重大又は悪質な交通事故事件について、交通事故の科学的解析に関する研修を積んだ交通事故鑑識官のほか、必要に応じて捜査経験の豊富な交通事故事件捜査統括官が事故現場に赴き、客観的証拠の収集等の捜査指揮を行うなど、適正かつ緻密な交通事故事件捜査を推進するとともに、捜査員に対する各種研修の充実に努める。

また、被害者連絡調整官等(交通事故取扱要綱の制定(平成13年交指・交総発甲第181号)第9に規定する被害者連絡調整官及び被害者連絡調整官補佐をいう。)の適切な運用、簡略化した捜査書類の的確な運用等により、交通事故被害者の心情に十分配慮した取組を一層推進し、交通事故被害者等の負担軽減を図る。

2 精神的被害の回復のための支援及び経済的負担の軽減に資する支援

(1) 医療費等の公費負担

性犯罪被害者の緊急避妊等に要する費用、身体犯被害者の診断書料、司法解剖後の遺体搬送費及び遺体修復費等の公費負担制度の活用を積極的に推進するとともに、これらの制度を周知する。

(2) カウンセリング費用の公費負担

犯罪被害者の精神的被害が大きく、早期に専門医による援助が必要なときは、精神科等医療機関における診断料等の公費負担制度を適切に運用する。

(3) 犯罪被害者に対するカウンセリングの充実

公認心理師、臨床心理士等の資格を有する職員の確実かつ十分な配置に努めるとともに、カウンセリング技能を有する職員に対し、専門的な研修を実施することにより、その技術及び能力の向上に努め、当該職員を積極的に活用して犯罪被害者に対するカウンセリングを実施する。また、部外の精神科医、カウンセラー、被害者サポートセンターあいち等との連携を図り、犯罪被害者がその要望に応じて適切なカウンセリングを受けられるように配慮する。

(4) 被害直後における居住場所の確保

自宅が犯罪行為の現場となり、破壊されるなどして居住が困難となり、自ら居住する場所を確保できない場合等においては、犯罪被害者が利用できる一時避難施設宿泊料及び清掃することにより修復可能なときに行うハウスクリーニングに要する経費の公費負担制度を積極的に運用する。

(5) 犯罪被害給付制度の適切な運用

犯罪被害給付制度について、各種広報媒体等を活用して周知するとともに、対象事案の把握及び把握した事案に係る犯罪被害者への教示を徹底する。また、犯罪被害者等給付金の支給に係る裁定は、事案の内容に即して迅速かつ適正に行い、犯罪被害者等給付金の早期支給に努めるとともに、仮給付制度の効果的な運用等犯罪被害給付制度の適切な運用を図る。

(6) 公益財団法人犯罪被害救援基金との連携

犯罪被害給付制度等の公的制度では救済の対象とならない犯罪被害者で、個別の事情に照らし、特別の救済が必要と認められるものについては、公益財団法人犯罪被害救援基金と連携し、同基金が行う支援金支給事業による救済に努める。

(7) 海外における犯罪被害者に対する経済的支援

国外犯罪被害弔慰金等支給制度について、各種広報媒体等を活用して周知するとともに、対象事案の把握及び把握した事案に係る犯罪被害者への教示を徹底し、その適切な運用に努める。

(8) 被害少年の精神的被害を回復するための体制の整備及び継続的な支援の推進

被害少年の継続的な支援を行う少年補導職員及び少年相談専門職員に対する講習、研修等を実施することにより、カウンセリングの技法等必要な専門技術等を修得できるように努めるとともに、専門的能力を備えた職員の配置に努める。

また、被害少年に対しては、その保護者の同意を得た上で、被害者サポートセンターあいちをはじめとする民間被害者支援団体を紹介するとともに、少年補導職員等が臨床心理学等の専門家の助言を受けつつカウンセリングを実施するなど、継続的な支援を推進する。

(9) 犯罪利用預金口座等対策による被害回復の促進

預金口座等への振込みを利用して行われる特殊詐欺等の犯罪行為の被害者に対して被害回復分配金が適切に支払われるように、金融機関に対し、預金口座等の不正利用に関する情報提供を行うとともに、犯罪被害者に対し、被害回復に資する各種制度を教示するなど情報提供を行う。

(10) 暴力団犯罪の被害からの回復支援等の充実

被害回復アドバイザーを活用するとともに、公益財団法人愛知県暴力追放運動推進センター、愛知県弁護士会民事介入暴力対策委員会等との連携を強化し、暴力団犯罪の被害者による損害賠償請求に対する支援等の援助措置を充実させる。

3 犯罪被害者の安全の確保

(1) 再被害防止措置の推進

同一の加害者により再び危害を加えられるおそれのある犯罪被害者を再被害防止対象者として指定し、検察庁、刑事施設、地方更正保護委員会、保護観察所その他の関係機関等と緊密に連携し、再被害の防止に資する情報を当該再被害防止対象者に適切に提供するとともに、非常時の通報要領、自主警戒の方法等について指導を行う。

また、必要に応じて緊急通報装置を貸与し、又は警戒措置を講ずるなどして再被害防止に向けた取組を推進する。

さらに、再被害防止への配慮が必要な場合には、関係機関等と連携し、逮捕状の請求等に当たって犯罪被害者の個人情報の保護に配慮するなど、事案に応じた柔軟な対応に努める。

(2) 再被害の防止に向けた関係機関との連携強化等

配偶者等からの暴力事案の被害者、人身取引事犯の被害者、児童虐待の被害児童等を保護し、これらの者に対する再被害を防止するため、愛知県女性相談センター、児童相談所等との連携を強化する。

また、学校をはじめとする関係機関等との連絡体制を構築するとともに、学校警察連絡協議会等の組織の活用を図り、加害少年又はその保護者に対する非行防止又は立ち直り支援のための助言、指導等の充実を図る。

(3) 行方不明者対策の強化

行方不明者届が出された者のうち、その生命又は身体に危害が生ずるおそれがある者等については、その行方に関する情報収集並びに必要な探索及び捜査を行うとともに、関係機関等に協力を求めるなど、行方不明者を早期に発見し、保護するための措置を講ずる。

(4) ストーカー事案、配偶者等からの暴力事案等に対する迅速かつ的確な対応

ストーカー事案、配偶者等からの暴力事案等への対応に関しては、被害者に危害が加えられる危険性又は切迫性に応じ、検挙措置等による加害者の隔離を第一に検討するなど、被害者の安全確保を最優先とした迅速かつ的確な対応を推進する。

また、これら事案に適切に対応するため、関係機関と連携し、被害者等からの相談の充実、犯罪被害者情報の保護の徹底、被害者等の適切な避難等に係る支援の推進、調査研究及び広報啓発活動等の推進、加害者対策の推進並びに被害者等の支援を図るための措置といった各種対策を推進する。

(5) 児童虐待の防止並びに早期発見及び早期対応のための教育訓練等

児童虐待の早期発見等に資する教養訓練を徹底し、児童虐待に関する職員の専門的知識及び技能の向上に努めるとともに、少年課の児童虐待対策担当の幹部を、児童相談所等の関係機関との連携、児童虐待への専門的な対応に関する職員に対する指導等の業務に従事させるなど、児童虐待への対応力の強化を図る。

(6) 子供を対象とする暴力的性犯罪の再犯防止

16歳未満の子供を被害者とした不同意わいせつ等の暴力的性犯罪で服役して出所した者の再犯防止を図るため、法務省から警察庁経由で情報提供を受け、定期的な所在確認を実施する。また、必要に応じて当該出所者の同意を得て面談を行うとともに、関係機関等との連携強化に努める。

(7) 保護対策の推進

暴力団等(愛知県警察組織犯罪対策要綱の制定(平成17年刑組発甲第140号)に定める暴力団等をいう。)による危害を未然に防止するため、暴力団等から危害を受けるおそれのある者を保護対象者として指定し、危害を受けるおそれの程度に応じ、その危害を防止するための必要な措置を講ずるなど、警察組織の総合力を発揮した保護対策を推進する。

4 犯罪被害者支援の推進のための基盤整備

(1) 条例の制定等に関する協力

犯罪被害者の視点に立った総合的かつ計画的な犯罪被害者支援に資するように、県又は市町村の担当部局に対し、犯罪被害者支援のための実効的な事項を盛り込んだ条例の制定又は計画、指針等の策定状況について適切に情報提供を行うとともに、条例の制定等に向けた検討、条例の施行状況の検証及び評価等への協力を行う。

(2) 担当部局との連携及び協力の充実及び強化

犯罪被害者に適切な情報提供を行う総合的対応窓口等の相談機関、各種制度等について、犯罪被害者に対し、リーフレット等を活用して説明できるように努めるとともに、犯罪被害者支援に携わる職員を対象とする研修の実施のために必要な協力を行うなど、総合的対応窓口をはじめとする犯罪被害者施策の担当部局との連携及び協力の充実及び強化を図る。

(3) 市町村間の連携及び協力の促進

市町村間の連携及び協力の促進を図るため、市町村の犯罪被害者支援担当者を集めた研修の実施等に協力する。

(4) 見舞金制度等の導入促進に対する協力

県又は市町村における犯罪被害者施策の担当部局と連携し、これらが犯罪被害者に対する見舞金等の支給制度及び生活資金等の貸付制度の導入に向けた検討を行うために必要な協力を行う。

(5) 犯罪被害者のための施設等の改善

犯罪被害者用事情聴取室及び犯罪被害者支援用車両の活用を図り、犯罪被害者の心情に配慮した照明及び内装に改良するなど、犯罪被害者のための施設等の改善を図る。

(6) 研修の充実等

ア 採用時、昇任時及び捜査に従事する者を対象とした専科等の各種教養時において、犯罪被害者支援に当たった職員の体験記等を活用しつつ、犯罪被害者支援の意義、性犯罪被害者及び被害少年への支援要領、民間被害者支援団体との連携要領等に関する教養を行う。

なお、教養に際しては、犯罪被害者による講演を組み込むなど、犯罪被害者への適切な対応を確実にするため、教養の充実を図る。特に、犯罪被害者支援を担当する職員に対しては、カウンセリング技能を有する職員によるロールプレイング方式の演習を含む専門的研修を実施し、性犯罪被害者及び被害児童をはじめ、被害が潜在化しやすい犯罪被害者に係る教養を行うとともに、配偶者等からの暴力事案への対処等に関する専門的な技能の向上に努める。

イ 被害児童からの事情聴取に関する技能の更なる向上を図るため、事情聴取場面を設定したロールプレイング方式の実践的な研修を導入するなど、被害児童の負担軽減に配意しつつ、信用性の高い供述を確保するための聴取技法に関する効果的な研修の実施に努める。

ウ 性犯罪被害者の心情に配意した捜査及び支援を推進するため、性犯罪の捜査及び性犯罪被害者に対する支援に従事する警察官等を対象に、専門的な知見を有する講師を招いて講義を行い、男性又は性的マイノリティが被害を受けた場合の対応を含め、警察学校等における研修を実施する。

エ 障害者の特性を踏まえた捜査及び支援を推進するため、捜査及び支援に従事する警察官等を対象に、専門的な知見を有する講師を招いて講義を行うなど、警察学校等における研修を実施する。

(7) 犯罪被害者支援要員制度の活用等

あらかじめ指定された犯罪被害者支援要員が、事件発生直後から犯罪被害者への付添い、助言、情報提供等を行うほか、被害者支援連絡協議会等のネットワークを活用しつつ、部外のカウンセラー、弁護士会、関係機関、犯罪被害者の援助を行う民間の団体等の紹介を行うなどの犯罪被害者支援要員制度の積極的な活用を図る。

また、犯罪被害者支援において必要な知識及び能力の向上を図るため、犯罪被害者支援要員に対する教養の充実に努める。特に、死傷者が多数に及ぶ事案等にも迅速かつ的確に対応できるように、必要に応じて犯罪被害者支援要員の迅速な集中運用を行うためのマニュアルの整備及び訓練の実施に努めるとともに、犯罪被害者支援の担当部門と捜査担当部門との連携強化を図る。

(8) 犯罪被害者支援に携わる者に対する心理的影響への配慮

犯罪被害者支援に携わる職員は、犯罪被害者と間近で接し、時にはその感情の表出に直面することにより、極めて強いストレスを受けることがあるため、これらの職員に対し、ストレスに関する教養を行うとともに、精神科医、臨床心理士等によるカウンセリングを受けさせるなど、必要な措置を講ずる。

(9) 好事例の積極的な紹介及び適切な評価

情報提供をはじめとする基本的な犯罪被害者支援が確実に実施されるように、具体的な支援の好事例の積極的な紹介を通じて個々の職員の実務能力の向上を図るとともに、適切な評価及び表彰の実施により、犯罪被害者支援に係る職員の意識高揚を図る。

(10) 性犯罪捜査を担当する係への女性警察官の配置等

性犯罪捜査を担当する係への女性警察官の配置を促進するとともに、性犯罪捜査専科の実施等により、性犯罪捜査を担当する職員の実務能力の向上を図る。

また、愛知県産婦人科医会、被害者サポートセンターあいちをはじめとする民間被害者支援団体、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター等との連携強化に努め、その活動に対する県民の理解を増進するとともに、性犯罪被害者の心情に配慮した対応を強化する。

(11) 関係機関等との連携及び協力の強化

ア 警察本部及び警察署の被害者支援連絡協議会及び被害者支援地域ネットワークのメンバー間における連携並びに相互の協力を強化し、犯罪被害者が置かれている立場への理解を深めるための研修、死傷者が多数に及ぶ事案等の具体的事例を想定した実践的なシミュレーション訓練等を通じ、具体的な事案に応じた対応能力の向上を図る。

また、被害者支援連絡協議会等の活用により、県若しくは市又は被害者サポートセンターあいちをはじめとする犯罪被害者支援に関係する機関等との連携を強化するとともに、犯罪被害者に対し、当該機関等における犯罪被害者支援のための制度等に関する情報提供を行うように努める。

イ 関係機関等による犯罪被害者支援が途切れることなく行われるように、県又は市をはじめ、医師会、社会福祉会、精神保健福祉士協会、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター、公認心理師関連団体、臨床心理士会、犯罪被害者の援助を行う民間の団体等における研修の実施に必要な協力を行い、犯罪被害者支援を担当する職員等の意識の向上を図る。

(12) 犯罪被害者等早期援助団体等との連携、協力等

犯罪被害者に対し、犯罪被害者支援において秘密が守られること等を十分に説明した上で、犯罪被害者の連絡先、相談内容等を被害者サポートセンターあいち等の犯罪被害者等早期援助団体に提供する。

また、民間被害者支援団体による支援が適切に行われるように、犯罪被害者の実態、当該支援に資する事項、二次的被害を防止するための留意事項等に関する必要な情報提供を行い、同団体の運営及び活動に協力する。

さらに、被害者サポートセンターあいち等の民間の団体と連携し、犯罪被害者の要望に応じて自助グループの紹介を行う。

(13) コーディネーターとしての役割を果たせる民間支援員の養成に資する支援

被害者サポートセンターあいちをはじめとする犯罪被害者の援助を行う民間の団体に対し、同団体が行う研修内容に対する助言、研修に対する講師派遣等の協力を行う。

また、犯罪被害者が必要とする支援についての相談対応、情報提供、適切な機関等への橋渡し等、犯罪被害者に対する支援全般を管理するコーディネーターとしての役割を果たせる民間支援員の育成を支援するため、被害者支援連絡協議会等において、民間被害者支援団体の支援員をコーディネーターとし、死傷者が多数に及ぶ事案等の具体的事例を想定した犯罪被害者支援に関する実践的なシミュレーション訓練を行う。

(14) 犯罪被害者の援助を行う民間の団体等への支援の充実

被害者サポートセンターあいちをはじめとする犯罪被害者の援助を行う民間の団体に対する財政的援助の充実に努めるとともに、同団体の財政及び人的基盤の確立に向けて協力する。

また、犯罪被害者の援助に携わる者の研修に関する講師の手配及び派遣、会場借上げ等の必要な支援に努める。

さらに、各種広報媒体等を活用し、犯罪被害者が置かれている状況、それを踏まえた施策の重要性、犯罪被害者の援助を行う民間の団体の意義及び活動等について、県民に周知する。

(15) 犯罪被害者の援助を行う民間の団体の活動に対する支援等

犯罪被害者の援助を行う民間の団体が開催するシンポジウム又は講演会について、その趣旨に賛同できるものについては、その効果の波及性等も踏まえて後援するなど、開催に協力するように努める。

また、当該シンポジウム等の開催について、県及び市をはじめとする公的機関に対し、SNS等の各種広報媒体を活用して周知するなど、犯罪被害者の援助を行う民間の団体の活動を支援する。

(16) 犯罪被害者支援に関するウェブサイトの充実

犯罪被害者支援に関するウェブサイトについて、関係法令、相談機関等に関する情報その他必要な情報を更新するとともに、英文による情報提供を行うなど、その充実を図る。

(17) 犯罪被害者支援の実態把握等

犯罪被害者支援の実態及び犯罪被害者が置かれている状況を適切に把握するとともに、把握した実態等を踏まえ、必要な検討を行う。

5 県民の理解の増進

(1) 犯罪被害者週間に合わせた集中的な広報啓発活動の実施

犯罪被害者の参加及び協力を得て、犯罪被害者週間(毎年11月25日から12月1日までの間に行われるものをいう。)の周知に努めるとともに、県又は市町村と連携し、当該週間に合わせて、犯罪被害者への理解の増進を図るための広報啓発活動を集中的に実施する。

(2) 各種広報媒体を活用した犯罪被害者施策に関する広報啓発活動の実施

関係機関又は民間被害者支援団体と連携し、犯罪被害者が置かれている状況、これを踏まえた施策実施の重要性、犯罪被害者の援助を行う団体の意義及び活動等について、周知するとともに、街頭キャンペーン、討論会等の広報啓発活動を推進する。

また、広報啓発用のパンフレットの作成、ウェブサイト上での犯罪被害者施策の掲載等により、犯罪被害者施策について周知するとともに、犯罪被害者施策に関する県民の理解増進に努める。

なお、これらの広報啓発活動の実施に当たっては、スマートフォン等からのアクセスが可能なSNS等の各種広報媒体の活用を図る。

さらに、シンボルマーク等を活用するなど、広報の手法の多様化に努める。

(3) 犯罪被害者支援に関わりの深い者に対する積極的な広報啓発活動の実施

犯罪被害者支援に関わりの深い医療、福祉、教育又は法曹関係の職能団体等の協力を得て、当該団体等に所属する者に対し、犯罪被害者が置かれている状況、犯罪被害者支援の重要性等に関する広報啓発活動を積極的に実施し、その理解の増進を図り、社会全体で犯罪被害者を支える気運の醸成を図る。

(4) 調査研究結果の公表等を通じた犯罪被害者が置かれている状況についての県民の理解の増進

諸外国における犯罪被害者施策、犯罪被害者に関する調査等の研究結果が公表された場合は、それらの結果に基づき、犯罪被害者が置かれている状況についての県民の理解を増進するための広報啓発活動に活用する。

(5) 被害が潜在化しやすい犯罪被害者に対する県民の理解の促進

シンポジウム、講演会等の様々な機会を通じて、性犯罪被害者、被害児童(その兄弟姉妹を含む。)及び障害者をはじめ、潜在化しやすい犯罪被害者が置かれている状況等を周知し、県民の理解の増進及び社会全体で犯罪被害者を支える気運の醸成を図る。

(6) 命の大切さを学ぶ教室の開催等

教育委員会等の関係機関と連携し、中学生、高校生等を対象に、犯罪被害者が講演者となり、子供を亡くした親の思い、命の大切さ等を直接生徒に語りかける講演会(「命の大切さを学ぶ教室」のことをいう。)及び命の大切さに関する自らの意見等についての作文を募る、「大切な命を守る」全国中学・高校生作文コンクールを開催することにより、犯罪被害者への配慮及び協力意識のかん養並びに次世代を担う者の規範意識の向上に努める。

なお、犯罪被害者支援に係る社会参加活動に関する大学生の理解を増進するため、大学等との連携を強化し、大学生ボランティアの周知、活用及び活動への支援並びに大学生に対する犯罪被害者支援に関する講義を積極的に推進するとともに、広く県民の参加を募って犯罪被害者による講演会を実施するなど、様々な機会を利用し、社会全体で犯罪被害者を支える気運の醸成を図る。

(7) 犯罪被害者の個人情報の保護に配慮した犯罪発生状況等の情報提供の実施

地域住民自らが積極的に防犯対策を講ずる契機となるように、犯罪被害者が特定されないように工夫した上で、各種広報誌、愛知県警察のウェブページ、パトネットあいち、安全行動促進アプリのアイチポリス等を効果的に活用し、身近な場所で多発している性犯罪、つきまとい、子供への声掛け、ひったくり等の発生状況等を発信する。

(8) 交通事故被害者等の現状等に関する県民の理解の増進

交通事故被害者等の手記を取りまとめた冊子、パンフレット等を作成し、交通安全講習会で配布するほか、交通安全の集い等において、交通事故被害者等による講演を実施するとともに、運転者等に対する各種講習の中で、交通事故被害者の切実な声が反映されたビデオ手記等を活用し、事故類型、年齢層別の発生状況等、交通事故に関する様々なデータの公表等により、交通事故被害者の現状、交通事故の惨状等に関する県民の理解増進に努める。

愛知県警察犯罪被害者支援基本計画の策定

令和3年6月22日 務住発甲第117号

(令和5年7月13日施行)

体系情報
第3編 務/第2章 住民サービス/第2節 犯罪被害者支援
沿革情報
令和3年6月22日 務住発甲第117号
令和4年10月28日 刑四発甲第143号
令和5年3月17日 務警発甲第46号
令和5年7月11日 刑総発甲第126号