○運転免許の効力の仮停止等に関する事務処理要領の制定
令和3年12月27日
交免発甲第188号
この度、運転免許の効力の仮停止等に関する事務の迅速かつ適正な処理に資するため、別記のとおり運転免許の効力の仮停止等に関する事務処理要領を制定し、実施することとしたので、その適正な運用に努められたい。
なお、運転免許の効力の仮停止に関する事務処理要領の制定(昭和42年交安発甲第168号)は廃止する。
別記
運転免許の効力の仮停止等に関する事務処理要領
第1 目的
この要領は、道路交通法(昭和35年法律第105号。以下「法」という。)第103条の2に規定する運転免許の効力の仮停止及び同法第107条の5に規定する自動車等の運転禁止(以下「仮停止等」という。)に関する事務について必要な事項を定めることにより、当該事務の迅速かつ適正な処理を図り、もって危険運転者の免許の効力を取消し、又はその効力を停止するまでの間における危険性を排除することを目的とする。
第2 仮停止等の対象事案
仮停止等の対象事案は、別表のとおりとする。
第3 対象事案の捜査
1 現場臨場
交通死亡事故は、仮停止等の対象事案となる場合が多いため、交通死亡事故が発生したときは、警察署長等(警察署及び高速道路交通警察隊(以下「警察署等」という。)の長をいう。)又は警察署長等が指名した警部以上の階級にある警察官が当該交通死亡事故の現場に臨場し、事案の真相究明に努めること。
2 実況見分等の実施
警察署長等は、事故現場等において、実況見分等の必要な捜査を徹底し、仮停止等対象事案であるか否かを迅速かつ適正に見極めること。
3 免許保有事実等の確認
仮停止等対象事案に相当する交通事故を起こした者の中には、運転免許証(国際運転免許証及び外国運転免許証を含む。以下「免許証等」という。)の保有事実がないにもかかわらず、免許証等を保有していると偽り、又は免許証等の記載事項の内容を偽る者もいるため、必ず免許証等の保有事実、有効期間等を確認すること。
第4 事実の認定
1 違反行為に関する事実認定
仮停止等対象事案に係る違反行為は、警察官による現認がない場合が多いことから、違反行為に関する事実認定に当たっては、防犯カメラ、ドライブレコーダー等の客観的な証拠の収集に努めるほか、実況見分を入念に行い、事案の真相を的確に把握すること。
2 因果関係の究明
法第103条の2第1項第2号及び第3号に規定する仮停止等は、違反行為と交通事故との間に因果関係が存在することを要件としている。したがって、事実認定に当たっては、その究明に努めること。
なお、因果関係の究明を速やかに行うことが困難な事案については、仮停止等の処分を行わないこと。
第5 処分の決定
1 報告及び連絡
(1) 警察署長等は、仮停止等の処分の手続を行うときは、仮停止等事案発生即報書(別記様式)を作成し、運転免許課長に報告(聴聞係経由)すること。
(2) (1)の報告は、身柄の拘束、不拘束にかかわらず、原則として当該事案の発生日(交通事故の救護義務違反等(以下「ひき逃げ事故等」という。)の場合は被疑者を検挙した日)の翌日までに行うこと。
(3) (1)の報告を受けた運転免許課長は、仮停止等の対象となる者の住所地が県外にあるときは、直ちに当該対象者の住所地を管轄する公安委員会(当該公安委員会に属する警察本部の運転免許に係る行政処分担当所属の長経由。以下同じ。)に連絡すること。
2 処分決定上の留意事項
(1) 警察署長等は、仮停止等対象事案について、被害の程度又は責任の度合いが軽微で、明らかに軽い本処分に相当すると認められるときは、仮停止等の処分は行わず、速やかに運転免許の取消し又は効力の停止に係る処分(以下「取消し等の処分」という。)を公安委員会に具申(運転免許課長経由。以下同じ。)すること。
(2) 否認事件の被疑者に対して仮停止等の処分を行うときは、被疑者の供述以外の証拠により、当該事件の立証を十分に行うことができるかどうかを慎重に検討すること。
(3) 仮停止等の処分対象となる被疑者が、負傷、病気、長期間の身体の拘束等の理由により、明らかに仮停止等の期間内に自動車等を運転することができないと認められるときは、仮停止等の処分を行わず、速やかに取消し等の処分を公安委員会に具申すること。
なお、警察署長等は、仮停止等の処分対象となる被疑者を検察庁に身柄付送致した場合において、当該被疑者が釈放されたときは、直ちに仮停止等の処分を行うこと。
(4) 運転免許課長は、ひき逃げ事故、過労運転事案等、事案の真相究明に時間を要するものについて、意見の聴取の期日の5日前までに仮停止等の処分に係る関係書類を公安委員会に送付することができないと認められるときは、仮停止等の決定を行わないこと。
3 被処分者に対する仮停止等の処分の通知
(1) 警察署長等は、仮停止等の処分の通知を行うときは、あらかじめ、仮停止等の処分を受ける者(以下「被処分者」という。)から事案内容を詳細に聴取し、事実の認定に誤りがないことを確認した上、道路交通法施行規則(昭和35年総理府令第60号。以下「規則」という。)第30条の規定に基づき、仮停止処分通知書(規則別記様式第19の2)を被処分者に交付すること。
(2) 仮停止等の処分の通知は、被処分者が取調べ等で警察署等に在署している機会を利用して行うこと。
第6 被処分者の使用車両に対する措置
1 車両の移動
交通事故の現場から被処分者の使用車両を警察署等に移動させる必要があるときは、仮停止等の処分の趣旨に鑑み、被処分者には運転させないこと。
2 車両の一時保管
被処分者の使用車両を警察署等で一時保管するときは、確実に盗難、破損等の防止措置を講ずること。
第7 免許証等の保管等
1 免許証等の保管
運転免許課長は、取消し等の処分が行われるまでの間、被処分者から提出を受けた免許証等を保管すること。ただし、被処分者が他の都道府県に住所を有するときは、当該住所地を管轄する警察本部の運転免許担当所属長に対し、これを送付すること。
2 処分移送通知書等の送付
運転免許課長は、仮停止等の期間内に、被処分者から他の都道府県への住所変更を行った旨の通知を受けたときは、当該住所地を管轄する公安委員会に対し、処分移送通知書(規則別記様式第19)、仮停止通知書(規則別記様式第19の3)、弁明調書(運転免許行政処分事務処理要綱(平成6年交免発甲第60号。以下「事務処理要綱」という。)様式第7の弁明調書をいう。以下同じ。)その他関係書類(以下「仮停止通知書等」という。)を送付すること。
3 免許証等の返還場所等の教示
警察署長等は、被処分者から免許証等の提出を受けたときには、次に掲げる事項を教示すること。
ア 仮停止等の期間内に取消し等の処分が行われなかった場合における免許証等の返還は、運転免許課において行うこと。
イ 仮停止等の期間内に、他の都道府県に住所を変更したときは、当該期間内に速やかに住所変更の届出(国際運転免許証又は外国運転免許証を所持する者は、仮禁止(法第107条の5第10項において準用する法第103条の2第1項の規定による仮禁止をいう。)をした警察署長等に対して住所を変更した旨の通知)を行うこと。
ウ イの届出を怠ったときは、事案発生時の住所地を管轄する警察本部の運転免許に係る行政処分担当所属において免許証等を返還することになること。
第8 弁明の機会の付与
1 仮停止処分通知書の交付
被処分者に対する弁明の機会の付与は、弁明の日時、場所等を記載した仮停止処分通知書により行うこと。
2 弁明の録取
被処分者又はその代理人から口頭による弁明が行われたときは、巡査部長以上の階級にある警察官が弁明調書を作成し、その内容を読み聞かせ、誤りのないことを確認すること。
3 警察署長等への報告
2の弁明を録取した警察官は、速やかに弁明調書により、警察署長等に報告すること。
4 弁明内容の審査
3の報告を受けた警察署長等は、弁明の内容を審査し、その結果、仮停止等の処分をすることが適当ではないと認めたときは、警察本部長の指揮を受け、直ちに処分を取り消し、被処分者に対し、処分を取り消す旨を速やかに通知するとともに、提出を受けている免許証等を返還すること。
第9 関係書類の送付
1 愛知県公安委員会への送付
警察署長等は、仮停止等の決定からおおむね3日以内に、仮停止通知書等を愛知県公安委員会に送付(運転免許課長経由)すること。
2 他の公安委員会への送付
運転免許課長は、他の公安委員会に対して処分移送通知書及び仮停止通知書等を送付するときは、当該事案に係る取消し等の処分の意見の聴取期日の5日前までに到達するように配意すること。この場合において、書留速達郵便によっても所定の期日までに到達させることが困難であると認められるときは、意見の聴取の準備に必要な事項を別の方法により通報するなどの便宜を図ること。
第10 登録手続等
1 事故登録
運転免許課長は、警察署長等から第5の1の(1)の報告を受けたときは、被処分者の氏名、生年月日、性別及び免許証番号を確認した上、事務処理要綱様式第20の事故登録票を作成し、速やかに当該被処分者に係る交通事故の登録を行うこと。
2 他の警察本部に対する関係書類の送付
運転免許課長は、警察署長等から第5の1の(1)の報告を受けた場合において、被処分者の住所地が他の公安委員会の管轄区域内にあると認めたときは、直ちに行政処分関係書類を、当該住所地を管轄する公安委員会に送付すること。
第11 意見の聴取の期日及び場所の通知
仮停止等事案に係る取消し等の処分は、原則として意見の聴取対象事案となり、仮停止等の処分の期間内に取消し等の処分を行うためには、仮停止等の処分の期間内に意見の聴取を行う必要があることから、意見の聴取の通知は、次に定めるところにより迅速に行うこと。
(1) 被処分者が本県の居住者であるとき
ア 運転免許課長は、第5の1の(1)の報告を受けた事案が意見の聴取該当事案であると認めたときは、直ちに意見の聴取の期日及び場所を決定し、意見の聴取通知書(事務処理要綱様式第1)を被処分者に交付するよう、報告を行った警察署長に依頼すること。
イ 運転免許課長から意見の聴取通知書の交付を依頼された警察署長等は、仮停止等の処分通知の際に併せて被処分者に対して意見の聴取通知書を交付すること。
(2) 被処分者が他の都道府県内の居住者であるとき
運転免許課長は、被処分者の住所地を管轄する警察本部の運転免許担当所属長に対し、被処分者に対する意見の聴取通知書の交付を依頼すること。
(3) 仮停止等の期間内に意見の聴取を行うことができないとき
ア 意見の聴取の期日及び場所の通知は、仮停止等の期間内に意見の聴取を行うことができない場合であっても、仮停止等の処分通知と同時に行うこと。
イ 仮停止等の期間を経過したときは、被処分者に免許証等を返還すること。
第12 その他
この要領の実施に関し必要な細目的事項は、運転免許課長が別に示す。
別表
運転免許の仮停止等対象事案
違反行為 | 違反条文 | 罰則条文 | 被害程度 | |||
交通事故の場合の措置 | 交通事故の場合の救護措置義務違反 | 72①前段 | 117 | 死亡 傷害 | ||
酒気帯び運転等の禁止 | 酒酔い運転 | 65① | 117の2① | (1) | ||
酒気帯び運転 | 117の2の2① | (3) | ||||
過労運転等の禁止 | 麻薬等運転 | 66 | 117の2① | (3) | ||
麻薬等運転以外 | 117の2の2① | (7) | ||||
無免許運転の禁止 | 64① | 117の2の2① | (1) | |||
運転者の遵守事項 | 携帯電話等使用(交通の危険) | 71(5の5) | 117の4 | (2) | ||
要保護者通行妨害 | 71(2) | 119① | (15) | 死亡 | ||
通学、通園バス側方通過時の徐行、安全確認違反 | 71(2の3) | |||||
安全地帯側方通過時の徐行違反 | 71(3) | |||||
妨害運転 | 著しい交通の危険 | 117の2① | (4) | 死亡 傷害 | ||
第一種免許 | 大型免許を受けた者の政令で定める大型自動車等無資格運転 | 85⑤ | 118① | (3) | ||
中型免許を受けた者の政令で定める大型自動車等無資格運転 | 85⑥ | |||||
準中型免許を受けた者の政令で定める大型自動車等無資格運転 | 85⑦ | |||||
普通免許を受けた者の政令で定める大型自動車等無資格運転 | 85⑧ | |||||
大型二輪免許を受けた者の政令で定める大型自動車等無資格運転 | 85⑨ | |||||
普通二輪免許を受けた者の政令で定める大型自動車等無資格運転 | 85⑩ | |||||
最高速度 | 22 | 118① | (1) | |||
乗車又は積載の制限等 | 積載制限違反 | 57① | 118② | (1) | ||
積載制限違反 (118②(1)を除く。) | 119② | (1) | ||||
公安委員会の交通規制 | 警察官現場指示違反 | 4①後段 | 119① | (1) | ||
警察官等の交通規制 | 警察官通行禁止制限違反 | 6④ | ||||
信号機の信号等に従う義務 | 7 | (2) | ||||
通行の禁止等 | 通行禁止違反 | 8① | ||||
歩行者用道路を通行する車両の義務 | 9 | |||||
急ブレーキの禁止 | 24 | (3) | ||||
高速自動車国道等車間距離不保持 | 26 | (4) | ||||
追越しを禁止する場所 | 30 | (5) | ||||
踏切の通過 | 一時不停止、安全不確認 | 33① | 119① | (5) | ||
警報中等立入り | 33② | 死亡 | ||||
横断歩道等における歩行者等の優先 | 横断歩道等接近時の安全速度違反 | 38①前段 | ||||
進路前方横断歩道等を歩行者等横断中(横断しようとする場合)一時不停止、通行妨害 | 38①後段 | |||||
横断歩道等又はその手前直前で停止車両等の側方通過一時不停止 | 38② | |||||
横断歩道等又はその手前における前方車両等の側方通過前方進出 | 38③ | |||||
徐行すべき場所 | 42 | |||||
指定場所における一時停止 | 43 | |||||
通行区分 | 歩道、路側帯通行 | 17① | (6) | |||
歩道、路側帯横断等条件違反 | 17② | 死亡 | ||||
自転車道通行 | 17③ | |||||
右側通行 | 17④ | |||||
安全地帯進入、通行不共用部分進入 | 17⑥ | |||||
左側寄り通行等 | 歩行者側方安全間隔不保持等 | 18② | ||||
横断等の禁止 | 道路外施設等に出入するための左折、右折等禁止違反 | 25の2① | ||||
本線車道横断等禁止違反 | 75の5 | |||||
追越しの方法 | 28 | |||||
追越しを禁止する場合 | 29 | |||||
停車中の路面電車がある場合の停止又は徐行 | 31 | |||||
交差点における他の車両等との関係等 | 交差点における優先道路、広路通行車両の進行妨害 | 36② | 119① | (6) | ||
交差点における優先道路、広路に入る際の徐行違反 | 36③ | |||||
交差点安全進行義務違反 | 36④ | |||||
環状交差点における他の車両等との関係等 | 37の2 | |||||
横断歩道のない交差点における歩行者の優先 | 38の2 | |||||
整備不良車両の運転の禁止 | 62 | 119② | (2) | |||
免許の条件 | 91 | 119① | (20) | |||
臨時適性検査 | 107の4③ |
注 この表において、数字は条を、丸数字は項を、括弧数字は号を意味する。