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「知の拠点あいち重点研究プロジェクト(II期)」金属製品の表面処理過程で発生する副生水素回収・精製設備を開発しました!~金属加工処理工場の副生水素を利用する日本初の取組です~

 愛知県では、大学等の研究シーズを活用して県内主要産業が有する課題を解決し、新技術の開発・実用化や新産業の創出を目指す産学行政連携の研究開発プロジェクト「知の拠点あいち重点研究プロジェクト※1(II期)」を実施しています。

 この度、「近未来水素エネルギー社会形成技術開発プロジェクト※2」の「アルミ陽極酸化処理過程で発生する副生水素の活用システム構築※3」において、中部大学の成田吉徳((なるたよしのり)教授と、株式会社アルマックス(名古屋市)らの研究グループは、アルミニウムの陽極酸化処理※4(アルマイト処理)で発生する副生水素の回収・精製設備を開発しました。

 一般的に金属製品の製造工程では、耐食性や強度の向上及び加飾等のため、アルマイト処理などの表面処理が行われています。アルマイト処理を行う過程では副生水素が発生し、大気に放出されていますが、本開発設備を用いることにより、副生水素を高純度(水素濃度99%以上)で定量的に回収することができるようになりました。この回収した副生水素は、燃料電池等にも活用できます。

 今後、株式会社アルマックスは、平成33年頃の本開発設備の製品化を目指し、自社内において実証実験を行います。
 

1  開発の背景

 アルマイト処理(陽極酸化処理)や食塩電解※5の工場では、製造工程において副生水素が発生します。近年の環境エネルギーへの関心の高まりから、食塩電解の工場では、この副生水素を回収し燃料電池に供給する試みが進められています。しかし、規模が大きい食塩電解の工場に対し、アルマイト処理工場は、中規模以下の工場がほとんどであり、小型かつ導入コストの低い副生水素回収設備が求められていました。

 また、燃料電池自動車や家庭用燃料電池に利用されている水素の多くは、水蒸気改質反応※6によってメタンなどの炭化水素から水素を生成しています。この反応では、二酸化炭素が副生物として排出されるため、二酸化炭素を排出しない水素製造プロセスが求められていました。

 そこで、本研究チームでは、アルマイト処理時の陰極遮蔽(しゃへい)技術※7の研究開発を進め、アルマイト処理工場の既存の生産ラインに設置可能な、副生水素回収・精製設備を開発しました。
 

2  開発の概要

(1)本開発設備の構成

 本開発設備は、アルマイト処理からの副生水素を回収する「副生水素回収設備」と、回収した副生水素から不純物を取り除いて純度を高める「回収副生水素精製設備」から構成されます(図1)。
 

本開発設備の構成

図1 本開発設備の構成

(2)副生水素回収設備の特徴

 イオン交換膜とポリ塩化ビニル製水素回収ボックス(図2)による陰極遮蔽技術を使用することにより、高純度(水素濃度99%以上)の副生水素の定量的回収が可能になりました。この技術を応用して、カソードバッグ(ポリプロピレン繊維製の袋)とポリ塩化ビニル製水素回収カバーによる副生水素回収設備(図3)を開発することで、設備を低コストに抑え、アルマイト処理工場の既存の陽極酸化処理槽へ導入しやすいものとしました。

イオン交換膜と水素回収ボックス

図2 イオン交換膜と水素回収ボックス

図3 カソードバッグと水素回収カバー

図3 カソードバッグと水素回収カバーによる副生水素回収設備

(3)回収副生水素精製設備の特徴

 アルマイト処理は、硫酸を主成分とする電解液を用いるため、副生水素中には微量の硫酸ミストが含まれます。一方、燃料電池は、硫酸のような硫黄成分が入ることによって、発電性能が低下します。そこで、参画企業である株式会社チヨダセキュリティーサービス(名古屋市)では、硫酸ミスト除去機能を有する回収副生水素精製設備(図4)を開発しました。本設備を導入することによって、硫酸を含まない水素を高純度(99%以上)で精製することが可能になり、燃料電池発電システム(図5)に供給することが可能になりました。 
 

回収副生水素精製設備

図4 回収副生水素精製設備

燃料電池発電システム

図5 燃料電池発電システム

3 期待される成果と今後の展開

 本開発設備は、これまでアルマイト処理時に大気放出されていた水素を効率的に回収する設備であり、従来の水素製造プロセスと違って二酸化炭素を排出しません。また、回収した副生水素は、水素エネルギーとして燃料電池等で活用することにより、省エネルギー化が期待できます。あわせて、この方法により、従来、工場大気内へ放出していた電解液ミスト(硫酸ミスト)の飛散が防止できます。

 本県は、自動車・航空機産業が盛んであり、アルミニウム製の部品のほか、チタン等の他の金属製の部品向けの陽極酸化処理工場が多数存在します。本開発設備は、小型かつ低コストで導入が可能なため、これらの工場へ直接施工が容易で、本プロジェクトで培ったノウハウを広く活用することが可能となります。

 今後、株式会社アルマックスは、本開発設備の平成33年頃の製品化を目指し、自社内での実験プラントを使用し、研究を進めていきます。
 

4  社会・県内産業・県民への貢献

社会への貢献:水素エネルギーを使用した低炭素社会の形成に貢献する
県内産業への貢献:燃料エネルギー費等軽減が可能になり、価格競争力の強化につながる
県民への貢献:副生水素の流通につながり、水素の低価格化・安定供給につながる
 

5  問い合わせ先

〇プロジェクト全体に関すること

 ・あいち産業科学技術総合センター 企画連携部
  担当:吉富、牧
  所在地:豊田市八草町秋合1267番1
  電話:0561-76-8306
  FAX:0561-76-8309

 ・公益財団法人科学技術交流財団
  担当:安井、青井
  所在地:豊田市八草町秋合1267番1
  電話:0561-76-8360
  FAX:0561-21-1653

〇本開発内容に関すること

(副生水素回収技術関連)
 ・中部大学
  担当:総合工学研究所 教授、エネルギー変換化学研究センター センター長 成田 吉徳(なるた よしのり)
  所在地:春日井市松本町1200番地 14号館1階
  電話:0568-51-9458(ダイヤルイン)
  FAX:0568-51-3833

(副生水素回収・精製設備関連)
 ・株式会社アルマックス
  担当:製造部 青木 稔(あおき みのる)
  所在地:名古屋市緑区鳴海町字山下11番地
  電話:052-892-5231
  FAX:052-891-0671


【用語説明】

※1 知の拠点あいち重点研究プロジェクト

 高付加価値のモノづくりを支援する研究開発拠点「知の拠点あいち」を中核に実施している産学行政の共同研究開発プロジェクト。平成28年度からは「重点研究プロジェクト(II期)」を実施している。

   「重点研究プロジェクト(II期)」の概要

目的

大学等の研究シーズを活用して県内主要産業が有する課題を解決し、新技術の開発・実用化や新産業の創出を促進する。プロジェクト終了時には、県内企業において、成果の実用化や製品化、社会での活用を見込むことができる研究開発を実施する。

実施期間

平成28年度から平成30年度まで

参画機関

17大学11公的研究機関等99企業(うち中小企業73社)
(平成31年1月現在)

プロジェクト名

・次世代ロボット社会形成技術開発プロジェクト
・近未来水素エネルギー社会形成技術開発プロジェクト(※2)
・モノづくりを支える先進材料・加工技術開発プロジェクト


※2 近未来水素エネルギー社会形成技術開発プロジェクト

 

概要

知の拠点あいちの新エネルギー実証研究エリアを活用し、水素の製造や利用等の基盤技術開発を行うとともに、次世代LEDなど高効率エネルギー部材の応用開発を実施することにより、近未来水素エネルギー社会形成に資する技術開発を推進する。

研究テーマ

(1)燃料電池フォークリフト用充填装置と水素製造触媒装置の開発
(2)高耐久性水素製造用改質触媒の開発
(3)メタン直接分解水素製造システムの開発
(4)アルミ陽極酸化処理過程で発生する副生水素の活用システム構築※3
(5)水素社会形成に向けた、小型・高効率燃料電池部材技術の開発
(6)水素炎を用いる加熱炉の開発
(7)省電力・高耐久ディスプレイの実現に向けたマイクロLED実装研究
(8)深紫外280nm(UV-C) LEDの開発・製品化
 

参画機関

7大学4公的研究機関等20企業(うち中小企業18社)
(平成31年1月現在)


※3 アルミ陽極酸化処理過程で発生する副生水素の活用システム構築

 

研究リーダー

中部大学 教授 成田 吉徳(なるた よしのり) 氏

事業化リーダー

株式会社アルマックス 山田 邦博(やまだ くにひろ) 氏

内容

高効率的かつ高純度の水素回収方法を検討し、電極材料の見直しなど低コスト化を図った上で、利用目的に合わせた水素ガスの調製を行います。この3つのステップを踏み、副生水素回収システムの構築を目指します。

参加機関

〔企業〕
 株式会社アルマックス、株式会社チヨダセキュリティーサービス
〔大学〕
 中部大学、東海学園大学
〔公的研究機関〕
 公益財団法人科学技術交流財団、あいち産業科学技術総合センター


 

※4 陽極酸化処理
  対象金属を陽極で電解処理して 人工的に酸化皮膜を生成させる表面処理。対象金属がアルミニウムの場合、アルマイト処理という。

※5 食塩電解
  食塩水を電気分解して水酸化ナトリウムと塩素を製造する工業的方法。

※6 水蒸気改質反応
  炭化水素と水蒸気を触媒存在下・高温の条件で反応させ、水素を得る改質方法で、最も一般的に工業化されている水素の製造方法。

※7 陰極遮蔽技術
  イオン交換膜付塩化ビニル製ボックスを陰極に取り付けることで、効率よく水素を回収する技術。