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「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIII期」 粉体の物性を予測するAIソフトを開発しました! ~粒子の画像から粉体の物性を予測できます~

ページID:0380624 掲載日:2022年2月10日更新 印刷ページ表示

 愛知県と公益財団法人科学技術交流財団では、産学行政連携の研究開発プロジェクト「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIII期※1」を2019年度から実施しています。 

 この度、「先進的AI・IoT・ビッグデータ活用技術開発プロジェクト※2」の「AIを用いた粉体原料の物性に関する予測システムの構築※3」において、岐阜薬科大学の田原 耕平(たはら こうへい)教授、株式会社ナノシーズ、国立研究開発法人産業技術総合研究所 中部センターらの研究チームが、微量の粒子の画像から粉体の物性(性質)を予測できるAIソフトを開発しました。

 従来、粉体を原料とする錠剤などの医薬品や食料品、工業試薬等の開発では、各種の分析や試験を実施して粉体の物性を測定してから、そのデータをもとに製品設計や製造工程を設計していました。開発した本ソフトを利用すれば、粒子の画像から粉体の物性が予測でき、開発期間の短縮に貢献します。また、微量な原料で粉体の物性情報が得られ開発コストが削減できるため、粉体を原料として扱うあらゆる産業分野において、本ソフトの活用が期待されます。

1 開発の背景

 粉体は、自動車関連、セラミックス、医薬品、化粧品、食品分野など、日常生活から最先端分野に至る幅広い産業分野において、粉体から錠剤などの成形品に形を変え、中間材料や製品に至るまで、横断的に用いられています。

 「粉体」とは、それを構成する原料の「粒子」の集まりです。その粒子径や形状、その分布によってその集合体である「粉体」の物性は変化します。その「粉体」を必要な形状や大きさ、硬さに成形することで、粒状の「顆粒体」や錠剤などの「成形体」に形を変えますが、成形する工程や、成形物の特徴(硬さ)を決定するためには、「粉体」の密度や流動性も把握する必要があります。そのためには様々な試験を実施した上で、その結果を評価し製造工程に適用する熟練した知識と経験が必要です。

 一方、原料の粉体が高価である場合、開発初期に試験に必要な量の粉体を得ることが困難であるため、極微量(ミリグラム単位以下)から得られる情報を基に粉体の物性を推測して開発を進めるため正確さに欠け、製造工程確立の遅延要因となっています。

2 開発の概要

 この問題を解決するため、本研究チームでは粒子の拡大画像および粒子径の分布から粉体の物性を予測するAIアルゴリズムの研究開発を進め、粉体製品の研究開発や品質管理で必要となる、粉体物性を予測するソフトを開発しました。

(1) 粉体物性予測AIアルゴリズムの開発

 本研究チームは、重点研究プロジェクトにおいて独自に収集した数千の粒子画像と粉体層せん断試験機により測定した粉体物性のデータベースを、AIにより解析することで粉体の物性を予測する計算手法を開発しました。その過程では、まず粒子画像を解析し粒子の形状や表面粗さなど特徴を数値化させました。次に、それらの数値と物性データとの関係性をAIに学習させることにより、粒子画像から粉体物性を予測できるようになりました。さらに、粉体物性に影響を及ぼす要因を特定した結果、AIの精度が向上し必要な物性の予測が可能となりました。なお、この手法は田原耕平教授と国立研究開発法人産業技術総合研究所 中部センターおよび株式会社ナノシーズが2020年9月に特許を出願しました(特願2020-162437)。

(2) 粉体物性予測AIソフト「パウダーインテリジェンスQ」の特徴

 「粉体物性予測AIアルゴリズム」を使用することにより、粒子の拡大画像と粒子分布から粉体の性質を瞬時に予測できるソフトを開発しました。わずか数ミリグラムの原料から得られる画像情報を、本ソフトを利用して解析することで、粉体製品の開発に必要な情報を数秒で入手することが可能です。

fig1

          図1 粉体製品生産に必要な物性情報の獲得方法の比較

     fig2

          図2 開発した粉体物性予測AIソフト「パウダーインテリジェンスQ」

3 期待される成果と今後の展開

 従来できなかった粉体の物性予測が可能になったため、製造現場の実態に合った粉体製品の設計支援が可能となり、製品開発が加速されます。また、高価な粉体の開発ではそのコストの低減が見込まれます。

 参画企業である株式会社ナノシーズ(名古屋市西区)は、開発したソフトの試行販売を2022年度に開始し、2023年度に本格販売を目指します。

fig3

          図3 開発におけるコスト低減効果

4  社会・県内産業・県民への貢献

 
社会への貢献 産業における技術革新の基盤の創成
県内産業への貢献 製品開発の省力化、低コスト化、開発期間の短縮が見込まれ、粉体原料を使った製品の開発が加速する。
県民への貢献 医薬品や化粧品など高付加価値な商品の恩恵を受けやすくなる。

5 問合せ先

【重点研究プロジェクト全体に関すること】

あいち産業科学技術総合センター 企画連携部

担当:福田、門川、半谷

所在地:豊田市八草町秋合1267番1

電話:0561-76-8306

 

公益財団法人科学技術交流財団 知の拠点重点研究プロジェクト統括部

担当:佐野、安藤、田草川

所在地:豊田市八草町秋合1267番1

電話:0561-76-8370

【本開発内容に関すること】

 (開発技術に関すること) 

岐阜薬科大学

担当:薬学部 教授 田原 耕平

所在地:岐阜県岐阜市大学西1-25-4

電話:058-230-8115

 

(開発ソフトに関すること)

株式会社ナノシーズ

担当:島田 泰拓(しまだ やすひろ)

所在地:名古屋市西区那古野2-14-1

電話:052-414-6900

用語説明

※1 知の拠点あいち重点研究プロジェクト

 付加価値の高いモノづくりを支援する研究開発拠点「知の拠点あいち」を中核に大学等の研究シーズを活用したオープンイノベーションにより、県内主要産業が有する課題を解決し、新技術の開発・実用化や新たなサービスの提供を目指す産学行政の共同研究開発プロジェクト。2011年度から2015年度まで「重点研究プロジェクトI期」、2016年度から2018年度まで「重点研究プロジェクトII期」を実施し、2019年度からは「重点研究プロジェクトIII期」を実施。

「重点研究プロジェクトIII期」の概要

実施期間

2019年度から2021年度まで

参画機関

19大学 12研究開発機関等  106社(うち中小企業68社)

(2022年2月時点)

プロジェクト名

・近未来自動車技術開発プロジェクト(プロジェクトV)

・先進的AI・IoT・ビッグデータ活用技術開発プロジェクト(プロジェクトI)

・革新的モノづくり技術開発プロジェクト(プロジェクトM)

 

※2 先進的AI・IoT・ビッグデータ活用技術開発プロジェクト(プロジェクトI)

概 要

モノづくり現場の設計・生産・検査から、農業・健康長寿までの幅広い分野において、AI・IoT・ビッグデータの活用を推進するとともに、ロボット高度化やエネルギー最適配分のための水素蓄電の技術開発に取り組む。

研究テーマ

(1) 大規模材料データ及びCAEによる自動車向け設計生産技術

(2) 2次電池の材料開発/寿命評価用データベース構築とAI/IoT応用

(3) 5G/AIを活用したロボットプラットフォームとロボットサービスの研究開発

(4) 分野適応技術による自然言語処理技術のビジネス展開

(5) 中小工場を再エネ化する水素蓄電・ネットワーク対応AIエンジン

(6) 直流スマートファクトリー実現に向けた変換装置の開発

(7) 農業ビッグデータ活用によるロボティックグリーンハウスの実現

(8) 幸福長寿な暮らしをかなえる自然に活動的となる住まいの研究開発

(9) AIを用いた粉体原料の物性に関する予測システムの構築

参画機関

11大学 10研究開発機関等 37社(うち中小企業23社)(2022年2月時点)

 

※3 AIを用いた粉体原料の物性に関する予測システムの構築

概 要

微量の粉体原料から粉体物性を予測できるAIシステムを開発する。具体的には、粒子画像から成型後の物性を予測するシステムの確立を目指す。そのために、粉体物性データベースの構築を行い、これを解析する機械学習アルゴリズムを開発する。

研究リーダー

岐阜薬科大学 教授 田原 耕平 氏

事業化リーダー

株式会社ナノシーズ 島田 泰拓 氏

参加機関

(五十音順)

〔企業〕

晃栄産業株式会社、三信鉱工株式会社、株式会社ナノシーズ

〔大学〕

岐阜薬科大学

〔公的研究機関〕

あいち産業科学技術総合センター、公益財団法人科学技術交流財団、国立研究開発法人産業技術総合研究所 中部センター